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解説記事2018年07月02日 【税制改正解説】 国際観光旅客税の創設並びに平成30年度におけるたばこ税および消費税関係の改正について(2018年7月2日号・№745)

税制改正解説
国際観光旅客税の創設並びに平成30年度におけるたばこ税および消費税関係の改正について
 中曽善文

国際観光旅客税の創設

1 観光財源の検討等

 観光は、世界において持続的な拡大と多様化を続けており、社会経済の発展を牽引する重要な役割を果たしている。我が国は、自然・文化・気候・食という観光振興に必要な条件を兼ね備えた世界でも数少ない国の一つであり、政府は観光を成長戦略の柱、地方創生の切り札と位置付け、豊富な観光資源を真に開花させるべく、精力的に取り組んできた。
 その結果、足下で訪日外国人旅行者数は堅調に推移したが、平成28年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン(以下「観光ビジョン」という。)」が掲げる訪日外国人旅行者数2020年4,000万人、2030年6,000万人等の目標や、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催等を踏まえれば、より高次元の観光施策を展開していくことが急務であり、安定的な財源を確保することが重要となる。
 このため、「観光ビジョン」や平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」において、観光財源の確保を目指す旨が明記され、政府内で検討が進められた。平成29年9月には、観光庁において「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会(以下「観光財源検討会」という。)」が設置され、関係事業者等からヒアリングを行うとともに、諸外国の事例も参考にしつつ、観光財源の確保策等について検討が行われた。同年11月には、「中間とりまとめ」が公表され、税方式により出国旅客に負担を求めること等が提言された。
 その後、平成30年度税制改正において、観光促進のための税として、我が国からの出国に広く薄く負担を求める国際観光旅客税が創設された。

2 国際観光旅客税の使途
 国際観光旅客税の使途については、「国際観光旅客税の使途に関する基本方針等について」(平成29年12月22日観光立国推進閣僚会議決定)において、①ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、②我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、③地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上の3つの分野に国際観光旅客税の税収を充てることとされた。この基本方針に基づき、国際観光振興法において国際観光旅客税の使途に係る規定が創設された。

3 国際観光旅客税の内容

一 納税義務者
 国際観光旅客税の納税義務者は国際観光旅客等とされており、国際観光旅客等とは、国際船舶等(本邦と外国との間において行う旅客の運送に使用する船舶又は航空機)により本邦から出国する観光旅客その他の者であって次に掲げるものとされている。
① 出入国管理及び難民認定法の規定による出国の確認を受ける者(②又は③に掲げる者を除く。)
② 国際旅客運送事業(他人の需要に応じ、有償で、国際船舶等を使用して旅客を運送する事業をいう。以下同じ。)に使用される航空機により外国から本邦を経由して外国に赴く旅客(本邦に入国する直前の出発空港と本邦から出国した直後の到着空港が同一の空港である旅客を除く。)
③ 条約の規定に従うことを条件に本邦に入国する者として政令で定めるもの

二 課税の対象  国際観光旅客税は、国際観光旅客等の国際船舶等による本邦からの出国を課税の対象としている。ただし、外国に向けて出港した船舶や航空機が、本邦外に出た後、天候などやむを得ない理由により外国に寄港することなく本邦に帰った場合は、課税の対象外となる。したがって、一回の本邦外の地域への渡航(の完遂)に対しては、不可抗力により帰港して複数回出国する場合であっても、一回だけ課税されることとなる。

三 非課税  次の(1)(3)に掲げる国際観光旅客等の国際船舶等による本邦からの出国には、国際観光旅客税を課さないこととされている。
(1)国際旅客運送事業に使用される航空機により本邦を経由して外国に赴く旅客のうち本邦に入国後24時間以内に本邦から出国するもの  航空機による乗継旅客は日本への入出国を目的としていないと考えられることから、乗継時に一旦上陸して(空港の制限エリアを出て)出国の確認を受けて出国する場合であっても、非課税とされている。その際、短期間の観光旅客等との間で取扱いに不均衡が生じないようにする観点や特別徴収を行う航空会社の実務上の便宜を考慮し、本邦に到着した後24時間以内に本邦から出発することが一の航空券上明らかにされていることが要件とされている。
(2)天候その他やむを得ない理由により本邦に寄港した国際船舶等に乗船等していた者  例えば、外国間を航行する航空機が、悪天候や機体の故障等によりやむを得ず我が国の空港に緊急着陸し、本来の目的地に向けて再度出発する場合の出国は、不可抗力によるもののため、緊急着陸した航空機の乗客が当該航空機又は代替機により出国するような場合は、非課税とされている。
(3)2歳未満の者  国際航空の実務上、2歳未満の者は座席の確保を要さないとされており、また、類似の税を採用している諸外国の多くが、2歳未満の者を課税の対象としていないことを勘案し、航空、船舶を問わず2歳未満の者は一律非課税とされている。

四 納税地
(1)国内事業者の納税地
 国際旅客運送事業を営む者であって、国内に住所、居所、本店又はその行う事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを有するもの(以下「国内事業者」という。)の特別徴収に係る国際観光旅客税の納税地は、原則として本店又は主たる事務所の所在地とされている。
(2)国外事業者の納税地  国際旅客運送事業を営む者であって、国内事業者以外のもの(以下「国外事業者」という。)の特別徴収に係る国際観光旅客税の納税地は、原則として、その国際旅客運送事業に係る国際観光旅客等が本邦から出国する港とされている。
(3)国際観光旅客等の納税地  自家用機(プライベートジェット)により本邦から出国する場合など、国際旅客運送事業を営む者の運送によらずに本邦から出国する国際観光旅客等が国に納付する場合の国際観光旅客税の納税地は、その国際観光旅客等が本邦から出国する港とされている。

