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解説記事2017年12月11日 【特別解説】 米国会計基準適用日本企業による、収益認識にかかる新基準の適用による影響の注記(2017年12月11日号・№718)

特別解説
米国会計基準適用日本企業による、収益認識にかかる新基準の適用による影響の注記

はじめに

 国際財務報告基準(IFRS)を作成する国際会計基準審議会(IASB)は、2014年5月にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」を公表した。この基準は従来のIAS第18号「収益」とIAS第11号「工事契約」及びその解釈指針に置き換わるものであり、これによって、2018年1月1日以後開始する事業年度から、企業の財務諸表のトップラインである売上高が、新しい会計基準に基づいて計上されることになる。IFRSを任意適用して有価証券報告書を作成・提出する我が国の企業(IFRS任意適用日本企業)も、2018年12月期以降の決算期から新基準を適用することになるが、その一方で、米国会計基準を適用して有価証券報告書を作成・提出する我が国の企業(米国会計基準適用日本企業)に対しては、2017年12月16日以後開始する事業年度から、IFRS第15号とほぼ同一の内容のASU2014-09「顧客との契約から生じる収益」が適用されることになる。今回は、新基準の適用開始を間近に控えた米国会計基準適用日本企業が行った、新会計基準(ASU2014-09)適用による影響の開示を紹介したい。

NTTとNTTドコモが行った開示
 まず最初に、わが国を代表する通信事業者である日本電信電話(NTT)と、その子会社であるNTTドコモが行った開示を紹介する。

(NTT 平成29年3月期有価証券報告書 注3.重要な会計方針の要約 (2)最近公表された会計基準)
顧客との契約から生じる収益
 平成26年5月28日、FASBはASU2014-09「顧客との契約から生じる収益」を公表しました。当該基準は、企業が、約束した財又はサービスの支配を顧客へ移転したときに認識することを要求しております。収益は、財又はサービスとの交換から獲得すると見込んでいる対価を反映した金額で認識されます。また、企業は、財務諸表の利用者が、顧客との契約から生じる収益、ならびにキャッシュ・フローの性質、金額、認識時期、及び不確実性を理解するのに十分な定量的及び定性的情報を開示することを要求されます。当該基準が適用になると、現在の米国会計基準の収益認識に係るガイダンスの大部分が当該基準の内容に置き換わります。また、平成28年3月にASU2016-08「本人か代理人かの検討(収益の総額表示か純額表示)」、平成28年4月にASU2016-10「履行義務の識別及びライセンス付与」、平成28年5月にASU2016-12「限定的な改善及び実務上の処理」、平成28年12月にASU2016-20「顧客との契約から生じる収益―技術的な修正及び改善」、平成29年2月にASU2017-05「資産の認識中止ガイダンスの範囲及び非金融資産の部分的な売却の会計処理の明確化」が公表となり、当該基準の一部が修正されております。平成27年8月12日、FASBはASU2015-14「顧客との契約から生じる収益―適用日の延期」を公表し、当該基準の適用を1年延期しました。このため、当該基準は、平成29年12月16日以降に開始する年度から適用され、NTTグループにおいて平成30年4月1日に開始する連結会計年度から適用されます。なお、平成29年4月1日に開始する連結会計年度からの早期適用も認められております。当該基準適用時の移行方法は、完全遡及アプローチ及び修正遡及アプローチの2つの方法が認められております。完全遡及アプローチにおいては、表示される全ての報告期間が当該基準の適用により更新され、報告期間以前の期間における累積影響の調整は、報告期間初年度の期首利益剰余金に計上されます。修正遡及アプローチにおいては、適用初年度が当該基準の適用により更新され、適用初年度以前の期間における累積影響の調整は、適用初年度の期首利益剰余金に計上され、当該基準適用による影響額に関連する開示が要求されます。当社は、当該基準適用時の移行方法の選択は実施しておらず、NTTグループの連結財務諸表及び関連する注記に与える影響について、現在検討しております。現時点において、当該基準の適用により影響が及ぶと考えられる項目は以下の通りであります。
・当該基準は、契約獲得の増分コスト及び契約履行コストを資産計上することを要請しております。現行の会計基準においては、地域通信事業、長距離・国際通信事業、及び移動通信事業において提供する通信サービスに係るそれらのコストを、初期一括収入を上限として資産計上し見積り平均契約期間で償却しておりました。当該基準の適用後は、それらのコスト全額を資産計上することになるため、従来は費用処理していた一部の販売手数料等を追加的に資産計上することとなります。当連結会計年度において、現行の会計基準に基づき費用として計上された主な代理店手数料は、移動通信セグメントにおいて計上された320,800百万円であります。
・当該基準では、企業が顧客との契約の一部として、企業から追加的な財又はサービスを値引き価格で購入できるオプションを顧客に付与した場合は、オプションを付与した時点では別個の履行義務として識別し、取引対価の一部を契約負債として認識し、将来の財又はサービスが顧客に移転した時点、または行使期限が終了した時点で収益を認識することが要請されております。従来はサービスの利用に応じて顧客が獲得したポイントに対して引当金を計上しておりましたが、当該基準適用後は、ポイントを付与した時点でサービスの取引対価の一部を契約負債として計上し、ポイントを行使した時点で収益が認識されることとなります。当連結会計年度において、現行の会計基準に基づき計上された主なポイントプログラムに係る費用は、移動通信セグメントにおいて計上された94,291百万円であります。

