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解説記事2017年08月07日 【税制改正解説】 平成29年度における法人税関係の改正について(上)(2017年8月7日号・№702)

税制改正解説
平成29年度における法人税関係の改正について(上)
 水野雅也

はじめに

 平成29年度税制改正においては、我が国経済の成長力の底上げのため、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点からの配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し並びに経済の好循環を促す観点からの試験研究を行った場合の税額控除制度及び所得拡大促進税制の見直し並びに中小企業向け設備投資促進税制の拡充等を行うとともに、酒類間の税負担の公平性の回復及び国際的な租税回避についてのより効果的な対応のための見直し並びに災害に関する特例の整備等を行うこととされた。
 このうち法人税関係については、研究開発税制及び所得拡大促進税制の見直し並びに中小企業向け設備投資促進税制の拡充等を行うこととされたほか、我が国経済の好循環を確かなものとするために、コーポレートガバナンスを強化することにより、中長期的な企業価値の向上に資する投資など、「攻めの経営」を促進することが重要であるとの観点から、企業と投資家の対話の充実を図るため、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、申告期限の延長可能月数を拡大する改正、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする改正、経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するため、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制の整備を行うこととされた。また、近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応の規定が常設化された。
 本稿は、これらの改正の内容を紹介するものである。

法人税法等の改正

Ⅰ 確定申告書の提出期限の延長の特例

1 改正の内容
(1)
内国法人が会計監査人を置いている場合で、かつ、その定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3月以内にその事業年度の決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、確定申告書の提出期限について、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間延長することができることとされた(法法75の2①)。
(2)延長月数の変更手続を定める等の所要の措置が講じられた(法法75の2②等)。
 なお、連結納税制度の場合についても、上記(1)及び(2)と同様の改正が行われている(法法81の24①等)。

2 適用関係
(1)
上記1の改正は、平成29年4月1日から施行されている(改正法附則1)。
(2)平成29年4月1日前にされた申告書の提出期限の延長の特例の申請であって、改正法の施行の際、提出期限の延長又は却下の処分がされていないものについての処分については、従前どおりとされている(改正法附則21①)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則25①)。

Ⅱ 役員給与等

1 改正の内容
(1)利益連動給与(改正後:業績連動給与)の見直し
① 支給額の算定方法の基礎とすることができる指標の改正
 イ 給与の支給額の算定方法の基礎とすることができる指標に、株式の市場価格の状況を示す指標及び売上高の状況を示す指標が追加された(法法34①三イ)。
 ロ 利益の状況を示す指標の要素となる利益の額、費用の額等の算出期間について、職務執行期間開始日以後に終了する事業年度とされた(法法34①三イ、法令69⑩)。
 ハ 損金経理要件について、給与の見込額として損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法により経理していることとの要件を満たす場合にも損金算入できることとされた(法令69⑰二)。
② 株式又は新株予約権による給与が、損金算入できる業績連動給与の範囲に追加された(法法34①三イ)。
③ 同族会社のうち同族会社以外の法人との間にその法人による完全支配関係がある法人の支給する給与が、損金算入できる業績連動給与の範囲に追加された(法法34①三)。
(2)退職給与及び新株予約権による給与の見直し  退職給与で業績連動給与に該当するもの及び新株予約権による役員給与について、法人税法第34条第1項の損金算入要件を満たさないものは、損金不算入とされた(法法34①)。
(3)事前確定届出給与の見直し  事前確定届出給与の範囲に、所定の時期に確定した数の株式又は新株予約権を交付する旨の定めに基づいて支給する給与が追加された(法法34①二)。
(4)定期同額給与の見直し  定期給与の各支給時期における支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額である場合には、その定期給与の各支給時期における支給額は、同額であるものとみなすこととされた(法令69②)。
(5)確定申告書の提出期限の延長の特例の改正に伴う見直し  確定申告書の提出期限の延長の特例に係る延長期間の指定を受けている内国法人について、定期同額給与の改定期限、事前確定届出給与の届出期限及び業績連動給与における報酬委員会の決定等の手続期限の見直しが行われた(法令69①一イ④一⑬)。
(6)譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例の見直し ① 個人から役務の提供を受ける法人以外の法人が発行した特定譲渡制限付株式が交付される場合にも本特例の対象となる特定譲渡制限付株式とされた(法法54①)。
② 特定譲渡制限付株式について、給与等課税額が生ずることが確定した日(改正前:給与等課税事由が生じた日)において役務の提供を受けたこととすることとされた(法法54①)。
③ 非居住者に対して交付されている特定譲渡制限付株式又は承継譲渡制限付株式については、その非居住者が居住者であるとしたときにおける給与等課税額が生ずることが確定した日に役務の提供を受けたものとすることとされた(法令111の2③)。
④ 特定譲渡制限付株式による給与が確定数給与に該当する場合には、その特定譲渡制限付株式の交付が正常な取引条件で行われた場合におけるその役務の提供に係る費用の額は、交付決議時価額に相当する金額とされた(法令111の2④)。
(7)新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例の見直し ① 権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されている新株予約権(以下「譲渡制限付新株予約権」という。)で次のいずれかに該当するものが本特例の対象となる特定新株予約権とされた(法法54の2①)。
 イ その譲渡制限付新株予約権と引換えにする払込みに代えて役務の提供の対価としてその交付を受ける個人に生ずる債権をもって相殺されること。
 ロ 上記イのほか、その譲渡制限付新株予約権が実質的に役務の提供の対価と認められるものであること。
② 個人から役務の提供を受ける法人以外の法人が発行した特定新株予約権が交付される場合にも本特例の対象となる特定新株予約権とされた(法法54の2①)。
③ 非居住者に対して交付されている特定新株予約権又は承継新株予約権については、その非居住者が居住者であるとしたときにおける給与等課税事由が生じた日に役務の提供を受けたものとすることとされた(法令111の3②)。
④ 特定新株予約権による給与が確定数給与に該当する場合には、その特定新株予約権の交付が正常な取引条件で行われた場合におけるその役務の提供に係る費用の額は、交付決議時価額に相当する金額とされた(法令111の3③)。