五 税 率  国際観光旅客税の税率は、本邦からの出国1回につき、1,000円とされている。

六 特別徴収・納付等
(1)特別徴収制度の趣旨
 国際観光旅客税の徴収にあたっては、納税義務者である国際観光旅客等、航空会社等の事業者及び税務当局にとって、効率的で円滑な出入国を阻害しないものとする必要があることから、基本的には、個々の納税義務者ではなく、事業者(国際旅客運送事業を営む者)がその国際旅客運送事業に係る国際観光旅客税を徴収し、まとめて国に納付する特別徴収制度が採用されている。
(2)国際旅客運送事業を営む者による特別徴収  国際旅客運送事業を営む者は、その国際旅客運送事業に係る国際観光旅客等が本邦からの出国のためその使用する国際船舶等に乗船し、又は搭乗する時までに、国際観光旅客税をその国際観光旅客等から徴収し、その出国の日の属する月の翌々月末日までにこれを納付することとされている。
 国際旅客運送事業を営む者は、納期限までに、納付すべき国際観光旅客税の額等を記載した計算書を、国内事業者にあってはその納税地を所轄する税務署長、国外事業者にあってはその納税地を所轄する税関長に提出することとされている。
(3)国際観光旅客等による納付  国際旅客運送事業を営む者の運送によらずに本邦から出国する国際観光旅客等は、本邦からの出国のため国際船舶等に乗船し、又は搭乗する時までに、国際観光旅客税を国に納付することとされている。

4 適用時期
 国際観光旅客税は、平成31年1月7日以後の本邦からの出国に課すこととされている。
 ただし、施行日前に締結された運送契約(同日前にその出国の日を定めたものに限る。)による出国については、オンチケット方式で国際観光旅客税を徴収することとしている航空会社にとって、運送契約締結後に別途徴収することは困難であるという事情を考慮し、本税は課さないこととする経過措置が設けられている。

たばこ税の改正
1 たばこ税率の引上げ

(1)税率の引上げ
① 製造たばこの製造場から移出し、又は特定販売業者が保税地域から引き取る製造たばこ
  現在、たばこに対しては、国が課税権者である国のたばこ税及びたばこ特別税と、地方公共団体が課税権者である地方のたばこ税(道府県たばこ税及び市町村たばこ税)が、それぞれ課されている。
(注)国のたばこ税及びたばこ特別税は、製造たばこを製造場から移出する際又は製造たばこを保税地域からの引き取る際に納税義務が成立することとされており、地方のたばこ税は、製造たばこを卸売販売業者(製造者を含む。)が小売販売業者に販売する際に納税義務が成立することとされている。
   今回の税率引上げは、国のたばこ税、地方のたばこ税をそれぞれ同額引き上げることとされた。具体的な税率の引上げ幅については、諸外国におけるたばこの税負担水準も考慮し、国のたばこ税と地方のたばこ税をそれぞれ1,000本につき1,500円ずつ、合計で1,000本につき3,000円の税率を引き上げることとされた。
   なお、旧3級品の紙巻たばこについては、平成27年度税制改正において、段階的な税率引上げを行うための経過的な特例税率が措置されており、この段階的な税率引上げの期間中は、その経過的な特例税率が適用されることとなる。
② 特定販売業者以外の者が保税地域から引き取る製造たばこ
  製造たばこの輸入に関しては、自ら輸入した製造たばこの販売を業として行う者は、たばこ事業法の規定に基づき「特定販売業者」として財務大臣の登録を受けなければならないとされており(た事法11①)、上記①のとおり、特定販売業者が輸入する製造たばこについては、保税地域からの引取りの段階で国のたばこ税が課税され、その特定販売業者が小売販売業者に販売した際に地方のたばこ税が課税される仕組みとなっている。
  しかし、輸入される製造たばこには、他の者に販売することを目的としていないものもあり得るため、そのような製造たばこに対しては、地方のたばこ税が課税される局面がないため、特定販売業者以外の者により保税地域から引き取られる製造たばこに対しては、上記①の製造たばこに係る税率との均衡を図る観点から、国のたばこ税において地方のたばこ税分も合わせた税率が設定されている(た法11②)。
  今回のたばこ税率の引上げに当たっては、国と地方がそれぞれ1,000本につき1,500円ずつ、合計で3,000円の税率を引き上げることとされているので、特定販売業者以外の者が保税地域から引き取る製造たばこについては、国のたばこ税において1,000本につき3,000円の税率を引き上げることとされた。
(2)たばこ税率の引上げに伴う税率の経過措置  上記(1)のとおり、製造たばこに係るたばこ税の税率は、国と地方を合わせて1,000本につき3,000円の引上げが行われるが、たばこ税率の引上げに当たっては、平成30年10月1日、平成32年10月1日及び平成33年10月1日の3回に分けて、それぞれ国と地方を合わせて1,000本につき1,000円ずつ段階的に引き上げることとされた(改正法附則48)。
 なお、旧3級品の紙巻たばこについては、別途、平成31年9月30日までの間の経過的な特例税率が設けられているので、平成30年10月1日における税率の引上げは行われない(27年改正法附則50)。


