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解説記事2018年03月12日 【第2特集】 国税庁の考え方から読む移転価格の改正事務運営指針(2018年3月12日号・№730)

第2特集
独立企業間価格の簡易な算定方法示す
国税庁の考え方から読む移転価格の改正事務運営指針

 国税庁は2月23日、「移転価格事務運営要領」の一部改正について(事務運営指針)等を公表した。今回の改正は、企業グループ内役務提供取引について、従来の独立企業間価格の算定方法に加え簡易な算定方法がOECD移転価格ガイドラインに反映されたことなどを踏まえた見直しとなっている。具体的には、企業が役務提供に要した費用に5%を乗じた金額を加算した金額を対価の額としているときは、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うとしている。また、役務提供に該当しない親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主としての活動の例示として、親会社の株式上場などを追加している。そのほか、昨今では、事前確認の実績がない国との事前確認を希望する納税者が増加しているが、こうした国との事前確認には相当の期間を要することになるため、事前確認に係る手続の見直しを行っている。例えば、相互協議を伴う事前確認の申出について、申出の提出期限の翌日から3年を経過しても相手国において申出が収受されていない場合には、申出の取下げ又は相互協議を伴わない事前確認のいずれとするかを法人から聴取し、聴取の日の翌日から3か月を経過する日までに法人から回答がない場合には、事前確認を行うことができない旨の通知を行うことを明記している。
 本特集では、一部改正案に対して寄せられた意見に対する国税庁の考え方などをもとに、事務運営指針の留意点をQ&A形式で解説する。

Ⅰ 事務運営指針3-9(企業グループ内における役務提供の取扱い)関係

財務諸表監査や業務監査が対象
Q
 事務運営指針3-9(1)ハに追加された「監査」とは、内部監査室のような部署が行うもの以外にも対象になりますか。
A  事務運営指針3-9(1)ハに追加された「監査」とは、例えば、法人が行う国外関連者の財務諸表の監査や国外関連者の業務に対する監査が想定されている。したがって、法人の内部監査室のような部署に限らず、それ以外の部署がこれらの監査を行う場合も対象になる。

コミッションをもらうべき活動とは?
Q
 事務運営指針3-9(1)リの「製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援」について、コミッションをもらうべき活動との相違について教えてください。売掛金の処理や信用情報の管理のようなものを想定しているのですか。
A  事務運営指針3-9(1)は、法人が行う活動が役務提供に該当するか否かの判断基準を定めており、「リ」については、このような判断が求められる法人が行う活動の例の1つである。「製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援」には、法人が国外関連者のために行う販売契約に係る顧客との交渉、契約の締結、仲介業務などが該当する。一方、コミッションをもらうべき活動は、対価の支払を伴う活動であることから「役務提供」であり、ここに「役務提供」であることが前提となっていない「製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援」との違いがある。
 また、「売掛金の処理」及び「信用情報の管理」については、「製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援」には該当しないが、それぞれ事務運営指針3-9(1)「ニ 債権又は債務の管理又は処理」、「ヘ キャッシュフロー又は支払能力の管理」に該当することになる。

従業員の管理に
Q
 事務運営指針3-9(1)では、以前あった「ル 従業員の給与、保険等に関する事務」が削除されていますが、取扱いが変更されたのですか。
A  改正前の「ル 従業員の給与、保険等に関する事務」については、改正後の「ヌ 雇用、教育その他の従業員の管理に関する事務」の「従業員の管理」に含まれる。したがって、従来の取扱いが変更されたものではない。

内部統制も株主活動に該当
Q
 財務報告に係る内部統制の整備や、金融業の銀行規制に係る膨大なガバナンス活動等も事務運営指針3-9(3)における株主活動の範囲に含まれますか。
A  OECD移転価格ガイドラインにおいて、役務提供に該当しない親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主としての活動の例(親会社の株式上場など)が示されたことを受け、事務運営指針でも同ガイドラインに整合的な例示が追加されている。
 内部統制報告制度の対応として親会社が専ら自らのために国外関連者の株主又は出資者として、その財務報告に係る内部統制を行う場合又は銀行規制に係るガバナンス活動を行う場合は、いずれも事務運営指針3-9(3)トの「コーポレート・ガバナンスに関する活動」に該当するため、株主活動に該当する。なお、株主活動の範囲については、事務運営指針3-9(3)イ~チまでに定めるとともに参考事例集の事例23の「国外関連取引の概要等」に具体例が示されている。

