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解説記事2017年03月27日 【最新判決研究】 建替検討中のマンションに関し鑑定評価が行われた場合の評価通達適用の可否(2017年3月27日号・№684)

最新判決研究
建替検討中のマンションに関し鑑定評価が行われた場合の評価通達適用の可否

東京高裁平成27年12月17日判決・判例時報2282号22頁
東京地裁平成25年12月13日判決(平成23年(行ウ)第224号ほか)

 筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣

一、事実

(1)本件は、第1事件(原告・控訴人X)と第2事件(原告・控訴人乙及び丙)からなるが、それぞれ同一の一括建替え検討中の鉄筋コンクリート造4階建マンション(以下「本件マンション」という。)の各1室を贈与により取得した場合の贈与税についての「時価」の評価方法が争われたものである。Xらが取得した各マンションについては、その面積等に若干に差異があり、贈与税額等にも差異はあるが、それぞれ争点は共通しているので、以下、第1事件についてのみ解説することとする。
 Xは、平成19年7月21日、父甲から贈与により本件マンションの1室42㎡余(以下「Xマンション」という。)を取得し(以下「本件贈与」という。)、平成20年3月11日、同マンションの価額を不動産鑑定会社が作成した不動産鑑定評価額に基づき2300万円(以下「本件鑑定額」という。)と評価し、相続時精算課税を選択して、贈与税の申告をした(以下「本件申告」という。)。これに対し、処分行政庁は、平成21年6月30日、Xマンションの価額を財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)に基づき7206万円余(土地部分7139万円余、建物部分67万円)と評価して更正(以下「本件更正」という。)等をした。Xは、本件更正等を不服として、国(被告・被控訴人)に対し、その取消しを求めて本訴を提起した。
(2)本件マンションの管理組合(以下「本件組合」という。)は、昭和33年に建築した本件マンションが老朽化したため、平成18年2月18日、その建替えを推進する決議をし、同19年10月28日、その一括建替えを決議をし、同20年5月31日、建設会社との間で各区分所有者との等価交換契約等を締結し、同21年2月26日までに同契約の締結を完了した。本件の建替えマンションは、同21年4月1日建築工事が開始され、同23年11月に完成した。
 本件鑑定額は、本件贈与時点においては、本件マンションの建替えが実現する蓋然性が高くないという前提の下に、積算価格を参考程度にとどめて、取引事例比較法による比準価格等に基づき算定されたものである。かくして、本訴においては、相続税法22条に定める「時価」の解釈(認定)につき、本件鑑定額の合理性と評価通達の定める評価額に基づく本件更正の適法性が争われることとなった。

二、争点及び当事者の主張

1 争  点
 本件の争点は、本件更正のうちXの申告に係る課税価格等を計算する基礎となるXマンションの価額を評価通達に定める評価方式によって評価することが相続税法22条の規定の許容するところであるか否かにある。

2 国の主張 (1)贈与により取得した財産の客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないから、課税実務においては、評価通達に定められた評価方式によってこれを評価することとしている。そうすると、租税平等主義の観点からは、評価通達に定められた評価方式が合理的なものである限り、これが形式的に全ての納税者に適用されることによって租税負担の実質的な公平をも実現することができるものと解されるから、特定の納税者についてのみこれ以外の方法によってその評価を行うことは、納税者間の実質的な負担の公平を欠くことになり、許されないものというべきである。他方、評価通達を画一的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな場合すなわち特別の事情ある場合には、別の評価方式によることが許されるものと解すべきである。
(2)Xマンションの価額の評価に関し、宅地の評価に係る評価通達11等に定める評価及び評価通達89に定める家屋の評価は、いずれも客観的交換価値を反映した合理的なものであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別な事情は認められない。
(3)本件鑑定額は、本件贈与時において本件マンションの建替えが実現する蓋然性が相当高かったことを考慮せず、また、妥当性を欠く鑑定評価の方法によるものであることから、Xマンションの客観的な交換価値を表しているとはいえない。
(4)また、平成19年10月の本件組合による一括建替え決議の成立前に、本件マンションの売却希望者に対し、8000万円余の価額を提示した買収交渉が進められていた事実があること、XがXマンションを平成20年11月11日に9664万円で譲渡している事実があること等からも、本件更正に係るXマンションの評価額が不当であったとは言えない。