2 加熱式たばこに係る課税方式の見直し

一 現行制度
 現行のたばこ税は、製造たばこを課税物件とし、製造たばこをその製造場から移出する製造たばこの製造者又は製造たばこを保税地域から引き取る者を納税義務者として課される税だが、この場合の製造たばことは、たばこ事業法第2条第3号(定義)に規定する「製造たばこ」をいい、同号において「製造たばこ」とは、葉たばこを原料の全部又は一部とし、喫煙用、かみ用又はかぎ用に供し得る状態に製造されたものをいう(た法2①一、た事法2三)。
 また、現行のたばこ税法は、製造たばこを喫煙用の製造たばこ、かみ用の製造たばこ及びかぎ用の製造たばこに区分し、さらに、喫煙用の製造たばこについては、第一種(紙巻たばこ)、第二種(パイプたばこ)、第三種(葉巻たばこ)及び第四種(刻みたばこ)に区分している(旧た法2②)。
(参考1)喫煙用の製造たばこの区分ごとの意義は次のとおり(旧た取通3)。
 (1)「紙巻たばこ」とは、紙その他たばこを含まないものによって巻かれた製造たばこをいう。
 (2)「パイプたばこ」とは、たばこ又はたばこを含むものを刻み、パイプ用として製造された製造たばこ(紙巻たばこ、葉巻たばこ及び刻みたばこ以外の製造たばこを含むものとする。)をいう。
 (3)「葉巻たばこ」とは、たばこ又はたばこを含むものによって巻かれた製造たばこをいう。
 (4)「刻みたばこ」とは、葉たばこを刻み幅0.3mm以下に刻んだもので、香料等が添加されていないきせる用の製造たばこ(紙巻たばこ及び葉巻たばこに該当するものを除く。)をいう。
 たばこ税の課税標準は、製造たばこの製造場から移出し、又は保税地域から引き取る製造たばこの本数とされている。この場合の製造たばこの本数は、第一種の製造たばこ(紙巻たばこ)の本数によるものとされているが、それ以外の製造たばこについては本数では捉えられないこと等を踏まえ、次の製造たばこの区分に応じて、それぞれの区分の重量をもって第一種の製造たばこ(紙巻たばこ)の1本に換算することとされている(旧た法10)。


二 改正の背景  現在販売されているいわゆる加熱式たばこについては、平成26年11月に世界に先駆けてわが国の一部地域で販売が開始されたが、紙巻たばこに代替するものとして、近年、その消費量が急速に増加してきており、平成29年7月から9月までの間における紙巻たばこと加熱式たばこの販売数量に占める加熱式たばこのシェアは約13%にまでに達した。
(参考)いわゆる加熱式たばこ(以下「加熱式たばこ」という。)には、専用の喫煙用具によって製造たばこを直接加熱して喫煙する直接加熱方式のものと、専用の喫煙用具によって溶液を加熱することにより発生した蒸気で製造たばこを加熱して喫煙する間接加熱方式のものがある。いずれの加熱式たばこも、たばこを燃焼させずに加熱することによって喫煙する製造たばこである点で、伝統的な紙巻たばことは異なる特徴があるといえる。
 この加熱式たばこについては、改正前のたばこ税法では、喫煙用の製造たばこに区分され、紙巻たばこ、葉巻たばこ及び刻みたばこのいずれにも該当しないものとして、喫煙用の製造たばこのバスケットクローズでもあるパイプたばこに分類されており、その重量1グラムをもって紙巻たばこの1本に換算した本数を課税標準としてたばこ税が課されていた。
 前述のとおり、加熱式たばこは、燃焼しないといった製品特性を有していることから葉たばこの使用量が少なく、加熱式たばこの製品重量は紙巻たばこよりも軽いため、その製品重量に基づいて換算した本数を課税標準として課されるたばこ税等の負担額が紙巻たばこよりも低い状況にあった。
 たばこについては、特殊な嗜好品としての性格に着目し、いわゆる財政物資として他の物品よりも高い税負担を求められてきており、こうしたたばこの位置付けは、紙巻たばことの代替性を有する加熱式たばこについても同様となる。しかし、加熱式たばこについては、紙巻たばことの代替性が高く、紙巻たばこと同様の価格帯で販売されているにもかかわらず紙巻たばこと比べて低い税負担額となり、税負担の公平性の観点から問題が生じていた。また、現在販売されている加熱式たばこの製品ごとの製品重量も大きく異なる結果、加熱式たばこの製品間においても税負担の公平性の確保が必要となっていた。


