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解説記事2017年07月17日 【税制改正解説】 平成29年度における相続税法等の改正について(上)(2017年7月17日号・№699)

税制改正解説
平成29年度における相続税法等の改正について(上)
 礒貝美里

相続税法の改正

一 相続税及び贈与税の納税義務の見直し

1 改正前の制度の概要
 相続税の納税義務者の区分とその納税義務の範囲は、次のとおりとされていた(旧相法1の3①)。
(1)無制限納税義務者  相続又は遺贈により取得した財産の全てについて納税義務を負う者で次に掲げる者をいう。
① 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその取得した時において国内に住所を有する者
② 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる個人でその財産を取得した時において国内に住所を有しない者
 イ 日本国籍を有する個人(その個人又は被相続人が相続開始前5年以内のいずれかの時において国内に住所を有していたことがある場合に限る。)
 ロ 日本国籍を有しない個人(被相続人が相続開始の時において国内に住所を有していた場合に限る。)
(2)制限納税義務者  相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において国内に住所を有しない者(上記(1)②の者を除く。)については、その相続又は遺贈により取得した財産のうち国内にある財産のみに対して相続税を納める義務があるものとされている。
(3)特定納税義務者  被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった者のうち、相続税法第21条の16第1項の規定により相続時精算課税の適用を受ける財産をその被相続人から相続又は遺贈により取得したものとみなされるものをいう。
(注)上記(3)を除き、贈与税の納税義務に関しても相続税の納税義務(上記(1)及び(2))と同様となっていた(旧相法1の4①)。

2 改正の内容
(1)改正の概要
① 租税回避の防止
 イ 国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10年(改正前:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととする。
 ロ 国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が国内に住所を有しない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在をいう。②において同じ。)をしていたものを除く。)から相続又は遺贈により取得した国外財産を、相続税の課税対象に加える。
② 一時的に国内に居住する外国人に係る納税義務
  被相続人等及び相続人等が出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって一時的滞在をしている場合等の相続又は遺贈に係る相続税については、国内財産のみを課税対象とすることとする。
(注)贈与税の納税義務についても同様。
(2)改正後の無制限納税義務者及び制限納税義務者の範囲  この見直し後の相続税の無制限納税義務者及び制限納税義務者の範囲は、それぞれ次のとおりとなる。
① 無制限納税義務者
 イ 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であって、その取得した時において国内に住所を有するもの(相法1の3①一)
 (イ)一時居住者でない個人
 (ロ)一時居住者である個人(その相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
 ロ 相続又は遺贈により財産を取得した次に掲げる者であって、その取得した時において国内に住所を有しないもの(相法1の3①二)
 (イ)日本国籍を有する個人であって次に掲げるもの
  (i)その相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれかの時において国内に住所を有していたことがあるもの
  (ii)その相続又は遺贈に係る相続の開始前10年以内のいずれの時においても国内に住所を有していたことがないもの(その相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
 (ロ)日本国籍を有しない個人(その相続又は遺贈に係る被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
② 制限納税義務者
 イ 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその取得した時において国内に住所を有するもの(上記①イに掲げる者を除く。)(相法1の3①三)
 ロ 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその取得した時において国内に住所を有しないもの(上記①ロに掲げる者を除く。)(相法1の3①四)
(注1)上記①の「一時居住者」、「一時居住被相続人」及び「非居住被相続人」とは、次に掲げる者をいう(相法1の3③)。
 ① 一時居住者 相続開始の時において在留資格(出入国管理及び難民認定法別表第一の上欄の在留資格をいう。以下同じ。)を有する者であってその相続の開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
 ② 一時居住被相続人 相続開始の時において在留資格を有し、かつ、国内に住所を有していたその相続に係る被相続人であってその相続の開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
 ③ 非居住被相続人 相続開始の時において国内に住所を有していなかったその相続に係る被相続人であって、次に掲げる者をいう。
 イ その相続の開始前10年以内のいずれかの時において国内に住所を有していたことがあるもののうちその相続の開始前15年以内において国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの(この期間引き続き日本国籍を有していなかったものに限る。)
 ロ その相続の開始前10年以内のいずれの時においても国内に住所を有していたことがないもの
(注2)贈与税の納税義務についても同様。

3 適用関係  上記2の改正は、平成29年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される(改正法附則31①)。
 なお、平成29年4月1日から平成34年3月31日までの間に、国内に住所及び日本国籍を有しない者(上記2(2)①ロ(ロ))が、平成29年4月1日から相続若しくは遺贈又は贈与の時まで引き続き国内に住所及び日本国籍を有しない者(すなわち、同日までに日本を出国した外国人で引き続き日本に住所を有しない者)から相続若しくは遺贈又は贈与により取得した国外財産に対しては、相続税又は贈与税は課されない(改正法附則31②)。

