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解説記事2017年07月24日 【税務マエストロ】 旅行業者における消費税実務のポイント(2)(2017年7月24日号・№700)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
旅行業者における消費税実務のポイント(2)

#193 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#194
租税条約の意義と現状①
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一
人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説
 前回に続き、旅行業者の消費税について実務上のポイントを確認する。なお、執筆に当たっては、一般社団法人日本旅行業協会発行の「旅行業者のための消費税・印紙税実務」を参考にしていることをあらかじめお断りしておきたい。

1 海外のホテル等から収受する手数料の取扱い
(1)原 則
 非居住者に対して行われる役務の提供で、次の①~③に掲げるもの以外のものは輸出免税の規定を適用することとしている(消令17②七)。
① 国内に所在する資産に係る運送又は保管
② 国内における飲食又は宿泊
③ ①及び②に準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
 具体的には、非居住者からの依頼に基づいて行った国内における広告宣伝や情報提供などが輸出免税の対象とされており、非居住者に対する役務の提供であっても、国内における飲食や宿泊などは消費税が課税されることとなる。
 また、「国内取引」に該当しなければ「免税」という概念はでないわけであるから、非居住者との取引が、まずは、国内取引に該当するかどうかを確認する必要がある。
 旅行代理店が、ツアー客に対し、海外のホテルや土産店の情報提供(紹介)などをしたことにより、非居住者である海外のホテル等から手数料を収受する場合には、原則として、その手数料収入は輸出免税売上高として処理することができる。
 旅行代理店は、非居住者である海外のホテル等に代わってツアー客に情報を提供しているものである。よって、その取引は、国内において行う非居住者に対する役務の提供で、上記①~③のいずれにも該当しないことから輸出免税の規定が適用されることになるのである(図表1参照)。

(2)日本国内にレップを設置している場合  海外のホテルや土産店が日本国内にレップを設置している場合には、その取引はレップ経由で行ったものと認定されるので輸出免税の対象とすることはできない(図表2参照)。

 ただし、次の①および②のいずれにも該当する場合に限り、支店や出張所があっても輸出免税の規定を適用することが認められている(消基通7-2-17)。
① 役務の提供が非居住者の本店等との直接取引であり、支店等はこの取引に直接的にも間接的にもかかわっていないこと。
② 支店等の業務内容は、その取引にかかる業務と同種あるいは関連する業務でないこと
(注)「レップ」とは、業界用語であり、ホテル、ホールセラー、旅行業者などの駐在員、連絡員、代表のことで、通常、現金の収受を行わず、予約受付、手配宣伝、販促等の業務を行っている。 
(3)日本国内に子会社を設置している場合  海外のホテルや土産店が日本国内に子会社を設置している場合には、その子会社は非居住者(ホテルなど)とは人格が異なるものであり、支店や出張所などとは異なった取扱いになる。したがって、国内に設置したレップが子会社などの法人格を有する場合には、たとえレップが国内にあったとしても、手数料収入は輸出免税売上高として処理することができる(図表3参照)。


2 通訳、ガイド、添乗員等の費用  通訳、ガイド、派遣などの役務の提供にかかる内外判定は、原則として役務提供地が国内かどうかで判定することとされている(消法4③二)。
 したがって、通訳のような役務提供は通常国外で行われるものであり、その旨が契約により明らかにされている場合には、その料金は国外取引として仕入税額控除の対象とはならない。
 添乗サービスなどについても同様に、役務提供地が国内かどうかで内外判定をすることになるわけであるが、添乗サービスなどの役務の提供は、通常、国内から国外にわたって連続して行われるのが一般的であり、役務提供地を明確に区分することができない。そこで、役務提供が国内から国外に連続している場合や役務提供地が明らかでない場合には、役務提供にかかる事務所等の所在地により、内外判定をすることとされている(消令6②六)。 
 したがって、人材派遣会社の人材派遣にかかる事務所等の所在地が国内の場合には、人材派遣会社に支払う派遣料などの費用は国内取引に該当し、仕入税額控除の対象となる。ただし、国内の人材派遣会社に支払う派遣料などであっても、その事務所等の所在地が国外(現地)の場合には国外取引に該当し、その派遣料は仕入税額控除の対象とはならない。
 また、人材派遣会社が通訳などのために人材派遣をした場合において、海外旅費、現地での宿泊費、日当などについて実費相当額を区分して請求したとしても、その旅費や宿泊費は通訳料などの一部と認められる。したがって、その役務提供が国内取引に該当する場合には、旅費や宿泊費も含めた全額を課税売上高として認識する必要がある。


3 海外パック旅行に要する課税仕入れ等の用途区分  海外パック旅行については、国内における運賃や宿泊費がセットされている商品を除き、国外取引としてその売上高は課税対象外収入となる。
 ただし、旅行業者が旅行代理店に支払う販売手数料や国内取引に該当する添乗サービス等の費用は国内で行う課税仕入れであり、たとえ海外パック旅行に対するものであっても仕入税額控除の対象とすることができる。個別対応方式を適用する場合には、この国外取引のために要する課税仕入れ等は「課税売上対応分」に区分されるので、結果、その全額が仕入税額控除の対象となるのである(消基通11-2-13)。
<参考>  個別対応方式を適用する場合には、海外パック旅行のために要する課税仕入れ等は「課税売上対応分」に区分することができる。その理由について、通達の文言だけでなく、法令に沿ってその考え方と法令の読み方を確認していきたい(図表5参照)。

法令通達 読み方と考え方
 資産の譲渡等(消法2①八)
 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。
 資産の譲渡等の定義には「国内において」という要件はない。結果、国外取引となる海外パック旅行の譲渡も「資産の譲渡等」に該当することになる。
 課税資産の譲渡等(消法2①九)
 資産の譲渡等のうち、第6条第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。
 資産の譲渡等のうち、非課税以外のものはすべて課税資産の譲渡等に該当することになる。
 非課税(消法6①)
 国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第1に掲げるものには、消費税を課さない。
 非課税は国内において行われるものに限定されているので、国外において行われる資産の譲渡等はすべて課税資産の譲渡等に該当することになる。
 国外取引に係る仕入税額控除(消基通11−2−13)
 国外において行う資産の譲渡等のための課税仕入れ等がある場合は、当該課税仕入れ等について法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるから留意する。
 この場合において、事業者が個別対応方式を適用するときは、当該課税仕入れ等は課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当する。
 「資産の譲渡等−非課税=課税資産の譲渡等」となるため、国外取引となる海外パック旅行は課税資産の譲渡等に該当することになる。結果、海外パック旅行のために要する国内において行った課税仕入れ等は「課税売上対応分」に区分することができる。


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