【参考1】事務運営指針3-9 ※下線は改正部分
(企業グループ内における役務提供の取扱い)
3-9
(1) 次に掲げる経営、技術、財務又は営業上の活動その他の法人が行う活動が国外関連者に対する役務提供に該当するかどうかは、当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうかにより判断する。具体的には、法人が当該活動を行わなかったとした場合に、国外関連者が自ら当該活動と同様の活動を行う必要があると認められるかどうか又は非関連者が他の非関連者から法人が行う活動と内容、時期、期間その他の条件が同様である活動を受けた場合に対価を支払うかどうかにより判断する。
 イ 企画又は調整
 ロ 予算の管理又は財務上の助言  ハ 会計、監査、税務又は法務
 ニ 債権又は債務の管理又は処理  ホ 情報通信システムの運用、保守又は管理
 ヘ キャッシュフロー又は支払能力の管理
 ト 資金の運用又は調達
 チ 利子率又は外国為替レートに係るリスク管理
 リ 製造、購買、販売、物流又はマーケティングに係る支援
 ヌ 雇用、教育その他の従業員の管理に関する事務  ル 広告宣伝
(注) 「法人が行う活動」には、法人が国外関連者の要請に応じて随時活動を行い得るよう定常的に当該活動に必要な人員や設備等を利用可能な状態に維持している場合が含まれることに留意する。 (2) 法人が行う活動と非関連者が国外関連者に対して行う活動又は国外関連者が自らのために行う活動との間で、その内容において重複(一時的に生ずるもの及び事実判断の誤りに係るリスクを軽減させるために生ずるものを除く。)がある場合には、当該法人が行う活動は、国外関連者に対する役務提供に該当しない。 (3) 国外関連者株主又は出資者としての地位を有する法人(以下(3)において「親会社」という。)行う活動であって次に掲げるもの(当該活動の準備のために行われる活動を含む。)は、国外関連者に対する役務提供に該当しない。   親会社が発行している株式の金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項に規定する金融商品取引所への上場   親会社株主総会の開催株式の発行その他の親会社に係る組織上の活動であって親会社がその遵守すべき法令に基づいて行うもの   親会社による金融商品取引法第24条第1項に規定する有価証券報告書作成(親会社が有価証券報告書を作成するために親会社としての地位に基づいて行う国外関連者の会計帳簿の監査を含む。)又は親会社による措置法第66条の4の4第4項第1号に規定する連結財務諸表の作成その他の親会社がその遵守すべき法令に基づいて行う書類の作成   親会社が国外関連者に係る株式又は出資の持分を取得するために行う資金調達   親会社が当該親会社の株主その他の投資家に向けて行う広報   親会社による国別報告事項に係る記録の作成その他の親会社がその遵守すべき租税に関する法令に基づいて行う活動   親会社が会社法(平成17年法律第86号)第348条第3項第4号に基づいて行う企業集団の業務の適正を確保するための必要な体制の整備その他のコーポレート・ガバナンスに関する活動   その他親会社が専ら自らのために行う国外関連者の株主又は出資者としての活動 (注)1 例えば、親会社が国外関連者に対して行う特定の業務に係る企画、緊急時の管理若しくは技術的 助言又は日々の経営に関する助言は、イからチまでに掲げる活動には該当しないことから、これらが(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合((2)に該当する場合を除く。2において同じ。)には、国外関連者に対する役務提供に該当する。    2 親会社が国外関連者に対する投資の保全を目的として行う活動についても、(1)に定めるとおり当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものである場合には、国外関連者に対する役務提供に該当する。 (4) 国外関連者が行う活動が法人に対する役務提供に該当するかどうかについては、(1)及び(2)と同様の方法により判断する。また、法人の株主又は出資者としての地位を有する国外関連者が行う活動が当該法人に対する役務提供に該当するかどうかについては、(3)と同様の方法により判断する。 (5) 法人が国外関連者に対し支払うべき役務提供に係る対価の額の妥当性を検討するため、当該法人に対し、当該役務提供の内容等が記載された書類の提示又は提出を求めることとする。この場合において、当該役務提供実態が確認できないときは、措置法第66条の4第3項の規定の適用について検討することに留意する。
(注) 「役務提供の内容等が記載された書類」には、例えば、帳簿や役務提供を行う際に作成した契約書が該当する。

