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解説記事2017年06月19日 【税制改正解説】 平成29年度における国際課税関係の改正について(2017年6月19日号・№695)

税制改正解説
平成29年度における国際課税関係の改正について
 中西佑太

改正の背景

 企業を取り巻くグローバルな環境が大きく変化する中、国際課税の諸制度は、日本企業の健全な海外展開や国際競争力を維持・強化しつつ、我が国の適切な課税が確保できるよう不断に見直していく必要がある。
 近年、企業のビジネスモデルは大きく変化している。グローバル化や情報通信技術の進展を背景に、多国籍企業の活動は複雑化の一途を辿っており、生産、雇用、販売、マーケティング等をグローバルなレベルで最適な国・地域に配分するようになっている。 
 このようなビジネスモデルの変化に伴い、グローバルな資本や資産の移動にも顕著な変化が見られ、例えば、増加傾向にあるクロスボーダーの直接投資については、工場設立を通じた海外進出や実体のある企業のM&Aだけでなく、投資先国での活動を前提としない実体の伴わないペーパー・カンパニー等への投資が増加している。また、知的財産の開発の場所と、知的財産からの収益が受領される場所が一致しない傾向も見られる。 
 このような企業行動の変化や国際資本移動の変容に、国際課税制度を適合させていく際には、健全な企業活動が阻害されないようにすることはもとより、一部の行き過ぎたタックス・プランニングを行っている企業に対して競争上不利になることも避けなければならない。また、公平な競争条件をグローバルに整えるためには、税制の隙間や抜け穴をふさぎ、国際課税ルールを再構築していく努力を各国が協調して継続していくことが欠かせない。
 このような問題意識の下、多国間協調による国際課税ルールの再構築を通じて対応することを目指したOECD・G20「BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食・利益移転)プロジェクト」は、15の行動からなる最終報告書を平成27年(2015年)10月に提示した。これら15の行動は、①課税利益認識の場と、経済活動・価値創造の場を一致させる「実態性(substance)」、②各国政府・グローバル企業の活動に関する「透明性(transparency)」、及び、③租税紛争の効果的解決と合意事項の一貫した実施(consistency)による「予測可能性」、の3つの柱のもとで整理することができる。その取りまとめに当たり主導的役割を果たしてきた我が国としては、今後国際課税制度の改革を進めていく上で、BEPSプロジェクトの最終報告書で示された内容を十分に踏まえていく必要がある。
 また、平成28年4月及び5月には、いわゆる「パナマ文書」が一部明らかにされ、国際的な租税回避に対する関心は更に高まり、G7伊勢志摩サミットでは、BEPSプロジェクトにおける合意事項の着実な実施の重要性が確認された。このほかG20等の国際会議や我が国の国会においても、国際的な租税回避等の実態解明と、これへの効果的な対応が、改めて大きな課題として認識されるに至った。
 こうした背景の下、平成29年度税制改正においては、BEPSプロジェクトの最終報告書(行動3「外国子会社合算税制の強化(Designing Effective Controlled Foreign Company rules)」)に関して、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」とのBEPSプロジェクトの基本的な考え方に基づき、日本企業の健全な海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応するため、外国子会社合算税制の改正を行っている。
 具体的には、租税回避リスクを、外国子会社の租税負担割合により把握する現行制度から、所得や事業の内容によって把握する仕組みに改めている。これにより、従来は制度の対象外であった租税負担割合20%以上の外国子会社について、一見して明らかに、利子・配当・使用料等のいわゆる「受動的所得」しか得ておらず、租税回避リスクが高いと考えられるペーパー・カンパニー等である場合には、原則として、その外国子会社の全所得を親会社の所得とみなして合算できるようになり、他方で、経済活動の実体のある事業から得られた、いわゆる「能動的所得」は、外国子会社の租税負担割合にかかわらず合算対象外となる。また、企業の事務負担を軽減する観点から、現行制度との継続性を踏まえつつ、租税負担割合20%以上の外国子会社は、租税回避リスクの高いペーパー・カンパニー等を除き、合算課税を免除して申告不要とする制度適用免除等の措置を講じている。
 平成29年度税制改正では、BEPS関連以外についても、国際課税関係では主に次のような改正を行っている。
 第一に、非永住者が入国前に取得した株式等を外国市場等で譲渡したような、国外にある有価証券の譲渡により生ずる一定の所得については、非永住者の課税所得の範囲から除外する措置が講じられた。