3 Xの主張 (1)マンションの取引価格については、敷地の持分ではなく、敷地上の建物の専有部分の床面積、建物の築年数、建物の設備内容等の建物の現状が重要な考慮要素となる。そのため、マンションの敷地を更地と同視して路線価方式で評価したとしても、必ずしもその評価額が時価を表すことにはならない。特に老朽化が進んだマンションでは、マンションの取引価格が大きく下がるため(築10年以上の中古マンションは近隣の新築マンションの2分の1程度の価額で取引されるのが一般的である。)、路線価による評価額が時価を大きく上回るという現象が容易に生じることになる。
 マンションの敷地は、敷地上の建物の存在によって敷地の利用が大きく制限されており、全ての区分所有者の同意がなければ建物を取り壊して更地にすることができず(民法251条)、各区分所有者が建物の専有部分と分離して土地持分のみを譲渡することはできず(区分所有法22条)、その使用、収益、処分方法には大きな制約がある。そして、土地の共有持分の各部分の価額の合計額が全体の土地を単独所有している場合の価額と一致するわけではなく、評価通達2の定める評価方法も不合理であって、マンションの敷地を更地と同視することができないことは、理論的にも明らかなことである。
(2)国税庁は、平成4年4月に実務指針として出した「路線価等に基づく評価額が『時価』を上回った場合の対応等について」と題する事務連絡において、「相続税の申告に当っては、絶対的に路線価等に基づいて申告しなければならないというものではなく、路線価等に基づく評価額を下回る価額で申告された場合には、個々の事案については個別的に、課税時期における税法上の『時価』の解釈として、その申告が適切であるかどうかを判断すべきものである」と述べている。また、評価通達6は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定している。
 また、T税理士は、平成19年4月5日、贈与税の財産評価についての事前相談のために、渋谷税務署の担当官と面談した際、担当官に対して、本件不動産の鑑定評価の見込額は約2000万円になり、路線価で評価すると約6600万円となり、鑑定評価見込額と路線価評価額との間に大きな差がある旨を指摘したところ、担当官からは、評価通達によらなければならないとの回答はなく、鑑定評価という方法で構わないとの回答があった。
(3)本件マンションの過去の取引事例において、Xマンションと同面積の住戸の取引価格は、昭和63年には6800万円、平成8年には2780万円、平成9年には2800万円、平成13年には3400万円であり、古くから、評価通達に定められた評価方式による評価額が客観的な交換価値を全く表していない状態が続いていた。ちなみに、本件マンション以外の老朽化の進んだマンションにおいても、ほとんどの取引事例において、評価通達による評価額が取引価格を大きく上回っていた。
(4)本件鑑定額は、次の理由により、Xマンションの客観的交換価値を表している。
① 本件贈与時点において、本件マンションの建替えが実現する蓋然性が高かったとはいえないこと。すなわち、本件贈与時点においては、建替えの基本計画案が本件組合において承認されたにすぎない段階であり、同計画案では、等価交換方式が予定されたとはいえない、全員が承認しなければ建物明渡請求訴訟の提起等が予測され、多大な費用が見込まれ、更に、近隣住民との折衡や借家人の退去問題が予測され、更には、埋蔵文化財調査等が見込まれていた。
② 本件鑑定額は、適切な評価方法に基づくものでXマンションの客観的交換価値を表していること。すなわち、本件鑑定評価は、Xマンションについて、市場性を反映した比準価格2170万円を重視し、収益価格1970万円を関連付け、実現性に不透明感が残る積算価格1億1000万円については参考にとどめながら、将来における土地価格実現の可能性を考慮して、平成19年7月1日における価額を2300万円と鑑定評価したものである。