Ⅱ 事務運営指針3-10(企業グループ内における役務提供に係る独立企業間価格)関係

5%の根拠は?
Q
 法人が簡易な算定方法を選択した場合に適用するマークアップ率が5%とされていますが、その根拠を教えてください。
A  一定の企業グループ内役務提供取引について、企業が役務提供に要した費用に5%を乗じた金額を加算した金額を対価の額としているときは、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うこととしている。5%であることはOECD移転価格ガイドラインで示されているものであり、5%という水準はOECD/G20 BEPSプロジェクトにおける議論を経て合意されたものとなっている。

簡易な算定方法による更正処分はなし
Q
 国税局等の調査において簡易な算定方法により更正処分を行うことがありますか。
A  事務運営指針3-10(1)に定める簡易な算定方法は、法人が比較対象取引を選定して独立企業間価格を算定する原則的な方法に代えて選択するものであるため、国税当局が簡易な算定方法により更正処分を行うことはない。
 なお、事務運営指針3-10(2)及び(3)の総原価法については、同指針で「……調査を行う場合には、……検討する。」とあるとおり、法人が選択できるものではなく、調査において国税当局が必要に応じてその適用を検討するものとなっている。

総原価の定義は同じ
Q
 企業グループ内における役務提供での「総原価」(事務運営指針3-10(3))と本来の業務に付随した役務提供における「総原価」(事務運営指針3-10(2))の定義は同じですか。
A  事務運営指針3-10(1)ヘにおいて、「なお、役務提供に係る総原価の額には、原則として、当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれることに留意する(以下3-10において同じ。)。」とあるとおり、企業グループ内における役務提供の取扱いにおける総原価と本来業務に付随して行われた役務提供の取扱いにおける総原価の定義は同じとなる。

簡易な算定方法はバックオフィス業務を想定
Q
 事務運営指針3-10(1)が適用される場合と(2)が適用される場合の違いについて教えてください。
A  事務運営指針3-10(1)については、例えば、総務、経理等いわゆるバックオフィス的な業務に適用されることが想定されている。一方、事務運営指針3-10(2)は、「本来業務に付随する」役務提供に限定して適用されるものであるという違いが挙げられる。
 また、事務運営指針3-10(1)イにおいて企業グループの中核的事業活動に直接関連しないことが要件とされているとおり、事務運営指針3-10(1)は、法人が行う役務提供が法人の主要事業であっても、その企業グループの中核事業でない場合には適用できるものだが、事務運営指針3-10(2)は、「……役務提供を主たる事業としていない法人又は国外関連者が……」とあるとおり、役務提供が法人の主要事業である場合には適用できないという違いもある。
 なお、事務運営指針3-10(1)は、法人が比較対象取引を選定して独立企業間価格を算定する原則的な方法に代えて選択できる簡易な算定方法に関する取扱いを定めているものであるのに対し、事務運営指針3-10(2)は、法人が選択できるものではなく、調査において国税当局が必要に応じてその適用を検討する取扱いを定めているものである。

シェアードサービスの対価は?
Q
 今回の改正は、単体ベースではなく、企業グループレベルで重要か否かを判断するという趣旨ですか。
 例えば、グループ各社の人事・経理・総務等の特定業務を一元管理するシェアードサービス提供企業は、単体ベースでみると総原価又は費用の相当部分がサービスの原価等で占められているが、企業グループベースでみると相当部分を占めるとはいえません。この場合、シェアードサービスの対価は総原価になりますか。
A  事務運営指針3-10(1)の簡易な算定方法は、法人が行う役務の内容が法人の主要事業であっても、その法人が属するグループの中核的事業活動に直接関連しなければ適用できるので(事務運営指針3-10(1))、その意味で法人単体のみではなく企業グループレベルで適用要件を検討することが求められる。
 また、総原価法は調査において税務当局が必要に応じてその適用を検討するものであり、法人が選択できるものではない。したがって、シェアードサービスの対価は、比較対象取引を選定して独立企業間価格を算定する原則的な方法により算定するか、事務運営指針3-10(1)の簡易な算定方法を選択するかのいずれかによることになる。