三 改正の内容
(1)課税区分の新設
 加熱式たばこは、紙巻たばこ、葉巻たばこ及び刻みたばこのいずれにも該当しない喫煙用の製造たばことしてパイプたばこに区分されていたが、代表的なパイプたばこが、たばこ又はたばこを含むものを刻んでパイプ用に製造されたものであるのに対し、加熱式たばこは、葉たばこ等を加工した物品が、フィルターとともに巻紙で巻かれたものやカプセル等の容器に充塡されたものであり、その製品の構造・機能がパイプたばことは明らかに異なっている。
 このため、加熱式たばこの製品特性を踏まえた課税方式に見直すことを目的として、喫煙用の製造たばこの区分として、新たに「加熱式たばこ」の区分を設けることとされた。この結果、たばこ税法上の喫煙用の製造たばこの区分は、「イ 紙巻たばこ」、「ロ 葉巻たばこ」、「ハ パイプたばこ」、「ニ 刻みたばこ」及び「ホ 加熱式たばこ」となる(た法2②)。
(参考)「加熱式たばこ」とは、たばこ又はたばこを含むものを燃焼せず、加熱(水その他の物品を加熱することによる加熱を含む。)して、たばこの成分を吸引により喫煙に供し得る状態に製造された製造たばこ(水パイプで喫煙するための製造たばこを除く。)をいう。また、加熱式たばこに該当する製造たばこは、パイプたばこ及び刻みたばこから除くこととされている(た取通3)。
(2)みなし製造たばこの整備  現在販売されている加熱式たばこには、直接加熱方式と間接加熱方式があるが、直接加熱方式の加熱式たばこは、グリセリンその他の加熱により蒸気となる物品(以下「溶液」という。)が製造たばこ自体に含まれているのに対して、間接加熱方式の加熱式たばこでは、溶液が製造たばこに該当しない加熱式たばこの喫煙用具に充塡されており、たばこ税の課税上、溶液部分の重量の取扱いが直接加熱方式と間接加熱方式では異なる。
 燃焼を伴わない加熱式たばこの喫煙に際しては、溶液はその吸い応えに必要な物品であり、両者の課税上のバランスを確保するためには、間接加熱方式に用いられる加熱式たばこの喫煙用具に充塡された溶液部分の重量を課税標準となる本数の換算の基礎となる重量に含める必要があることから、次の要件の全てに該当する喫煙用具について、たばこ税法上、製造たばことみなすこととされた(た法8②、た令2の2、た規2)。
① 加熱式たばこの喫煙用具であること
② 加熱により蒸気となるグリセリンその他の物品又はこれらの混合物が充塡されたものであること
③ 製造たばこ製造者その他の一定の者以外の者がその製造場から移出するものでないこと
(注)上記の「製造たばこ製造者その他の一定の者」とは、次に掲げる者のいずれかに該当する者をいう。
 イ たばこ事業法第8条(会社以外の製造の禁止)に規定する会社(日本たばこ産業株式会社)
 ロ たばこ事業法第14条第1項(特定販売業者の承継)に規定する特定販売業者
 ハ 上記①及び②に該当するものをイ又はロに掲げる者から委託を受けて製造した者
 ニ たばこ税法第12条第6項又は第13条第5項の規定により製造たばこ製造者とみなされる者
 ホ 上記①及び②に該当するものをハの委託を受けた者又はニに掲げる者から委託を受けて製造した者
 したがって、上記①及び②に該当する喫煙用具であっても、上記(注)イからホまでに掲げる者のいずれにも該当しない者がその製造場から移出したものは製造たばこにみなされないが、一方で、上記①及び②に該当する喫煙用具で保税地域から引き取るものについては製造者の如何にかかわらず、その全てが製造たばことみなされる。
 なお、製造たばことみなされた加熱式たばこの喫煙用具についての製造たばこの区分は加熱式たばことされ、製造たばことみなされた加熱式たばこの喫煙用具の製造者が製造たばこ製造者でないときは、これを製造たばこ製造者とみなすこととされた(た法8②③)。
(3)課税方式(課税標準の換算方法)の見直し  現在販売されている加熱式たばこは、パイプたばこに区分され、その製品重量1グラムをもって紙巻たばこの1本に換算することとされていた。しかし、加熱式たばこは、紙巻たばこと同様の価格帯で販売されているものの、たばこを燃焼しない特性から製品重量が軽く、また、加熱式たばこの製品間でも重量に大きな差があるため、その製品重量のみをもって課税標準となる本数に換算する改正前の課税標準の計算方法では、紙巻たばことの間や加熱式たばこの製品間で税負担に不均衡が生じる結果となる。
 このため、加熱式たばこに係る課税標準の計算方式について、製造たばこの本数を課税標準とする改正前の従量税制度を維持しつつ、加熱式たばこの製品特性を踏まえ、特殊な嗜好品としてのたばこが消費者に与える効用を適切に反映できるよう、加熱式たばこの課税標準となる製造たばこの本数は、次の①及び②の方法により換算した紙巻たばこの本数の合計本数とすることとされた(た法10③、た令3、た規3、4)。
① 「重量」に応じた換算方式の見直し
  加熱式たばこの重量の0.4グラムをもって紙巻たばこの0.5本に換算することとされた(た法10③一)。この方法により加熱式たばこの重量を紙巻たばこの本数に換算する場合の計算は、製造たばこの製造場から移出され、又は保税地域から引き取られた加熱式たばこの品目ごとの一個当たりの重量(0.1グラム未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てた重量)に当該加熱式たばこの品目ごとの数量を乗じて得た重量を合計し、その合計重量をもって紙巻たばこの本数に換算する方法により行うこととされている(た令3②)。
  また、この場合の加熱式たばこの品目ごとの一個当たりの重量には、たばこの効用に直接的な影響を与えないフィルターのほか、次の加熱式たばこの区分に応じて、それぞれ次に定めるものに係る重量は含まないこととされている(た規3)。
 イ 加熱式たばこ(ロに掲げる加熱式たばこを除く。) 加熱式たばこに巻かれた紙及び葉たばこが充塡されている容器
 ロ 上記(2)において加熱式たばことみなされる加熱式たばこの喫煙用具 その加熱式たばこの喫煙用具に充塡されたグリセリンその他の物品又はこれらの混合物以外のもの
② 「価格」に応じた課税方式の導入
  たばこの価格は、消費者の満足度を適切に反映する指標として捉えられることを踏まえ、紙巻たばこの本数への換算において、たばこの価格に基づく換算方法を導入することとされた。
  具体的には、次のイ又はロに掲げる加熱式たばこの区分に応じ、それぞれに定める金額の紙巻たばこ1本の金額に相当する金額をもって紙巻たばこの0.5本に換算することとされた(た法10③二)。この方法により次のイ又はロの金額を紙巻たばこの本数に換算する場合の計算は、製造たばこの製造場から移出され、又は保税地域から引き取られた加熱式たばこの品目ごとの一個当たりの次のイ又はロの金額に当該加熱式たばこの品目ごとの数量を乗じて得た金額を合計し、その合計額をもって紙巻たばこの本数に換算する方法により行うこととされた(た令3⑤)。
  なお、この場合の「紙巻たばこ1本の金額に相当する金額」とは、たばこ税、たばこ特別税、道府県たばこ税及び市町村たばこ税の税率をそれぞれ1,000で除して得た金額の合計額を100分の60で除した金額とされている(た令3④)。
 イ 小売定価が定められている加熱式たばこ
   製造たばこの製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる時に小売定価(たばこ事業法第33条第1項又は第2項(小売定価の認可)の認可を受けた小売定価をいう。)が定められている加熱式たばこについては、その小売定価に相当する金額(消費税及び地方消費税に相当する金額を除く。)とされている(た法10③二イ)。
 ロ イに掲げるもの以外の加熱式たばこ
  製造たばこ製造者又は特定販売業者(輸入業者)が販売以外(展示用、見本用等)の目的で製造たばこの製造場から移出し、又は輸入する加熱式たばこ等のように小売定価の定めのない加熱式たばこについては、一定の方法により計算した、いわゆる推定小売定価によることとされている。
  具体的には、次の(イ)又は(ロ)の金額に、その加熱式たばこを販売する者(その製造者を除く。)のその販売に係る通常の利潤及び費用に相当する金額並びにその加熱式たばこに課されるべきたばこ税、たばこ特別税、道府県たばこ税及び市町村たばこ税に相当する金額の合計額として一定の方法により計算した金額を加算した金額とされている(た法10③ニロ)。
(イ)製造たばこの製造場から移出される加熱式たばこについては、その加熱式たばこの製造者がその移出した加熱式たばこの製造及び販売につき要した費用又は通常要すべき費用に、その製造者の通常の利潤に相当する金額を加算した金額(消費税及び地方消費税に相当する金額を除く。)≪いわゆる製造者税抜販売価格≫
(ロ)保税地域から引き取られる加熱式たばこについては、関税定率法第4条から第4条の9まで(課税価格の計算方法)の規定に準じて算出した価格に、その加熱式たばこに係る関税の額(附帯税の額に相当する額を除く。)に相当する金額を加算した金額≪いわゆる引取価格≫
(注1)上記の(イ)又は(ロ)の金額に加算する「その加熱式たばこを販売する者のその販売に係る通常の利潤及び費用に相当する金額並びにその加熱式たばこに課されるべきたばこ税、たばこ特別税、道府県たばこ税及び市町村たばこ税に相当する金額の合計額として一定の方法により計算した金額」は、上記(イ)の製造者税抜販売価格又は(ロ)の引取価格に30分の70を乗じて計算した金額とされている(た令3⑥)。
(参考)例えば、製造たばこの製造場から移出した小売定価のない加熱式たばこで、その製造者税抜販売価格が130円の場合の推定小売定価は次のとおりとなる。

