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解説記事2017年06月26日 【税務マエストロ】 旅行業者における消費税実務のポイント(1)(2017年6月26日号・№696)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
旅行業者における消費税実務のポイント(1)

#191 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#192
租税条約の歴史とBEPS条約
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一
人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説
 消費税実務において最も厄介な業種は旅行業者ではないだろうか。そこで、今回と次回に分割して、旅行業者の消費税について実務上のポイントを確認する。なお、執筆に当たっては、一般社団法人日本旅行業協会発行の「旅行業者のための消費税・印紙税実務」を参考にしていることをあらかじめお断りしておきたい。

1 パック旅行の取扱い  旅行代理店が、交通機関や宿泊先、観光地などを選定してスケジュ-ルを企画し、これをセットにして販売することを「パック旅行」という。
(1)他社の主催するパック旅行の取扱い  他社が主催するパック旅行を仕入れて販売する場合には、旅行業法上、代売契約として取り扱われている。つまり、その実質は委託販売であるから、売上金額と仕入金額の差額が代売に伴う役務提供の対価として課税されるということである。図表1であれば、当社Bが売上高に計上する金額は、消費者Cから収受する120と主催者Aに支払う100との差額の20になる。
 なお、図表1において、主催者Aが外国の旅行会社(非居住者)の場合には、契約書などの証明書類の保存を条件に、その代売手数料について、輸出免税の適用を受けることができる。ただし、非居住者に対する役務の提供であっても、その非居住者が日本国内に支店や出張所を設置している場合には、その取引は支店や出張所を経由して行われたものと認定されるため、原則として輸出免税の適用はない(消基通7-2-17)。
○会計処理との関係  旅行業法上代売契約とされるものであれば、図表2のように、仕入勘定、売上勘定を用いて総額を計上するような会計処理をしていたとしても、その差額部分(代売手数料)だけを課税売上高として処理することが認められている。また、代売の内容が課税取引だけであれば、旅行者からの収入金額を課税売上高に計上し、他社への支払金額を課税仕入高として処理することもできる(消基通10-1-12(2))。

(2)自己の主催するパック旅行の取扱い  自社でパック旅行を企画してツアー客に販売する場合には、そのパック旅行が国内パック旅行の場合と海外パック旅行の場合で取扱いが異なっている。
 国内パック旅行については、原則として収受する金額の全額が課税売上高となる。
 海外パック旅行については、本来であれば、国内取引は課税、国際運賃は免税、現地での宿泊費などは課税対象外(不課税)取引として処理するべきである。しかし、ツアー客から収受する金銭をこれらの原価の比率によりあん分計算することは現実的ではない。そこで、国内における運賃や宿泊費は課税売上高として処理し、他は、現地での宿泊費だけでなく、国際運賃(免税)も含めてすべて国外取引として消費税計算から除外することとしている(消基通7-2-6)。
 例えば、成田空港発のハワイ旅行の場合には、成田空港までのバスの運賃と空港施設利用料までは課税売上高となる。成田空港からホノルル空港までの国際航空運賃は、本来であれば免税売上高として処理すべきであるが、ハワイでの宿泊費などと共に国外取引として取り扱うこととしたものである(図表3参照)。

 また、観光地やホテル、レストランなどをツアー客の要望に応じて手配し、パック旅行として販売する場合には、その実質は「手配旅行」と認められることから、継続して運賃及び宿泊費は預り金とし、残額の手数料部分を課税売上高として処理することができる。
 なお、旅行業法には「手配旅行」の定義はなく、一般社団法人日本旅行業協会発行の「旅行業者のための消費税・印紙税実務」でも、「手配旅行」に関する明快な説明はされていない。おそらくは、旅行者(パック旅行の購入者)の代りに旅券や宿泊先の予約をし、その代理手続に関する手数料を収受するようなケ-スをいうものと思われる。


2 エア・オン航空券  いわゆる「エア・オン航空券」は物品切手等に該当するので、他社から購入した航空券の譲渡対価は非課税売上高となる。ただし、航空代理店契約に基づく航空代理店における航空券の発行又は委託販売契約に基づき受託者が行う航空券の販売は、収受する代金が前受金であることから課税対象外収入として取り扱うこととされている(消基通6-4-5)。

