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解説記事2017年05月15日 【ニュース特集】 裁決事例から学ぶ相続税評価、改修工事中の共同住宅のケースは?(2017年5月15日号・№690)

ニュース特集
固定資産税評価額が改修を反映していない場合の評価方法
裁決事例から学ぶ相続税評価、改修工事中の共同住宅のケースは?

 被相続人が所有する貸家(共同住宅など)の改修工事中に相続が発生した場合、改修工事により価値が増加した部分を含む貸家全体の相続税評価が問題となる。この点に関し国税不服審判所は、平成28年12月7日裁決(東裁(諸)平28第69号)のなかで、改修工事により共同住宅の価値が増加したものの、その増加が固定資産税評価額に反映されていない場合について、改修工事未着手部分、改修工事完了部分(一部完了含む)、改修工事中の部分に分けて貸家(共同住宅)の相続税評価額を算定するとの判断を示している。相続税対策の1つとして、アパートやマンションといった貸家の建設がクローズアップされるなか、本特集では改修工事中の貸家の相続税評価に関する国税不服審判所の判断内容などをお伝えする。

改修工事中の居室、再建築価額に工事進捗率を乗じた金額の70%で評価
 相続開始時点で共同住宅などの貸家の用に供されている家屋は、その家屋の固定資産税評価額から、固定資産税評価額に借家権割合(30%)と賃貸割合を乗じた価額を控除して評価する(評価通達89、93等)。今回の裁決事例で問題となったのは、相続開始時点で改修工事中であった共同住宅(貸家)の相続税評価額である。
 本件で被相続人が所有していた共同住宅は、木造2階建ての貸家3棟(以下「本件各貸家」)である(いずれも1Kタイプ)。被相続人は、建築業者に依頼し、本件各貸家の各居室について相続開始日前から順次本件改修工事を実施していた。このため、相続開始日の時点で本件各貸家には、本件改修工事が完了した部分と完了していない部分が混在していた(各居室の工事状況は表1参照)。
 被相続人が依頼した本件改修工事は、1Kタイプの居室を改修する工事及び1Kタイプの居室2室を2DKタイプの居室1室に改修する工事で、ユニットバスとキッチンの解体及び新設工事が含まれているほか、各部屋にバルコニーを新設するというもの。
 本件各貸家の全48室のうち、相続開始日の時点で改修工事が完了していたのは13室、一部(バルコニー設置)が完了していたのは2室、改修工事中であったのは3室、工事着手前であったのは30室であった。なお、
本件各貸家に係る固定資産税評価額には、本件改修工事が行われている点は考慮されていなかった。
未着手部分の評価額に価値上昇分を加算  審判所は、改修工事により価値が上昇したものの固定資産税評価額に価値の上昇が反映されていない場合の家屋の時価の評価方法に関する定めが評価通達にないことから、評価通達5(評価方法の定めがない場合は評価通達に定める方法に準じて評価する旨規定)を適用し、改修工事により価値が増加した部分については家屋の評価に関する評価通達89-2及び同93の定めに準じて改修工事の費用から課税時期までの期間に応じて減価償却した残額の100分の70に相当する金額によって評価するのが相当であると判断。本件各貸家の評価額は、本件改修工事が未着手である部分の評価額(固定資産税評価額)に、本件改修工事により価値が上昇した部分の評価額を加えて算出するという判断を示した。

【参考】貸家の相続税評価に関する財産評価基本通達の定め(一部簡略化)
評価通達89(家屋の評価)
 家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(略)に別表1に定める倍率(編注・「1.0」である)を乗じて計算した金額によって評価する。

評価通達89-2(文化財建造物である家屋の評価)
 文化財建造物である家屋の価額は、それが文化財建造物でないものとした場合の価額から、その価額に24-8((文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価))に定める割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価する。なお、文化財建造物でないものとした場合の価額は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額によるものとする。 
(1)文化財建造物である家屋に固定資産税評価額が付されている場合
 その文化財建造物の固定資産税評価額を基として前項(評価通達89)の定めにより評価した金額
(2)文化財建造物である家屋に固定資産税評価額が付されていない場合
 その文化財建造物の再建築価額(課税時期においてその財産を新たに建築又は設備するために要する費用の額の合計額をいう。)から、経過年数に応ずる減価の額を控除した価額の100分の70に相当する金額

評価通達93(貸家の評価)
 貸家の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する。

評価通達89(家屋の評価)、89 - 2(文化財建造物である家屋の評価)又は前項の定めにより評価したその家屋の価額(A) - A × 評価通達94(借家権の評価)に定める借家権割合 × 評価通達26(貸家建付地の評価)の(2)の定めによるその家屋に係る賃貸割合

未着手・完了・工事中の各部分ごとに評価  具体的にみると審判所は、本件各貸家の固定資産税評価額から本件改修工事が完了した居室に相当する価額及び改修工事中の居室に相当する価額を控除することにより、既存家屋の残存価額(改修工事が未着手の部分)の価額を算定(表2の項目⑥参照)。そして、本件改修工事が完了(一部完了含む)した各居室については、本件改修工事に係る再建築価額(本件では本体工事費用から解体撤去工事費用を控除した額にバルコニー設置費用を加えて算定)から減価償却費相当額を控除した残額の70%相当額で評価した(表2の項目⑦~⑩参照)。また、改修工事中の各居室(本件各貸家のうちB棟の3室)については、再建築価額(改修工事中の部分)に工事進捗率(着工日から竣工日までの総日数のうち相続開始日までの日数の占める割合)を乗じた金額の70%相当額で評価している(表2のB棟に関する項目⑦~⑩参照)。


工事前払金から完了・工事中の建築費用を控除した残額を相続財産に計上
 このほか本件では、改修工事を行った本件各貸家の相続税評価が問題になるとともに、被相続人が相続開始日前に建築業者に対し支払った本件改修工事に係る前払金の取扱いも問題となっていた。
 この点について審判所は、本件改修工事により改修工事中であった家屋は工事進捗状況に応じて評価したうえで家屋の評価額として相続財産に計上するのが相当であるとする一方で、工事進捗状況に応じて既に家屋に投下されたものとした建築費用相当額は前払金から控除するのが相当であるとした。
 そのうえで、被相続人が相続開始日前に支払った本件改修工事に係る前払金から、本件各貸家のうち改修工事が完了した部分の建築費用と改修工事中の建築費用を控除した残額を相続財産として計上すべきと判断している。

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