(注2)「関税の額に相当する金額」とは、関税法第13条の4(端数計算)において準用する国税通則法第119条第1項(国税の確定金額の端数計算等)の規定の規定を適用しないで計算した場合における関税の額に相当する金額によるものとされ、その金額には、その加熱式たばこに係る次の金額を含むものとされている(た令3⑧)。
 (i)関税定率法その他の法律の規定により関税を軽減され、又は免除される場合には、その軽減され、又は免除された関税(関税定率法第14条第10号若しくは第14号(無条件免税)の規定により免除され、又は同法第14条の2(再輸入減税)の規定により軽減された関税を除く。)の額に相当する金額
 (ⅱ)関税法第23条第1項(船用品又は機用品の積込み等)の規定の適用を受けるものである場合には、同項の承認の時に輸入されたものとして計算した関税の額に相当する金額
(注3)上記イ又はロの計算に関して、「加熱式たばこの品目ごとの一個当たりの次のイ又はロの金額」、「紙巻たばこ1本の金額に相当する金額」及び「ロ(イ)及び(ロ)の金額」に一銭未満の端数がある場合には、その端数を切り捨てるものとされている(た令3⑨)。
(注4)上記の計算方法のほか、製造たばこの製造場から移出されたロに掲げる加熱式たばこの推定小売価格の計算について、加熱式たばこの製造者が消費者に販売する目的でその加熱式たばこを製造場から移出した場合、その製造者が販売する目的でその加熱式たばこを製造場から移出した時に対価たる金額が確定していない場合、その製造者が販売以外の目的でその加熱式たばこを製造場から移出した場合の上記ロの金額の計算方法についての規定が設けられている(た令3⑦、た規4)。


③ 課税方式の見直しに伴う経過措置
  上記①及び②のとおり、加熱式たばこの課税標準の計算方法について、重量に応じた換算方式の見直しとともに、価格に応じた換算方式が導入されたが、新たな換算方式への見直しは、平成30年10月1日から平成34年10月1日までの間に5回に分けて段階的に実施することとされた。
  すなわち、平成30年10月1日から平成34年9月30日までの間の加熱式たばこの課税標準は、改正前の加熱式たばこの課税標準となる紙巻たばこの本数及び改正後の加熱式たばこの課税標準となる紙巻たばこの本数のそれぞれに、一定の率を乗じて計算した本数の合計本数とすることとし、改正後の加熱式たばこの課税標準となる紙巻たばこの本数に5分の1ずつ移行していくこととされている(改正法附則47)。


