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解説記事2018年07月23日 【税制改正解説】 平成30年度における相続税法等の改正について(2018年7月23日号・№748)

税制改正解説
平成30年度における相続税法等の改正について
 松林寬憲

相続税法の改正

1 一般社団法人等に対する課税の見直し

Ⅰ 特定の一般社団法人等に対する相続税の課税規定の創設

1 制度の概要
(1)基本的仕組み
 一般社団法人等の理事(当該一般社団法人等の理事でなくなった日から5年を経過していない者を含む。)が死亡した場合において、その一般社団法人等が一定の要件を満たす法人である場合には、その死亡の時におけるその一般社団法人等の純資産額をその時におけるその一般社団法人等の同族理事の数に1を加えた数で除した金額を、遺贈により取得したものとみなし、その一般社団法人等を個人とみなして、その一般社団法人等に相続税を課税することとされた。
(2)課税対象とならない一般社団法人等  一般社団法人等のうち、次の法人は相続税の課税対象から除外されている(相令34④)。
① 公益社団法人又は公益財団法人
② 法人税法第2条第9号の2に規定する非営利型法人
③ 資産の流動化に関する法律第2条第3項に規定する特定目的会社又はこれに類する一定の会社を子法人として保有することを専ら目的とする一定の一般社団法人等
④ 資産の流動化に関する法律第2条第2項に規定する資産の流動化に類する行為を行う一定の一般社団法人又は一般財団法人
(3)課税の対象となる特定一般社団法人等の要件  上記(2)①から④までの法人以外の一般社団法人等のうち、次のいずれかの要件を満たすもの(以下「特定一般社団法人等」という。)は、相続税の課税対象となる(相法66の2②三)。
① 被相続人の相続開始の直前におけるその被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超えること。
② 被相続人の相続の開始前5年以内においてその被相続人に係る同族理事の数の理事の総数のうちに占める割合が2分の1を超える期間の合計が3年以上であること。
(4)相続税額の計算方法  特定一般社団法人等の理事が死亡した場合に課される相続税は、その理事の死亡に係る相続開始の時におけるその特定一般社団法人等の純資産額をその時における同族理事の数に1を加えた数で除して計算した金額を相続税の課税価格として計算する。
 上記の「純資産額」とは、次の①の金額から②の金額を控除した残額をいう(相令34①)。
① 被相続人の相続開始の時において特定一般社団法人等が有する財産の価額の合計額
② 次に掲げる金額の合計額
 イ 特定一般社団法人等が有する債務であって被相続人の相続開始の際現に存するものの金額
 ロ 特定一般社団法人等に課される国税又は地方税であって被相続人の相続の開始以前に納税義務が成立したもの(相続の開始以前に納付すべき税額が確定したもの及び今回の相続に係る相続税は除く。)
 ハ 被相続人の死亡により支給する相続税法第3条第1項第2号に掲げる給与
 ニ 被相続人の相続開始の時におけるその特定一般社団法人等の一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に規定する基金の額
(5)相続税額からの過去の贈与税額又は相続税額の控除 ① 過去の贈与税額又は相続税額の控除
 特定一般社団法人等に相続税が課される場合には、上記(4)によりその特定一般社団法人等に課される相続税の額から、その特定一般社団法人等に過去に相続税法第66条第4項の規定により課された贈与税又は相続税の税額を控除することとされている(相法66の2③)。
② 被相続人から遺贈により財産を取得した場合の法人税等相当額の控除
 本制度の上記①による控除と相続税法第66条第4項の法人税等相当額の控除(相法66⑤)の両方が適用される場合には、まず法人税等相当額の控除をした後に上記①による控除をすることとし、その法人税等相当額の控除については、控除前の相続税額に、本来遺贈財産が特定一般社団法人等の課税価格(みなし遺贈財産と本来遺贈財産の価額の合計額)に占める割合を乗じて計算した金額を限度とすることとされている(相令34⑩)。
(6)相続税における他の課税規定との調整(二重課税の排除) ① みなし遺贈財産に対する相続税法第66条第4項の適用除外
 本制度により特定一般社団法人等が遺贈により取得したものとみなされる財産については、相続税法第66条第4項の規定は適用されないこととされている(相令34⑨)。
② 被相続人から遺贈により取得した本来財産について相続税法第66条第4項が適用されない場合
 被相続人からの本来遺贈財産については、相続税法第66条第4項の規定が適用されない場合には相続税は課税されないこととされている(相令34⑪)。
③ 3年加算規定の適用除外
 3年以内に被相続人からの贈与により取得した財産がある場合には、その財産の価額は3年加算の規定は適用せず、本制度により相続税を課税することとされている(相法66の2⑤)。