三、第一審判決要旨

請求棄却。
(1)相続税法22条は、贈与により取得した財産の価額につき、同法第3章において特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における「時価」によるべき旨を定めているところ、ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 ところで、贈与税に係る課税実務においては、評価通達において財産の価額の評価に関する一般的な基準を定めて、画一的な評価方式によって贈与により取得した財産の価額を評価することとされている。このような方法が採られているのは、贈与税の課税対象である財産には多種多様なものがあり、その客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないため、贈与により取得した財産の価額を上記のような画一的な評価方式によることなく個別事案ごとに評価することにすると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった金額が時価として導かれる結果が生ずることを避け難く、また、課税庁の事務負担が過重なものとなり、課税事務の効率的な処置が困難となるおそれもあることから、贈与により取得した財産の価額をあらかじめ定められた評価方式によって画一的に評価することとするのが相当であるとの理由に基づくものと解される。
 そして、評価通達に定められた評価方式が贈与により取得した財産の取得の時における時価を算定するための手法として合理的なものであると認められる場合においては、上記のような贈与税に係る課税実務は、納税者間の公平、納税者の便宜、効率的な徴税といった租税法律関係の確定に際して求められる種々の要請を満たし、国民の納税義務の適正な履行の確保(通法1、相法1参照)に資するものとして、相続税法22条の規定の許容するところであると解される。さらに、上記の場合においては、評価通達の定める評価方式が形式的に全ての納税者に係る贈与により取得した財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には租税負担の実質的な公平を実現することができるものと解されるのであって、同条の規定もいわゆる租税法の基本原則の1つである租税平等主義を当然の前提としているものと考えられることに照らせば、評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるとき(評価通達6参照)を除き、特定の納税者あるいは特定の財産についてのみ評価通達に定められた評価方式以外の評価方式によってその価額を評価することは、たとえその評価方式によって算定された金額がそれ自体では同条の定める時価として許容範囲内にあるといい得るものであったとしても、租税平等主義に反するものとして許されないものというべきである。
(2)評価通達に定められた評価方式は前記のとおりであるところ、これについて宅地及び家屋の時価を算定するための手法としての一般的な合理性に疑いを差し挟む余地は特段見当たらない。
 これに対し、Xは、評価通達に定められた評価方式はマンションの価額を算定するための手法として不合理であると主張する。
 しかし、前記のとおり、評価通達が区分所有に係る財産の各部分の価額の評価に関する定め(評価通達3)を置いていることからすれば、評価通達に定められた評価方式は、共有財産の持分の価額の評価に関する定め(評価通達2)とあいまって、マンションの価額を評価することをも想定していると解されるし、一概にマンションといっても、その立地や規模、築年数等において多種多様なものがあることに照らすと、個別具体的な事情を考慮することなしに、前記のとおり宅地及び家屋の時価を算定するための手法としてその合理性に疑いを差し挟む余地の認められない評価通達に定められた評価方式がおよそ一般的にマンションの価額を算定するための手法として不合理であるということは、適当ではない。
(3)前記のとおり、①本件マンションについては、昭和33年に建築された後に老朽化及び陳腐化が進んだことを前提に、平成8年から建替えの検討がされ、平成15年に実施されたアンケートにおいても、区分所有者の8割近くの者が建替えを希望する意向を示していたものであるところ、②平成17年に入って改めて建築会社を相手方とする等価交換方式による建替えの検討が開始された後は、調査の結果により現状維持のために相当の費用がかかり、改修も困難とされることが明らかとなった中で、新建物の建築の計画についての関係行政庁との協議も進められたものであって、③平成18年2月18日に開かれた臨時総会においてされた本件マンションの建替え推進決議については区分所有者92名中出席と取り扱われる83名のうち82名が賛成し、同年9月16日に開かれた臨時総会までにされた個別面談において建替えの推進に反対する区分所有者はなく、上記の臨時総会においてされた建築会社による基本計画案の作成の着手の承認の決議については区分所有者103名中出席と取り扱われる87名のうち86名が、平成19年4月22日に開かれた臨時総会においてされた本件基本計画案を承認する決議については区分所有者104名中出席を取り扱われる97名の全員が、同年10月28日に開かれた建替え決議集会においてされた本件一括建替え決議については区分所有者105名中出席と取り扱われる104名の全員が、それぞれ賛成していたものであって、上記の間に区分所有建物の建替え前の売却の意向を具体的に示していたことが判明しているのは本訴の原告らのみであったのであり、④このような検討の進捗の状況や区分所有者の建替えの実現に向けての意向等を背景に、建築会社は、同年4月22日、Aの現在の資産の評価を示すものとして本件ポイント表を区分所有者に示し、同年6月30日には、ポイントが上記のような性格のものであることを改めて示した上で、その単価として4万5000円ないし4万7000円であることを明らかにするとともに、当該単価をもって、補償金との現金をもってする清算、等価交換契約における充当等の在り方、将来の税金の試算等をも示していたものである。
 以上によれば、本件贈与時において本件マンションの建替えの実現性に不透明な部分があるとして、積算価格を参考程度にとどめてXマンションの価額を算定した本件鑑定評価は、その前提に問題があったというべきであり、本件鑑定額をもって本件贈与時におけるXマンションの時価を表すものであると直ちに認めることには疑問があるというべきである。
(4)評価通達に定められた評価額が本件贈与時におけるXマンションの時価を上回っているといえるかについては、次のとおりである。本件ポイント数では、現在の資産価値として、Xマンションは2000ポイントと評価され、1ポイント当たりの最小値である4万5000円を乗じると、Xマンションの価額は9000万円となる。また、本件の売却希望者と建設会社の間の交渉経緯をみると、同社としては8000万円から8170万円という金額を提示することに合理性がある。更に、評価通達に定められたXマンションの価額は7206万円余となるところ、前記認定判断した各事情によれば、本件贈与時頃においては、既に述べたような本件マンションの建替えが実現する蓋然性が相当程度に高まっていたというべき当時の状況の下で、評価通達に定められた評価方式による評価額が本件各贈与時におけるXマンションの時価を上回っていると直ちに認めることはできないというべきである。
 以上によれば、本件鑑定額が本件贈与時におけるXマンションの時価であると認めることには疑問があり、評価通達に定められた評価方式によるXマンションの評価額が本件各贈与時におけるXマンションの時価を上回っているとは認められないから、Xマンションについて評価通達に定められた評価方式によっては適正な時価を適切に算定することのできない特段の事情があるということはできない。