【参考2】事務運営指針3-10 ※下線は改正部分
(企業グループ内における役務提供に係る独立企業間価格の検討) 3-10 (1) 法人と国外関連者との間で行われた役務提供が次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その対価の額を独立企業間価格として取り扱う。   当該役務提供が支援的な性質のものであり、当該法人及び国外関連者が属する企業グループの中核的事業活動に直接関連しないこと。   当該役務提供において、当該法人又は国外関連者が保有し、又は他の者から使用許諾を受けた無形資産を使用していないこと。   当該役務提供において、当該役務提供を行う当該法人又は国外関連者が、重要なリスクの引受け若しくは管理又は創出を行っていないこと。   当該役務提供の内容が次に掲げる業務のいずれにも該当しないこと。  (イ) 研究開発  (ロ) 製造、販売、原材料の購入、物流又はマーケティング  (ハ) 金融、保険又は再保険  (ニ) 天然資源の採掘、探査又は加工   当該役務提供と同種の内容の役務提供が非関連者との間で行われていないこと。   当該役務提供を含む当該法人及び国外関連者が属する企業グループ内で行われた全ての役務提供(イからホまでに掲げる要件を満たしたものに限る。)をその内容に応じて区分をし、当該区分ごとに、役務提供に係る総原価の額を従事者の従事割合、資産の使用割合その他の合理的な方法により当該役務提供を受けた者に配分した金額に、当該金額に100分の5を乗じた額を加算した金額をもって当該役務提供の対価の額としていること。   なお、役務提供に係る総原価の額には、原則として、当該役務提供に関連する直接費の額のみならず、合理的な配賦基準によって計算された担当部門及び補助部門における一般管理費等の間接費の額も含まれることに留意する(以下3-10において同じ。)。 (注) 法人が国外関連者に対して行った役務提供が、当該法人が自己のために行う業務と一体として行われた場合には、ヘの定めの適用に当たり当該業務を当該役務提供に含めた上で役務提供の対価の額を算定する必要があることに留意する。国外関連者が法人に対して役務提供を行った場合についても、同様とする。   当該役務提供に当たり、当該法人が次に掲げる書類を作成し、又は当該法人と同一の企業グループに属する者から取得し、保存していること。  (イ) 当該役務提供を行った者及び当該役務提供を受けた者の名称及び所在地を記載した書類  (ロ) 当該役務提供がイからヘまでに掲げる要件の全てを満たしていることを確認できる書類  (ハ) ヘに定めるそれぞれの役務提供の内容を説明した書類  (ニ) 当該法人が実際に当該役務提供を行ったこと又は当該役務提供を受けたことを確認できる書類  (ホ) ヘに定める総原価の額の配分に当たって用いた方法の内容及び当該方法を用いることが合理的であると判断した理由を説明した書類  (ヘ) 当該役務提供に係る契約書又は契約の内容を記載した書類  (ト) 当該役務提供において当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額又は当該国外関連者に支払う対価の額の明細及び計算過程を記載した書類 (2) 法人国外関連者との間で行われた役務提供((1)の定めにより、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うものを除く。)のうち、当該法人又は国外関連者の本来の業務に付随して行われたものについて調査を行う場合には、必要に応じ、当該役務提供に係る総原価の額を独立企業間価格とする原価基準法に準ずる方法と同等の方法又は取引単位営業利益法に準ずる方法と同等の方法の適用について検討する。
  この場合において、本来の業務に付随して行われたもの」とは、例えば、海外子会社から製品を輸入している法人が当該海外子会社の製造設備に対して行う技術指導のように役務提供を行う主たる事業としていない法人又は国外関連者が、本来の業務に付随して又はこれに関連して行った役務提供をいう。
(注) 本来の業務に付随して行われたもの」に該当するかどうかは、原則として、役務提供の目的等により判断するのであるが、次に掲げる場合には、本文の取扱いは適用しない。
 1 当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の当該役務提供を行った事業年度の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合
 2 当該法人又は国外関連者が当該役務提供を行う際に無形資産を使用した場合
 3 その他当該役務提供の総原価の額を当該役務提供の対価の額とすることが相当ではないと認められる場合 (3) 法人国外関連者との間で行われた役務提供((1)の定めにより、その対価の額を独立企業間価格として取り扱うもの及び(2)に定める本来の業務に付随して行われたものを除く。)について調査を行う場合において、当該役務提供が次に掲げる要件の全てを満たしているときは、必要に応じ、(2)に定める方法の適用について検討する。
 イ 当該役務提供が(1)イからホまでに掲げる要件の全てを満たしていること。  ロ 当該役務提供が当該法人又は国外関連者の事業活動の重要な部分に関連していないこと。
  当該役務提供に係る総原価の額が、当該役務提供に係る従事者の従事割合資産の使用割合その他の合理的な方法により当該役務提供を受けた者に配分されていること。 (注) 次に掲げる場合には、本文の取扱いは適用しない。  1 当該役務提供に要した費用の額が、当該法人又は国外関連者の当該業務提供を行った事業年度の原価又は費用の総額の相当部分を占める場合  2 その他当該役務提供の総原価の額を当該役務提供の対価の額とすることが相当でないと認められる場合