2 適用関係  上記1の改正は、平成30年4月1日以後の一般社団法人等の理事である者の死亡に係る相続税について適用される。
 ただし、特定一般社団法人等が平成30年3月31日以前に設立されたものである場合には、平成33年4月1日以後の一般社団法人等の理事である者の死亡に係る相続税について適用される(改正法附則43⑤)。
 なお、上記の既存法人についての課税要件の判定に際して、平成30年3月31日以前の期間は、上記1(3)②の2分の1を超える期間に該当しないものとされ、相続開始前5年間の同族理事の割合の判定は、施行日以後の期間のみが対象となる(改正法附則43⑥)。

Ⅱ 一般社団法人等に対する贈与又は遺贈があった場合の不当減少要件の明確化

1 改正前の制度の概要
(1)基本的な仕組み
 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族などの贈与税又は相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、その持分の定めのない法人を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課税することとされている(相法66④)。
(2)不当に減少する結果となると認められない場合  持分の定めのない法人が一定の要件(役員等に占める親族等の割合が3分の1以下である旨の定款の定めがあること等)を全て満たす場合は、上記(1)の贈与税又は相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときに該当しないこととされている(相令33③)。

2 改正の内容  贈与又は遺贈により財産を取得した一般社団法人等(上記Ⅰ1(2)に掲げる法人を除く。)が、次に掲げる要件のいずれかを満たさないときは、贈与税又は相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるものとされた(相令33④)。
(1)その贈与又は遺贈の時におけるその定款において次の定めがあること。
 ① その役員等のうち親族関係を有する者及びこれらと一定の特殊の関係がある者の数がそれぞれの役員等の数のうちに占める割合は、いずれも3分の1以下とする旨の定め
 ② その法人が解散した場合にその残余財産が国若しくは地方公共団体又は公益社団法人若しくは公益財団法人その他の公益を目的とする事業を行う法人(持分の定めのないものに限る。)に帰属する旨の定め
(2)その贈与又は遺贈前3年以内にその一般社団法人等に係る贈与者等に対し、施設の利用、余裕金の運用、解散した場合における財産の帰属、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任その他財産の運用及び事業の運営に関する特別の利益(以下「特別利益」という。)を与えたことがなく、かつ、その贈与又は遺贈の時におけるその定款においてその贈与者等に対し特別利益を与える旨の定めがないこと。
(3)その贈与又は遺贈前3年以内に国税又は地方税について重加算税又は地方税法の規定による重加算金を課されたことがないこと。

3 適用関係  上記2の改正は、一般社団法人等が平成30年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税又は同日以後に遺贈により取得する財産に係る相続税について適用される(改正相令附則②)。

