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解説記事2017年10月23日 【税務マエストロ】 非課税(3)~有価証券・支払手段の譲渡(2017年10月23日号・№712)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
非課税(3)~有価証券・支払手段の譲渡

#199 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#200
租税条約と配当課税①
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説
 有価証券は消費財ではなく、有価証券の譲渡は単なる資本の移転であることから非課税とされている。なお、株券などの有価証券の発行は、出資金等の払込みによる株主等の持分を証するために行われるものであり、そもそもが資産の譲渡等には該当しないことから非課税ではなく、課税対象外取引として取り扱われることになる。
 すでに発行されている有価証券の譲渡であれば、対価を得て行われる資産の譲渡として課税の対象となり、その上で非課税措置の適用を受けるということである。
 支払手段とは、紙幣、硬貨、小切手、手形などをいう。よって、支払手段の譲渡とは、両替や小切手の換金を意味することになる。例えば、海外旅行をする際に日本円をドルに両替するような行為は、「円」を売って「ドル」を買うということであり、これが支払手段の譲渡に該当し、非課税となる。
 今月は、非課税となる有価証券・支払手段の譲渡について、その非課税範囲を確認するとともに、国税庁の質疑応答事例の内容を検討する。

1 有価証券の範囲(消令9①②、消基通6-2-1~2)  消費税法に規定する有価証券には、株券、受益証券など、証券会社などで取り扱う有価証券(金融商品取引法に規定する有価証券)の他、合同会社等の持分や抵当証券などの市場性のない債権、預金、貸付金、売掛金などの金銭債権も含まれる。
 なお、一般に有価証券と呼ばれるものであっても、船荷証券や貨物の引換証などについては、その実態は船荷や貨物の売買なので課税されることになる。ゴルフ場利用株式は、株式の形態はとっているもののその実質はゴルフ場を利用する権利であることから同様に課税となる。また、証券会社が収受する売買手数料についても、証券会社の役務提供に対する対価であることから当然に課税されるものである(図表1参照)。


2 船荷証券の取扱い  「船荷証券」とは、船に積んである貨物を売買するときに使う証券であり、「証券」という名称にはなっているものの、非課税となる有価証券からは除くこととされている(消基通6-2-2)。したがって、「船荷証券」の譲渡は貨物の譲渡に該当し、その貨物が課税貨物である限り、課税取引に該当することになる。
 注意したいのは、課税か非課税かをみる前に、まず、その取引が国内取引に該当するかどうかを判定しなければいけないということである。消費税法基本通達5-7-11には「……原則として当該船荷証券の譲渡が行われる時において当該貨物が現実に所在している場所により国内取引に該当するかどうかを判定する……」と記載されているので、原則論は譲渡時における貨物の所在場所で内外判定をすることになる。
 しかし、これを現実問題として考えた場合、とてもではないが貨物の所在場所をひとつひとつ確認することは困難であり、また、これを立証することも難しいであろう。
(1)荷揚地が国内の場合  消費税法基本通達5-7-11の後段では、「……その船荷証券に表示されている「荷揚地」(PORT OF DISCHARGE)が国内である場合の当該船荷証券の譲渡については、その写しの保存を要件として国内取引に該当するものとして取り扱って差し支えない。」と定め、輸入貨物については貨物の到着前の譲渡であってもこれを国内取引に取り込むことを認めている。
 また、消費税法7条1項2号では、外国貨物の譲渡又は貸付けについて、消費税を免除する旨を定めている。関税法では、輸出の許可を受けた貨物や輸入貨物で輸入許可前のものを外国
貨物と定義している(関法2①三)ので、貨物が日本に到着する前に船荷証券を譲渡した場合には、その船荷証券の譲渡は外国貨物の譲渡に該当し、結果、輸出免税の規定を適用することができるのである。
 船荷証券の売上高を輸出免税売上高として処理した場合には、国外売上高として処理した場合に比較して課税売上割合が上昇し、納税者に有利に作用することになる。
 また、現実の貨物の所在場所で判断するという煩わしさからも解放されることになるので、実務上も、貨物が到着する前の船荷証券の譲渡は輸出免税として処理をすることになるものと思われる。


(2)荷揚地が国外の場合  船荷証券の譲渡を輸出免税の対象とすることができるのは、(1)のように、その貨物の荷揚地が国内の場合に限られている。荷揚地が国外とされている船荷証券を譲渡した場合には、その譲渡については輸出免税の適用はなく、国外取引に該当することとなるので注意が必要だ(図表2参照)。


3 支払手段の範囲(消令9③④、消基通6-2-3)  紙幣、硬貨、小切手、手形、電子マネーなどを支払手段という。よって、日本円と米ドルの両替、小切手の換金、手形の譲渡(割引)などの行為が支払手段の譲渡として非課税となる。
 ただし、支払手段の譲渡であってもコイン店で記念硬貨を販売する場合など、プレミアム付の売買は課税される。
 また、支払手段に類するものとして、特別引出権(SDR)の譲渡も非課税とされている。特別引出権(SDR)とは、国際通貨基金(IMF)の加盟国に出資額に応じて割り当てられ、通貨危機などの時に、引き換えに他の加盟国から外貨を融通してもらえる仕組みのことをいう(朝日新聞掲載「キーワード」より引用)。
(注)平成29年度改正により、支払手段に類するものに「仮想通貨」が追加され、仮想通貨の譲渡が新たに非課税とされた(消令9④)。平成29年度改正については、本誌2017.5.29号(692号)の13~16頁を参照されたい。