四、控訴審判決要旨

控訴棄却。
(1)当裁判所も、Xの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正・付加するほかは、原判決の理由のとおりであるから、これを引用する。
(2)相続税法22条は、贈与等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 ところで、相続税法は、財産が多種多様であり、時価の評価が必ずしも容易なことではなく、評価に関与する者次第で個人差があり得るため、納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これにより財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨であると解するのが相当である。そして、同法26条の2は、各国税局に土地評価審議会を置き、同審議会が土地の評価に関する事項で国税局長から意見を求められたものについて調査審議し、当該意見を踏まえて土地評価をすることによって土地評価の一層の適正化を図るものである。同条も、多種多様であり時価の評価が必ずしも容易なことではない土地評価につき、その意見を土地評価審議会に委ねるものであり、同法の上記趣旨に沿う規定であると解される。
 同法の上記趣旨に鑑みれば、評価対象の不動産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該不動産の贈与税の課税価格がその評価方法に従って決定された場合には、上記課税価格は、その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、贈与時における当該不動産の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認するのが相当である。
(3)以上によれば、本件贈与時には本件マンションの建替えが実現する蓋然性が高かったというべきであるから、本件贈与時において本件マンションの建替えの実現性に不透明な部分があったということはできず、評価通達が定める評価方法によっては適正な時価を適切に算定することができない特別の事情が存在したということはできない。したがって、上記建替えを前提として評価通達が定める評価方法に従ってXマンションを評価して決定された課税価格は、贈与時におけるXマンションの客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものではないと推認される。そうすると、本件贈与時において本件マンションの建替えの実現性に不透明な部分があるとして上記建替え前の客観的な交換価値を算定する本件鑑定額は、その前提を欠くというべきであるから、本件鑑定額に基づくXの主張は、Xマンションにつき評価通達による評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情をいうに足りないことは明らかである。
(4)したがって、本件贈与時には本件マンションの建替えが実現する蓋然性が高かったと認められることからすると、Xの主張は、その前提を欠くものであるから、Xマンションについて評価通達による評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情があると認めることはできず、評価通達の定める評価方法によるXマンションの評価額が本件贈与時におけるXマンションの客観的な交換価値としての適正な時価を上回らないとの推認を覆すに足りない。
 以上によれば、評価通達の定める評価方法によるXマンションの評価額は、本件贈与時におけるXマンションの客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものとは認められない。

五、解説

はじめに
 本件は、築約50年の4階建マンション(本件マンション)が管理組合によって建替えが検討されている最中において、その1室(Xマンション)が贈与された場合の相続税法上の「時価」が幾許であるかが争われた事件である(他に、同様に1室づつ2名に対しても贈与が行われ、同様な処分が行われているが、本稿では、Xに対する本件更正の適正法についてのみ論じることとする。)。本件では、Xが、不動産鑑定会社による鑑定評価額(本件鑑定額)によって当該「時価」を評価して贈与税の申告を行ったことに対し、処分行政庁が評価通達に基づいて当該「時価」を評価して本件更正を行っている。
 かくして、本訴においては、相続税法上の「時価」の解釈について評価通達を適用することの合理性、マンションについての評価通達に定める評価方法の合理性、当該マンションが建替え検討中という特別の事情があった場合の評価のあり方等が争われることとなった。