(NTTドコモ 平成29年3月期有価証券報告書 3主要な会計方針の要約 (3)最近公表された会計基準)
顧客との契約から生じる収益
 当社グループの連結財務諸表及び関連する注記に与える影響について、現在検討しています。当該基準適用による収益に対する影響は、契約の条件、割引を含む取引価格、財又はサービスの組合せなどを含みますがこれらに限られない、様々な変動的な要素によって影響を受けます。現在、全ての潜在的な影響について引き続き評価を行っていますが、主に以下の項目に重要な影響が及ぶと考えています。
・当該基準では、契約獲得の増分コスト及び契約履行コストを資産計上することを要請しています。これにより、従来、費用計上していた一部の代理店手数料等を追加的に資産計上し、サービス毎に契約者の見積平均契約期間にわたって償却することになります。当連結会計年度において、現行の会計基準に基づき計上された代理店手数料は320,800百万円であり、主に連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」に計上されています。
・当該基準では、企業が顧客との契約の一部として、企業から追加的な財またはサービスを割引価格で購入できるオプションを顧客に付与した場合は、オプションを付与した時点では別個の履行義務として識別し、取引対価の一部を契約負債として認識し、将来の財またはサービスが顧客に移転した時点、または行使期限が終了した時点で収益を認識することが要請されています。これにより、従来、連結会計年度末において引当金を計上していた「ドコモポイント」及び「dポイント」について、ポイントを付与した時点で、モバイル通信サービス等の取引対価の一部を契約負債として計上し、ポイントが行使され、追加的な財またはサービスが顧客に移転した時点、またはその行使期限が終了した時点で収益が認識されることになります。当連結会計年度において、現行の会計基準に基づき計上されたポイントプログラムに係る費用は94,291百万円であり、連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」に計上しています。当社グループは、新基準の導入に向け、プロジェクトチームを立ち上げています。当社グループは、新しい収益認識に係る基準の適用に向けて、システムの変更ならびに財務報告プロセス及び関連する内部統制の構築を進めています。

 なお、NTTやNTTドコモを含むNTTグループは、平成29年5月15日に公表した平成29年3月期決算短信の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」において、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上、財務報告の効率化等を目的として、平成31年3月期第1四半期からのIFRS(国際財務報告基準)適用を検討している旨を表明している。両社のIFRSの任意適用が予定通りに進んだ場合、収益認識に関する基準書は、ASU2014-09ではなく、IFRS第15号が適用されることになる。

ソニーと野村ホールディングスが行った開示
 次に、ソニーと、野村ホールディングスが行った開示を紹介する。

(ソニー 平成29年3月期有価証券報告書 1会計処理の原則及び手続ならびに連結財務諸表の表示方法 (3)最近公表された会計基準)
顧客との契約から生じる収益
 2014年5月、FASBは顧客との契約から生じる収益に関するASU2014-09を公表しました。このASU2014-09により、収益認識に関する現行の規定は、多くの特定の産業に関する基準を含め、全て置き換えられます。このASU2014-09は、企業に、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で描写するように収益を認識することを要求しています。2015年8月、FASBはASU2014-09の適用日を1年延期し、かつASU2014-09の当初適用日時点の早期適用を容認するASU2015-14を公表しました。その後、FASBは、直近では2016年12月まで、このASUに対していくつかの規定の明確化、更新をしました。このASUは、2018年4月1日に開始する第1四半期から、ソニーに適用されます。このASUは、比較期間を遡及的に修正する方法(「完全遡及法」)又は適用日時点の累積的影響額を遡及的に認識する方法(「修正遡及法」)のいずれかの移行方法を適用することを容認しています。ソニーは、修正遡及法によりこのASUを適用する予定です。ソニーは、このASUの適用が与える影響の大部分の評価を完了しています。ソニーは、このASUの適用が主に映画分野における特定の取引の収益認識時点に影響を与えると予想しています。具体的には
(1)映画製作及びテレビ番組制作における現行契約の特定の更新又は延長に関連して、そのライセンス収益は、契約が更新又は延長された時点ではなく、更新又は延長によりライセンス供与されたコンテンツが利用可能になった時点で認識されます。また、
(2)象徴的な知的財産(例えば、ブランド、商標、ロゴ)に対する特定のミニマムギャランティにかかるライセンス収益は、ライセンス期間が開始した時点ではなく、ライセンス期間にわたり認識されます。ソニーは、このASUが上記及び上記以外の取引に与える影響を引き続き評価しており、結果として、このASUが与える影響に関するソニーの暫定的な結論が変わる可能性があります。 