消費税の改正
1 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)における手続の電子化等

一 改正前の制度の概要
 税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者(以下「外国人旅行者」という。)に対して、当該外国人旅行者がその出国の際に海外に持ち出す物品(最終的に輸出される物品)を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。
 輸出物品販売場における資産の譲渡等は、国内において資産の譲渡等を行うものではあるが、外国人旅行者がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることから、所定の手続を行って販売される一定の物品については、輸出取引と同様に消費税が免除されている。
 なお、輸出物品販売場を経営する事業者が外国人旅行者に対して免税で販売するためには、以下の要件を満たす必要がある。
(1)外国人旅行者から、その所持する旅券等の提示を受けること
(2)旅券等に購入の事実を記載した書類(以下「購入記録票」という。)の貼付け等を行うこと
(3)外国人旅行者から、免税購入した物品をその購入後において輸出する旨を誓約する書類(以下「購入者誓約書」という。)の提出を受けること
(4)免税購入した物品が一定の消耗品(通常生活の用に供する物品のうち、食品類、飲料類、薬品類、化粧品類その他の消耗品をいい、以下単に「消耗品」という。)である場合には、同一の店舗で同一の日に販売する消耗品の購入金額が税抜50万円を超えない範囲のものであって、一定の要件を満たす包装を施した状態で購入者に引き渡すこと
(5)免税購入した物品が消耗品以外の物品(以下「一般物品」という。)である場合で、同一の店舗で同一の日に販売する一般物品の購入金額が税抜100万円を超える場合には、その外国人旅行者の所持する旅券等の写しの提出を受けること
(6)同一の日に同一の外国人旅行者に対して販売する金額が、一般物品、消耗品それぞれについて税抜5,000円以上であること
 また、外国人旅行者は、その出国の際に、旅券等に貼付けを受けた購入記録票を税関に提出する必要がある。

二 改正の内容
(1)免税販売手続の電子化
① 電子化の具体的内容
  免税販売手続については、上記のとおり書面による手続を原則とし、一部の手続についてのみ、電磁的記録による提供・保存が認められていた。平成30年度税制改正においては、この免税販売手続を簡略化すべく、原則電子的に行うこととされ、その情報等の保存も原則電磁的記録によることとされた(消令18)。
  改正後の免税販売手続の具体的な内容は以下のとおりとなる。
 イ 輸出物品販売場を経営する事業者は、外国人旅行者から旅券等の提示を受け、その提示を受けた旅券等に記載された情報及びその外国人旅行者の購入の事実を記録した電磁的記録(以下「購入記録情報」という。)を、電子情報処理組織を使用して、遅滞なく国税庁長官に提供すること(消令18⑥)
 ※ 購入記録情報とは以下の事項が記録された電磁的記録をいう(消規6⑦)。
 (イ)免税購入する外国人旅行者から提示を受けた旅券等に記載された情報
 (ロ)当該輸出物品販売場を経営する事業者の氏名等及び納税地
 (ハ)当該輸出物品販売場の名称、所在地及び税務署長から通知を受けた識別符号
 (ニ)当該免税対象物品の譲渡の年月日
 (ホ)当該免税対象物品の品名、品名ごとの数量、価額及び一般物品又は消耗品の別並びに当該免税対象物品の価額の合計額
 (ヘ)国際第二種貨物利用運送事業者を利用した場合には、当該国際第二種貨物利用運送事業者の氏名又は名称
 (ト)一の販売場とみなされた合算対象輸出物品販売場において免税対象物品の譲渡を行う場合には、その旨
 (チ)当該免税対象物品の譲渡が軽減対象課税資産の譲渡等に該当する場合には、その旨
 ロ 輸出物品販売場を経営する事業者は、免税購入する外国人旅行者に対して、以下の事項を説明すること(消令18⑩、消規6の3)
 (イ)その免税購入した物品が輸出するため購入されるものである旨
 (ロ)出国する際に、その出港地を所轄する税関長にその所持する旅券等を提示しなければならない旨
 (ハ)免税購入した物品を出国する際に所持していなかった場合には、その免除された消費税等相当額を徴収される旨
   また、輸出物品販売場において免税購入した外国人旅行者は、その出国の際、その出港地を所轄する税関長にその所持する旅券等を提示することとされた(消令18⑤)。
   上記イの購入記録情報を国税庁長官へ提供するためには、あらかじめ、その納税地を所轄する税務署長に、届出者の氏名等、輸出物品販売場の所在地及び電子メールアドレス等の事項を記載した届出書を提出しなければならないこととされた(消規6の2①)。この届出書の提出を受けた税務署長は、当該届出書を提出した事業者に対して、当該届出書に係る輸出物品販売場ごとの識別符号を通知することとされている(消規6の2②)。
   これら免税販売手続の電子化に伴い、現行の以下の手続等については廃止されることとなった。
  ・外国人旅行者がその所持する旅券等に購入記録票の貼付けを受け、当該旅券等との間に割印を受ける手続
  ・外国人旅行者による輸出物品販売場を経営する事業者に対する購入者誓約書及び旅券等の写しの提出並びに当該事業者による当該購入者誓約書及び旅券等の写しの保存義務
  ・外国人旅行者による税関長への購入記録票の提出義務
 また、上記①イの購入記録情報の国税庁長官への提供は、その提供すべき輸出物品販売場を経営する事業者と契約を締結した承認送信事業者が提供できることとされ、この場合には、当該承認送信事業者は、国税庁長官に提供した購入記録情報を当該輸出物品販売場を経営する事業者に提供するものとされている(承認送信事業者制度の詳細は以下②参照)。
② 承認送信事業者制度の創設
  免税販売手続の電子化に伴い、承認送信事業者制度が新たに創設された。これは、本来輸出物品販売場を経営する事業者が国税庁長官に提供しなければならない購入記録情報を、その輸出物品販売場を経営する事業者との間でその提供につき承認送信事業者が提供することに関する契約を締結しており、かつ、当該承認送信事業者が購入記録情報を国税庁長官に提供することにつき、契約を締結した輸出物品販売場との間で必要な情報を共有するための措置が講じられている場合において、当該承認送信事業者がその輸出物品販売場を経営する事業者のために提供することができることとするものである(消令18の4①)。この「承認送信事業者」とは、次の要件をすべて満たす事業者(課税事業者に限る。)で、他の事業者が経営する輸出物品販売場の購入記録情報を提供することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けた者をいう(消令18の4④)。
 イ 現に徴収が著しく困難である国税の滞納がないこと
 ロ 契約を締結した輸出物品販売場との間で必要な情報を共有するための措置が講じられ、購入記録情報を電子情報処理組織を使用して適切に国税庁長官に提供できること
 ハ 輸出物品販売場の許可又は承認免税手続事業者若しくは承認送信事業者の承認の取消しの日から3年を経過しない者でないことその他購入記録情報を国税庁長官に提供する承認送信事業者として特に不適当と認められる事情がないこと
  承認送信事業者の承認を受けようとする事業者は、その旨を記載した申請書に必要書類を添付して、その納税地を所轄する税務署長に提出することとされている(消令18の4⑤、消規10の7①②)。
  承認送信事業者は、契約に係る輸出物品販売場の購入記録情報を国税庁長官に提供する場合には、当該承認送信事業者の識別符号を併せて提供する必要があり、また、その提供した購入記録情報又はその情報を出力することにより作成した書面を、当該輸出物品販売場を経営する事業者に対して提供し、又は交付しなければならないこととされている(消令18の4①後段、消規10の5)。
  また、承認送信事業者は、契約を締結した輸出物品販売場ごとに、国税庁長官に提供した購入記録情報を整理し、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則第8条第1項各号に掲げるいずれかの措置を行い、同項に規定する要件に準ずる要件に従って、当該提供を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地等に保存しなければならないこととされている(消令18の4②、消規10の6①②)。
(2)免税販売の対象となる最低購入金額の判定の見直し  輸出物品販売場における免税販売については、同一の外国人旅行者に対する同一店舗の1日あたりの販売において、一般物品と消耗品についてそれぞれで最低購入金額(税抜5,000円以上)を満たす必要がある。
 平成30年度税制改正において、一般物品と消耗品とを合算して最低購入金額である税抜5,000円の判定をすることが可能とされた。ただし、一般物品と消耗品とを合算して最低購入金額の判定を行った場合のその合算対象となった一般物品については、消耗品として免税販売手続を行うこととされた(消令18③)。