2 適用関係
(1)
上記1(1)①、②(新株予約権に係る部分を除く。)及び③、(3)(新株予約権に係る部分を除く。)、(4)(5)並びに(6)④の改正は、法人が平成29年4月1日以後にその支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をする給与について適用し、法人が同日前にその支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をした給与については、従前どおりとされている(改正法附則14①③、改正法令附則9①③)。
(2)上記1(1)②(新株予約権に係る部分に限る。)、(2)並びに(3)(新株予約権に係る部分に限る。)の改正は、法人が平成29年10月1日以後にその支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をする給与について適用し、法人が同日前にその支給に係る決議(その決議が行われない場合には、その支給)をした給与については、従前どおりとされている(改正法附則14②③、改正法令附則9②③)。
(3)上記1(6)(④を除く。)及び(7)の改正は、法人が平成29年10月1日以後にその交付に係る決議(その決議が行われない場合には、その交付)をする特定譲渡制限付株式及びその特定譲渡制限付株式に係る承継譲渡制限付株式並びに特定新株予約権及びその特定新株予約権に係る承継新株予約権について適用し、法人が同日前にその交付に係る決議(その決議が行われない場合には、その交付)をした特定譲渡制限付株式及びその特定譲渡制限付株式に係る承継譲渡制限付株式並びに新株予約権及びその新株予約権に係る承継新株予約権については、従前どおりとされている(改正法附則15、改正法令附則10)。