 第二に、外国金融機関等の債券現先取引(いわゆるレポ取引)等に係る利子等の課税の特例について、外国の金融機関以外の一定の外国法人が受け取る債券現先取引の利子等について一定の要件の下、非課税とするとともに、特例の対象となる金融機関の範囲に国内の短資会社や清算機関を追加することで、特例の範囲を拡大する措置が講じられた。
 第三に、100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応として、非居住者等株主が、内国法人から100%外国子会社株式の現物分配を受ける場合には、我が国の課税権の確保の観点から、非居住者等株主において、株式の交付を受けた時点で、旧株式(現物分配法人株式)の譲渡損益を認識することとされた。
 第四に、外国税額控除の申告要件について、納税者の立証すべき事項を明確化し、要件を満たす場合には控除額を変更できることを明らかにするための所要の改正が行われた。
 第五に、日本・ベルギー租税条約等における相互協議手続の改正により、納税者の居住地国にかかわらず、いずれかの締約国の権限ある当局に対して相互協議の申立てを行うことができることとされたことに伴い、国内法上の手続についても、現行の居住者・内国法人に加え、条約相手国等の居住者も国税庁長官に対して相互協議の申立てを行うことができる者に追加する等の整備が行われた。
 第六に、今般の国税犯則調査手続等の見直しに伴い、租税条約等の相手国等から犯則事件の調査に関する情報の提供要請があった場合に、一定の要件の下、電磁的記録を保管する者等に命じて、必要な電磁的記録を記録媒体に記録又は印刷させた上で、その記録媒体を差し押さえること(記録命令付差押え)ができることとするなど、国税犯則調査手続の見直しと同様の調査手続の整備が行われた。
 以下、これらの改正について解説を行う。

1 内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例等の改正  外国子会社合算税制について、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」とのBEPSプロジェクトの基本的な考え方等に基づき、日本企業の健全な海外展開を阻害することなく、より効果的に国際的な租税回避に対応する観点から、次のとおり見直しが行われた。
※ 連結法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例等及び居住者の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例等についても同趣旨の改正が行われた。
(1)外国関係会社の範囲 ① 外国関係会社の判定における間接保有割合について、内国法人等との間に50%超の株式等の保有を通じた連鎖関係がある外国法人の判定対象となる外国法人に対する持分割合等に基づいて算定することとされた(措法66の6②一イ、措令39の14の2)。
② 居住者又は内国法人と外国法人との間にその居住者又は内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有している等の関係がある場合におけるその外国法人が外国関係会社の範囲に追加された(措法66の6②一ロ)。
(2)制度の適用を受ける内国法人(納税義務者)  内国法人と外国法人との間にその内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部について分配を請求する権利を有している等の関係がある場合におけるその内国法人が本税制による合算課税の対象となる者に追加された(措法66の6①二)。
(3)特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税(外国関係会社単位の合算課税) ① 外国関係会社単位の合算課税の対象とされる金額は、特定外国関係会社又は対象外国関係会社の所得に相当する金額のうち内国法人が有するその特定外国関係会社又は対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額及びその内国法人とその特定外国関係会社又は対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額に相当する金額とされた(措法66の6①、措令39の14①)。
② 特定外国関係会社
  次の外国関係会社について、特定外国関係会社に該当することとされた。
 イ 次のいずれにも該当しない外国関係会社(措法66の6②二イ、措令39の14の3①②)
 (イ)その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有している(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを有している場合と同様の状況にある場合を含む。)外国関係会社
 (ロ)その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを自ら行っている場合と同様の状況にある場合を含む。)外国関係会社