二 相続税の物納制度の見直し

1 改正前の制度の概要
 物納に充てることができる財産は、相続財産のうち以下の①~③に掲げるもの(管理処分不適格財産を除く。)とされていた。なお、物納劣後財産を物納に充てることができる場合は、それぞれ①~③の財産のうちに適当な価額の物納劣後財産以外の財産がない場合に限られる(旧相法41②④)。
① 国債、地方債、不動産及び船舶
② 社債、株式及び証券投資信託又は貸付信託の受益証券
③ 動産
 上記②又は③に掲げる財産を物納に充てることができる場合は、税務署長が特別の事情があると認める場合のほか、②に掲げる財産については、①に掲げる財産のうち適当な価額のものがない場合に限られ、③に掲げる財産については、①及び②に掲げる財産のうちに適当な価額のものがない場合に限られていた(旧相法41⑤)。
(注1)管理処分不適格財産とは、抵当権が設定されている不動産、境界が不明確な土地等、国において管理又は処分するのに不適格な一定の財産をいう。
(注2)物納劣後財産とは、市街化区域外の土地、接道条件を満たさない土地等、他の財産に比して物納の順位が後れる一定の財産をいう。

2 改正の内容
(1)物納順位の変更
 相続税の物納に充てることができる財産の順位について、第二順位である上記1②の株式、社債及び証券投資信託又は貸付信託の受益証券のうち、
① 金融商品取引所に上場されているもの
② 証券投資信託(その投資信託約款に受益者の請求によりその証券投資信託に係る信託契約の一部解約をする旨及びその請求を行うことができる日が一月につき一日以上である旨が定められているものに限る。)の受益証券で金融商品取引所に上場されていないもの
が第一順位(上記1①の国債等と同順位)に引き上げられた(相法41⑤、相規21の2②)。
(2)物納財産の追加  以下の有価証券が新たに物納の申請をすることができる第一順位の財産として追加された(相法41②二⑤、相規21の2①)。
① 金融商品取引所に上場されている有価証券で次に掲げるもの
 イ 新株予約権証券
 ロ 投資信託及び投資法人に関する法律第2条第3項に規定する投資信託(上記1②の証券投資信託を除く。)の受益証券
 ハ 投資信託及び投資法人に関する法律第2条第15項に規定する投資証券
 ニ 資産の流動化に関する法律第2条第13項に規定する特定目的信託の受益証券
 ホ 信託法第185条第3項に規定する受益証券発行信託の受益証券
② 投資信託及び投資法人に関する法律第2条第12項に規定する投資法人(その規約に投資主の請求により投資口の払戻しをする旨が定められているものに限る。)の投資証券で、その請求を行うことができる日が一月につき一日以上である旨が定められているもの
(3)物納手続関係書類の追加  上記(1)②の証券投資信託の受益証券又は上記(2)②の投資証券の物納を申請する場合には、目論見書その他これに類する書類で、一部解約又は払戻しの請求を行うことができる日が一月につき一日以上であることが確認できる書類を物納申請書に添付して、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(相規22②五)。
 なお、この書類は、必ずしも「請求を行うことができる日が一月につき一日以上」といった日数が具体的に明記されている必要はない。ただし、その記載内容から同様の請求を行うことができることが確認できる必要がある。

3 適用関係  上記2の改正は、平成29年4月1日以後に物納の申請(再申請及び特定物納の申請を含む。3において同じ。)をする場合に適用され、同日前に物納の申請をした場合については、従前どおりとされている(改正法附則31③)。

