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解説記事2017年10月16日 【SCOPE】 譲渡制限特約付き債権の譲渡で民法改正も実務上の懸念(2017年10月16日号・№711)

求められる政策的な対応とは?
譲渡制限特約付き債権の譲渡で民法改正も実務上の懸念

 今年6月2日に公布された「民法の一部を改正する法律」では、債権の譲渡制限特約が付されている場合であっても債権譲渡は有効であるとの見直しが行われている(施行は平成32年を予定)。中小企業による売上債権を担保とした資金調達が可能になると期待されているが、その一方では中小企業が契約を解除されることを恐れ改正民法の改正趣旨に沿った資金調達が進まないのではないかとの懸念も生じている。このため、政策的な対応が必要との観点から、独占禁止法ガイドラインの見直しなどの検討が求められている。

民法改正で譲渡制限特約があっても債権譲渡は有効
 今回の債権関係の民法の改正では、債権の譲渡制限特約(債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の債権者・債務者間の特約)が付された場合であっても債権譲渡(譲渡担保)は有効であるとされることになった。
 現行、譲渡制限特約が付された債権の譲渡には債務者の承諾が必要となるが、債務者の承諾を得られないことが少なくない。例えば、中小企業(債権者)が大企業(債務者)と取引を行った場合、商品を納入したとしても代金の支払いは数か月先となる。中小企業にとっては当座の資金繰りに苦慮するケースもあり、売上債権を担保に金融機関から融資を受けたいものの、譲渡制限特約により資金調達ができない状況がある。
 このため、今回の見直しでは、債権譲渡を活用した資金調達を容易にするため、当事者間に債権の譲渡制限特約が付されていても債権譲渡の効力は妨げられないとの規定が設けられることになった(改正民法466条、図表参照)。これにより、中小企業等(債権者)は売上債権を担保に金融機関から融資を受けることが可能になる。また、債務者(取引先企業)は、譲渡制限特約が付された債権が譲渡された場合であっても、元の債権者(譲渡人)に弁済することにより譲受人(金融機関)に対抗することができる(免責される)。つまり、債権譲渡が行われても、債務者はこれまで通り元の債権者に弁済をすればよく、譲受人に対して弁済をする必要はない。


法務省は「債権を譲渡しても契約違反にならず」との見解だが……
 債権の譲渡制限特約に関する見直しは、中小企業の資金調達手段の1つとして期待されているわけだが、実務上の懸念も生じている。譲渡制限特約が付された債権の譲渡が有効になったとしても、債権者と債務者との間の特約に違反したことを理由にこれまでの契約が解除されてしまうのではないかというものだ。

 この点、法務省は、譲渡制限特約が弁済の相手方を固定する目的でされたときは、債権譲渡は必ずしも特約の趣旨に反しないとしている。民法の改正では、債務者は基本的に譲渡人(元の債権者)に対する弁済等をすれば免責されるなど、弁済の相手方を固定することへの債務者の期待は形を変えて保護されているからだ。このため、契約違反(債務不履行)にはならないとの解釈を示している。また、債権譲渡がされても債務者にとって特段の不利益はないため、契約の解除を行うことは極めて合理性に乏しく、権利濫用等に当たりうるとしている。
独禁法ガイドラインの見直しも  しかし、譲渡制限特約の付された債権を債務者の承諾を得ずに譲渡することが改正民法上有効であるといっても、依然として契約更新の見送りや銀行が契約違反行為を勧めたのではないかとの問題が残されている。このため、改正民法が想定した売上債権を担保とした金融機関からの資金調達が進まないといった懸念が生じている。
 このような懸念を解消するためにも政策的な対応が必要であるとされており、現在様々な対応が検討されている。
 例えば、譲渡制限特約付き債権の担保取得等にコンプライアンス上の問題がないことを指針に明記することや、資金調達・支援継続等を目的とした「無承諾譲渡」のみを原因とする原因契約解除は禁止する旨の独占禁止法ガイドライン又は下請法の改正・明確化を行うことなどが挙げられている。

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