1 相続税法上の「時価」と評価通達適用の合理性 (1)相続税法22条は、評価の原則として、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価によ」ると定めている。よって、この「時価」の解釈(認定)が問題とされるところ、評価通達は、「時価とは、課税時期(〈略〉)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」(評基通1(2))をいうと定められている。
 この「不特定多数の……通常成立すると認められる価額」は、一般に、客観的交換価値又は客観的交換価額を意味するものとして、学説、判例において広く支持されている(注1)。また、所得税法及び法人税法においては、相続税法上の「時価」に相当するものとして、「価額」(所法36②、法法37⑧等)という用語を使用されているが、その場合の「価額」の解釈(認定)についても、相続税法同様に客観的交換価値を意味するものと解されている(注2)。
 そして、評価通達は、「時価」の意義を客観的交換価値を意味するものであることを明らかにすることのみでは、通達の機能である行政庁部内の職務命令として「時価」解釈(認定)を統一することは困難であるし、ひいては、税務行政の主目的である課税の公平も実現し難いことになる。そこで、評価通達は、前記規定に続けて、「その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。」(評基通1(2))と定め、同通達2項以下に各財産について具体的な評価方法を定めている。
(2)ところで、評価通達のように、相続税法上の用語の解釈等を通達で明確にすることは、他の国税についても共通しているところであり、所得税法については、所得税基本通達があり、法人税法については、法人税基本通達があり、相続税法についても、「時価」以外の解釈等については、相続税法基本通達が存するところである。よって、これら国税庁が発出する税務通達の法的性格が問題とされることがある(注3)。
 この点につき、国家行政組織法14条2項は、「各大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」と定めている。すなわち、国税に関する税務通達は、国税庁の所掌事務(主として、国税に関する税法の執行事務)について、命令又は示達するために、国税庁長官から国税局長等に対して発せられるものある。よって、これらの税務通達は、租税法律主義における法源でないことは明らかである(注4)から、直接法的に納税者を拘束するものではない。
 しかしながら、本件の控訴審判決も判示するように、各財産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該財産の相続税又は贈与税の課税価格がその評価方法に従って決定されている場合には、特別の事情の存しない限り、当該財産の客観的交換価値を表わすものと解されている(注5)。すなわち、その結果が、本件において本件更正が適法であると判断されたように、納税者をも法的に拘束することになる。

2 マンションの価額の評価方法 (1)評価通達は、「マンション」という特定の財産について、具体的な評価方法を定めているわけではない。よって、マンションという財産形態に応じた評価方法を適用して、評価通達上の評価額を算定する必要がある。すなわち、マンションは、通常、共有する宅地の上に建てられた共同住宅に、各室の所有者が区分所有権を有している形態で存在する。よって、マンションの1室の価額は、当該宅地及び当該建物の評価額と当該宅地と当該建物を共有又は区分所有している場合の評価方法により評価される。
 まず、宅地については、評価通達は、市街地的形態を形成する地域にある宅地について、路線価方式により、それ以外の宅地について倍率方式により、それぞれ評価される(評基通11)。本件マンションの敷地については、渋谷区という都心部に所在するので、当然、路線価方式による。そして、路線価は、公示価格水準の8割で評価され、それぞれの宅地の形状に応じて、画地補正が行われる(評基通13以下参照)。また、建物すなわち家屋については、原則として、1棟の家屋ごとに評価し(評基通88)、家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する(評基通89)。そして、別表1は、家屋に係る倍率を1.0と定めている。
 次に、評価通達は、共有財産につき、「共有財産の持分の価額は、その財産の価額をその共有者の持分に応じてあん分した価額によって評価する。」(評基通2)と定めている。また、区分所有財産について、「区分所有に係る財産の各部分の価額は、この通達の定めによって評価したその財産の価額を基とし、各部分の使用収益等の状況を勘案して計算した各部分に対応する価額によって評価する。」(評基通3)と定めている。
(2)このようなマンションの価額についての評価方法による評価額が、前記1で述べたように、客観的交換価値(時価)を表わすことになるか否かが問題となる。この場合、少なくとも、次の2点について指摘できる。
 一つは、本件マンションが4階建で5棟から構成されているが、マンションは、数棟又は数10棟から構成される場合が多い。その場合には、当該マンションの敷地は、広大な面積を有することになり、本件マンションのような低層マンションになると、尚更のことである。このような広大地については、評価通達は、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条(定義)第12項に規定する開発行為(〈略〉)を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(〈略〉)の価額」については、一般の宅地の価額に広大地補正率(最低35%)を乗じて計算した価額によって評価する旨定めている(評基通24-4)。すなわち、このような広大地の価額は、一般の宅地の価額について65%の評価減が行われるのであるが(注6)、マンションの敷地については、このような評価減は行われないことになっている(評基通24-4かっこ書)。
 このような広大地の大幅な評価減は、都市計画法上の開発行為において公共公益施設用地に割かれることを考慮してのことであろうが、マンション敷地についても、それが広大であれば、敷地内に道路、公園等の公益的施設用地が必要であること(既存のものであれば、既に存在していること)と比較すると、それらの評価上のバランスがとられていないように考えられる。
 次に、評価通達は、前述のように、共有地については、単に、共有者の持分按分によってその価額を評価することにしている。しかし、共有地については、他の共有者との合意がないと、その処分(譲渡等)に制約を伴うことになる。この点、貸宅地については、借主に借地権がない場合にも、その処分に制約があるということで、自用地の価額から20%の評価減が行われる(評基通25(1))が、それらとの評価上のバランスが取られていないように考えられる。なお、家屋の評価についても、本件のような建物部分は無価値(又は取りこわしのためのマイナス評価の必要性)であるにもかかわらず、再取得価額の20%評価が行われている。このような評価上のアンバランスは、低層マンションのように当該マンションの敷地の共有部分が多い場合に一層増大する(注7)。