租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正

一 特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例等の創設

1 制度の内容
(1)特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例
 特定非常災害に係る特定非常災害発生日前に相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。以下(1)及び(3)において同じ。)により財産を取得した者があり、かつ、その相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限がその特定非常災害発生日以後である場合において、その者がその相続若しくは遺贈により取得した財産又は贈与により取得した財産(その特定非常災害発生日の属する年(その特定非常災害発生日が1月1日から贈与税の申告書の提出期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日からその特定非常災害発生日の前日までの間に取得したもので、相続税法第19条又は第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに限る。)でその特定非常災害発生日において所有していたもののうちに、特定土地等又は特定株式等があるときは、その特定土地等又はその特定株式等に係る相続税の課税価格に算入すべき価額又は相続税の課税価格に加算される贈与により取得した財産の価額は、その特定非常災害の発生直後の価額とすることができる(措法69の6①)。
 上記及び下記(2)の各用語の意義は、以下のとおり。
① 特定非常災害
  特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいう。
② 特定土地等
  特定地域内にある土地又は土地の上に存する権利をいう(措法69の6①)。
(注)特定地域とは、特定非常災害により被災者生活再建支援法第3条第1項の規定の適用を受ける地域(この規定の適用がない場合には、その特定非常災害により相当な損害を受けた地域として財務大臣が指定する地域)をいう(措法69の6①)。
③ 特定株式等
  特定地域内に保有する資産の割合が高い一定の法人の株式又は出資(上場株式、金融商品取引法に規定する店頭売買有価証券に該当する株式等及び公開途上にある株式を除く。)をいう(措法69の6①、措令40の2の3②、措規23の2の3)。
  この場合の特定地域内に保有する資産の割合が高い一定の法人とは、相続等(相続若しくは遺贈又は贈与をいう。④において同じ。)により株式又は出資を取得した時において、その株式又は出資に係る法人の保有していた資産の時価の合計額のうちに占める特定地域内の動産(金銭及び有価証券を除く。)、不動産、不動産の上に存する権利及び立木(④ロにおいて「動産等」といいう。)の価額の合計額の割合が10分の3以上の法人をいうものとされている(措令40の2の3①)。
④ 特定非常災害の発生直後の価額
  特定非常災害の発生直後の価額は次のとおりとされている(措令40の2の3③)。
 イ 特定土地等
   特定土地等(その特定土地等の上にある不動産を含む。)の状況が特定非常災害の発生直後も引き続き相続等により取得した時の現況にあったものとみなして、特定非常災害の発生直後におけるその特定土地等の価額として評価した額に相当する金額とされている。
 ロ 特定株式等
   特定株式等を相続等により取得した時においてその特定株式等に係る法人が保有していた特定地域内にある動産等(その法人が特定非常災害発生日において保有していたものに限る。)の、その相続等により取得した時における状況が、特定非常災害の発生直後の現況にあったものとみなして、その相続等により取得した時におけるその特定株式等の価額として評価した額に相当する金額とされている。
 なお、この特例は、特定非常災害発生日前に、特別縁故者として、相続財産法人から相続財産の分与を受け、その相続財産の遺贈に係る相続税の申告書の提出期限が特定非常災害発生日以後である場合において、その遺贈を受けた相続財産で特定非常災害発生日において所有していたもののうちに特定土地等又は特定株式等があるときについても適用される(措法69の6②)。
 また、この特例の適用に当たっては、相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む。)又は更正請求書に、この規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合に限り適用することとされており、特例の適用は納税者の選択による(措法69の6③)。
(注)ただし、その記載がなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときには、この限りでない。
(2)特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例  個人が特定非常災害発生日の属する年(その特定非常災害発生日が1月1日から贈与税の申告書の提出期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日からその特定非常災害発生日の前日までの間に贈与により取得した財産でその特定非常災害発生日において所有していたもののうちに、特定土地等又は特定株式等がある場合には、その特定土地等又はその特定株式等に係る贈与税の課税価格に算入すべき価額は、その特定非常災害発生日に係る特定非常災害の発生直後の価額とすることができる(措法69の7①)。
 この特例は、相続税における特例と同様に、贈与税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む。)又は更正請求書に、この規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合に限り、適用することとされている(措法69の7②)。
(注)ただし、その記載がなかったことについて税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときには、この限りでない。
(3)相続税及び贈与税の申告書の提出期限の特例 ① 相続税の申告書の提出期限の特例
  同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者のうちに上記(1)の適用を受けることができる者がいる場合において、その相続若しくは遺贈により財産を取得した者又はその者の相続人(包括受遺者を含む。)が提出すべき相続税の申告書の提出期限が特定日(特定非常災害に係る国税通則法第11条の規定により延長された申告に関する期限と特定非常災害発生日の翌日から10月を経過する日とのいずれか遅い日をいう。②において同じ。)の前日以前であるときは、その相続税の申告書の提出期限は、特定日とされている(措法69の8①②)。
② 贈与税の申告書の提出期限の特例
  特定非常災害発生日の属する年(その特定非常災害発生日が1月1日から贈与税の申告書の提出期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から12月31日までの間に贈与により財産を取得した個人で上記(2)の適用を受けることができるものが提出すべき贈与税の申告書の提出期限が特定日の前日以前である場合には、その贈与税の申告書の提出期限は、特定日とされている(措法69の8③)。
  また、この場合の個人が贈与税の申告書を提出しないで死亡した場合等においてその相続人(包括受遺者を含む。)が提出すべき贈与税の申告書の提出期限が特定日の前日以前であるときも、その贈与税の申告書の提出期限は、特定日とされている(措法69の8④)。