Ⅲ 組織再編税制

1 改正の内容
(1)独立して事業を行うための分割の適格分割への追加
 一の法人のみが分割法人となる分割型分割に係る分割法人のその分割前に行う事業をその分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割が、適格分割とされた(法法2十二の十一ニ)。
(2)株式分配に係る措置の創設  完全子法人の株式のみが移転する株式分配のうち、完全子法人と現物分配法人とが独立して事業を行うための株式分配として一定の要件に該当するものが、適格株式分配とされ、完全子法人の株式の移転が適格株式分配の直前の帳簿価額による譲渡とされるほか、他の適格組織再編成に準じた措置が講じられた(法法2十二の十五の三、法法62の5③等)。
(注)株式分配とは、現物分配(剰余金の配当又は利益の配当に限る。)のうち、その完全子法人の発行済株式等の全部が移転するものをいう。
(3)吸収合併及び株式交換における対価要件の見直し  吸収合併及び株式交換の適格要件について、合併法人又は株式交換完全親法人の被合併法人又は株式交換完全子法人に対する持株割合が3分の2以上の場合には、金銭その他の資産の交付がある場合にも適格合併又は適格株式交換の要件のうち対価要件を満たすこととされた(法法2十二の八、十二の十七)。
(4)完全子法人化の課税関係の統一  全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求について、組織再編税制の下に位置づけ、株式交換と同様の適格要件に該当しない場合にはその有する資産の時価評価課税の対象とする一方、その適格要件に該当する場合には連結納税への欠損金の持ち込みを可能とすることとされた(法法2十二の十六等)。
(5)時価評価資産の範囲の見直し  非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価について、時価評価の対象となる資産の範囲から、帳簿価額が1,000万円に満たない資産が除外された(法令123の11①四)。
(6)全部取得条項付種類株式の端数処理に係るみなし配当  みなし配当の額が生ずる事由となる自己の株式の取得から除外される特定の事由による取得における事由に、全部取得条項付種類株式を発行する旨の定めを設ける定款等の変更に反対する株主等の買取請求に基づく買取りが追加された(法令23③十)。
(7)適格要件の見直し ① 完全支配関係又は支配関係がある法人間で行われる分割型分割に係る株式の保有関係に関する要件について、支配株主と分割法人との間の完全支配関係又は支配関係が継続することが見込まれていることが不要とされた(法令4の3⑥一イ⑦一イ等)。
② 共同で事業を行うための合併、分割型分割、株式交換及び株式移転に係る株式継続保有要件について、交付される合併法人の株式等のうち支配株主に交付されるもの(対価株式)の全部が支配株主により継続して保有されることが見込まれていることとされた(法令4の3④五⑧六イ⑳五五)。
③ 当初の組織再編成の後に他の組織再編成が行われることが見込まれている場合における当初の組織再編成の適格要件について、所要の整備が行われた(法法2十二の十一ロ(1)・十二の十四ロ(1)等)。
④ 株式交換及び株式移転に係る株式の保有関係に関する要件及び支配関係継続要件について、所要の整備が行われた(法令4の3⑱一五等)。
(8)欠損金の引継ぎの制限及び切捨て並びに特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入における対象資産の取得時期等の見直し ① 適格合併等が行われた場合の欠損金の引継ぎの制限
  被合併法人等の未処理欠損金額に含まないこととされる欠損金額(引継対象外未処理欠損金額)の計算について、特定資産譲渡等損失額に相当する金額の基因となる資産が、支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していた一定の資産(改正前:支配関係発生日において有する一定の資産)とされた(法令112⑤一)。
② 適格組織再編成等が行われた場合の欠損金の切捨て
  内国法人の欠損金額からないものとされる欠損金額(制限対象欠損金額)の計算について、上記①と同様の改正が行われた(法令112⑪)。
③ 特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入
 イ 特定保有資産の範囲が、支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していた一定の資産(改正前:支配関係発生日前から有していた一定の資産)とされた(法法62の7②二)。
 ロ 特定引継資産から除外される資産に、支配関係法人が支配関係発生日の属する事業年度開始の日以後に有することとなった資産が追加された(法令123の8③五)。
(9)営業権の償却限度額並びに資産調整勘定及び差額負債調整勘定の損金及び益金算入額の計算方法の見直し ① 事業年度の中途において事業の用に供した営業権のその事業年度の償却限度額について、月割計算を行うこととされた(法令59①一)。
② 資産調整勘定の金額及び差額負債調整勘定の金額について、これらの金額が生じた非適格合併等の日の属する事業年度において減額して損金の額及び益金の額に算入しなければならない金額は、月割計算を行うこととされた(法法62の8④⑦)。