2 その他の改正

1 相続税及び贈与税の納税義務の範囲の見直し
(1)改正前の制度の概要
 相続税の納税義務者の区分とその納税義務の範囲は、次のとおりとされていた(旧相法1の3①)。
① 居住無制限納税義務者
 相続又は遺贈により取得した財産の全てについて納税義務を負う次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有するものをいう。
 イ 一時居住者でない個人
 ロ 一時居住者である個人(被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
② 非居住無制限納税義務者
 相続又は遺贈により取得した財産の全てについて納税義務を負う次に掲げる者であって、その財産を取得した時において日本国内に住所を有しないものをいう。
 イ 日本国籍を有する個人であって次に掲げるもの
(イ)相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがあるもの
(ロ)相続開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの(被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
 ロ 日本国籍を有しない個人(被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く。)
③ 居住制限納税義務者
 相続又は遺贈により取得した財産のうち日本国内にある財産のみに対して納税義務を負う者で、上記①の者以外の相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有するものをいう。
④ 非居住制限納税義務者
 相続又は遺贈により取得した財産のうち日本国内にある財産のみに対して納税義務を負う者で、上記②の者以外の相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人でその財産を取得した時において日本国内に住所を有しないものをいう。
⑤ 特定納税義務者
 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得しなかった者のうち、相続時精算課税の適用を受ける財産をその被相続人から相続又は遺贈により取得したものとみなされるものをいう。
(注1)「一時居住者」、「一時居住被相続人」及び「非居住被相続人」とは、以下のとおり(旧相法1の3③)。
 イ 一時居住者とは、相続開始の時において在留資格を有する者であって相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
 ロ 一時居住被相続人とは、相続開始の時において在留資格を有し、かつ、日本国内に住所を有していた被相続人であって相続開始前15年以内においてこの法律の施行地に住所を有していた期間の合計が10年以下であるものをいう。
 ハ 非居住被相続人とは、相続開始の時において日本国内に住所を有していなかった被相続人であって次に掲げる者をいう。
(イ)相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人のうち相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの
(ロ)相続開始前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの
(注2)上記⑤を除き、贈与税の納税義務に関しても相続税の納税義務と同様となっている(旧相法1の4①③)。
(2)改正の内容 ① 相続税の納税義務
 非居住被相続人の要件のうち、上記(1)(注1)ハ(イ)については、「相続開始前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下である」という要件が撤廃された。
② 贈与税の納税義務
 非居住贈与者の要件については、上記(1)②の非居住被相続人とは異なり、次のように改められた。
 イ 贈与前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある外国人であって次に掲げるもの
(イ)日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年以下であるもの
(ロ)日本国内に住所を有しなくなった日前15年以内において日本国内に住所を有していた期間の合計が10年を超えるもののうち同日から2年を経過しているもの
 ロ 贈与前10年以内のいずれの時においても日本国内に住所を有していたことがないもの
③ 日本国外に居住する外国人が短期非居住贈与者から財産の贈与を受けた場合の贈与税の申告
 日本国外に居住する外国人が短期非居住贈与者から贈与により財産を取得した場合には、仮に他の贈与により日本国内にある財産を取得していたときであっても贈与税の申告の必要はないこととされた(相法28⑤)。
 ただし、その短期非居住贈与者が日本国内に住所を有しなくなった日から2年を経過する日までに再入国した場合には、その帰国した日の属する年の翌年3月15日までに贈与により取得した全ての財産に係る贈与税の申告をしなければならない(相法28⑥)。
 また、その短期非居住贈与者が日本国内に住所を有しなくなった日から2年を経過した場合(帰国しなかった場合)において、贈与により日本国内にある財産を取得していたときは、その2年を経過した日の属する年の3月15日までにその財産に係る贈与税の申告をしなければならない(相法28⑦)。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成30年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用される(改正法附則43①~③)。

2 調書の電磁的提出基準の見直し
(1)改正の内容
 調書のe-Tax又は光ディスク等による提出義務制度について、提出義務の対象となるかどうかの判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった調書の枚数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)に引き下げられた(新相法59⑤)。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成33年1月1日以後に提出すべき調書について適用される(改正法附則43④)。

3 相続税の申告書の添付書類の見直し
(1)改正前の制度の概要
 相続税の申告書には、被相続人と相続人等との関係を明らかにし、税額計算をはじめとする申告内容の適正性を確認するため、次の書類を添付することとされている(旧相規16③)。
① 相続の開始の日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本で被相続人の全ての相続人を明らかにするもの
② 被相続人に係る相続時精算課税適用者がある場合には、相続の開始の日以後に作成された当該被相続人の戸籍の附票の写し
(2)改正の内容  相続税の申告書の添付書類に次に掲げるものが追加された(新相規16③一)。
① 戸籍の謄本を複写したもの
② 法定相続情報一覧図の写しのうち被相続人と相続人との関係を系統的に図示したものであって当該被相続人の子が実子又は養子のいずれであるかの別が記載されたもの(被相続人に養子がある場合には、当該写し及び当該養子の戸籍の謄本又は抄本)又はこれを複写したもの
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成30年4月1日以後に提出する相続税の申告書(期限後申告書を含む。)について適用される(改正相規附則3)。

