解説記事2018年02月05日 【第2特集】 Q&Aで読み解くMD&Aの開示の充実(2018年2月5日号・№725)
第2特集
平成30年3月期から適用へ
Q&Aで読み解くMD&Aの開示の充実
企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(平成30年内閣府令第3号)が1月26日に公布された。平成28年4月公表の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえ、開示内容の共通化・合理化などを行うもの。有価証券報告書等の「大株主の状況」については、事業報告と同様に自己株式を控除する。また、株主総会日程の柔軟化のための開示の見直しとして、有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点を、事業年度末から議決権行使基準日へ変更する。そのほか、「MD&A」の開示を充実させる観点から、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識及び分析などの記載を求める。公布の日から施行されるが、有価証券報告書等の記載内容に係る改正は、平成30年3月31日以後終了事業年度から適用される。
本特集では、内閣府令案等に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。
MD&Aの記載、まとめても別々でも可
Q
非財務情報の開示の充実では、「業績等の概要」及び「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(MD&A)に統合した上で、記載内容の整理が行われています。この点、それぞれの内容を項目立てせずにまとめて記載することや、又はいくつかの項目を設けて記載することもできますか。
A 企業の開示内容が投資者にとって分かりやすくなるのであれば、どちらの方法で記載することも可能となっている。
MD&Aの記載、経営者が主体的に判断
Q
これまで企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況については、「提出会社の代表者」による分析・検討内容の記載が求められていましたが、今回、「経営者の視点」に変更されています。その趣旨を教えてください。
A 従来も企業の責任者である「提出会社の代表者」による分析・検討内容の記載が求められていたが、経営者の視点による分析・検討が欠けているとの指摘を踏まえ、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、MD&Aの見直しの方向性として、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について「経営者の視点」による認識と分析などを記載するとされていた。今回の見直しは、これを受け、「提出会社の代表者」から「経営者の視点」に変更したもの。「経営者の視点」は、各企業の実態に応じて、経営者が主体的に判断すべきものであるため、雛形や例示等は示されていない。
重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源等を記載
Q
これまでMD&Aにおいて例示で示されていた「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載(第二号様式記載上の注意(32)a(e))が今回の見直しで義務化されていますが、その理由を教えてください。
A 単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したにすぎない記載が多いとの指摘を踏まえ、開示内容を充実させる観点から「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」を記載することになった。今回の見直しを踏まえ、企業の経営内容に即して、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかについて具体的に記載することが求められる。
目標数値の記載を義務付けるものではないが……
Q
MD&Aの記載では、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に照らした分析・検討を求めていますが(第二号様式記載上の注意(32)a(e))、当該指標の具体的な目標数値の記載を書くことになるのでしょうか。
A 経営計画等の具体的な目標数値の記載を義務付けるものではないが、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」がある場合については、目標の達成度合を測定する指標やその指標の算出方法の記載のほか、なぜその指標を利用するのかの説明、具体的な目標数値などを記載することも想定される。なお、企業が独自に設定した客観的な指標等を記載する場合には、当該指標の内容に加え、なぜその指標を利用するのかの説明、一般的に用いられている指標との差異などについて、具体的に説明することが求められる。
IFRS適用初年度の会社はMD&Aの後に並行開示情報等を記載
Q
IFRS適用初年度の会社は、MD&Aの記載の後に、「並行開示情報」と「経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報」(第二号様式記載上の注意(32)d)を併記することになりますか。
A IFRSの初度適用の場合には、MD&Aの後に、「並行開示情報」と「経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報」を、それぞれ項目立てして記載することになる。また、IFRSと日本基準との主要な項目の差異に関する事項の記載については、表示組替などを任意記載することも妨げられないとしている。
新株予約権、事業年度末から変更なければ重複記載なし
Q
新株予約権等の記載の合理化として、「新株予約権等の状況」「ライツプランの内容」「ストックオプション制度の内容」の項目が「新株予約権等の状況」に統合されています。この「新株予約権等の状況」については、事業年度末及び有価証券報告書提出日の前月末現在の記載が求められていますが、事業年度末の情報から変更がなければ、後者については変更ない旨の記載のみでよいとの見直しがされています。この見直しの趣旨を教えてください。
A 「新株予約権等の状況」については、事業年度末だけでなく有価証券報告書提出日の前月末現在の記載が求められてきた。しかし、当該記載は、事業年度末から変更がない場合には記載が重複するとの指摘を踏まえ、事業年度末の情報から変更がなければ、有価証券報告書提出日の前月末現在の情報は変更ない旨の記載をすればよいこととしたものである。
ストックオプションの記載、四半期報告書も有価証券報告書と同じに
Q
ストックオプションですが、有価証券報告書では「①ストックオプション制度の内容」に記載し、四半期報告書・半期報告書では「②その他の新株予約権等の状況」に記載することになるのですか。
A 公開草案では、ストックオプションは四半期報告書・半期報告書上、「②その他の新株予約権等の状況」に記載するとされていたが、有価証券報告書と同様、「①ストックオプション制度の内容」に記載するよう変更された。なお、ライツプラン及びその他の新株予約権は、四半期報告書・半期報告書上は、「②その他の新株予約権等の状況」に記載する。
株主名簿を入手できない場合は事業年度末でもOK
Q
有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点が、事業年度末から議決権行使基準日に変更されています。しかし、「第三号様式記載上の注意(25)a」では、「これにより難い場合」にあっては、当事業年度末現在の「大株主の状況」について記載するとされています。「これにより難い場合」とはどのようなケースが該当しますか。
A 例えば、議決権行使基準日前に有価証券報告書を提出する場合など、有価証券報告書提出時には議決権行使基準日現在の株主名簿を入手できない場合等が該当する。