2 適用関係  上記1(1)から(3)までの特例は、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される(改正法附則88①)。
 なお、特定非常災害発生日(平成28年4月1日以後の日に限る。)前で、かつ、平成29年1月1日前に相続又は遺贈(その相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で相続時精算課税の適用を受けるものに係る贈与を含む。)により財産を取得した者があり、かつ、その相続又は遺贈に係る相続税の申告書の提出期限がその特定非常災害発生日以後である場合において、その者がその相続又は遺贈により取得した財産でその特定非常災害発生日において所有していたもののうちに、特定土地等又は特定株式等があるときは、その相続又は遺贈により財産を取得した者は、上記1(1)及び(3)の適用を受けることができる(改正法附則88②)。
 また、平成28年1月1日から同年12月31日までの間に贈与により取得した財産で特定非常災害発生日(平成28年4月1日以後の日に限る。)において所有していたもののうちに、特定土地等又は特定株式等がある場合には、その贈与により財産を取得した者は、上記1(2)及び(3)の適用を受けることができる(改正法附則88③)。

二 医療法人の持分の放棄があった場合の贈与税の課税の特例の創設等

1 改正前の制度の概要
(1)医療法人の持分に係る経済的利益についての贈与税の納税猶予及び免除
 認定医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、その持分がその認定医療法人の持分を有する他の個人(以下(1)において「受贈者」という。)に帰属することとなり、その持分の増加という経済的利益について受贈者に対して贈与税が課される場合には、その放棄があった日の属する年分の贈与税で贈与税の申告書の提出により納付すべきものの額のうち、その放棄により受けた経済的利益の価額でその贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるものに係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、贈与税の申告期限までにその納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り、認定移行計画に記載された移行期限まで、納税が猶予される(措法70の7の5①)。
 また、移行期限までに次の①又は②に該当することとなった場合には、次の①又は②の金額に相当する贈与税は、免除される(措法70の7の5⑪)。
① 受贈者が有している認定医療法人の持分の全てを放棄した場合には、納税猶予分の贈与税額の全額
② 認定医療法人が基金拠出型医療法人へ移行する場合において、受贈者が有しているその認定医療法人の持分の一部を放棄し、その残余の部分をその基金拠出型医療法人の基金として拠出したときは、納税猶予分の贈与税額から基金として拠出した金額に対応する部分の税額に相当する金額を控除した残額
(注1)「認定医療法人」とは、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(平成26年10月1日。(5)において「平成26年改正医療法施行日」という。)から起算して3年を経過する日までの間に、持分なし医療法人に移行する計画を作成し、その計画について厚生労働大臣の認定を受けた医療法人をいう。
(注2)「認定移行計画」とは、持分なし医療法人に移行するための取組みの内容などが記載された計画で厚生労働大臣の認定を受けたものをいう。
(注3)「移行期限」とは、認定移行計画に記載された持分なし医療法人に移行する期限をいい、認定の日から3年以内とされている。
(注4)納税猶予分の贈与税額と納付税額の計算は以下のとおり(措法70の7の5①)。
 ① 上記の経済的利益及びそれ以外の受贈財産について通常の贈与税額を算出する。
 ② 上記の経済的利益の価額を受贈者に係るその年分の贈与税の課税価格とみなして、相続税法第21条の5及び第21条の7並びに租税特別措置法第70条の2の4及び第70条の2の5の規定を適用して計算した金額が納税猶予分の贈与税額となる。
 ③ 上記①の贈与税額から上記②の猶予税額を控除した金額が受贈者が贈与税の申告期限までに納付すべき贈与税額となる。
(2)医療法人の持分に係る経済的利益についての贈与税の税額控除  認定医療法人の持分を有する個人(以下(2)において「贈与者」という。)がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより、その持分がその認定医療法人の持分を有する他の個人(以下(2)において「受贈者」という。)に帰属することとなり、その持分の増加という経済的利益について受贈者に対して贈与税が課される場合において、受贈者が贈与者による放棄の時から経済的利益に係る贈与税の申告期限までの間に、その認定医療法人の持分の全部又は一部を放棄したときは、その受贈者の贈与税については、通常の計算による贈与税額(経済的利益及びそれ以外の受贈財産について相続税法第21条の5から第21条の8まで並びに租税特別措置法第70条の2の4及び第70条の2の5の規定を適用して計算した金額)から放棄相当贈与税額を控除した残額を申告期限までに納付すべき贈与税額とする(措法70の7の6①)。
(注)「放棄相当贈与税額」とは、上記(1)の納税猶予適用後に免除される税額と同様の税額となる(措法70の7の6②、措令40の8の5①②)。
(3)個人の死亡に伴い贈与又は遺贈があったものとみなされる場合の特例  経過措置医療法人(贈与税の申告期限において認定医療法人である法人に限る。)の持分を有する個人の死亡に伴い他の個人の持分の価額が増加した場合には、その持分の価額の増加による経済的利益に係る相続税法第9条本文の規定の適用については、同条本文中「贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)」とあるのは「贈与」と読み替えられ、遺言により経済的利益を受けた場合であっても贈与税が課税されるとともに、その経済的利益については、相続税法第19条第1項の規定は適用されず、相続税の課税対象ではなく贈与税の課税対象となる(措法70の7の7①)。
(注)「経過措置医療法人」とは、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(平成18年法律第84号。以下「平成18年医療法等改正法」という。)附則第10条の2に規定する経過措置医療法人をいい、具体的には持分あり医療法人を指す。
(4)医療法人の持分についての相続税の納税猶予及び免除  個人が経過措置医療法人の持分を有していた他の個人から相続又は遺贈によりその経過措置医療法人の持分を取得した場合において、その経過措置医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人であるときは、その持分を取得した個人が相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、その持分の価額で相続税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるものに係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、相続税の申告期限までにその納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、認定移行計画に記載された移行期限まで、その納税が猶予される(措法70の7の8①)。
 なお、免除に関しては、上記(1)の贈与税の納税猶予制度と同様。
(5)医療法人の持分についての相続税の税額控除  個人(以下(5)において「相続人等」という。)が経過措置医療法人の持分を有していた他の個人から相続又は遺贈によりその経過措置医療法人の持分を取得した場合において、その経過措置医療法人が相続の開始の時において認定医療法人(相続税の申告期限又は平成26年改正医療法施行日から起算して3年を経過する日のいずれか早い日までに厚生労働大臣の認定を受けた経過措置医療法人を含む。)であり、かつ、その持分を取得した相続人等が相続の開始の時から相続税の申告期限までの間に厚生労働大臣の認定を受けた経過措置医療法人の持分の全部又は一部を放棄したときは、その相続人等については、通常の計算による相続税額(持分及び持分以外の財産について相続税法第15条から第20条の2まで及び第21条の15第3項の規定により計算した金額)から放棄相当相続税額を控除した残額が、相続税の申告期限までに納付すべき相続税額となる(措法70の7の9①)。
(注)「放棄相当相続税額」とは、上記(4)の納税猶予適用後に免除される税額と同様の税額となる(措法70の7の9②、措令40の8の8①②)。