4 個人番号の記載省略
(1)改正の内容
① 個人番号の記載の省略
 次に掲げる異動申告書のうち、氏名又は住所若しくは居所を変更したことにより提出するものについては、個人番号の記載を要しないこととされた(新相規5①一、新措規23の5の3⑭、23の5の4⑫)。
 イ 障害者非課税信託に関する異動申告書
 ロ 教育資金管理契約に関する異動申告書
 ハ 結婚・子育て資金管理契約に関する異動申告書
② 営業所等の長による個人番号の付記
 特定障害者又は受贈者が氏名又は住所若しくは居所の変更をした場合に提出される上記①イからハまでの異動申告書を受理した営業所等の長は、その申告書に、その申告書を提出した特定障害者又は受贈者の個人番号を付記して税務署に提出しなければならないこととされた(新相規5②、新措規23の5の3⑮、23の5の4⑬)。
(2)適用関係  上記(1)①の改正は、平成28年1月1日以後に障害者非課税信託申告書等を提出したことがある者が平成30年4月1日以後に提出する障害者非課税信託に関する異動申告書等について適用される(改正相規附則2①)。また、上記(1)②の改正は、平成30年4月1日以後に受理する障害者非課税信託に関する異動申告書等について適用される(改正相規附則2②)。

租税特別措置法(相続税・贈与税関係)の改正

1 非上場株式等に係る納税猶予制度の見直し

Ⅰ 改正前の制度の概要

1 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除
(1)概要
 経営承継受贈者が、認定贈与承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「贈与者」という。)からその認定贈与承継会社の非上場株式等を特例対象贈与(この特例の適用に係る贈与をいう。以下同じ。)により取得した場合には、その非上場株式等のうち特例受贈非上場株式等に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、贈与税の申告書(提出期限内に提出されるものに限る。以下同じ。)の提出期限(以下「申告期限」という。)までに一定の担保を提供した場合に限り、その贈与者の死亡の日まで納税が猶予される(旧措法70の7①)。
① 経営承継受贈者の範囲
 贈与者から特例対象贈与により認定贈与承継会社の非上場株式等の取得をした個人で、次に掲げる要件などを満たす者(その者が2人以上ある場合には、その認定贈与承継会社が定めた一の者に限る。)をいう(旧措法70の7②三、措令40の8⑩)。
 イ 特例対象贈与の日において20歳以上であること
 ロ 特例対象贈与の時において、
(イ)その認定贈与承継会社の代表権を有していること
(ロ)その個人とその個人の同族関係者等の有するその認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数の合計が、その認定贈与承継会社に係る総株主等議決権数の100分の50を超えること
(ハ)その個人が有するその認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、その個人の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
 ハ その個人が、特例対象贈与の日まで引き続き3年以上継続してその認定贈与承継会社の役員であること
② 認定贈与承継会社の範囲
 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)第2条に規定する中小企業者(以下「中小企業者」という。)のうち、円滑化法第12条第1項第1号の経済産業大臣等の認定(以下Ⅰにおいて「円滑化法認定」という。)を受けた会社で、特例対象贈与の時において、一定の要件を満たすものをいう(旧措法70の7②一、四、旧措令40の8⑤~⑨)。
③ 贈与者の範囲
 特例対象贈与の時前に認定贈与承継会社の代表権を有していた個人で、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう(旧措令40の8①)。
 イ 特例対象贈与の直前(その個人が特例対象贈与の直前に代表権を有しない場合には、その個人が代表権を有していた期間内のいずれかの時及び特例対象贈与の直前)において、
(イ)その贈与者及びその贈与者の同族関係者等の有するその認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数の合計が、その認定贈与承継会社に係る総株主等議決権数の100分の50を超えること
(ロ)その贈与者が有するその認定贈与承継会社の非上場株式等に係る議決権の数が、その贈与者の同族関係者等のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
 ロ 特例対象贈与の時において、その贈与者がその認定贈与承継会社の代表権を有していないこと
④ 特例受贈非上場株式等の範囲
