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解説記事2017年04月24日 【実務解説】 有価証券報告書作成上の留意点(平成29年3月期提出用)(2017年4月24日号・№688)

実務解説
有価証券報告書作成上の留意点(平成29年3月期提出用)
 公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室 高野裕郎

Ⅰ はじめに

 財務会計基準機構では、FASFセミナー「有価証券報告書作成上の留意点」を4月1日から14日にかけて全国9か所11回にわたり開催した。本稿は、同セミナーで説明した内容を基に、平成29年3月期の有価証券報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、「経営方針」等の記載に関する留意点や、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)から公表された企業会計基準等のうち、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」等に関する留意点を中心に解説する。
 なお、文中意見にわたる部分は私見であることをあらかじめお断りしておく。

Ⅱ 「経営方針」等の記載に関する留意点

1 概 要
 平成28年4月18日に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告において、企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から、より効果的かつ効率的で適時な開示が可能となるよう、決算短信、事業報告等、有価証券報告書の開示内容の整理・共通化・合理化に向けた提言がなされた。
 同報告において、従来、決算短信の記載内容とされていた「経営方針」の記載について、決算短信ではなく有価証券報告書において開示すべきとされたことを踏まえて、平成29年2月14日に企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という)が改正され、有価証券報告書の記載内容に「経営方針」等の項目が追加されている。
 なお、本改正は、平成29年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書について適用するとされ、平成29年3月期の有価証券報告書から適用となる。

2 「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載に係る留意点  開示府令第三号様式記載上の注意(12)において準じることとされている第二号様式記載上の注意(32)(以下「記載上の注意(32)」という)において、従来、事業上及び財務上の対処すべき課題について、その内容、対処方針等を具体的に記載すること等が求められていたが、本改正により、「経営方針」等についても記載が求められることとなった。改正後の規定を抜粋したものを表1に示している。

【表1】
(第三号様式記載上の注意) (12) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
   第二号様式記載上の注意(32)に準じて記載すること。

(第二号様式記載上の注意) (32) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
 a 最近日現在において連結会社(連結財務諸表を作成していない場合には提出会社。以下(32)において同じ。)が経営方針・経営戦略等を定めている場合には、当該経営方針・経営戦略等の内容を記載すること。また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載すること。
 b 最近日現在における連結会社の経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題について、その内容、対処方針等を具体的に記載すること。
   なお、基本方針を定めている会社については、会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)第118条第3号に掲げる事項を記載すること。
 c 将来に関する事項を記載する場合には、当該事項は届出書提出日現在において判断したものである旨を記載すること。
(注)第三号様式において、第二号様式の記載上の注意に準じて当該規定に係る記載をする場合には、第二号様式記載上の注意中「最近日」及び「届出書提出日」とあるのは、「当連結会計年度末(連結財務諸表を作成していない場合には当事業年度末)」に読み替えるものとされる(下線は筆者による)。

 記載上の注意(32)aにおいては、「経営方針・経営戦略等」を定めている場合又は「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」がある場合、その内容を記載することが新たに求められている。
 「経営方針・経営戦略等」については、「経営方針」「経営戦略」という名称のものでなくとも、中長期的な会社の経営方針・経営戦略に相当するものとして、例えば、経営理念やビジネスモデル、経営計画等を記載することが考えられる。
 また、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」の内容を記載する場合、目標の達成度合を測定する指標、当該指標の算出方法、経営者が経営方針・経営戦略等の達成状況を判断するためになぜその指標を利用するのかについての説明等を記載することが考えられる。
 なお、「経営方針・経営戦略等」や、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」については、必ずしも、定めた事項や指標の全てを記載することが求められている訳ではなく、投資者にとって有用となるものを各企業で判断して記載する必要があると考えられる。
 記載上の注意(32)bにおいては、「経営環境」の内容、対処方針等についての記載が新たに求められることとなった。「経営環境」については、例えば、企業の経営方針や対処すべき課題を決定した背景となる、自社をめぐる業界や市場の動向、経済の状況等を記載することが考えられる。
 記載上の注意(32)cにおいては、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において将来に関する事項を記載する場合には、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものである旨を記載することとされた。なお、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」について、当連結会計年度末から有価証券報告書の提出日までの間に変更された場合には、変更された旨及び変更後の内容を記載することが考えられる。
 このように、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」については、従来の「対処すべき課題」等の記載に加えて、「経営方針・経営戦略等」、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」及び「経営環境」等の複数の項目の記載が求められることとなったが、その記載方法については、それぞれの項目ごとに記載する方法の他、投資者の理解がしやすいように、各項目を一体的に記載する方法も考えられる。
 なお、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載に当たっては、企業と投資者との建設的な対話に資するとの観点から、投資者の投資判断に必要な情報や対話に資する情報を、各企業がそれぞれの経営内容に即して記載することが期待されている点に留意していただきたい。