 ロ その総資産の額に対する下記(5)③イからヌまでに掲げる金額に相当する金額の合計額の割合(下記(6)②の外国金融子会社等に該当する外国関係会社にあっては、総資産の額に対する下記(6)③イに掲げる金額に相当する金額又は下記(6)③ロからニまでに掲げる金額に相当する金額の合計額のうちいずれか多い金額の割合)が30%を超える外国関係会社(総資産の額に対する有価証券等の資産の額の合計額の割合が50%を超える外国関係会社に限る。)(措法66の6②二ロ、措令39の14の3③④)
 ハ 租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社(措法66の6②二ハ・⑭)
   なお、税務当局が、その外国関係会社が上記イ(イ)又は(ロ)に該当することを明らかにする書類等の提示又は提出を求めた場合において、その書類等の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は上記イ(イ)又は(ロ)に該当しないものと推定することとされた(措法66の6③)。
③ 対象外国関係会社
  外国関係会社単位の合算課税制度における適用除外基準について次の見直しを行った上で、外国関係会社が会社全体としていわゆる「能動的所得」を得るために必要な経済活動の実体を備えているかを判定する基準(以下「経済活動基準」という。)に改めることとし、経済活動基準のいずれかに該当しない外国関係会社について、対象外国関係会社に該当することとされた(措法66の6②三)。
 イ 事業基準
   航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、その役員又は使用人がその本店所在地国において航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものについては、事業基準を満たすこととされた(措法66の6②三イ、措令39の14の3⑤~⑪)。
 ロ 実体基準及び管理支配基準
   保険業を営む一定の外国関係会社(以下「保険委託者」という。)の実体基準及び管理支配基準の判定について、その保険委託者の保険業に関する業務を受託する者で一定の要件を満たすもの(以下「保険受託者」という。)が実体基準及び管理支配基準を満たしている場合には、その保険委託者は実体基準及び管理支配基準を満たすものとされた(措令39の14の3⑫⑬)。
 ハ 非関連者基準
 (イ)取引対象となる資産等が外国関係会社から非関連者を介して関連者に移転等をされ、又は関連者から非関連者を介して外国関係会社に移転等をされることがあらかじめ定まっている場合には、外国関係会社と非関連者との取引は関連者取引とみなすこととされた(措令39の14の3⑯)。
 (ロ)保険業を主たる事業とする外国関係会社が保険受託者に該当する場合における非関連者基準の判定について、その外国関係会社がその外国関係会社に係る保険委託者との間で行う取引は関連者取引に該当しないこととされた(措令39の14の3⑱)。
 (ハ)航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連者基準を適用することとされた(措法66の6②三ハ(1)、措令39の14の3⑮七)。
 ニ 所在地国基準
   製造業を主たる事業とする外国関係会社について、主として本店所在地国において製品の製造を行っている場合には、所在地国基準を満たす旨が明確化された。また、製造業を主たる事業とする外国関係会社について、本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与している場合にも、所在地国基準を満たすこととされた(措法66の6②三ハ(2)、措令39の14の3⑳三、措規22の11②)。
   なお、税務当局が、その外国関係会社が経済活動基準に係る要件に該当することを明らかにする書類等の提示又は提出を求めた場合において、その書類等の提示又は提出がないときは、その外国関係会社は経済活動基準に係る要件に該当しないものと推定することとされた(措法66の6④)。
④ 適用対象金額の計算
  適用対象金額に算入しない受取配当等に係る持分割合要件(25%以上)について、化石燃料の採取を行う一定の外国法人から受ける配当等にあっては、その持分割合要件が10%以上に緩和された(措令39の15①四)。
(4)特定外国関係会社又は対象外国関係会社の適用対象金額に係る合算課税の適用免除  特定外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が30%以上である場合又は対象外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が20%以上である場合には、その該当する事業年度の適用対象金額について、合算課税の適用を免除することとされた(措法66の6⑤)。