2 改正の概要
(1)医療法人の持分の放棄があった場合の贈与税の課税の特例の創設
① 贈与税の非課税(相続税法第66条第4項の不適用)
  認定医療法人(医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(平成29年10月1日)から平成32年9月30日までの間に平成18年医療法等改正法附則第10条の3第1項の規定による厚生労働大臣の認定(以下(1)において「厚生労働大臣認定」という。)を受けた医療法人に限る。)の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄(その認定医療法人がその移行期限までに持分なし医療法人への移行をする場合におけるその移行の基因となる放棄に限るものとし、その個人の遺言による放棄を除く。)をしたことによりその認定医療法人が経済的利益を受けた場合であっても、その認定医療法人が受けたその経済的利益については、贈与税は課されない(措法70の7の10①)。
  なお、この特例は、その認定医療法人の贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨を記載し、その認定医療法人がその放棄により受けた経済的利益についての明細及び次に掲げる書類の添付がある場合に限り、適用される(措法70の7の10⑤、措規23の12の6②)。
 イ その持分の放棄の時における認定医療法人の定款の写しその他の書類でその認定医療法人が厚生労働大臣認定を受けたことを証するもの
 ロ 認定医療法人の認定移行計画の写し
 ハ その持分の放棄の直前におけるその認定医療法人の出資者名簿の写し
 ニ その認定医療法人の持分の放棄があったことを明らかにする書類
(注)税務署長は、その記載又は添付がない贈与税の申告書の提出があった場合において、その記載又は添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類及び上記の書類の提出があった場合には、この特例を適用することができることとされている(措法70の7の10⑥)。
② 義務的修正申告
  その認定医療法人(その認定医療法人が合併により消滅した場合には、その合併によりその認定医療法人の権利義務の全てを承継した医療法人)が、贈与税の申告書の提出期限からその認定医療法人が持分なし医療法人への移行をした日から起算して6年を経過する日までの間に、平成18年医療法等改正法附則第10条の4第2項又は第3項の規定により厚生労働大臣認定が取り消された場合には、その認定医療法人を個人とみなして、その経済的利益について贈与税が課される。この場合において、その認定医療法人は、その厚生労働大臣認定が取り消された日の翌日から2月以内に、上記①の年分の贈与税についての修正申告書を提出し、かつ、その期限内にその修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならない(措法70の7の10②)。
  なお、この場合における認定医療法人の納付すべき贈与税額は、その放棄により受けた経済的利益について、その放棄をした者の異なるごとに、その放棄をした者の各一人のみから経済的利益を受けたものとみなして算出した場合の贈与税額の合計額とされている(措令40の8の9①)。
  また、この場合において、上記の修正申告書の提出がないときは、納税地の所轄税務署長は、その修正申告書に記載すべきであった贈与税の額その他の事項につき国税通則法の規定による更正を行うこととされている(措法70の7の10③)。
(注)この場合の贈与税の納税義務の判定にあたっては、認定医療法人は日本国籍を有するものと、その住所はその主たる事務所の所在地にあるものと、それぞれみなされる(措令40の8の9②)。
③ 通知規定
  厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長は、この特例を受ける認定医療法人について、平成18年医療法等改正法附則第10条の4第2項又は第3項の規定により厚生労働大臣認定を取り消した場合には、遅滞なく、その旨その他一定の事項を、書面により、国税庁長官又はその認定医療法人の納税地の所轄税務署長に通知しなければならないこととされている(措法70の7の10⑦)。
  また、税務署長は、厚生労働大臣又は地方厚生局長若しくは地方厚生支局長の事務(この特例を受ける認定医療法人に関する事務で、上記の通知に係るものに限る。)の処理を適正かつ確実に行うため必要があると認めるときは、厚生労働大臣又はその地方厚生局長若しくはその地方厚生支局長に対し、その認定医療法人がこの特例を受ける旨その他一定の事項を通知することができる(措法70の7の10⑧)。
(2)既存の特例措置の期限の延長  上記1(1)から(5)までの特例措置について、その適用に係る認定医療法人の厚生労働大臣認定の認定期限が平成32年9月30日まで3年間延長された。