Ⅲ 事務運営指針3-22(事前確認の申出との関係)関係

事前確認審査を保留している間は調査なし
Q
 事務運営指針3-22(3)では、「事前確認に係る手続が行われている間は、確認対象事業年度に係る申告の内容については調査を行わない。」とされていますが、具体的に「事前確認に係る手続が行われている間」とはどのようなケースを指すのでしょうか。
 また、事務運営指針6-14(1)に基づき事前確認を行うことができない旨及び同指針6-14(2)に基づき手続を保留する旨を日本の税務当局が確認申出法人に説明する場合については、「事前確認に係る手続が行われている間」に該当せず、調査が行われる可能性があるとの理解でよいですか。
A  事務運営指針3-22(3)に定める「事前確認に係る手続が行われている間」とは、法人が事前確認の申出を行ってから、①当該法人が事前確認の申出の取下げを行うまでの間、②所轄税務署長が当該法人に対して事前確認を行う旨を通知するまでの間、及び③所轄税務署長が当該法人に対して事前確認を行うことができない旨を通知するまでの間をいう。
 また、局担当課が事務運営指針6-14(1)に基づき当該法人に対して事前確認を行うことができない旨の説明を行った場合、所轄税務署長は当該法人に対して速やかに事前確認を行うことができない旨を通知することになる。この場合、当該通知後は、「事前確認に係る手続が行われている間」には該当しないため、当該法人の確認対象事業年度とされていた各事業年度に係る申告の内容について、調査が行われる可能性がある。一方、局担当課が事務運営指針6-14(2)に基づき当該法人に対して事前確認審査を保留する旨の説明を行い、事前確認審査を保留する場合は、上記①、②又は③のいずれかに該当するため、「事前確認に係る手続が行われている間」に含まれる。したがって、事前確認審査が保留されている間は、事務運営指針3-22(3)に定める取扱いにより、移転価格税制の適用に係る調査が行われることはない。

遡及適用希望事業年度における調査は?
Q
 従来、遡及適用の希望がある場合には、一般的に調査は行われなかったものと理解していますが、事務運営指針3-22(2)の「法人が事前確認の申出を行ったとしても、確認対象事業年度の前の事業年度に係る調査の開始は妨げられない。」という規定により、今後は、遡及適用希望を行っても調査が行われる可能性があるということですか。
A  法人から確認対象事業年度における独立企業間価格の算定方法等を確認対象事業年度の前の各事業年度(遡及適用希望事業年度)に準用したい旨の申出があった場合であっても、遡及適用希望事業年度に係る申告の内容については、これまでも調査が行われる可能性があった。今回の改正は、遡及適用希望事業年度については調査が行われる可能性があるという従来の取扱いを確認するものとなっている。

調査と審査が並行して行われた場合は?
Q
 調査と審査が併行して行われた場合の両者の位置づけについて教えてください。納税者からみると、調査が優先され、審査結果は調査結果をベースにしたものとなってしまうのではないかといった懸念があります。
A  事前確認に係る手続が行われている間は、確認対象事業年度に係る確認対象取引について、移転価格税制の適用に係る調査が行われることはないが、遡及適用希望事業年度に係る申告の内容については、調査が行われる可能性がある。この場合の調査と事前確認審査との関係は、次のとおりとなる。
(1)既に調査が行われている事業年度への遡及適用を希望する事前確認の申出がなされた場合
  遡及適用希望事業年度に係る調査は中断されず、確認対象事業年度に係る事前確認審査が開始されることなく保留される(事務運営指針6-14(2)ヘ)。調査終了後に、確認対象事業年度に係る事前確認審査は開始される。
(2)遡及適用を希望する事前確認の申出が行われた後に、遡及適用希望事業年度について調査を行う場合
  遡及適用希望事業年度に係る調査は開始され(事務運営指針3-22(2))、確認対象事業年度に係る事前確認審査が継続されることなく保留される(事務運営指針6-14(2)ヘ)。調査が終了した後、確認対象事業年度についての事前確認審査は再開される。
 なお、上記(1)及び(2)のいずれの場合であっても、事前確認の申出を行った法人から事前確認審査のために収受した資料(事実に関するものを除く)は、当該法人の同意がある場合を除き、調査において使用することはないとされている(事務運営指針3-22(4))。