(5)部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税) ① 部分対象外国関係会社(下記(6)②の外国金融子会社等に該当するものを除く。)の部分合算課税の対象とされる金額は、特定所得の金額に係る部分適用対象金額のうち内国法人が有する部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額及びその内国法人と部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされた(措法66の6⑥、措令39の17の3①)。
② 部分対象外国関係会社
  外国関係会社のうち経済活動基準に係る要件の全てに該当するものについて、部分対象外国関係会社に該当することとされた(措法66の6②六)。
③ 特定所得の金額
  特定所得の金額は、次に掲げる金額とされた。
 イ 剰余金の配当等の額(次に掲げる法人から受ける剰余金の配当等(その支払を行う法人において損金算入される配当等を除く。)の額を除く。)の合計額からその剰余金の配当等の額を得るために直接要した費用の額の合計額及びその剰余金の配当等の額に係る一定の費用の額を控除した残額(措法66の6⑥一、措令39の17の3②~⑥、措規22の11⑤)
 (イ)持分割合が25%以上であること等の要件に該当する法人
 (ロ)持分割合が10%以上であること等の要件に該当する外国法人(化石燃料を採取する事業(自ら採取した化石燃料に密接に関連する事業を含む。)を主たる事業とする外国法人で我が国が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものに限る。)
 ロ 受取利子等の額(本店所在地国において金銭の貸付けの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす部分対象外国関係会社がその関連者等に対して行う金銭の貸付けに係る利子、金銭の貸付けを主たる事業とする部分対象外国関係会社(金銭の貸付けを業として行うことにつきその本店所在地国において免許等を受けているものに限る。)でその本店所在地国において金銭の貸付けの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものが行う金銭の貸付けに係る利子、部分対象外国関係会社の行う事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金の利子の額及び一定の取引等に係る利子の額を除く。)の合計額からその受取利子等の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の6⑥二、措令39の17の3⑦⑧)
 ハ 有価証券の貸付けによる対価の額の合計額からその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の6⑥三)
 ニ 有価証券の譲渡に係る対価の額(持分割合が25%以上の株式等の譲渡に係る対価の額を除く。)の合計額からその有価証券の譲渡に係る原価の額の合計額及びその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を減算した金額(措法66の6⑥四、措令39の17の3⑨~⑫)
 ホ デリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額(損失を減少させるために行った一定のデリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額、本店所在地国の法令に準拠して商品先物取引を業として行う部分対象外国関係会社(その本店所在地国においてその事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものに限る。)が行う一定の商品先物取引に係る利益の額又は損失の額及び部分対象外国関係会社が行う一定のデリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額を除く。)(措法66の6⑥五、措規22の11⑥~⑫)
 へ その行う取引又はその有する資産若しくは負債につき外国為替の売買相場の変動に伴って生ずる利益の額又は損失の額(その行う事業(外国為替相場の変動に伴って生ずる利益の額を得るための投機的な取引を行う事業を除く。)に係る業務の通常の過程において生ずる利益の額又は損失の額を除く。)(措法66の6⑥六、措令39の17の3⑬、措規22の11⑬)
 ト イからヘまでに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額を生じさせる資産の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる利益の額又は損失の額(損失を減少させるために行った一定の取引に係る利益の額又は損失の額を除く。)(措法66の6⑥七、措令39の17の3⑭、措規22の11⑮)
 チ 固定資産の貸付けによる対価の額(主としてその本店所在地国において使用に供される固定資産の貸付けによる対価の額及びその本店所在地国において固定資産の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件に該当する部分対象外国関係会社が行う固定資産の貸付けによる対価の額等を除く。)の合計額からその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の6⑥八、措令39の17の3⑮~⑰⑳