平成30年3月期から適用へ
Q&Aで読み解くMD&Aの開示の充実
企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(平成30年内閣府令第3号)が1月26日に公布された。平成28年4月公表の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえ、開示内容の共通化・合理化などを行うもの。有価証券報告書等の「大株主の状況」については、事業報告と同様に自己株式を控除する。また、株主総会日程の柔軟化のための開示の見直しとして、有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点を、事業年度末から議決権行使基準日へ変更する。そのほか、「MD&A」の開示を充実させる観点から、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識及び分析などの記載を求める。公布の日から施行されるが、有価証券報告書等の記載内容に係る改正は、平成30年3月31日以後終了事業年度から適用される。
本特集では、内閣府令案等に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。
MD&Aの記載、まとめても別々でも可
Q
非財務情報の開示の充実では、「業績等の概要」及び「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(MD&A)に統合した上で、記載内容の整理が行われています。この点、それぞれの内容を項目立てせずにまとめて記載することや、又はいくつかの項目を設けて記載することもできますか。
A 企業の開示内容が投資者にとって分かりやすくなるのであれば、どちらの方法で記載することも可能となっている。
MD&Aの記載、経営者が主体的に判断
Q
これまで企業の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況については、「提出会社の代表者」による分析・検討内容の記載が求められていましたが、今回、「経営者の視点」に変更されています。その趣旨を教えてください。
A 従来も企業の責任者である「提出会社の代表者」による分析・検討内容の記載が求められていたが、経営者の視点による分析・検討が欠けているとの指摘を踏まえ、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、MD&Aの見直しの方向性として、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について「経営者の視点」による認識と分析などを記載するとされていた。今回の見直しは、これを受け、「提出会社の代表者」から「経営者の視点」に変更したもの。「経営者の視点」は、各企業の実態に応じて、経営者が主体的に判断すべきものであるため、雛形や例示等は示されていない。
重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源等を記載
Q
これまでMD&Aにおいて例示で示されていた「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載(第二号様式記載上の注意(32)a(e))が今回の見直しで義務化されていますが、その理由を教えてください。
A 単にキャッシュ・フロー計算書の要約を文章化したにすぎない記載が多いとの指摘を踏まえ、開示内容を充実させる観点から「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」を記載することになった。今回の見直しを踏まえ、企業の経営内容に即して、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源は何であるかについて具体的に記載することが求められる。
目標数値の記載を義務付けるものではないが……
Q
MD&Aの記載では、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に照らした分析・検討を求めていますが(第二号様式記載上の注意(32)a(e))、当該指標の具体的な目標数値の記載を書くことになるのでしょうか。
A 経営計画等の具体的な目標数値の記載を義務付けるものではないが、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」がある場合については、目標の達成度合を測定する指標やその指標の算出方法の記載のほか、なぜその指標を利用するのかの説明、具体的な目標数値などを記載することも想定される。なお、企業が独自に設定した客観的な指標等を記載する場合には、当該指標の内容に加え、なぜその指標を利用するのかの説明、一般的に用いられている指標との差異などについて、具体的に説明することが求められる。
IFRS適用初年度の会社はMD&Aの後に並行開示情報等を記載
Q
IFRS適用初年度の会社は、MD&Aの記載の後に、「並行開示情報」と「経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報」(第二号様式記載上の注意(32)d)を併記することになりますか。
A IFRSの初度適用の場合には、MD&Aの後に、「並行開示情報」と「経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報」を、それぞれ項目立てして記載することになる。また、IFRSと日本基準との主要な項目の差異に関する事項の記載については、表示組替などを任意記載することも妨げられないとしている。
新株予約権、事業年度末から変更なければ重複記載なし
Q
新株予約権等の記載の合理化として、「新株予約権等の状況」「ライツプランの内容」「ストックオプション制度の内容」の項目が「新株予約権等の状況」に統合されています。この「新株予約権等の状況」については、事業年度末及び有価証券報告書提出日の前月末現在の記載が求められていますが、事業年度末の情報から変更がなければ、後者については変更ない旨の記載のみでよいとの見直しがされています。この見直しの趣旨を教えてください。
A 「新株予約権等の状況」については、事業年度末だけでなく有価証券報告書提出日の前月末現在の記載が求められてきた。しかし、当該記載は、事業年度末から変更がない場合には記載が重複するとの指摘を踏まえ、事業年度末の情報から変更がなければ、有価証券報告書提出日の前月末現在の情報は変更ない旨の記載をすればよいこととしたものである。
ストックオプションの記載、四半期報告書も有価証券報告書と同じに
Q
ストックオプションですが、有価証券報告書では「①ストックオプション制度の内容」に記載し、四半期報告書・半期報告書では「②その他の新株予約権等の状況」に記載することになるのですか。
A 公開草案では、ストックオプションは四半期報告書・半期報告書上、「②その他の新株予約権等の状況」に記載するとされていたが、有価証券報告書と同様、「①ストックオプション制度の内容」に記載するよう変更された。なお、ライツプラン及びその他の新株予約権は、四半期報告書・半期報告書上は、「②その他の新株予約権等の状況」に記載する。
株主名簿を入手できない場合は事業年度末でもOK
Q
有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点が、事業年度末から議決権行使基準日に変更されています。しかし、「第三号様式記載上の注意(25)a」では、「これにより難い場合」にあっては、当事業年度末現在の「大株主の状況」について記載するとされています。「これにより難い場合」とはどのようなケースが該当しますか。
A 例えば、議決権行使基準日前に有価証券報告書を提出する場合など、有価証券報告書提出時には議決権行使基準日現在の株主名簿を入手できない場合等が該当する。
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