三 適用関係  上記二(1)の改正は、平成32年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について(30年改正消令附則1三、4①)、二(2)の改正は、平成30年7月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について(30年改正消令附則1一、3①)、それぞれ適用される。

2 申告書の電子情報処理組織による提出義務化

(1)改正前の制度の概要
 消費税の中間申告書、確定申告書及び還付申告書並びにこれらの申告書の添付書類は、書面により提出しなければならないこととされている(消法42、43、45、46)。
 行政機関等は、申請等のうちその申請等に関する法令の規定により書面等により行うこととしているものについては、その法令の規定にかかわらず、電子情報処理組織を利用して行わせることができることとされている(行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律3)。これに基づき、上記の消費税の申告書及びその添付書類についても、事業者の選択により、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができることとされている(国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令3~6、別表)。
(2)改正の内容 ① 改正の概要
  経済社会のICT化等を踏まえ、官民あわせたコストの削減や企業の生産性向上を推進する観点から、申告データを円滑に電子提出できるよう環境整備を進めつつ、まずは大法人について、電子申告の義務化が行われた。なお、電子的な提出が困難と認められる一定の事由があるときは、税務署長の承認に基づき、例外的に書面による申告書等の提出が可能とされた。
② 電子情報処理組織による申告
 イ 制度の概要
   特定法人である事業者の消費税の申告については、中間申告書、確定申告書若しくは還付申告書又はこれらの申告書に係る期限後申告書若しくは修正申告書及びこれらの申告書の添付書類に記載すべきものとされている事項を、電子情報処理組織を使用する方法により提供することにより、行わなければならないこととされた(消法46の2①)。
 ロ 対象法人
   特定法人である事業者(課税事業者に限る。)が、電子申告の義務化の対象とされている(消法46の2①)。特定法人とは、次の法人をいう(消法46の2②)。
 (イ)当該事業年度開始の時における資本金の額又は出資の金額等が1億円を超える法人
 (ロ)相互会社
 (ハ)投資法人
 (ニ)特定目的会社
 (ホ)国又は地方公共団体
 (注1)人格のない社団等及び法人課税信託に係る受託事業者は、特定法人に該当しないこととされている(消法3、消規11の3)。また、外国法人も対象外となる。
 (注2)公共法人、公益法人及び協同組合等も、資本金の額又は出資の金額を有しており、かつ、それが1億円を超える場合には、特定法人に該当する。
 (注3)国又は地方公共団体については、そもそも国又は地方公共団体は義務化を推進する立場であることや行政コスト削減の観点から、消費税固有で電子申告義務化の対象とされた(消法46の2②五)。
 (注4)銀行等保有株式取得機構がその会員から銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律第41条第1項及び第3項の規定により納付された当初拠出金の額及び売却時拠出金の額の合計額は、特定法人に該当するかどうかの判定上は資本金の額又は出資の金額と同様に扱うこととされた(消令63条の2①)。
 ハ 対象書類
   次の書類が電子情報処理組織を使用する方法による提供の義務化の対象とされている(消法46の2①)。
 (イ)前課税期間実績に基づく中間申告書
 (ロ)仮決算の中間申告書
 (ハ)確定申告書
 (ニ)還付申告書
 (ホ)上記(ハ)及び(ニ)の申告書に係る期限後申告書
 (ヘ)上記(イ)から(ニ)までの申告書に係る修正申告書
 (ト)消費税法又は国税通則法第18条第3項若しくは第19条第4項の規定により上記(イ)から(ヘ)までの申告書に添付すべきものとされている書類
 (注)消費税法に基づく命令(すなわち消費税法施行令及び消費税法施行規則)により添付すべきものとされている書類についても同様となる。
 ニ 具体的な電子申告の方法
   電子申告の方法は、具体的には、次の事項の区分に応じそれぞれ次の方法とされている。
 (イ)上記ハ(イ)から(ヘ)までの申告書(以下「納税申告書等」という。)に記載すべきものとされている事項(以下「申告書記載事項」という。)
   電子情報処理組織を使用して、申告書記載事項を入力して送信する方法により提供することとされている(消規23の2③一)。
 (注)電子情報処理組織とは、国税庁の使用に係る電子計算機とその申告をする内国法人の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう(消法46の2①)。
 (ロ)上記ハ(ト)の書類に記載すべきものとされている事項(以下「添付書類記載事項」という。)
   次のⅰ又はⅱのいずれかの方法により提供することとされている(消規23の2③二)。
   ⅰ 電子情報処理組織を使用して、添付書類記載事項を入力して送信する方法
   ⅱ 添付書類記載事項が記載された書類をスキャナにより読み取る方法その他これに類する方法により作成した電磁的記録を、電子情報処理組織を使用して送信する方法(ⅰの方法につき国税庁の使用に係る電子計算機において用いることができない場合に限る。)
③ 電子情報処理組織による申告が困難である場合の特例
 イ 特例の内容
   特定法人である事業者が、電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められる場合で、かつ、書面による納税申告書等の提出をすることができると認められる場合において、書面により納税申告書等を提出することについて納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、その税務署長が指定する期間内に行う消費税の申告については、書面により行うことができることとされた(消法46の3①)。
 ロ 特例を受けるための手続等
   上記イの承認を受けようとする事業者は、上記イの特例の適用を受けることが必要となった事情、上記イの税務署長の指定を受けようとする期間及び次の事項を記載した申請書を、その指定を受けようとする期間の開始の日の15日前までに、納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされている(消法46の3②、消規23の3①)。
 (イ)申請者の名称、納税地及び法人番号
 (ロ)電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難である事情が生じた日
 (ハ)その他参考となるべき事項
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成32年4月1日以後開始する課税期間から適用することとされている(30年改正法附則1七ハ、45)。