4 有価証券の範囲と課税売上割合の関係  非課税となる有価証券等を譲渡した場合の課税売上割合の計算では、5%基準の対象になる
ものと譲渡対価の全額を計上するもの、さらには譲渡対価を課税売上割合の計算に関係させないものがあるので、その範囲をしっかりと整理しておくことが重要である。また、支払手段や仮想通貨、特別引出権の譲渡対価は、課税売上割合の計算に関係させないこととしているので注意が必要だ。
 非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係については、図表3の国税庁質疑応答事例(非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係(仕入税額控除(課税売上割合の計算)2)のほか、本誌2014.10.27号(568号)の29~34頁を参照されたい。


5 国税庁質疑応答事例
○株式の発行、併合又は分割の場合における1株未満の端株の取扱い(資産の譲渡の範囲29)
【照会要旨】
 株式の発行、併合又は分割の場合に交付すべき株式につき1株に満たない部分があるときは、その部分は一括して売却し、その売却代金を株主に交付することとされています(旧商法2201)。
 この場合、株式発行法人が行う端数株式の一括売却は有価証券の譲渡ですが、株式の交付が困難であるためやむを得ず譲渡するものであることから、課税売上割合の計算において、その譲渡代金の5%相当額を分母に加算しないこととしてよいでしょうか。
 また、株主においては、交付を受けた売却代金を課税の対象として取り扱うことでよいでしょうか。
(注)会社法の施行に伴って端株制度は廃止されましたが、同法施行前から存在する端株の取扱いについては「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第86条の規定により存続が認められています。
【回答要旨】  株式の発行、併合又は分割において株式発行法人が一括売却する端数株式は端数株主全員の共有に属し、会社は端数株主からその処分を委託されているにすぎないものと認められますから、当該法人においては消費税の課税関係は生じません。
 一方、一括売却に付された端数株式の売却代金は、株主に帰属すべきものですから、株主が交付を受けた売却代金は有価証券の譲渡の対価に該当し、課税売上割合の計算においては、株主はその5%相当額を分母の金額に算入することとなります(消令48⑤)。
(注)当該端株に係る消費税の取扱いについては、従前と同様に有価証券に類するものとされており(平18改正消令附則2)、会社法施行後に行われる端株の売却代金は有価証券等の譲渡の対価とみなされ(平18改正消令附則4)、課税売上割合の計算においては、その5%相当額を分母の金額に算入することとなります。

○自己株式の取扱い(資産の譲渡の範囲36)
【照会要旨】  法人が株主に金銭を交付して自己株式を取得する場合、当該株主からの株式の引渡しは資産(有価証券)の譲渡等に該当するのでしょうか。
 また、この法人が取得した自己株式を処分する場合の他の者への株式の引渡しはどうなるのでしょうか。
【回答要旨】  法人が自己株式を取得する場合(証券市場での買入れによる取得を除きます。)における株主から当該法人への株式の引渡しは、資産の譲渡等に該当しません。
 また、法人が自己株式を処分する場合における他の者への株式の引渡しも同様に、資産の譲渡等に該当しません(消基通5-2-9)。

<解説>  法人が自己株式を取得する行為は資本取引に該当する。よって、その売買は非課税ではなく、課税対象外取引となるので、事業者が保有する株式をその発行会社に譲渡したとしても、その売却収入は非課税売上高とはならない。発行法人が自己株式を取得し、これを他に転売(処分)する行為も課税対象外取引となる。



 ただし、証券市場での売買であれば、たとえ自己株式でも一般の株券と同様にその売買は非課税となる。

○匿名組合の出資者の持分の譲渡(非課税-有価証券等1)
【照会要旨】  匿名組合(国内)の組合員が行う持分の譲渡は、協同組合等の組合員の持分の譲渡(消令9①二)として非課税と考えてよいでしょうか。
※ 匿名組合   当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、相手方がその営業から生ずる利益を分配することを約する契約(商法535)。実質的には、出資者(匿名組合員)と営業を行う者(営業者)との共同企業形態ですが、外部に対しては商人である営業者だけが権利義務の主体として現れ、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利義務を持ちません(商法536)。匿名組合は合資会社に類似しますが、一種の契約関係であり、組合自体に法人格はありません。

【回答要旨】  匿名組合の出資者の持分の譲渡は、消費税法施行令第9条第1項第2号《有価証券に類するものの範囲等》に規定する「その他法人の出資者の持分」に該当し、有価証券に類するものの譲渡として取り扱います。なお、この「出資者の持分」には、人格のない社団等、民法の組合に対する出資持分等も含まれます。

○外国の記念金貨の輸入販売(非課税-有価証券等2)
【照会要旨】  外国の記念金貨を販売のために国内に輸入して販売した場合、消費税は課税されるのでしょうか、それとも、その販売は支払手段の譲渡として消費税は課されないのでしょうか。
【回答要旨】  国の通貨たる金貨は支払手段に該当し、非課税の対象とされていますが、支払手段のうち販売用のものは、非課税の対象から除かれています(法別表第一2、消令93)。
 したがって、質問の記念金貨は国内で販売するために輸入されるものですから、保税地域からの引取り時に消費税が課税されることとなります。
 なお、保税地域からの引取段階で課税された消費税は、国内で販売の際に課税された消費税から控除することができることとなります。

記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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