2 適用関係
(1)
上記1(1)の改正は、平成29年4月1日以後に行われる分割について適用し、同日前に行われた分割については、従前どおりとされている(改正法附則11①、改正法令附則2①)。
(2)上記1(2)の改正は、平成29年4月1日以後に行われる現物分配について適用し、同日前に行われた現物分配については、従前どおりとされている(改正法附則11①、改正法令附則2①、3、5①、6①)。
(3)上記1(3)の改正は、平成29年10月1日以後に行われる合併又は株式交換について適用し、同日前に行われた合併又は株式交換については、従前どおりとされている(改正法附則11②、改正法令附則2②)。
(4)上記1(4)の改正は、平成29年10月1日以後に行われる株式交換等について適用し、同日前に行われた株式交換については、従前どおりとされている(改正法附則11②、改正法令附則2②)。
(5)上記1(5)の改正は、平成29年10月1日以後に行われる株式交換等又は株式移転について適用し、同日前に行われた株式交換又は株式移転については、従前どおりとされている(改正法令附則2②)。
(6)上記1(6)の改正は、平成29年10月1日以後に生ずる事由について適用することとされている(改正法令附則7)。
(7)上記1(7)の改正は、平成29年10月1日以後に行われる合併、分割、現物出資、株式交換等又は株式移転について適用し、同日前に行われた合併、分割、現物出資、株式交換又は株式移転については、従前どおりとされている(改正法附則11②、改正法令附則2②)。
(8)上記1(8)①の改正は、内国法人と平成29年4月1日以後にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなる被合併法人との間で行われる適格合併又は同日以後にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなる他の内国法人の残余財産の確定について適用し、内国法人と同日前にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった被合併法人との間で行われた適格合併又は同日前にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった他の内国法人の残余財産の確定については、従前どおりとされている(改正法令附則11①)。
  上記1(8)②の改正は、内国法人と平成29年4月1日以後にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなる支配関係法人との間で行われる適格組織再編成等について適用し、内国法人と同日前にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった支配関係法人との間で行われた適格組織再編成等については、従前どおりとされている(改正法令附則11②)。
  上記1(8)③イの改正は、法人が平成29年4月1日以後に支配関係法人との間に支配関係があることとなる場合における特定保有資産の特定資産譲渡等損失額について適用し、法人が同日前に支配関係法人との間に支配関係があることとなった場合における特定保有資産の特定資産譲渡等損失額については、従前どおりとされている(改正法附則18)。
  上記1(8)③ロの改正は、内国法人と平成29年4月1日以後にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなる支配関係法人との間で行われる特定適格組織再編成等について適用し、内国法人と同日前にその内国法人との間に最後に支配関係があることとなった支配関係法人との間で行われた特定適格組織再編成等については、従前どおりとされている(改正法令附則16)。
(9)上記1(9)①の改正は、法人が平成29年4月1日以後に取得をする減価償却資産について適用し、法人が同日前に取得をした減価償却資産については、従前どおりとされている(改正法令附則8)。
  上記1(9)②の改正は、平成29年4月1日以後に行われる非適格合併等について適用し、同日前に行われた非適格合併等については、従前どおりとされている(改正法附則19)。

Ⅳ 災害に関する税制上の措置

1 改正の内容
(1)災害損失欠損金の繰戻しによる還付制度の創設
 災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた欠損金額のうち、災害損失欠損金額がある場合には、その事業年度又は中間期間開始の日前2年(白色申告である場合には、1年)以内に開始した事業年度の法人税額のうちその災害損失欠損金額に対応する部分の金額の還付を受けることができることとされた(法法80)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(法法81の31⑤)。
(2)仮決算による中間申告における所得税額の還付制度の創設  災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額がある場合には、その中間期間に係る仮決算による中間申告において、その災害損失金額を限度として、その課された所得税の額で法人税の額から控除しきれなかった金額を還付することとされた(法法72、78)。連結納税制度においても、同様の措置が講じられている(法法81の20、81の29)。
(3)中間申告書の提出不要  国税通則法第11条の規定による申告期限の延長により、中間申告書の提出期限とその中間申告書に係る確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合には、その中間申告書の提出を要しないこととされた(法法71の2)。連結中間申告書についても同様とされている(法法81の19の2)。

2 適用関係
(1)
上記1(1)の改正は、平成29年4月1日から施行されている(改正法附則1)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則26)。
(2)上記1(2)の改正は、平成29年4月1日から施行されている(改正法附則1)。
(3)上記1(3)の改正は、平成29年4月1日から施行されている(改正法附則1)。

Ⅴ 法人税の納税地の異動届出書等の提出先のワンストップ化

1 改正の内容
 法人税の納税地の異動の届出について、異動後の納税地の所轄税務署長への提出が不要とされた。また、連結子法人の本店等所在地の異動の届出について、異動後の本店等所在地の所轄税務署長への提出が不要とされた(法法20①②)。

2 適用関係  上記1の改正は、法人の平成29年4月1日以後の納税地の異動について適用し、法人の同日前の納税地の異動については、従前どおりとされている(改正法附則13①)。連結子法人の本店等所在地の異動についても同様である。(改正法附則13②)。

Ⅵ 設立等の届出書の添付書類の簡素化

1 改正の内容
 法人設立届出書、収益事業開始届出書等について、登記事項証明書の添付が不要とされた(旧法規63①三、65①三②三)。

2 適用関係  上記1の改正は、平成29年4月1日以後に提出する届出書について適用し、同日前に提出した届出書については、従前どおりとされている(改正法規附則5)。