 リ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。) (以下「無形資産等」という。)の使用料(自らが主として行った研究開発の成果に係る無形資産等の使用料等を除く。)の合計額からその使用料を得るために直接要した費用の額の合計額を控除した残額(措法66の6⑥九、措令39の17の3⑱~
 ヌ 無形資産等の譲渡に係る対価の額(自らが主として行った研究開発の成果に係る無形資産等の譲渡に係る対価の額等を除く。)の合計額からその無形資産等の譲渡に係る原価の額の合計額及びその対価の額を得るために直接要した費用の額の合計額を減算した金額(措法66の6⑥十、措令39の17の3
 ル 次の(イ)から(ヌ)までに掲げる金額がないものとした場合のその部分対象外国関係会社の各事業年度の所得の金額からその各事業年度に係る次の(ル)に掲げる金額を控除した残額(措法66の6⑥十一、措令39の17の3、措規22の11⑯⑰)
 (イ)支払を受ける剰余金の配当等の額
 (ロ)受取利子等の額
 (ハ)有価証券の貸付けによる対価の額
 (ニ)有価証券の譲渡に係る対価の額の合計額からその有価証券の譲渡に係る原価の額の合計額を減算した金額
 (ホ)デリバティブ取引に係る利益の額又は損失の額
 (ヘ)その行う取引又はその有する資産若しくは負債につき外国為替の売買相場の変動に伴って生ずる利益の額又は損失の額
 (ト)(イ)から(ヘ)までに掲げる金額に係る利益の額又は損失の額を生じさせる資産の運用、保有、譲渡、貸付けその他の行為により生ずる利益の額又は損失の額
 (チ)固定資産の貸付けによる対価の額
 (リ)支払を受ける無形資産等の使用料
 (ヌ)無形資産等の譲渡に係る対価の額の合計額からその無形資産等の譲渡に係る原価の額の合計額を減算した金額
 (ル)総資産の額に人件費等の費用の額を加算した金額に50% を乗じて計算した金額
④ 部分適用対象金額
  部分適用対象金額は、上記③イからハまで、チ、リ及びルに掲げる金額の合計額と、上記③ニからトまで及びヌに掲げる金額の合計額(その合計額が零を下回る場合には、零)を基礎として前7 年以内に開始した各事業年度において生じた上記③ニからトまで及びヌに掲げる金額の合計額が零を下回る部分の金額につき調整を加えた金額とを合計した金額とされた(措法66 の6 ⑦、措令39 の17 の3)。
(6)金融子会社等部分適用対象金額に係る合算課税(部分合算課税) ① 部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものに限る。)の部分合算課税の対象とされる金額は、特定所得の金額に係る金融子会社等部分適用対象金額のうち内国法人が有する部分対象外国関係会社の株式等の数又は金額につきその請求権の内容を勘案した数又は金額及びその内国法人と部分対象外国関係会社との間の実質支配関係の状況を勘案して計算した金額とされた(措法66の6⑧、措令39の17の4①)。
② 外国金融子会社等
  部分対象外国関係会社のうち本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業(第一種金融商品取引業と同種類の業務に限る。)又は保険業を行う部分対象外国関係会社でその本店所在地国においてこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているもの及びこれに準ずる部分対象外国関係会社について、外国金融子会社等に該当することとされた(措法66の6②七、措令39の17)。
③ 特定所得の金額
  特定所得の金額は、次に掲げる金額とされた。
 イ 一の内国法人によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている部分対象外国関係会社で一定の要件を満たすもの(その純資産につき一定の調整を加えた金額(以下「親会社等資本持分相当額」という。)の総資産の額に対する割合が70%を超えるものに限る。)の親会社等資本持分相当額が一定の金額を超える場合におけるその超える部分に相当する資本に係る利益の額(措法66の6⑧一、措令39の17の4②~⑧)
 ロ 上記(5)③チに掲げる金額に相当する金額(措法66の6⑧二)
 ハ 上記(5)③リに掲げる金額に相当する金額(措法66の6⑧三)
 ニ 上記(5)③ヌに掲げる金額に相当する金額(措法66の6⑧四)
 ホ 上記(5)③ルに掲げる金額に相当する金額(措法66の6⑧五)
④ 金融子会社等部分適用対象金額
  金融子会社等部分適用対象金額は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額とされた(措法66の6⑨、措令39の17の4⑨)。
 イ 上記③イに掲げる金額
 ロ 上記③ロ、ハ及びホに掲げる金額の合計額と、上記③ニに掲げる金額(その金額が零を下回る場合には、零)を基礎として前7年以内に開始した各事業年度において生じた上記③ニに掲げる金額が零を下回る部分の金額につき調整を加えた金額とを合計した金額