3 適用関係  上記2(1)については、医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日以後に認定医療法人が放棄により受ける経済的利益に係る贈与税について適用される(改正法附則88⑲)。

三 非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予制度の改正

1 改正前の制度の概要
(1)非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除
① 概要
  経営承継受贈者が、認定贈与承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「贈与者」という。)からその認定贈与承継会社の非上場株式等を贈与により取得した場合には、その非上場株式等のうち特例受贈非上場株式等に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、贈与税の申告書(提出期限内に提出されるものに限る。)の提出期限までに一定の担保を提供した場合に限り、その贈与者の死亡の日まで納税が猶予される(旧措法70の7①)。
② 経営承継受贈者の範囲
  贈与者から、特例対象贈与(この特例の適用に係る贈与をいう。以下同じ。)により認定贈与承継会社の非上場株式等の取得をした個人で、次に掲げる要件などを満たす者をいう(旧措法70の7②三、措令40の8⑩)。
 イ 特例対象贈与の日において20歳以上であること
 ロ 特例対象贈与の時において、
 (イ)その認定贈与承継会社の代表権を有していること
 (ロ)その個人とその個人の同族関係者等の有するその認定贈与承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計が、その認定贈与承継会社に係る総株主等議決権数の100分の50を超えること
 (ハ)その個人が有するその認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、その個人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
 ハ その個人が、特例対象贈与の日まで引き続き3年以上継続してその認定贈与承継会社の役員であること
③ 認定贈与承継会社の範囲
  中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(平成20年法律第33号。以下「円滑化法」という。)第2条に規定する中小企業者(以下「中小企業者」という。)のうち、円滑化法の認定を受けた会社で、特例対象贈与の時において、次に掲げる要件などを満たすものをいう(旧措法70の7②一、四、旧措令40の8⑤~⑨)。
 イ その会社の常時使用従業員の数が1人以上であること
 ロ その会社が、資産管理会社(資産保有型会社又は資産運用型会社をいう。以下同じ。)のうち事業実態があるもの以外のものに該当しないこと
 ハ その会社及びその会社と政令で定める特別の関係がある一定の会社(以下「特定特別関係会社」という。)の株式等が非上場株式等に該当すること
 ニ その会社の特定特別関係会社(外国会社を除く。)が、中小企業者に該当すること
④ 納税猶予が打ち切られる場合
  次に掲げる場合などには納税猶予の期限が確定することとされている。
 イ 経営贈与承継期間(贈与税の申告期限の翌日から同日以後5年を経過する日又は経営承継受贈者若しくはその経営承継受贈者に係る贈与者の死亡の日の前日のいずれか早い日までの期間をいう。以下同じ。)内に納税猶予が打ち切られる場合
   経営贈与承継期間内にこの特例(旧措法70の7①)の適用を受ける経営承継受贈者又は特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社が次に掲げる場合等に該当することとなったときには、その日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限とされている(旧措法70の7④、旧措令40の8 )。
 (イ)経営承継受贈者が認定贈与承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合を除く。)
 (ロ)各第1種贈与基準日の認定贈与承継会社の常時使用従業員の数の合計を経営贈与承継期間内に存する第1種贈与基準日の数で除した数が、特例対象贈与時における常時使用従業員の数の80%(その数に一未満の端数があるときは、その端数を切り上げた数)を下回る数となった場合
 (ハ)経営承継受贈者がその特例受贈非上場株式等の一部の譲渡又は贈与(以下「譲渡等」という。)をした場合
 (ニ)認定贈与承継会社が資産管理会社(事業実態がないものに限る。)に該当することとなった場合
 (ホ)認定贈与承継会社の株式等が非上場株式等に該当しないこととなった場合
 ロ 経営贈与承継期間後に納税猶予が打ち切られる場合
   経営贈与承継期間の末日の翌日から猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定するまでの間において、この特例の適用を受ける経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等の一部の譲渡等をした場合や認定贈与承継会社が資産管理会社に該当することとなった場合などには、その譲渡等をした日などから2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限とされている(旧措法70の7⑥)。
⑤ 納税猶予税額が免除となる場合
  認定贈与承継会社について、経営贈与承継期間の末日の翌日以後に破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合などに該当することとなったときは、一定の納税猶予税額が免除される(旧措法70の7⑯⑰)。
⑥ 相続時精算課税の適用除外
  相続時精算課税適用者等が、その者に係る特定贈与者からの贈与により取得をした非上場株式等についてこの特例の適用を受ける場合には、この特例の適用を受ける特例受贈非上場株式等については、相続時精算課税の適用を受けることができないこととされている(旧措法70の7③)。 