 特例対象贈与により取得した非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。)のうち贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるもので、特例対象贈与の時におけるその認定贈与承継会社の発行済株式又は出資(議決権に制限のないものに限る。)の総数又は総額の3分の2(特例対象贈与の直前においてその特例対象贈与に係る経営承継受贈者が有していたその認定贈与承継会社の非上場株式等があるときは、その総数又は総額の3分の2からその経営承継受贈者が有していたその認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を控除した残数又は残額)に達するまでの部分をいう(旧措法70の7①、措令40の8②)。
(2)納税猶予分の贈与税額の計算  特例受贈非上場株式等の価額を経営承継受贈者に係るその年分の暦年課税又は相続時精算課税の贈与税の課税価格とみなして、相続税法に規定する贈与税の基礎控除及び税率(措置法に規定する特例を含む。)を適用して計算した金額が納税猶予分の贈与税額となる(旧措法70の7②五)。
(3)経営贈与承継期間内に納税猶予期限が確定する場合(猶予税額の全部納付)  経営贈与承継期間(贈与税の申告期限の翌日から同日以後5年を経過する日又は経営承継受贈者若しくはその経営承継受贈者に係る贈与者の死亡の日の前日のいずれか早い日までの期間をいう。以下同じ。)内に、この特例の適用を受ける経営承継受贈者又は特例受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について、次に掲げる場合などに該当することとなったときは、それぞれ次に定める日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(旧措法70の7③、旧措令40の8)。
① 経営承継受贈者が認定贈与承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合を除く。) その有しないこととなった日
② 各第1種贈与基準日の認定贈与承継会社の常時使用従業員の数の合計を経営贈与承継期間内に存する第1種贈与基準日の数で除した数が、特例対象贈与の時における常時使用従業員の数に100分の80を乗じて計算した数(その数に一未満の端数があるときは、その端数を切り捨てた数)を下回る数となった場合 経営贈与承継期間の末日
③ 経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等の譲渡等(譲渡又は贈与をいう。以下同じ。)をした場合 その譲渡等をした日
④ 認定贈与承継会社が資産管理会社(事業実態がないものに限る。)に該当することとなった場合 その該当することとなった日
(注)「第1種贈与基準日」とは、経営贈与承継期間のいずれかの日で、贈与税の申告期限の翌日から起算して1年を経過するごとの日をいう。
(4)経営贈与承継期間内に納税猶予期限が確定する場合(猶予税額の一部納付)  経営贈与承継期間内に経営承継受贈者が認定贈与承継会社の代表権を有しないこととなった場合(一定のやむを得ない理由がある場合に限る。)において、経営承継受贈者が、特例受贈非上場株式等の一部につき贈与(受贈者が贈与税の納税猶予の適用を受ける場合における贈与に限る。)等をしたときは、猶予中贈与税額のうち、その贈与等をした特例受贈非上場株式等の数又は金額に対応する部分の額に相当する贈与税については、その贈与をした日などから2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(旧措法70の7④、旧措令40の8 )。
(5)経営贈与承継期間後に納税猶予期限が確定する場合  経営贈与承継期間の末日の翌日から猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定する日までの間において、この特例の適用を受ける経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等の一部の譲渡等をした場合などには、猶予中贈与税額のうちその譲渡等をした特例受贈非上場株式等の数又は金額に対応する部分の額として計算した金額などについては、その譲渡等をした日などから2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(旧措法70の7⑤、旧措令40の8)。
(6)納税猶予税額が免除となる場合 ① 経営承継受贈者の死亡等による納税猶予税額の免除
 この特例の適用を受ける経営承継受贈者又はその経営承継受贈者に係る贈与者が次のいずれかに掲げる場合に該当することとなった場合には、それぞれに定める贈与税が免除される(旧措法70の7⑮)。
 イ その贈与者の死亡の時以前にその経営承継受贈者が死亡した場合 猶予中贈与税額に相当する贈与税
 ロ その贈与者が死亡した場合 猶予中贈与税額のうちその贈与者が贈与をした特例受贈非上場株式等に対応する部分の金額に相当する贈与税
 ハ 経営贈与承継期間の末日の翌日以後に、経営承継受贈者が特例受贈非上場株式等について贈与(その特例受贈非上場株式等について受贈者がこの特例の適用を受ける場合における贈与に限る。)をした場合 猶予中贈与税額のうちその特例受贈非上場株式等でこの特例の適用に係るものに対応する部分の金額に相当する贈与税
② 法的な倒産等による納税猶予税額の免除
 認定贈与承継会社について、経営贈与承継期間の末日の翌日以後に破産手続開始の決定又は特別清算開始の命令があった場合などに該当することとなったときには、一定の納税猶予税額が税務署長の通知により免除される(旧措法70の7⑯⑰、旧措令40の8、旧措規23の9)。