(7)部分適用対象金額等に係る合算課税の適用免除  部分対象外国関係会社につき次のいずれかに該当する事実がある場合には、部分合算課税の適用を免除することとされた(措法66の6⑩)。
① 各事業年度の租税負担割合が20%以上であること。
② 各事業年度における部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額が2,000万円以下であること。
③ 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちに部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額の占める割合が5%以下であること。
(8)一定の外国関係会社の財務諸表等の確定申告書への添付  内国法人は、その内国法人等に係る次に掲げる外国関係会社の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の書類を確定申告書に添付しなければならないこととされた(措法66の6⑪、措規22の11⑳)。
① その各事業年度の租税負担割合が20%未満である外国関係会社(特定外国関係会社を除く。)
② その各事業年度の租税負担割合が30%未満である特定外国関係会社
(9)外国子会社合算税制の適用に係る税額控除  内国法人が上記(3)(5)及び(6)の合算課税の適用を受ける場合には、その内国法人に係る外国関係会社に対して課される所得税の額及び法人税の額の合計額のうち合算対象とされた金額に対応する部分の金額に相当する金額について、その内国法人の法人税の額から控除することとされた(措法66の7④~⑦、措令39の18⑮~⑱)。
(10)特定課税対象金額等を有する内国法人が受ける剰余金の配当等の益金不算入  特定目的会社等が合算課税の対象となった外国法人から配当を受けた場合、その外国法人に係る特定課税対象金額等に達するまでの金額は、益金の額に算入されないこととされた(措法67の14③、67の15③、68の3の2③、68の3の3③)。
(11)特殊関係株主等である内国法人に係る特定外国法人の課税の特例(コーポレート・インバージョン対策合算税制)の改正  特殊関係株主等である内国法人に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例について外国子会社合算税制と同様の改正が行われた(措法66の9の2~66の9の4、措令39の20の2~39の20の9、措規22の11の2)。
(適用関係)  上記1(1)から1(7)までの改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及び当該適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及び当該部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融子会社等部分適用対象金額及び当該金融子会社等部分適用対象金額に係る金融子会社等部分課税対象金額について適用し、特定外国子会社等の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及び当該適用対象金額に係る課税対象金額並びに部分適用対象金額及び当該部分適用対象金額に係る部分課税対象金額については従前どおり(改正法附則70①)。
 上記1(8)の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る確定申告書に添付すべき書類について適用し、特定外国子会社等の同日前に開始した事業年度に係る確定申告書に添付すべき書類については従前どおり(改正法附則70②)。
 上記1(9)の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額に係る所得税等の額について適用(改正法附則70④)。
 上記1(10)の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る特定課税対象金額又は間接特定課税対象金額について適用と解される。
 上記1(11)の改正は、外国関係法人の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係る適用対象金額及び当該適用対象金額に係る課税対象金額、部分適用対象金額及び当該部分適用対象金額に係る部分課税対象金額並びに金融関係法人部分適用対象金額及び当該金融関係法人部分適用対象金額に係る金融関係法人部分課税対象金額について適用し、特定外国法人の同日前に開始した事業年度に係る適用対象金額及び当該適用対象金額に係る課税対象金額並びに部分適用対象金額及び当該部分適用対象金額に係る部分課税対象金額については従前どおり(改正法附則70⑤)。