(2)非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除 ① 概要
  経営承継相続人等が、認定承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「被相続人」という。)から相続又は遺贈によりその認定承継会社の非上場株式等の取得をした場合には、その非上場株式等のうち特例非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、相続税の申告書(提出期限内に提出されるものに限る。)の提出期限までに一定の担保を提供した場合に限り、その経営承継相続人等の死亡の日までその納税が猶予される(措法70の7の2①)。
② 経営承継相続人等の範囲
  被相続人から相続又は遺贈により認定承継会社の非上場株式等の取得をした個人で、次に掲げる要件などを満たす者をいう(措法70の7の2②三、措令40の8の2⑪)。
 イ 相続開始の日の翌日から5か月を経過する日において、認定承継会社の代表権を有していること
 ロ 相続開始の時において、
 (イ)その個人及びその個人の同族関係者等の有する認定承継会社の非上場株式等の議決権の数の合計が、その認定承継会社に係る総株主等議決権数の100分の50を超えること
 (ロ)その個人が有する認定承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、その個人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
 ハ 相続開始の直前において、その会社の役員であったこと
③ 認定承継会社の範囲
  円滑化法認定を受けた会社で、相続開始の時において、次に掲げる要件などを満たすものをいう(措法70の7の2②一、旧措令40の8の2⑦~⑩)。
 イ その会社の常時使用従業員の数が1人以上であること
 ロ その会社が、資産管理会社(事業実態があるものを除く。)に該当しないこと
 ハ その会社及び特定特別関係会社の株式等が非上場株式等に該当すること
 ニ その会社の特定特別関係会社(外国会社を除く。)が、中小企業者に該当すること
④ 納税猶予が打ち切られる場合
  次に掲げる場合などには納税猶予の期限が確定することとされている。
 イ 経営承継期間(相続税の申告期限の翌日から同日以後5年を経過する日又はその相続に係る経営承継相続人等の死亡の日の前日のいずれか早い日までの期間をいう。以下同じ。)内に納税猶予が打ち切られる場合(措法70の7の2③、旧措令40の8の2
 (イ)経営承継相続人等が認定承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合を除く。)
 (ロ)各第1種基準日の認定承継会社の常時使用従業員の数の合計を経営承継期間内に存する第1種基準日の数で除した数が、相続開始の時における常時使用従業員の数の80%(その数に一未満の端数があるときは、その端数を切り上げた数)を下回る数となった場合
 (ハ)経営承継相続人等が特例非上場株式等の一部の譲渡等をした場合
 (ニ)認定承継会社が資産管理会社(事業実態がないものに限る。)に該当することとなった場合
 (ホ)認定承継会社の株式等が非上場株式等に該当しないこととなった場合
 ロ 経営承継期間後に納税猶予が打ち切られる場合
   経営承継期間の末日の翌日から猶予中相続税額に相当する相続税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定するまでの間において、この特例(旧措法70の7の2①)の適用を受ける経営承継相続人等が特例非上場株式等の一部の譲渡等をした場合や認定承継会社が資産管理会社に該当することとなった場合などには、その譲渡等をした日などから2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限とされている(措法70の7の2⑤)。
⑤ 納税猶予税額が免除となる場合
  認定承継会社について、経営承継期間の末日の翌日以後に破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合などに該当することとなったときには、一定の納税猶予税額が免除される(措法70の7の2⑯⑰)。
(3)非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予 ① 概要
  非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例(措法70の7の3)により贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた特例受贈非上場株式等につきこの特例(措法70の7の4①)の適用を受けようとする経営相続承継受贈者が、その相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、特例相続非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その相続税の申告書の提出期限までに一定の担保を提供した場合に限り、その経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の7の4①)。
② 経営相続承継受贈者の範囲
  経営承継受贈者であって、その相続開始の時において、その特例受贈非上場株式等に係る認定相続承継会社の代表権を有していることなどの要件を満たす者をいう(旧措法70の7の4②三)。
③ 認定相続承継会社の範囲
  認定贈与承継会社で、相続開始の時において、次に掲げる要件などを満たすものをいう(旧措法70の7の4②一、旧措令40の8の3③~⑥)。
 イ その会社の常時使用従業員の数が1人以上であること
 ロ その会社が、資産管理会社(事業実態があるものを除く。)に該当しないこと
 ハ その会社及び特定特別関係会社の株式等が非上場株式等に該当すること
 ニ その会社及び特定特別関係会社が中小企業者であること
④ その他
  納税猶予が打ち切られる場合や納税猶予税額が免除となる場合については、上記(2)④⑤と同様。