2 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除  経営承継相続人等が、認定承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「被相続人」という。)から相続又は遺贈によりその認定承継会社の非上場株式等の取得をした場合には、その非上場株式等のうち特例非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、相続税の申告期限までに一定の担保を提供した場合に限り、その経営承継相続人等の死亡の日までその納税が猶予される(旧措法70の7の2①)。
 なお、その相続に係る相続税の申告期限までに、共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない非上場株式等は、この特例の適用を受けることができない(措法70の7の2⑦)。
(注)納税猶予分の相続税額とは、次の①に掲げる金額から②に掲げる金額を控除した残額である(旧措法70の7の2②五、旧措令40の8の2⑫~)。
① 特例非上場株式等の価額を経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第13条から第19条まで、第21条の15第1項及び第2項並びに第21条の16第1項及び第2項の規定を適用して計算したその経営承継相続人等の相続税の額
② 特例非上場株式等の価額に100分の20を乗じて計算した金額を経営承継相続人等に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第13条から第19条まで、第21条の15第1項及び第2項並びに第21条の16第1項及び第2項の規定を適用して計算したその経営承継相続人等の相続税の額

3 非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除  非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例(措法70の7の3)により贈与者(先代経営者)から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた特例受贈非上場株式等につきこの特例の適用を受けようとする経営承継受贈者が、その相続に係る相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、特例相続非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、その相続税の申告期限までに一定の担保を提供した場合に限り、その経営相続承継受贈者の死亡の日まで、その納税が猶予される(旧措法70の7の4①)。

Ⅱ 改正の内容

1 非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度の特例の創設
 この特例は、基本的な仕組みとしては、一般の非上場株式等についての贈与税の納税猶予制度(措法70の7。以下「一般贈与税猶予制度」という。)と同じであり、これを準用する形で規定されている。以下では、一般贈与税猶予制度と異なる部分について説明する。
(1)制度の概要  特例経営承継受贈者が、特例認定贈与承継会社の非上場株式等を有していた特例贈与者(その特例認定贈与承継会社の非上場株式等について既にこの特例の適用に係る贈与をしているものを除く。以下「特例贈与者」という。)からその特例認定贈与承継会社の非上場株式等を贈与(平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の最初のこの特例の適用に係る贈与及びその贈与の日から特例経営贈与承継期間の末日までの間に贈与税の申告書の提出期限が到来する贈与に限る。)により取得した場合において、その贈与が次の①又は②に掲げる場合の区分に応じそれぞれ①又は②の贈与であるときは、その特例対象受贈非上場株式等に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、その納税猶予分の贈与税額に相当する担保を提供した場合に限り、その特例贈与者の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の7の5①)。
① 特例経営承継受贈者が1人である場合 イ又はロに掲げる区分に応じそれぞれイ又はロに定める贈与
 イ A≦Bの場合 …… A以上の数又は金額に相当する非上場株式等の贈与
 ロ A>Bの場合 …… Bの全ての贈与