3 収益認識基準に係る国際会計基準の見直しに係る改正(長期割賦販売等に係る特例の廃止)

(1)改正の背景
 わが国の企業会計においては収益認識について、損益計算書原則で「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていなかった。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表した。
 これらの状況を踏まえ、わが国においても2015年3月に企業会計基準委員会(ASBJ)が、IFRS第15号を踏まえたわが国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手した。その後2016年2月に「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」が公表され、2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」が公表された。
 新収益認識基準は、わが国の会計基準の体制の整備及び企業間の財務諸表の比較可能性の向上を目的とし、その基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように収益を認識することであるとされている。
 今回、この新収益認識基準の公表を契機として、法人税法において収益の額についての定めを設けるとともに、収益の認識時期についても通則的な規定が設けられることとされた。
(2)改正前の制度の概要  事業者が資産の譲渡を行った場合には、原則として、当該資産の引渡しを行った日の属する課税期間において当該資産の譲渡に係る消費税を納める義務が生じる。ただし、当該資産の譲渡が所得税法第65条第1項に規定する延払条件付販売等又は法人税法第63条第1項に規定する長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等(以下「長期割賦販売等」という。)に係るものである場合には、これらの規定の適用を受けることを前提に消費税においても資産の譲渡等の時期の特例が認められている。
 すなわち、事業者がこれらの規定の適用を受けるため当該長期割賦販売等に係る対価の額につきこれらの規定に規定する延払基準の方法により経理することとしているときは、当該長期割賦販売等に係る賦払金の額で支払期日が到来しないもの(当該課税期間において支払を受けたものを除く。)に係る部分については、当該事業者が当該課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、当該部分に係る対価の額を当該課税期間における長期割賦販売等に係る対価の額から控除することができる(旧消法16①)。
 これにより資産の譲渡等を行わなかったものとみなされた部分は、翌課税期間以降、基本的に、賦払金の支払の期日の属する各課税期間まで課税が繰延べられることとなる(旧消法16②)。
(3)改正の内容等  法人税においては長期割賦販売等に係る特例について、商品等の供給機能と金融機能の双方を果たしている法人と、金融機能を第三者に委ね、商品等の供給機能のみを果たしている法人との間で収益の計上時期の比較において不均衡が生じている等の理由から、今般の新収益認識基準の策定を機に、平成30年度税制改正において、リース取引を除き一定の経過措置を設けた上で廃止することとされた(所得税についても同様に廃止することとされた。)。
 消費税については、上記(2)のとおり、法人税又は所得税において特例を適用している場合にのみ、特例の適用を認めるものであるため、消費税においても、所得税及び法人税と同様、長期割賦販売等に係る特例は廃止することとされた。
 ただし、リース取引については、税法上賃借を譲渡とみなしていることへの対応として延払基準を可能としていることから今般の改正の対象とはなっておらず、会計上もリース取引は新収益認識基準の対象とはなっていないため、引き続き、延払基準による計上に関する特例の規定が存置される(新消法16)。
(4)適用関係  上記の改正は、平成30年4月1日から適用される。

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