Ⅶ その他

(1)特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用等
 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用及び資産の譲渡等損失額の損金不算入制度について、制度の適用を判定する期限を繰り上げる事由から解散後に他の者による完全支配関係がある法人の残余財産の確定の見込みがある場合のその解散を除外するとともに、評価損資産の判定時点が特定支配日の属する事業年度開始の日(改正前:特定支配日)とされた(法法60の3①、法令113の2⑥等)。
(2)連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価  連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、時価評価資産の範囲から、帳簿価額が1,000万円に満たない資産が除外された(法令122の12①四)。

租税特別措置法(法人税関係)の改正

Ⅰ 税額控除等関係

一 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(研究開発税制)

1 改正の内容
 本制度について、次の見直しが行われた。
(1)試験研究費の総額に係る税額控除制度の見直し ① 税額控除割合が、増減試験研究費割合の次の区分に応じたそれぞれ次の割合(その事業年度が設立事業年度であるとき又は比較試験研究費の額が零であるときは、8.5%)(改正前:試験研究費割合に応じて8~10%)とされた(措法42の4①)。
 イ 増減試験研究費割合が5%を超える場合:9%に、その増減試験研究費割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した割合を加算した割合(上限:10%)
   なお、上記の上限は、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、14%とする措置が講じられている(措法42の4①②)。
 ロ 増減試験研究費割合が5%以下である場合:9%から、5%からその増減試験研究費割合を減算した割合に0.1を乗じて計算した割合を減算した割合(下限:6%)
② 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度における試験研究費割合が10%を超える場合のその10%を超える事業年度において、税額控除額の上限を、当期の調整前法人税額の25%相当額に、その調整前法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合に2を乗じて計算した割合(上限:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする措置が講じられた(措法42の4①⑤)。
(2)中小企業技術基盤強化税制の見直し ① 平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始する各事業年度における増減試験研究費割合が5%を超える場合のその5%を超える事業年度において、次の措置が講じられた(措法42の4③④)。
 イ 税額控除割合を、12%に、増減試験研究費割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した割合を加算した割合(上限:17%)とする措置
 ロ 税額控除額の上限を当期の調整前法人税額の35%相当額とする措置
② 上記(1)②と同じ措置が講じられた(措法42の4③⑤)。
(3)特別試験研究費の額に係る税額控除制度の見直し  大学等又は他の者との共同研究におけるその共同研究に係る法人の自社外試験研究費の額及び大学等又は特定中小企業者等への委託研究におけるその委託研究に係る法人の委託試験研究費の額について、大学等、他の者又は特定中小企業者等が支出するこれらの試験研究に要した費用の項目の限定が撤廃され、これらの試験研究に係る試験研究費の額のうち、これらの試験研究に要した費用であってこれらの法人が負担したものに係るものとされた(措規20⑲一イ・二イ・三・四)。
(4)試験研究費の増加額又は平均売上金額の10%相当額を超える試験研究費の額に係る税額控除制度の見直し  試験研究費の増加額に係る税額控除制度がその適用期限(平成29年3月31日)の到来をもって廃止されるとともに、平均売上金額の10%相当額を超える試験研究費の額に係る税額控除制度の適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された(旧措法42の4④一、措法42の4⑦)。
 ただし、この制度の対象となる事業年度からは、上記(1)②若しくは(2)②の措置又は上記(2)①ロの税額控除割合の上限に係る措置の適用を受ける事業年度は除外される。
(5)試験研究費の範囲の見直し  試験研究費に対価を得て提供する新たな役務の開発に係る一定の試験研究のために要する費用が追加された(措法42の4⑧一、措令27の4②③、措規20①②)。
 なお、連結納税制度の場合についても、上記(1)から(5)までと同様の改正が行われている(措法68の9①~⑤⑦⑧一、措令39の39②③、措規22の23①②⑲一イ・二イ・三・四)。

2 適用関係
(1)
上記1(1)(2)(3)及び(5)の改正は、法人の平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度分の法人税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則61)。連結納税制度の場合については、連結法人の連結親法人事業年度が平成29年4月1日以後に開始する連結事業年度分の法人税について適用し、連結法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した連結事業年度分の法人税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則75①)。
(2)上記1(4)の改正は、法人の平成29年4月1日前に開始した事業年度分の法人税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則61)。連結納税制度の場合は、連結法人の連結親法人事業年度が同日前に開始した連結事業年度分の法人税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則75①)。

