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解説記事2017年10月30日 【SCOPE】 高低差ある宅地及び畑の評価、評価単位めぐり原処分一部取消(2017年10月30日号・№713)

審判所、それぞれを評価単位とするのが相当
高低差ある宅地及び畑の評価、評価単位めぐり原処分一部取消

 請求人が相続により取得した「二つの宅地及び畑(市街地農地)」の相続税評価額の減額割合が争われた裁決で国税不服審判所は平成29年4月7日、60%減額して評価すべきとした請求人の主張を斥けたうえで、「利用価値が著しく低下している宅地の評価」の取扱いにより10%減額が相当であると判断した(名裁(諸)平28第24号)。一方で審判所は、畑と各宅地の間はがけ地(最大4mの高低差)となっていることからすると、畑と各宅地が一体の土地として利用されているとは認められないと指摘。畑と各宅地はそれぞれを一の評価単位として評価することが相当であるとしたうえで、原処分の一部を取り消している。

請求人は60%減額主張も、審判所は10%減額が相当と判断
 本件の争点は、請求人が相続により取得した二つの宅地及び市街地農地である畑(以下併せて「本件各土地」)の相続税評価額の減額割合を60%とすべきか否かである。
 畑は、南側にある道路(路線価37,000円)と畑をつなぐ赤道を通ることで入ることができる無道路地で、南側道路と比べて高い位置にあり、南側道路に接する他の宅地と比べても著しく高い位置にあった。また、二つの宅地(以下「各宅地」)は、南側道路に接しておらず、南側道路と各宅地をつなぐ私道等を通ることにより入ることができる無道路地で、南側道路と比べて高い位置にあり、南側道路に接する他の宅地と比べても著しく高い位置にあった(なお、畑と各宅地の間はがけ地(最大約4mの高低差)となっている)。
 請求人は相続税申告の際に、本件各土地を一の評価単位として評価通達により算定した評価額から60%を減額して本件各土地の価額を算定したものの、修正申告により、本件各土地を一の評価単位として評価通達により算定した評価額から10%を減額(表1参照)して本件各土地の価額を算定した。その後請求人は、請求人が依頼した不動産業者が作成した意見書などに基づき更正の請求を行ったものの、原処分庁は更正すべき理由がない旨の通知処分を行った。これを不服とした請求人は、不動産業者が作成した意見書などからすると本件各土地の評価に当たりその財産評価額から60%を減額すべきと主張した。

【表1】利用価値が著しく低下している宅地の評価(タックスアンサー・No.4617)
 次のようにその利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。
1 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
(編注:2以降は省略)

周辺と比較してなお著しい高低差で10%減  国税不服審判所は、タックスアンサーの取扱いについて、路線価が設定された路線に面した一連の宅地の共通した地勢が道路との高低差のある地勢である場合には、高低差のあることが路線価の設定に当たって考慮されているから、評価する宅地とその所在地の周辺の一連の宅地の高低差を比較検討してもなお著しい高低差のある場合に限って、適用するのが相当であるとした。
 そして本件については、60%を減額すべきとした請求人の主張を斥けたうえで、本件各土地はいずれも南側道路と比べて高い位置にあり、道路に接する他の宅地と比べても著しく高い位置にあることや本件各土地の周辺にはがけ地となっている部分があることを認定。この点を踏まえ審判所は、本件各土地のその周辺の一連の土地の高低差を比較検討してもなお著しい高低差があり、本件各土地の全部についてその利用価値が付近にある他の土地の利用状況からみて著しく低下していると認められることから、タックスアンサーの取扱いを適用して財産評価額から10%を減額するのが相当であるとした(表2参照)。

【表2】本件各土地の減額割合をめぐる請求人の主張と審判所の判断
請求人の主張 審判所の判断
・本件各土地の評価に当たっては、本件各土地ががけ地を含むうえ南側道路から本件各土地まで重機が届かないという制約のために本件各土地の上の建物を取り壊すことができず、隣家にしか売却することができないという事情を十分に配慮すべきである。
・そして、①本件意見書によると本件各土地の価額が1,000万円であるとされていること、②本件各土地に隣接する土地について1㎡当たり6,424円で売買の商談が行われていること(本件各土地の南側道路の路線価は37,000円)、③一般的に無道路地が近隣の土地の価額の約40%ないし60%の価額で売買されている旨の不動産鑑定士の見解が示されていることなどからすると、本件各土地の評価に当たっては、その財産評価額からの減額割合を60%とすべきである。
・請求人の主張①の点については、本件意見書で示されている本件各土地の周辺の取引相場の裏付けを欠く上、最終的な評価額が導き出された過程がまったく明らかでないことから適正な時価を示しているとはいえない。請求人の主張②の点については、商談における価額は個別的な要因に左右されるものであり、客観的に適正な時価としては認められない。請求人の主張③の点については、不動産鑑定士が指摘したという事項は一般論にすぎないうえ、その判断基準が明らかでなくその事項については評価通達において無道路地としての減価を行っている時点で既に適正に考慮済みであり、重ねて減額すべきことの根拠とならない。
・本件各土地の評価に当たっての財産評価額からの減額割合は、タックスアンサーの取扱いを適用して10%とするのが相当である。

 一方で審判所は、畑と各宅地の間はがけ地となっており、最大約4mの高低差があることからすると畑と各宅地が一体の土地として利用されているとは認められないと指摘。評価通達7により畑と各宅地はそれぞれを一の評価単位として評価することが相当であるとしたうえで、これによる畑と各宅地の評価額に係る相続税が修正申告における納付税額を下回ることから、原処分庁の更正すべき理由がない旨の通知処分の一部を取り消した。

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