独立企業間価格の算定方法以外は調査の可能性あり
Q
 事務運営指針3-22(3)では、「事前確認に係る手続が行われている間は、確認対象事業年度に係る申告の内容については調査を行わない。」とされていますが、括弧書きで事前確認を受けようとする国外関連取引に係る独立企業間価格の算定方法等に限るとされています。逆にこれ以外は調査が行われることがあるということですか。
A  確認対象取引であっても、措置法66条の4第2項に規定する独立企業間価格の算定方法等以外の事項については、調査が行われる可能性があるという従来の取扱いを明確にしたものである。

【参考3】事務運営指針3-22 ※下線は改正部分
(事前確認の申出との関係)
3-22
(1) 法人が事前確認を受けようとする事業年度(以下3-22において「確認対象事業年度」という。)の前の各事業年度について調査が行われている間に、当該法人が事前確認の申出を行ったとしても、当該調査は中断されない。 (2) 法人が事前確認の申出を行ったとしても、確認対象事業年度の前の事業年度に係る調査の開始は妨げられない。 (3) 事前確認に係る手続が行われている間は、確認対象事業年度に係る申告の内容(当該事前確認を受けようとする国外関連取引に係る独立企業間価格の算定方法等に限る。)については調査を行わない。 (4) 調査に当たっては、事前確認の申出を行った法人から事前確認審査のために収受した資料(事実に関 するものを除く。)使用しない。ただし、当該資料を使用することについて当該法人の同意があるときは、この限りでない。

Ⅳ 事務運営指針6-11(事前確認審査)関係

「30日以内」から「45日以内」に変更
Q
 事前確認の申出に必要な資料の添付がなかった場合における資料の提出及び事前確認審査において必要と認められる資料の提出については、改正案によれば資料の提出に通常要する日数を勘案して30日を超えない範囲内で設定するとされています。国外関連者の決算の確定に時間を要する場合やセグメント損益を提出する場合、その作成には期間を要し、30日以内の提出は困難な場合があると考えますが、いかがですか。
A  今回の改正は、資料の提出期限の上限を定めるものであり、資料の提出期限を画一的に定めるものではない。このような規定を置く趣旨は、事前確認審査には法人からの資料提出といった協力が必要不可欠であり、事前確認審査を的確かつ迅速に行い、法人の予測可能性を確保するという事前確認の目的を達成するためには、一定の範囲内で提出期限を定めることが迅速な事前確認審査に資すると考えられる。
 ただし、依頼する資料の中には、提出に時間を要するものがあるため、改正案では「30日を超えない範囲内」とされていた提出期限が「45日を超えない範囲内」に見直されている。
 なお、一般に、事前確認審査の開始時に提出を依頼する資料の項目が多くなるのは、事前確認申出の添付資料に関連する事項等が多く含まれるためとされている。税務当局では、資料の提出準備に日数を要する資料があることがあらかじめ判明している場合には、事前相談の際に法人に説明するようにしているという。

Ⅴ 事務運営指針6-14(事前確認を行うこと又は事前確認審査を開始することが適当でない場合)関係

法令等に接触するおそれがある場合の説明は?
Q
 事前確認を行うことができない場合の例として、事務運営指針6-14(1)ニでは、法令等に抵触するおそれがある場合が規定されていますが、法人が法令等に接触するおそれがないことを証明することになるのですか。
A  事前確認を適切に行うためには、法人が行う事前確認の申出の内容について、事実関係を含め説明する必要がある。申出内容が法令等に接触し、又は接触するおそれがあるか否かについて疑義が生じた場合には、その点も適切に説明する必要がある。
 ただし、法令等に接触するおそれがあるか疑義が生じた場合には、いかなる法令等に接触するおそれがあるのかについて、税務当局が法人に対して具体的に指摘することとされている。