二 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度(環境関連投資促進税制)

1 改正の内容
 本制度について、対象から除外されている電気事業の用に供した場合が、発電事業者に該当する法人のうち、小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者若しくは特定送配電事業者のいずれかに該当するもの又は発電用の電気工作物の出力の合計が200万kWを超えるものが発電の用に供した場合とされた(措法42の5①、措規20の2)。
 なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の10①、措規22の24)。

2 適用関係  上記1の改正は、法人が平成29年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする新エネルギー利用設備等について適用し、法人が同日前に取得又は製作若しくは建設をした新エネルギー利用設備等については、なお従前の例によることとされている(改正法附則63)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則76)。

三 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(連結:中小連結法人が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除)制度(中小企業投資促進税制)

1 改正の内容
 本制度について、次の見直しが行われた上、その適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された(措法42の6①)。
(1)特定生産性向上設備等に係る措置は、その適用期限(平成29年3月31日)の到来をもって廃止された(旧措法42の6②④、旧措令27の6⑦⑧)。
(2)対象資産から器具備品が除外された(措法42の6①一、旧措規20の3①二~四)。
(3)税額控除額の上限が、この制度における税額控除、下記八の制度における税額控除及び下記九の制度における税額控除の合計(改正前:この制度における税額控除のみ)で当期の調整前法人税額の20%相当額とされた(措法42の6③)。
  なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の11①③、旧措法68の11②④、措令39の41⑤、旧措令39の41③④⑦⑨二)。

2 適用関係
(1)
上記1(1)の改正は、法人が平成29年4月1日前に取得又は製作をした特定生産性向上設備等については、なお従前の例によることとされている(改正法附則64②)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則77②)。
(2)上記1(2)の改正は、法人が平成29年4月1日以後に取得又は製作をする特定機械装置等について適用し、法人が同日前に取得又は製作をした特定機械装置等については、なお従前の例によることとされている(改正法附則64①)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則77①)。
(3)上記1(3)の改正は、法人の平成29年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に終了した事業年度分の法人税については、なお従前の例によることとされている(改正法附則64④)。連結納税制度の場合についても同様である(改正法附則77④)。

四 沖縄の特定地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除制度

1 改正の内容
 本制度について、観光地形成促進地域に係る措置における特定民間観光関連施設から野球場等の9施設が除外された上、制度の適用期限が平成31年3月31日まで2年延長された(措法42の9①、措令27の9①、措規20の4②一・二)。
 なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の13①)。

2 適用関係  上記1の改正は、法人が平成29年4月1日以後に取得又は製作若しくは建設をする工業用機械等について適用し、法人が同日前に取得又は製作若しくは建設をした工業用機械等については、なお従前の例によることとされている(改正措規附則8)。連結納税制度の場合についても同様である。

五 地域経済牽けん引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度(創設)

1 制度の概要
 青色申告書を提出する法人で地域経済牽けん引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律の承認地域経済牽引事業者であるものが、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律の施行の日から平成31年3月31日までの間に、その法人の行う承認地域経済牽引事業に係る促進区域内においてその承認地域経済牽引事業に係る承認地域経済牽引事業計画に従って特定地域経済牽引事業施設等の新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る特定事業用機械等の取得等をして、これをその承認地域経済牽引事業の用に供したときは、その承認地域経済牽引事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定事業用機械等の基準取得価額の40%(建物等及び構築物は、20%)相当額の特別償却とその基準取得価額の4%(建物等及び構築物は、2%)相当額の税額控除(税額控除額は、当期の調整前法人税額の20%相当額が上限とされている。)との選択適用ができる制度が創設された(措法42の11の2①②)。
 なお、連結納税制度の場合についても、同様の措置が講じられている(措法68の14の3①②)。

2 適用関係  上記1の制度は、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律第47号)の施行の日から施行することとされている(改正法附則1十)。

六 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度

1 改正の内容
 本制度について、地方活力向上地域特定業務施設整備計画について認定を受けた日が含まれる期間が平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間である場合の税額控除割合が、4%(改正前:2%)(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、7%(改正前:4%))とされた(措法42の11の3②)。
 なお、連結納税制度の場合についても、同様の改正が行われている(措法68の15②)。

2 適用関係  上記1の改正は、平成29年4月1日から施行されている(改正法附則1)。

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