3 「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の記載に係る留意点  「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(以下「MD&A」という)の記載にあたっては、財務会計基準機構発行「有価証券報告書の作成要領(平成28年3月期提出用)」において、投資家は経営者の視点による経営戦略、財務業績等について経営者自らの言葉による説明を求めているものと考えられる旨を留意点として示していた。今回の開示府令の改正を踏まえて、「経営方針・経営戦略等」に相当する内容については、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において記載することが適当と考えられることから、当該箇所から「経営戦略」を削っている。
 したがって、「経営方針・経営戦略等」に相当する内容をMD&Aにおいて記載している場合は、この箇所についても併せて表現を見直すことが考えられる。
 また、MD&Aの記載に際しては、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の他に、「業績等の概要」、「事業等のリスク」における記載内容との関連性については、その整合性及び記載の方法等について工夫を要するものと思われるので、記載に当たっては留意していただきたい。

Ⅲ 企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に関する留意点

1 概 要
 企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という)は、平成27年12月28日にASBJから公表され、平成28年3月28日に改正されている。
 回収可能性適用指針は、日本公認会計士協会が公表している税効果会計に関する実務指針等のうち、主に監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」及び監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」等における繰延税金資産の回収可能性に関する定めについて、基本的にその内容を引き継いだ上で、見直しを行ったものである。
 回収可能性適用指針は、平成28年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するとされており、平成29年3月期においては原則適用となる。

2 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更(記載事例1)
記載事例1
(会計方針の変更)  「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 平成28年3月28日。以下「回収可能性適用指針」という。)を当連結会計年度から適用し、繰延税金資産の回収可能性に関する会計処理の方法の一部を見直している。
 回収可能性適用指針の適用については、回収可能性適用指針第49項(4)に定める経過的な取扱いに従っており、当連結会計年度の期首時点において回収可能性適用指針第49項(3)①から③に該当する定めを適用した場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の額と、前連結会計年度末の繰延税金資産及び繰延税金負債の額との差額を、当連結会計年度の期首の利益剰余金及びその他の包括利益累計額に加算している。
 この結果、当連結会計年度の期首において、繰延税金資産(投資その他の資産)がXXX百万円、利益剰余金がXXX百万円増加し、○○○○がXXX百万円増加している。
 当連結会計年度の期首の純資産に影響額が反映されたことにより、連結株主資本等変動計算書の利益剰余金の期首残高はXXX百万円増加し、○○○○はXXX百万円増加している。

 回収可能性適用指針は、適用初年度の取扱いに関して、適用初年度の期首において第49項(3)①から③に該当する定めを適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされている。
 したがって、記載事例1は、回収可能性適用指針を適用し、適用初年度の期首において第49項(3)①から③に該当する定めを適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合の記載事例であり、第1段落に適用指針の名称と会計方針の変更の内容、第2段落に経過措置について、第3段落に会計方針の変更による影響額を記載している。
 なお、第3段落の影響額の記載における「○○○○」の箇所は、その他の包括利益累計額に属する項目、例えば「その他有価証券評価差額金」を記載することを想定している。
 また、記載事例においては連結損益計算書に係る項目及び1株当たり情報に対する影響額については記載していない。これは、回収可能性適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更による影響額の注記について、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の定めにかかわらず、適用初年度の期首の繰延税金資産及び繰延税金負債に対する影響額、利益剰余金に対する影響額及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に対する影響額を注記するとされているためである。

3 追加情報(記載事例2)
記載事例2
(追加情報)  「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 平成28年3月28日)を当連結会計年度から適用している。

 回収可能性適用指針を適用し、回収可能性適用指針第49項(3)①から③に該当する定めを適用することにより、これまでの会計処理と異なることとなる場合は会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととなるが、それ以外のケースについては、記載事例2のように、回収可能性適用指針を適用している旨を追加情報の注記として記載することが考えられる。

Ⅳ 実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」に関する留意点

1 概 要
 平成28年度税制改正において、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の法人税法上の減価償却方法について定率法が廃止され、定額法のみとなる見直しが行われた。
 当該税制改正に合わせ、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定額法に変更する場合の当該減価償却方法の変更が正当な理由に基づく会計方針の変更に該当するか否かに関して質問が寄せられたことから、ASBJでは、必要と考えられる取扱いについて審議を行い、平成28年6月17日に実務対応報告第32号「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」を公表した。
 なお、本実務対応報告は、公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用するとされており、3月末を決算日とする会社においては、当期のみに適用することができることとなる。