3 拝観料などの取扱い  国内パック旅行を企画した場合には、手配旅行の場合を除き、旅行業者がその旅行全体を請負うことになる。したがって、ツアーのなかに神社仏閣や博物館、美術館などの行程が組み込まれており、旅行業者が顧客に提示する見積書に拝観料などを含めて料金を明記したとしても、拝観料などを含めた旅行代金の全額が旅行業者の課税売上高となる。
 この場合において、交通費や宿泊費などは当然に旅行業者の課税仕入れとなるわけであるが、拝観料や入館料については課税仕入れになるものとならないものがあるので注意が必要だ。
 まず、美術館や博物館の入館料であるが、これは役務提供の対価として課税仕入れに該当することになる。消費税は、国内における消費や使用に担税力を求めて課税するものであり、国や地方公共団体も納税義務者に取り込むこととされている。したがって、国立美術館や県立博物館の入館料であっても課税仕入れとして何ら問題はない。
 次に神社仏閣の拝観料であるが、これは宗教上の喜捨金やお賽銭と同様に対価性がないものとして取り扱うこととされており、課税仕入れとはならない。
 ただし、神社仏閣における宝物殿などの入館料は、宗教上の拝観料とは異なり、美術館などの入館料と同様に課税仕入れとして処理することができる。

4 キックバック  キックバックとは、販売奨励金、スケールメリット、季節割引、広告宣伝補助金等、種々の名称のもとに航空会社等から旅行業者に支払われるもののうち、正規の手数料以外のものを総称するものとして用いられる業界用語である。
 国際輸送に対してやりとりされるキックバックについては、これを収受する旅行業者は国際航空運賃(免税仕入れ)の値引として、また、これを支払う航空会社は運賃収入(免税売上高)の値引として処理することとされている。したがって、旅行業者サイドでは、収受した金銭は、消費税計算には一切関係させない。
 例えば、100の航空運賃に対して10のキックバックがされた場合には図表6のように取扱うことになる。


5 海外パック旅行の割戻金  海外パック旅行を企画し、代理店に委託して販売する場合には、販売手数料の他、一定の取引条件の基、販売手数料とは別に割戻金(付加手数料)を代理店に支払うことがある。
 海外パック旅行については、国内における運賃や宿泊費がセットされている商品を除き、国外取引としてその売上高は課税対象外収入となるのであるが、旅行業者が旅行代理店に支払う販売手数料は課税仕入れであり、たとえ海外パック旅行に対するものであっても仕入税額控除の対象とすることができる。
 一方で、旅行業者が旅行代理店に支払う海外パック旅行の付加手数料は、その海外パック旅行(商品)の販売に対する売上割戻金になるのか、それとも販売手数料の上乗せになるのかということが気になるところであるが、旅行業者が旅行代理店に支払う付加手数料は、たとえ売上割戻金として処理したとしても、その実態は販売手数料であり、手数料を収受する旅行代理店は課税売上高、手数料を支払う旅行業者は課税仕入高として処理することになる。
 例えば、パック旅行の売上代金が120、販売手数料が20(120-100)、割戻金が10の場合における、旅行業者と旅行代理店の消費税の取扱いは下記具体例のようになる。

6 簡易課税の業種区分  自己の主催する国内パック旅行を販売する場合には、パック旅行は仕入商品ではないので第1種事業及び第2種事業に区分することはできない。結果、「運輸業」の売上高として第5種事業に区分することになる。
 他社が主催するパック旅行を仕入れて販売する場合には、旅行業法上代売契約として取り扱われ、国内パック、国外パックを問わず、売値と買値の差額を手数料として課税売上高に計上する。結果、受託販売手数料収入は第4種事業に区分することになる。
(注)受託販売は、日本標準産業分類の卸売業、小売業(細分類番号5598 代理商、中立業)に区分されるので第1種事業~第3種事業及び第5種事業~第6種事業のいずれにも該当しないものとして最終的に第4種事業に区分することになる(図表7参照)。


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