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解説記事2017年09月04日 【SCOPE】 税効果会計の一部改正案、内容面での変更はない方向(2017年9月4日号・№705)

注記への反対意見は多いが……
税効果会計の一部改正案、内容面での変更はない方向

 企業会計基準委員会は8月7日まで意見募集を行っていた「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)等に対するコメントについて検討を開始した。公開草案に対するコメントは多岐にわたっているが、現段階では大きな内容面での見直しはない方向となっている。同委員会では年内にも最終決定したい方針だ。

「分類1」企業の繰延税金資産の回収可能性の取扱いは文言を見直しへ
 「税効果会計に係る会計基準」の一部改正(案)等については、基本的に日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針を踏襲するものとなっているが、これまでの会計処理と異なる項目もある。その1つが「分類1」に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いだ。回収可能性適用指針案では、「分類1」に該当する企業については、「原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。」と「原則として」が追加されているが、一定の要件を満たした場合には繰延税金資産を認識しないことが選択ではなく原則的な取扱いとなることが明確になるよう表現を見直すべきとのコメントを受け文案を見直すこととしている。
資産負債法への変更は行わず  また、未実現損益の消去に係る税効果会計の取扱いに関しては、IFRSと同様、資産負債法へ変更することが検討されたが、最終的には現行どおり「繰延法」が採用されている。この点、IFRSに基づく連結財務諸表を作成している企業グループ内に本邦会計基準適用会社がある場合、繰延法から資産負債法への連結修正を行っている状況を踏まえ、資産負債法の適用について再検討すべきとのコメントが寄せられているが、一部の財務諸表作成者からシステム変更など多大なコストが生じるとの指摘があったことなどを踏まえ、公開草案どおりの方向となっている。

税務上の繰越欠損金に関する注記事項も実務での対応可能
 税効果会計基準の一部改正案については、表示の変更や注記事項(参照)が新たに追加される。表示については、IFRS等と同様、繰延税金資産及び繰延税金負債のすべてについて非流動項目に表示するよう見直しが提案されており、概ね支持するコメントが聞かれている。
【表】税効果会計基準一部改正案において追加された注記事項
①評価性引当額の内訳に関する数値情報
・税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載

②評価性引当額の内訳に関する定性的な情報
•評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載

③税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報
•税務上の繰越欠損金の額に税率を乗じた額(発生原因別の注記に記載されている額)
•税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
•税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額

④税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
•税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載

※連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表における税効果会計に関する注記事項については、①の評価性引当額の内訳に関する数値情報のみを注記

 一方、注記事項に関しては反対するコメントが多く寄せられているが、現段階では内容面での大きな変更はない。
 例えば、評価性引当額の内訳についての反対意見に対しては、財務諸表利用者が税負担率の予測の観点から分析を行う場合、税負担率の実績と予測が乖離する原因として、将来において課税所得が生じる見込みがないため評価性引当額を計上していたときに、課税所得が生じ税務上の繰越欠損金を利用したことにより評価性引当額が減少するケース等、税務上の繰越欠損金に関連することが挙げられることが多いと指摘。そのため、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額は有用であるとしている。
 また、税務上の繰越欠損金に関する注記事項は、財務諸表作成者に多大な実務負担が生じるとして反対意見が寄せられている。この点については、連結納税を採用している企業においては、親法人において連結子法人ごとに繰越欠損金に関する注記事項を作成する負担が一定程度生じることが想定されるが、連結子法人の繰越欠損金に関する期限別の情報は繰延税金資産の回収可能性を検討する際に必要であり、従来から情報として入手しているものであり対応は可能であるとしている。
公開草案からの注記事項の追加はなし  公開草案に盛り込まれなかった注記事項について再検討すべきとのコメントも寄せられている。例えば、「国内企業の分類に関する注記」「回収可能性の合理的な説明に関する注記」「税引前純損失が生じている場合の税率差異の注記」は注記が求められていないが、「評価性引当額の内訳に関する定性的な情報」や「税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報」の注記事項があることから、これらの情報が重要な影響を与えている場合には、必要な情報として補足されるとしている。
 また、見積りの変更に関する情報の開示については、従来どおり、企業の判断に委ねることが適切であるとしている。
 そのほか、個別財務諸表における注記事項についても反対意見が寄せられているが、公開草案どおりの方向となっている。個別財務諸表における評価性引当額の内訳に関する数値情報は、繰延税金資産の発生原因別の注記や業績の推移の情報等から推測することは困難であり、かつ、連結における情報の理解に資すると考えられるため、評価性引当額の内訳に関する注記は個別財務諸表において記載することとしている。

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