Ⅵ 事務運営指針6-15(事前確認の通知)関係

ロールバックはできず
Q
 相互協議を伴う事前確認の申出について、相手国で事前確認申出が収受されず3年を経過した場合には、法人から申出の取下げ又は相互協議を伴わない事前確認のいずれとするか聴取がなされるとのことですが、仮に相互協議を伴わない事前確認に変更された場合、ロールバックは認められますか。
A  相互協議を伴わない事前確認においてロールバック(確認対象事業年度における独立企業間価格の算定方法等を確認対象事業年度の前の各事業年度へ準用すること)は認められていない(事務運営指針6-23)。相互協議を伴う事前確認から相互協議を伴わない事前確認に変更された場合、変更前の相互協議を伴う事前確認の申出の「確認対象事業年度」は、相互協議を伴わない事前確認においても「確認対象事業年度」となり、事前確認を受けることができる。しかし、変更前の相互協議を伴う事前確認の申出の「遡及適用希望事業年度」については、事前確認を受けることはできない。

事前確認の申出が取り下げられた場合は?
Q
 事前確認の申出が取り下げられた場合には、調査が行われる可能性がありますか。
A
 事前確認の申出が取り下げられた場合には、事務運営指針3-22(3)の取扱いの適用が認められなくなるので、移転価格税制の適用に係る調査を行わないとされていた申告の内容についても調査が行われる可能性がある。
 取り下げ前に法人に提示された事前確認審査の結果は、調査において提出された資料に基づくものではないため、事実に関する資料を除いて法人の同意がない限りは、調査で用いることはない(事務運営指針3-22(4))。調査を行う場合には、事前確認審査で提出された事実に関する資料に加え、調査において提出された資料等により把握された事実関係に基づいて機能・リスク分析を行った上で、独立企業間価格を算定することになるため、調査の結果は、必ずしも事前確認審査と同じ結果になるとは限らない。

相手国で事前確認の申出が収受されているか否かの確認は?
Q
 具体的にどのような状況が相手国において事前確認の申出が収受されていない、又は収受される見込みがない場合に該当しますか。
A  今回の改正においては、国税庁において各国税務当局と連絡をとり、相互協議の相手国の税務当局により事前確認の申出が収受されているか否か、収受される見込みがあるか否かについて確認して判断することになる。相手国において事前確認の申出が収受されたか否かは、納税者が確認するわけではない。

同一の内容であれば結論も変わらず
Q
 事前確認の申出を取下げるかどうかの理由の1つに「事前確認の申出が、過去に庁相互協議室から庁担当課を通じて相互協議の合意が成立しなかった旨の通知を受けたものとその内容において同一であると認められる場合」とありますが(事務運営指針6-15(2)ハ)、どのような理由からこれが盛り込まれたのですか。
A  相互協議を伴う事前確認の手続においては、法人から提出された確認申出書及びその添付資料並びに事前確認審査の中で提出された資料を基礎として把握された事実関係に基づいて機能・リスク分析を行った上で、確認対象取引に係る独立企業間価格の算定方法等について、相互協議の合意に基づいて確認を行うことになる。
 このため、過去に相互協議の合意が成立しなかった事前確認の申出と同一の内容であると認められる事前確認の申出が提出された場合には、そこから導き出される結論も変わらないことが見込まれ、このような場合についてまで相互協議を伴う事前確認の手続を進めることは、法人及び両国の税務当局に不必要な負担を強いることになるとしている。

平成30年2月16日より前の申出には経過措置
Q
 相互協議を伴う事前確認の申出について、相手国で事前確認申出が収受されず3年を経過した場合には、法人から申出の取下げ又は相互協議を伴わない事前確認のいずれとするか聴取がなされるとのことですが、事務運営指針の改正前に事前確認の申出を行った法人に対して経過措置はありますか。
A  従前の事務運営指針における取扱いを前提として事前確認の申出を行った法人と、改正後の事務運営指針における取扱いを前提として事前確認の申出を行う法人との間の公平性を確保するため、事務運営指針6-15(2)に関して経過的な取扱いを設けている。
 経過的な取扱いによって、改正後の事務運営指針の適用が開始される前に事前確認の申出を行った法人については、改正後の事務運営指針の適用が開始される日の翌日(平成30年2月16日)から3年間は、改正後の事務運営指針6-15(2)ロの取扱いの適用を受けることはない。

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