(野村ホールディングス 平成29年3月期有価証券報告書 新しい会計基準の進展)
顧客との契約から生じる収益
 現時点でのASU第2014-09号と関連するガイダンスの分析の結果、野村は連結財務諸表に以下の影響があると予想しています: 
・収益として認識されている一部の財務アドバイザリー手数料の認識の遅延と、一部のアセットマネジメント販売手数料の認識早期化
・新しいガイダンスで資産化が要求される契約獲得および履行コストの費用認識時期の変更
・修正された本人か代理人かのガイダンスの結果、一定の取引執行にかかる収益と関連費用を総額表示から純額表示にする連結損益計算書の表示の変更
・修正された本人か代理人かのガイダンスの結果、一定の投資銀行業務収益と関連費用を純額表示から総額表示にする連結損益計算書の表示の変更
・サービスの提供による収益と関連費用にかかる野村の会計方針について、財務諸表注記に含まれる定性的開示の大幅な増加 
 野村はこの新しいガイダンスについて、引き続き影響を調査します。その結果、適用を予定する2018年4月1日までの間に追加の影響が判明する可能性があります。野村の影響分析はまだ完了しておりませんが、収益および費用の認識タイミングの変更は、連結財務諸表には重要な影響を及ぼさないと見込んでおります。

オリックス、キャノン及びインターネットイニシアティブ(IIJ)が行った開示
 オリックス、キャノン及びインターネットイニシアティブ(IIJ)が行った開示は、それぞれ次のとおりであった。
(オリックス 平成29年3月期有価証券報告書 2 重要な会計方針 (ae)新たに公表または適用された会計基準)  ここまでの当社および子会社による初期評価および最適な見積りによると、これらのアップデートの適用はアセットマネジメント事業において顧客から受領する成功報酬の認識時期および関連する会計方針の変更に影響する見込みです。現在、一部の子会社は成功報酬を獲得した時に認識する一方、一部の子会社はサービス提供期間にわたり発生主義で認識しています。新しいガイダンスはこのような報酬を、変動対価に関する不確実性がその後解消された際に認識した収益の累計額に重大な戻入れが生じない可能性が高い範囲で認識することを要求しています。

(キャノン 平成29年3月期有価証券報告書 注記事項 (23)新会計基準)  現在、当社はこの基準の適用による、収益を認識する時点への重要な影響はないと考えておりますが、連結損益計算書において、オフィスビジネスユニット及び産業機器その他ビジネスユニットにおける製品及びサービス間での収益の按分が変更となる可能性があります。また、連結貸借対照表において、オフィスビジネスユニット及びイメージングシステムビジネスユニットにおける変動対価に係わる債権と返金負債間の組替により、資産合計及び負債合計が増加となる可能性があります。現在、当社は引き続きこの基準の適用が当社の経営成績及び財政状態に与える影響について検討しております。

(インターネットイニシアティブ(IIJ) 平成29年3月期有価証券報告書 1.事業内容及び重要な会計方針の要約 新たな会計ガイダンス)  当社グループは、ハードウェア、ソフトウェア、提供するサービスの幅広い収益認識の大部分に変更がないことを予想しています。しかし、この基準により様々なサービスや機器の間の収益の配分や特定の領域における収益認識のタイミングが変更されることが予想されます。当社グループは、現在これらの影響が重要ではないと評価しています。
 当社グループは、販売手数料を発生時に費用処理していますが、新しい基準において一定の範囲内の販売手数料を資産化する要求が当社グループの損益に重要な変化をもたらすことはありません。しかし、このような契約獲得の増分コストの繰り延べと契約期間または期待される顧客への提供期間にわたり認識することの要求によって、当社グループの貸借対照表において繰延費用が認識されることになります。当社グループは、この基準による潜在的な影響を引き続き評価しており、予備的な結論は変更されることがあります。

終わりに
 日立製作所やパナソニック、ホンダ、コナミなど、最近は米国会計基準からIFRSに移行する企業が相次ぎ、我が国において米国会計基準を適用する企業の数は大幅に減った。さらに、NTTグループも平成31年3月期第1四半期からIFRSへの移行を決定しており、この流れは今後も変わらない可能性が高いと考えられる。しかしながら、数は少ないとはいえ、現在、米国会計基準を適用する日本企業には、トヨタ、ソニー、キャノン、野村、オリックスなど、業界のリーディングカンパニーがずらりと顔をそろえている。これらの企業が行った開示も、日本基準を適用する企業の参考になりうる、充実した内容のものが多い。
 わが国においても、IFRS第15号や米国のASU第2014-09号とほぼ同じ内容の「収益認識に関する会計基準」と同適用指針の最終化に向けた審議が現在進められており、数年後には、収益認識に関しては日米欧を含む全世界で、ほぼ同一の会計基準が適用される可能性が高いと考えられる。我が国の会計基準が要求する開示の水準が、IFRS第15号やASU第2014-09号と比較してどれくらいになるかはまだ分からないが、企業業績の根幹である収益認識に関する会計処理や開示が統一され、世界中の企業の財務諸表の比較可能性が向上することは、大変意義深いことと言えるであろう。

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