② 特例経営承継受贈者が2人又は3人である場合 その贈与後におけるいずれの特例経営承継受贈者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額が特例認定贈与承継会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の10分の1以上となる贈与であって、かつ、その贈与後におけるいずれの特例経営承継受贈者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額がその特例贈与者の有する当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の数又は金額を上回る贈与
(2)特例認定贈与承継会社の範囲  中小企業者のうち特例円滑化法認定(円滑化法第12条第1項第1号の認定で円滑化省令第6条第1項第11号又は第13号の事由に係るものをいう。)を受けた会社であって、一般贈与税猶予制度と同様の要件を満たすものをいう(措法70の7の5②一、二、措令40の8の5⑤~⑨)。
 なお、特例円滑化法認定を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて特例承継計画を作成し、これについて、平成35年3月31日までに都道府県知事の確認を受ける必要がある(円滑化省令6①十一、十三、7⑥十、⑧、16、17)。
(3)特例経営承継受贈者の範囲  基本的には、一般贈与税猶予制度と同じ。ただし、一般贈与税猶予制度においては、制度の適用を受けることができる経営承継受贈者は、原則として1社につき1人とされていたが、この特例における特例経営承継受贈者は、1社につき3人までとされた。これに伴い、贈与時における議決権数の要件が以下のとおりとされた(措法70の7の5②六ニ)。
① 特例経営承継受贈者が1人の場合 その者の議決権の数が、その者の同族関係者等(既に同一の会社についてこの特例及び相続税の納税猶予制度の特例の適用を受けている者を除く。)のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
② 特例経営承継受贈者が2人又は3人の場合 これらの者の議決権の数が、総株主等議決権数の100分の10以上であること及びこれらの者の同族関係者等(既に同一の会社についてこの特例及び相続税の納税猶予制度の特例の適用を受けている者を除く。)のうちいずれの者が有する議決権の数をも下回らないこと
(4)特例贈与者の範囲  複数の者からの贈与についても適用を受けることとされたが、贈与の時期によって、贈与者の要件は以下のとおり異なる(措法70の7の5①、措令40の8の5①)。
① 最初の贈与に係る贈与者
 その会社について最初にこの特例を受ける場合の贈与者の要件は一般贈与税猶予制度と同様。
② 2回目以降の贈与に係る贈与者
 その会社について次に掲げる者のいずれかに該当する者が存する場合の贈与者の要件は、特例認定贈与承継会社の非上場株式等を有していた個人で、贈与の時においてその特例認定贈与承継会社の代表権を有していないものとされている。
 イ その特例認定贈与承継会社の非上場株式等について、この特例、非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例(措法70条の7の6①)又は非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度の特例(措法70条の7の8①)の適用を受けている者
 ロ 上記①の者からこの特例の適用に係る贈与によりその特例認定贈与承継会社の非上場株式等の取得をしている者でその贈与に係る贈与税の申告期限が到来していないため、まだその申告をしていないもの
 ハ 特例被相続人から非上場株式等についての相続税の納税猶予制度の特例(措法70の7の6①)の規定の適用に係る相続又は遺贈により当該特例認定贈与承継会社の非上場株式等の取得をしている者でその相続に係る相続税の申告期限が到来していないため、まだその申告をしていないもの
(5)特例対象受贈非上場株式等の範囲と納税猶予分の贈与税額  この特例の対象となる特例対象受贈非上場株式等とは、贈与により取得した特例認定贈与承継会社の非上場株式等(議決権に制限のないものに限る。)のうち贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるものをいう。なお、一般贈与税猶予制度においては、発行済株式総数の3分の2までという適用上限(措法70の7①)があるが、この特例にはこの制限はない。
 納税猶予分の贈与税額の計算は、一般贈与税猶予制度と同様である(措法70の7の5②八、措令40の8の5⑮)。
(6)特例経営贈与承継期間  特例経営贈与承継期間は、この特例の適用を受けるための最初の贈与に係る贈与税の申告書の提出期限(先に相続税の納税猶予制度の特例(措法70条の7の6①)の適用を受けている場合には、その最初の相続に係る相続税の申告書の提出期限)から5年間とされている(措法70の7の5②七)。
(注)この特例経営贈与承継期間は、特例経営承継受贈者ごとに判定することになる。
(7)納税猶予期限が確定する場合(猶予税額の全部又は一部の納付)  基本的には一般贈与税猶予制度と同様であるが、特例経営贈与承継期間の5年間の平均の常時使用従業員数が贈与時の常時使用従業員数の8割を下回った場合であっても、これのみをもって納税猶予期限が確定することとはならない(措法70の7の5③)。
 ただし、この場合には、その8割を下回った理由について、都道府県知事の確認を受けなければならない。この際、特例経営贈与承継期間の末日の翌日から4か月を経過する日までに、その8割を下回った理由について、認定経営革新等支援機関の所見の記載があり、かつ、この理由が経営状況の悪化である場合又はその認定経営革新等支援機関が正当と認められないと判断した場合には、その認定経営革新等支援機関による経営力の向上に係る指導及び助言を受けた旨の記載のある報告書の写しを都道府県知事に提出しなければならない(円滑化省令20①③⑭)。
 そして、特例経営承継受贈者は、納税地の所轄税務署長に対し、特例経営贈与承継期間の末日に係る継続届出書に上記の報告書の写し及び都道府県知事の確認書の写しを添付して提出しなければならない(措法70の7の5⑥、措規23の12の2⑮六)。
(8)経営環境の変化に対応した新たな減免制度の創設  経営環境の変化を示す一定の要件を満たす場合において、特例経営承継期間経過後に、特例認定承継会社の非上場株式等の譲渡をするとき、特例認定承継会社が合併により消滅するとき、特例認定承継会社が株式交換等により株式交換完全子会社等となるとき、特例認定承継会社が解散をするときには、次のとおり納税猶予税額を免除する。
① 特例認定承継会社に係る非上場株式等の譲渡、合併若しくは株式交換等の対価の額(当該譲渡、合併又は株式交換等の時の相続税評価額の50%に相当する額を下限とする。)又は解散の時における特例認定承継会社の非上場株式等の相続税評価額を基に再計算した贈与税額等と譲渡、合併、株式交換等又は解散の前5年間に特例後継者及びその同族関係者に対して支払われた配当及び過大役員給与等に相当する額(以下「直前配当等の額」という。)との合計額(合併又は株式交換等の対価として交付された株式の価額に対応する贈与税額等を除いた額とし、当初の納税猶予税額を上限とする。)を納付することとし、当該再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が当初の納税猶予税額を下回る場合には、その差額を免除する。
② 特例認定承継会社の非上場株式等の譲渡をする場合、特例認定承継会社が合併により消滅する場合又は特例認定承継会社が株式交換等により株式交換完全子会社等となる場合(当該譲渡、合併又は株式交換等の対価の額が当該譲渡、合併又は株式交換等の時の相続税評価額の50%に相当する額を下回る場合に限る。)において、下記③の適用を受けようとするときには、上記①の再計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額については、担保の提供を条件に、上記①にかかわらず、その納税を猶予する。
③ 上記②の場合において、上記②の譲渡、合併又は株式交換等(以下「譲渡等」という。)後2年を経過する日において、特例認定承継会社等の事業が継続しており、かつ、これらの会社において特例認定承継会社の譲渡等の直前の従業員の半数以上の者が雇用されているときには、実際の譲渡等の対価の額を基に再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額(合併又は株式交換等の対価として交付された吸収合併存続会社等又は交換等承継会社の株式の価額に対応する贈与税額等を除く。)を納付することとし、当該再々計算した贈与税額等と直前配当等の額との合計額が上記②により納税が猶予されている額を下回る場合には、その差額を免除する。