2 改正の内容 ① 災害等の被災者等が本制度の適用を受ける場合について、次の措置が講じられた(措法70の7 、70の7の2 、70の7の4⑯~⑲)。
 イ 認定承継会社等が次に掲げる場合に該当することとなった場合には、その認定承継会社等の雇用確保要件(上記1(1)④イ(ロ)、(2)④イ(ロ)及び(3)④)及び資産管理会社非該当要件(上記1(1)④イ(ニ)、(2)④イ(ニ)及び(3)④)を緩和する。
 (イ)認定承継会社等の事業の用に供する資産が災害によって甚大な被害を受けた場合
 (ロ)認定承継会社等の事業所が災害によって被害を受けたことによりその認定承継会社等における雇用の確保が困難となった場合
 (ハ)中小企業信用保険法に規定する一定の災害等により認定承継会社等の売上金額が大幅に減少した一定の場合
 ロ 認定承継会社等が上記イ(イ)から(ハ)までに掲げる場合に該当する場合において、経営承継相続人等又は認定承継会社等が経営承継期間等内に次に掲げる場合のいずれかに該当することとなったときは、猶予税額の全部又は一部を免除する。
 (イ)経営承継相続人等が保有する認定承継会社等の非上場株式等を経営承継相続人等と一定の関係を有する者以外の者へ一括して譲渡等をした場合
 (ロ)認定承継会社等について、破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合
 ハ 災害等が発生した日から同日以後1年を経過する日までの間に相続等により会社の非上場株式等の取得をした個人が相続税の納税猶予制度の適用を受けようとする場合において、その会社が次に掲げる場合に該当するときは、資産管理会社非該当要件(上記1(2)③ロ及び1(3)③ロ)及び事前役員就任要件(上記1(2)②ハ)を免除する。
 (イ)その会社の事業の用に供する資産が災害によって甚大な被害を受けた場合
 (ロ)その会社の事業所が災害によって被害を受けたことによりその会社における雇用の確保が困難となった場合
 (ハ)中小企業信用保険法に規定する一定の災害等によりその会社の売上金額が大幅に減少した一定の場合
② 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時等の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に1人に満たない端数があるときは、これを切り捨てる(改正前:切り上げる)こととし、相続開始時等の常時使用従業員数が1人の場合には、1人とすることとされた(措令40の8、40の8の2、40の8の3⑯)。
③ 非上場株式等について贈与税の納税猶予及び免除(措法70の7①)の適用を受ける場合であっても相続時精算課税制度の適用を受けることができることとされた(措法70の7②五、旧措法70の7③)。
④ 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除(措法70の7の4①)における認定相続承継会社の要件について、その会社及び特定特別関係会社の株式等が非上場株式等に該当すること(特例対象贈与の日の属する年分の贈与税の申告期限の翌日から同日以後5年を経過する日の翌日以後にその贈与者が死亡した場合)並びにそれらの会社が中小企業者であることとする要件を撤廃することとされた(措法70の7の4②一、措令40の8の3⑥)。

3 適用関係 (1)上記2の改正は、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得をする非上場株式等に係る相続税又は贈与税について適用され、同日前に相続若しくは遺贈又は贈与により取得をした非上場株式等に係る相続税又は贈与税については、従前どおりとされている(改正法附則88⑩⑬⑯)。
(2)なお、上記2①の改正は、平成28年12月31日以前に相続若しくは遺贈又は贈与により取得した非上場株式等に係る相続税又は贈与税について、既に、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予及び免除(措法70の7①、70の7の2①、70の7の4①)の適用を受けていた者(以下「旧法適用者」という。)について、その認定承継会社等が平成28年4月1日以後に発生した災害等により上記2①イ(イ)から(ハ)までに掲げる場合に該当することとなった場合には、上記2①イ及びロの改正内容が適用される(改正法附則88⑪⑫⑭⑮⑰⑱)。
  また、上記2②の改正は、施行日(平成29年4月1日)以後、旧法適用者についても適用される(改正措令附則1、30①④⑦)。

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