2 非永住者の課税所得の範囲の改正  非永住者の課税所得の範囲から、有価証券でその取得の日がその譲渡の日の10年前の日の翌日からその譲渡の日までの期間(その者が非永住者であった期間に限る。)内にないもの(その取得の日がその期間内にあるもののうち平成29年4月1日前に取得したものを含む。)のうち、次に掲げるものの譲渡により生ずる所得(国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除く。)を除外することとされた(所法7①二、所令17①)。
(1)外国金融商品市場において譲渡がされるもの
(2)外国金融商品取引業者への一定の売委託により譲渡が行われるもの
(3)外国金融商品取引業者等の国外にある営業所等に開設された口座に係る国外における振替口座簿に類するものに記載等がされ、又はその口座に保管の委託がされているもの
(適用関係)  上記2の改正は、平成29年4月1日以後に行う有価証券の譲渡により生ずる所得について適用し、同日前に行った有価証券の譲渡により生ずる所得については、従前どおり(改正法附則2)。

3 外国金融機関等の債券現先取引等に係る利子等の課税の特例の改正
(1)
本特例の対象となる所得の範囲に、特定外国法人が、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間において開始した振替国債に係る特定債券現先取引につき、特定金融機関等から支払を受ける利子等を加えることとされた。ただし、利子等の支払を受ける特定外国法人が、その利子等を支払う特定金融機関等の国外関連者に該当する場合には、本特例は適用されない(措法42の2③④、67の17⑨⑩)。
(2)外国金融機関等及び特定金融機関等の範囲について次のとおりその範囲が拡充されたほか、非課税適用手続等について所要の整備が行われた。
① 外国金融機関等の範囲に、外国において金融商品債務引受業と同種類の業務を行う一定の外国法人を加える(措法42の2⑥一ロ)。
② 特定金融機関等の範囲に、短資会社及び一定の金融商品取引清算機関を加える(措法42の2⑥二イロ)。
(適用関係)  上記3(1)の改正は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間において開始した振替国債に係る特定債券現先取引について適用(改正法附則1)。
 上記3(2)の改正は、外国金融機関等が平成29年4月1日以後に開始する振替債等に係る特定債券現先取引等につき支払を受ける利子及び貸借料等について適用し、外国金融機関等が同日前に開始した債券現先取引又は証券貸借取引につき支払を受ける特定利子及び貸借料等については従前どおり(改正法附則60①、72)。

4 100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応
(1)合併等により外国親法人株式の交付を受ける場合の課税の特例の改正
 非居住者株主又は外国法人株主に対して一定の株式分配により外国法人である完全子法人の株式が交付される場合には、課税の繰延べを認めずその交付の時点で課税することとされた(措法37の14の3③⑧、法令184①二十、191)。
(2)事業譲渡類似の株式の譲渡益課税制度の改正  非居住者又は外国法人がその有する株式を発行した内国法人の行った株式分配により完全子法人の株式その他の資産の交付を受けた場合において、一定の方法により計算した割合が5%以上であるときは、非居住者又は外国法人を含む内国法人の特殊関係株主等が譲渡株数に関する要件を満たす株式の譲渡を行ったものとして事業譲渡類似の株式の譲渡に該当するか否かの判定を行うこととされた(所令281⑦二、法令178⑦二)。
(適用関係)  上記4(1)の改正は、平成29年4月1日以後に行われる株式分配について適用(改正法附則53①、改正法令附則2①)。
 上記4(2)の改正は、平成29年4月1日以後に行われる株式分配について適用(改正所令附則12①、改正法令附則2①)。

5 外国税額控除の申告要件  外国税額控除の申告要件について、更正の請求によらない更正による法人税額等の増加に伴い反射的に控除限度額が増加した場合には、その更正で控除額を増加させることができることとされた(法法69⑮、81の15⑨、144の2⑩、所法95⑩、165の6⑦)。
(適用関係)  上記5の改正は、平成29年4月1日から施行され(改正法附則1)、同日以後にされる更正に係る事業年度の所得に対する法人税について適用。

6 租税条約の相互協議手続の改正に伴う国内法の整備
(1)相互協議の申立て等の手続
 相互協議の申立手続について、居住者及び内国法人に加え、非居住者及び外国法人についても、国税庁長官に対して相互協議の申立てを行うことができることとされるとともに、仲裁の要請手続について、国税庁長官に対して相互協議の申立てをした者に加え、条約相手国等の権限ある当局に対して相互協議の申立てをした者についても、国税庁長官に対して仲裁の要請をすることができることとされた(実特規12①③)。