3 「特別の事情」の有無(総則6項の適用) (1)前記1で述べたように、評価通達は、「時価」の意義を客観的交換価値であることを標榜しながら、各財産の価額(時価)を同通達によって統一的に定めることとしている。そして、本件で問題となっているマンションについては、前記2で述べた評価方法によってその価額を評価しているところである。このような評価方法に合理性があり、かつ、それに基づく評価額が時価である客観的交換価値を表わすものとして適正なものであれば、本件の各判決や既に紹介した各判決が判示するように、当該評価額に基づく課税処分も適法なものとなる。
 ところで、前記2で述べたように、マンション敷地の価額は路線価方式によって評価されるが、同方式は、評価対象の宅地につき、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、奥行価格補正等(評基通15~20-5)の画地調整により計算した金額によって、その価額を評価する。そして、路線価は、宅地の価額が概ね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定し、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長によって定められる(評基通14)。
 この路線価方式は、いわゆる評価基準制度の代表的なものであるが、それによって算定される評価額は、路線価が標準宅地を想定して定められていること、評価日がその年の1月1日とされていること等からみて、課税時期における当該宅地の厳格な意味での「時価」というよりも標準的価値を意味することになる(注8)。そして、このような評価基準制度に基づく評価額は、公示価格水準の8割で評価されるなど、当該宅地に係る客観的交換価値を上回らないように安全性(謙抑性)に配慮されている。また、前記2で述べたように、現在のマンションについての評価方法については、評価上の不合理な点も見受けられる。
(2)かくして、評価基準制度に基づく宅地の評価額は、課税時期ごとに各財産の個別事情に応じて評価されているわけではないので、当該宅地の客観的交換価値から乖離することがあり得る。このことは、本件で問題になっている家屋や実務上多くの問題が惹起されている取引相場のない株式等の他の財産についても生じることになる。
 そこで、評価通達6項(以下「総則6項」という。)は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」と定めている。これは、評価通達に基づく評価基準制度等による各財産の評価額が著しく不適当と認められるときには、当該財産の客観的交換価値に近づけるために個別評価を行う趣旨すなわち評価基準制度等の補完措置であると解され、評価通達上の包括的限定条項でもある(注9)。そして、裁判例の上では、このような総則6項が適用されるような事情があることを「特別の事情」と称されることが多い。
 このような「特別の事情」を判決において最初に明確にしたのが、東京高裁昭和56年1月28日判決(税資116号51頁)(注10)である。この事案では、市街化区域内農地のうちの売買について、売買代金4539万円のうち、手付金及び内金合計1600万円が入金し、残代金は所有権移転登記日に完済されるという条件の下、当該移転登記日直前(5日前)に売主側に相続が発生したところ、売主の相続人が農地として評価通達上の評価額2018万円で評価して申告したのに対し、所轄税務署長が、当該農地は売却されたものとし売買代金4539万円で課税処分をしたものである。一審の東京地裁判決(税資102号551頁)が、農地であると認定して当該課税処分を取り消したのに対し、前掲東京高裁判決は、その財産を農地と認定しながらも、「右基準(編注=評価通達上の評価方法)によらないことが正当として是認されるような特別な事情がある場合は別として、原則として、右通達による基準に基づいて土地の評価を行うことが相続税の課税の公平を期する所以であると考えられる」と判示し、当該事案について「特別の事情」を認めて売買価額で評価して原判決を取り消した。その後、多くの判決が、このような「特別の事情」がある場合には、評価通達に基づく評価額によらない課税処分(総則6項)の適法性を認めている(注11)。もちろん、このような総則6項の適用については、納税者にとって有利になる場合もあるし、不利になる場合もあるが、本件においては、Xは、自己にとって有利になるように、「特別の事情」の存在を主張していたところである。