2 会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関する注記(記載事例3)
記載事例3
(会計方針の変更)  法人税法の改正に伴い、「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第32号 平成28年6月17日)を当連結会計年度に適用し、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備及び構築物に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している。
 この結果、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれXXX百万円増加している。

 本実務対応報告においては、従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を減価償却費として処理している企業において、建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法について定率法を採用している場合、平成28年4月1日以後に取得する当該すべての資産に係る減価償却方法を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じたものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされている。
 また、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の定めにかかわらず、次の(1)及び(2)を注記することが求められている。
(1)会計方針の変更の内容として、法人税法の改正に伴い、本実務対応報告を適用し、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更している旨
(2)会計方針の変更による当期への影響額
 記載事例3は、本実務対応報告を適用した場合の会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関する注記の記載事例である。本記載事例の第1段落では上記(1)に相当する内容を記載し、第2段落では上記(2)に相当する内容を記載している。ただし、会計方針の変更による当期の1株当たり情報に与える影響額については記載していない。
 これは、会計方針の変更による当期への影響額は、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合の注記と同様の内容を求めることを意図しているため、1株当たり情報に与える影響は記載を要しないと考えられるためである。
 また、当該注記事項は、建物附属設備又は構築物を本実務対応報告の適用初年度に取得したかどうかにかかわらず、平成28年度税制改正に合わせて減価償却方法を定額法に変更する場合について、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことを意図しているとされているため、本実務対応報告の適用にあたっては、建物附属設備又は構築物を取得していない場合も当該注記を記載することとなる点に留意する必要がある。

3 会計方針に関する事項  会計方針に関する事項における「重要な減価償却資産の減価償却の方法」の注記として、建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法を記載しているケースがみられる。
 このケースにおいては、平成28年度税制改正に併せて建物附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法を定率法から定額法に変更した場合、会計方針に関する事項についても併せて表現を見直すこととなるので、該当する場合は留意していただきたい。

Ⅴ リスク分担型企業年金に関する留意点

1 概 要
 平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」において、「企業が企業年金を実施しやすい環境を整備するため、確定給付企業年金制度について、運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合うことができるようなハイブリッド型の企業年金制度の導入を検討」することとされたことを受けて、厚生労働省は、運用リスクを事業主と加入者で柔軟に分け合う確定給付企業年金の仕組みとして、「リスク分担型企業年金」を平成29年1月から導入している。
 ASBJでは、リスク分担型企業年金について、これまで公表されている企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という)等における会計処理や開示の取扱いを踏まえ、必要と考えられる会計処理及び開示を明らかにするために、平成28年12月16日に実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」が公表された。
 本実務対応報告においては、リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類するとされている。
 また、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額(移行時に未払金等として計上した特別掛金相当額を除く。)を、各期において費用として処理するとされている。
 この他、退職給付制度間の移行に関する取扱い及び確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に関する注記に関する定めがおかれている。
 本実務対応報告は、平成29年1月1日以後適用するとされている。
 また、本実務対応報告の公表を受け、平成28年12月27日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」が公布、平成29年1月1日から施行され、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「財規」という)及び「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財規」という)が改正された。また、「『財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則』の取扱いに関する留意事項について」(以下「財規ガイドライン」という)等においてリスク分担型企業年金に関する注記が新設されている。
 本稿においては、確定給付制度の一部を、確定拠出制度に該当するリスク分担型企業年金に移行した場合の開示について解説を行うが、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金を新たに採用した場合も参考としていただきたい。

2 退職給付に関する注記(記載事例4)
記載事例4
1.採用している退職給付制度の概要
 当社及び連結子会社は、従業員の退職給付に充てるため、積立型、非積立型の確定給付制度及び確定拠出制度を採用している。これらに加えて、平成29年X月に、確定給付制度の一部を、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号 平成28年12月16日)第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へと移行している。
 リスク分担型企業年金は、標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められており、毎連結会計年度におけるリスク分担型企業年金の財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られることとなる。

(略)

2.確定給付制度
(略)

(4)退職給付費用及びその内訳項目の金額


(略)

3.確定拠出制度
(1)確定拠出制度に係る退職給付費用の額
 当社及び連結子会社の確定拠出制度への要拠出額は、前連結会計年度XX,XXX百万円、当連結会計年度XX,XXX百万円であった。

(2)リスク対応掛金相当額に係る事項
 翌連結会計年度以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額はXXX百万円であり、当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数はXX年である。