(2)国外関連者との取引に係る課税の特例(移転価格税制)等に係る納税猶予制度  国外関連者との取引に係る課税の特例等に係る納税猶予制度について、内国法人が国税庁長官に対して相互協議の申立てをした場合及び外国法人が条約相手国等の権限ある当局に対して相互協議の申立てをした場合に加え、内国法人が条約相手国等の権限ある当局に対して相互協議の申立てをした場合及び外国法人が国税庁長官に対して相互協議の申立てをした場合についても、その適用を受けることができることとされた(措法66の4の2①)。
(適用関係)  上記6(1)の改正は、平成29年4月1日から施行(改正実特規附則)。
 上記6(2)の改正は、平成29年4月1日から施行(改正法附則1)。

7 国税犯則調査手続の見直しに伴う租税条約等実施特例法の整備  租税条約等の相手国等から犯則事件の調査に必要な情報の提供要請があった場合における租税条約等の相手国等への情報提供のための調査手続について、国税犯則調査手続の見直しに伴う所要の整備が行われた(実特法10の2~10の4、実特規16①)。
(適用関係)  上記7の改正は、平成30年4月1日から施行され(改正法附則1五ト)、同日以後に行う相手国等から犯則事件に関する情報の提供要請があった場合の調査手続について適用。

8 その他の国際課税の改正
(1)外国法人の法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例
 内国法人の法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例について、各事業年度終了の日の翌日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間延長することができることとされ、外国法人についてもこれと同様とされた(法法144の8)。
(2)外国法人の法人税に係る災害に関する税制上の措置 ① 災害損失欠損金の繰戻しによる還付
  災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度又は中間期間開始の日前1年(青色申告書を提出する場合には、前2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうちその災害損失欠損金額に対応する部分の金額の還付を請求することができることとされた(法法142の2の2、144の13⑪)。
② 仮決算による中間申告における所得税額の還付
  災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額がある場合には、その中間期間に係る仮決算による中間申告において、その災害損失金額を限度としてその課された所得税の額で法人税の額から控除しきれなかった金額を還付することとされた(法法144、144の4、144の11、147の3)。
③ 外国法人の法人税の中間申告
  外国法人の法人税の中間申告書の提出について、国税通則法第11条の規定による申告期限の延長により、中間申告書の提出期限とその中間申告書に係る確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合は、その中間申告書の提出を要しないこととされた(法法144の3の2)。
(3)外国普通法人となった旨の届出書  恒久的施設を有しない外国法人である普通法人が恒久的施設を有することとなった場合等に所轄税務署長に提出することとされている届出書について、登記事項証明書が不要とされた(法法149①、法規64①)。
(4)納税地の異動の届出  納税地に異動があった場合に提出することとされている届出書について、その異動後の納税地の所轄税務署長への提出が不要とされた(法法20①、法令18①、所法20①、所令57)。
(適用関係)  上記8(1)の適用関係は以下のとおり。
① 平成29年4月1日前にされた申告書の提出期限の延長の特例の申請であって、改正法の施行の際、提出期限の延長又は却下の処分がされていないものについての処分については、従前どおり(改正法附則28①)。
② 平成29年4月1日前にされた改正前の申告書の提出期限の延長月数の指定(同日以後に上記①によりされた指定を含む。)は、改正後の上記(1)の指定とみなす(改正法附則28②)。
 上記8(2)①の改正は、平成29年4月1日から施行(改正法附則1)。
(注)平成29年4月1日前1年以内に終了した事業年度の確定申告書を同日前に提出した外国法人のその事業年度については、平成29年4月30日までに納税地の所轄税務署長に対して還付請求書を提出することにより、その事業年度に生じた災害損失欠損金額について上記の措置の適用ができることとされた(改正法附則29)。
 上記8(2)②の改正は、平成29年4月1日から施行(改正法附則1)。
 上記8(2)③の改正は、平成29年4月1日から施行(改正法附則1)。
 上記8(3)の改正は、平成29年4月1日以後に提出する届出書について適用し、同日前に提出した届出書については、従前どおり(改正法規附則5)。
 上記8(4)の改正は、外国法人又は非居住者の平成29年4月1日以後の納税地の異動について適用し、外国法人又は非居住者の同日前の納税地の異動については、従前どおり(改正法附則4、13①)。

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