4 本件における評価通達適用の可否と「特別の事情」の有無 (1)本件においては、本件組合総会において、本件マンションの建替えにつき、平成18年2月に建替え推進が決議され、平成19年4月に建替計画に係る建物基本計画案が承認され、同10月に一括建替決議が行われ、同建替えの事業協力を行っていた建設会社との間で建替えに必要な許認可の取得、設計に加え、各区分所有者との等価交換契約の締結等の事業協力を行う旨合意され、平成20年10月に当該建設会社が等価交換契約の締結に着手することを承認する旨決議した。次いで、当該建設会社は、平成21年2月26日までに、本件マンションの全ての区分所有者との間で等価交換契約の締結を完了した。
 上記事実関係の下で、Xは、平成19年7月21日に本件贈与を受け、不動産鑑定会社に依頼してXマンションの「時価」を2300万円とする本件鑑定額を得てそれに基づき、本件申告をしたところ、所轄税務署長から、Xマンションの価額を評価通達に基づき算定した7206万円余とする本件更正を受けた。かくして、本訴においては、本件更正の適否が争われたが、具体的には、Xマンションの価額を不動産鑑定士の鑑定評価額によるべきか、評価通達に基づいて評価すべきか、そして、評価通達に基づいて評価すべき場合において「特別の事情」を認めて別途個別に評価すべきかが争われた。
 かくして、一審判決は、前述したように、評価通達に定められた評価方式が贈与等により取得した財産の時価を算定するための手法として合理的なものと認められる場合には、相続税法22条の許容するところであり、評価通達に定められた宅地及び家屋についての評価方式には一般的な合理性に疑いを差し挟む余地は特段見当たらないとし、ただし、評価通達が定めた評価方式によって評価することのできない「特段の事情」があれば除かれる旨判示している。そして、一審判決は、本件の事実関係を詳細に検討した上で、本件において「特段の事情」は認められない旨判示している。
 そして控訴審判決も、評価通達に基づく課税実務が適正であることを認め、「不動産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有する」と断定し、本件における「特別の事情」の存在を否定して、Xの請求を棄却している。
(2)以上のような本件各判決の一般論としての考え方は、前記1及び3で述べた従前の裁判例の延長線上にあるものと評価でき、それ程変った判断がされているわけではない。また、本件マンションについては、建替え直前の贈与であったため、本件贈与後間もなくして各室の等価交換価格も明らかにされ、当該等価交換価格等も評価通達に基づく評価額を上回っていたため、本件の各判決とも、本件における「特別の事情」の存在(総則6項の適用)を否定している。
 しかしながら、前記2で述べたように、マンション敷地については、他の広大地の評価方法に比し不利に取り扱われており、かつ、共有地であるが故に処分性(換価性)に問題があるにもかかわらず、その評価上の斟酌が全く行われていない。更に、本件のような建替え直前の建物については、その客観的交換価値はその取り壊し費用(木造の1戸建てであっても数百万円要する。)分がマイナス評価されるべきであろうが、本件では、固定資産税評価額が形式的に適用されているが故に、Xマンションも76万円というプラス評価が行われている。
 ところが、本件においては、本件マンションが渋谷区という知名度の高い地域に所在し地価が上昇していること、しかも低層マンションであるが故に当該敷地の共有部分が広いこと、そして何よりも課税時期(本件贈与時)直後に建替えが実施されXマンションの処分価額が明確にされ、それが評価通達上の評価額を上回っていること等の事実があり、それらの事実が、前述したマンションの評価方法の矛盾点を覆い隠していると言える。それでも、Xマンションの評価通達上の評価額は、その処分価額の約80%で評価されているところ、都市の住宅地の宅地の評価額が概ね60~70%(取引価額の80~90%が公示価格であり、その80%で評価されていること)で評価されていることに比し、やはり割高な感じは否めない。
 以上のことを考えると、評価通達におけるマンションの評価方法の合理性が、本件各判決によって一般論として支持されたとも言い難い問題を残している。