 今回の改正により、リスク分担型企業年金が確定拠出制度に分類される場合、連結財規第15条の8の2が準用する財規第8条の13の2(確定拠出制度に基づく退職給付に関する注記)に従って、確定拠出制度の概要、確定拠出制度に係る退職給付費用の額、その他の事項を注記することとなる。
 記載事例4は、当連結会計年度において、確定給付制度の一部を、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へと移行した場合の記載事例である。
 記載事例中「1.採用している退職給付制度の概要」では、第1段落に、確定給付制度の一部を、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へと移行している旨を記載している。
 続いて第2段落では、リスク分担型企業年金に関する説明を記載している。これは、財規ガイドライン8の13の2・1なお書きにおいて、確定拠出制度の概要に、リスク分担型企業年金に関する説明(例えば、標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められること、毎事業年度におけるリスク分担型企業年金の財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること)が含まれるものとされたことから、記載事例においても当該内容を示したものである。
 また、財規ガイドライン8の13の2・2において、会社等がリスク分担型企業年金を採用している場合には、確定拠出制度に係る退職給付費用の額に当該年金に係る退職給付費用の額が含まれるものとするとされている。したがって、記載事例中「3.確定拠出制度」の「(1)確定拠出制度に係る退職給付費用の額」については、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額と、その他の確定拠出制度に係る退職給付費用の額を合算した金額を記載することを想定している。
 「(2)リスク対応掛金相当額に係る事項」は、財規ガイドライン8の13の2・3において、その他の事項には、会社等がリスク分担型企業年金を採用する場合における当該事業年度の翌事業年度以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数を記載するものとされたことに基づいたものである。
 なお、確定給付制度から、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へと移行する場合、確定給付制度に関する退職給付債務及び年金資産の期首残高と期末残高の調整表においては、「リスク分担型企業年金への移行に伴う影響額」等の名称により項目を別掲することが考えられる。
 また、リスク分担型企業年金への移行による特別損益が発生した場合、当該特別損益を計上している旨を記載することが考えられる。記載方法としては、記載事例中「(4)退職給付費用及びその内訳項目の金額」の表の欄外に注を付すことが考えられる。

3 追加情報(記載事例5)
記載事例5
(追加情報)  当社及び一部の国内連結子会社は、平成29年X月に、確定給付制度の一部を「退職給付に関する会計基準」第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行しており、「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第33号 平成28年12月16日)を適用している。
 これに伴う影響額等については、「注記事項(退職給付関係)」に記載している。

 記載事例5は、当連結会計年度において、確定給付制度の一部を退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行した場合の追加情報の記載事例である。

Ⅵ 平成29年3月に公表された会計基準等に関する留意点

1 企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」
 平成29年3月16日に企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という)がASBJより公表された。
 法人税等会計基準は、監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(以下「監査保証実務指針第63号」という)及び日本公認会計士協会会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」における税金の会計処理及び開示に関する部分のほか、実務対応報告第12号「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」に定められていた事業税(付加価値割及び資本割)の開示について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行ったもので、次の事項を主な適用範囲としている。
(1)我が国の法令に従い納付する税金のうち法人税、地方法人税、住民税及び事業税に関する会計処理及び開示
(2)我が国の法令に従い納付する税金のうち受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税に関する開示
(3)外国の法令に従い納付する税金のうち外国法人税に関する開示
 なお、法人税等会計基準は、監査保証実務指針第63号等における税金の会計処理及び開示に関する部分について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行ったもので、実質的な内容の変更は意図していないため、公表日以後適用するとされている。
 また、同様の理由により、法人税等会計基準の適用については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しないものとして取り扱うとされている。

2 改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等  平成29年3月29日に改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等がASBJより公表された。
 本実務対応報告等では、国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準に準拠した財務諸表を作成している在外子会社に加えて、指定国際会計基準又は修正国際基準(JMIS)に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社等についても、本実務対応報告等の対象範囲に含めることとしている。
 本実務対応報告等は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するとされている。ただし、本実務対応報告等の公表日以後適用することができるとされたことから、平成29年3月期においても早期適用することが可能である。
 なお、本実務対応報告等の適用初年度の前から国内子会社等が指定国際会計基準又はJMISに準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、当該適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」又は「持分法適用関連会社の会計処理の統一」の当面の取扱いを適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされているので、該当する企業においては留意していただきたい。

3 実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」  平成29年3月29日に実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」がASBJより公表された。
 本実務対応報告においては、退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法によることとされている。
 本実務対応報告は、平成29年3月31日に終了する事業年度から平成30年3月30日に終了する事業年度まで適用するとされている。
 なお、本実務対応報告では、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれの方法を採用しているかについての開示は、特段、定められていない。

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