5 本件各判決の意義と問題点  以上のように、本件においては、一括建替え間際の4階建てマンション(全5棟)の1室が贈与された場合の当該1室(Xマンション)の「時価」(客観的交換価値)が幾許であるかが争われた事件である。本訴において、原告Xは、不動産鑑定士の鑑定評価による鑑定評価額(本件鑑定額)がXマンションの「時価」である旨主張したのであるが、本件各判決は、前述のように、一般には、評価通達上の評価方法(評価額)に合理性があるとし、その例外として個別評価を要するような「特別の事情」は本件において認められない旨判示し、Xの上記主張を斥けている。
 いずれにしても、本件のような中古マンションの相続税法上の「時価」が幾許であるかが判断された事例は比較的少ないだけに、一事例としては、本件各判決は、相応に意義がある。しかしながら、前記2で述べたように、評価通達におけるマンションの評価方法に幾つかの難点があるところ、それらの難点が本件各判決によって解決されたとも考えられない。本件においては、たまたま本件マンションについての一括建替えが進捗しており、各室について新築マンションとの等価交換が顕在化しつつある段階での贈与であったが故に、マンション評価についての問題点が覆い隠されたものとも言える。よって、今後とも、評価通達における中古マンションの評価方法のあり方が検討されるべきである。
(注1)金子宏「租税法 第21版」(弘文堂 平成28年)629頁、東京地裁昭和53年4月17日判決(税資101号115頁)、東京高裁平成7年12月13日判決(行裁例集46巻12号1143頁)等参照。
(注2)所得税に関する裁判例として、名古屋高裁昭和50年11月7日判決(税資83号502頁)、神戸地裁昭和54年5月29日判決(同105号461頁)、東京地裁平成2年2月27日判決(同175号802頁)、東京高裁平成3年2月5日判決(同182号286頁)、東京地裁平成11年11月30日判決(税資245号576頁)等を、法人税に関する裁判例として、大阪地裁昭和53年5月11日判決(行裁例集29巻5号943頁)、東京高裁昭和59年11月14日判決(税資140号232頁)、東京高裁平成6年2月26日判決(税資200号875頁)等をそれぞれ参照。
(注3)税務通達の法的性格等については、品川芳宣「租税法律主義と税務通達」(ぎょうせい 平成15年)34頁以下参照。
(注4)前出(注3)29頁等参照。
(注5)横浜地裁平成18年2月22日判決(税資256号順号10321)、最高裁平成22年7月16日第二小法廷判決(判例時報2097号28頁)、東京地裁平成19年1月31日判決(税資257号順号10622)等参照。
(注6)もっとも、このような広大地の評価減は、当該広大地の価額の評価上その合理性について問題があるということで、与党の「平成29年度税制改正大綱」では、当該評価方法が見直すこととし、新たな評価方法を平成30年1月1日以降の相続等に適用することとしている。
(注7)マンションの評価の不合理性については、品川芳宣・緑川正博「相続税財産評価の論点」(ぎょうせい 平成9年)107頁等参照。
(注8)前出(注3)121頁等参照。
(注9)前出(注3)124頁等参照。
(注10)詳細については、品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第3版」(大蔵財務協会 平成26年)806頁参照。
(注11)東京地裁平成9年9月30日判決(税資228号829頁)、東京高裁平成11年8月30日判決(同244号400頁)、東京地裁平成4年3月11日判決(判例時報1416号73頁)、東京高裁平成5年1月26日判決(税資194号75頁)、大津地裁平成9年6月23日判決(税資223号1046頁)、大阪高裁平成12年7月13日判決(同248号319頁)、最高裁平成14年10月29日第三小法廷判決(同252号順号9225)等参照。

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