2 非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例の創設  相続税についても、上記1と同様の特例制度が創設された。

3 非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例及び相続税の納税猶予制度の特例の創設
(1)相続税の課税の特例
 一般贈与税猶予制度の贈与者が死亡した場合と同様に、上記1の特例の適用を受ける特例経営承継受贈者に係る特例贈与者が死亡した場合には、その特例贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、その特例経営承継受贈者がその特例贈与者から相続により上記1の特例の適用に係る特例対象受贈非上場株式等の取得をしたものとみなす(措法70の7の7①)。
(2)相続税の納税猶予制度の特例  特例経営相続承継受贈者が、上記(1)により特例対象受贈非上場株式等を特例贈与者から相続又は遺贈により取得をしたものとみなされた場合には、特例対象相続非上場株式等に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、相続税の申告期限までに一定の担保を提供した場合に限り、上記2の特例と同様に、その特例経営相続承継受贈者の死亡の日までその納税が猶予される(措法70の7の8①)。

4 相続時精算課税適用者の特例の拡充   贈与により上記1の特例の適用に係る特例対象受贈非上場株式等を取得したその特例の適用を受ける特例経営承継受贈者が特例贈与者の推定相続人以外の者(その特例贈与者の孫を除き、その年1月1日において20歳以上である者に限る。)であり、かつ、その特例贈与者が同日において60歳以上の者である場合には、その贈与によりその特例対象受贈非上場株式等を取得した特例経営承継受贈者については、相続時精算課税の適用を選択することができることとされた(措法70の2の7)。

5 非上場株式等についての納税猶予制度の改正  一般の非上場株式等についての納税猶予制度についても複数の者からの贈与又は相続についても適用できることとされた(措令40の8①、40の8の2①)。

Ⅲ 適用関係
 上記の改正は、平成30年1月1日以後に贈与又は相続若しくは遺贈により取得する非上場株式等について適用される(改正法附則118⑤)。

2 特定の美術品についての相続税の納税猶予制度の創設

1 制度の内容
(1)制度の概要
 寄託先美術館の設置者と特定美術品(一定の重要文化財又は登録有形文化財をいう。)の寄託契約を締結し、認定保存活用計画に基づきその特定美術品を寄託先美術館の設置者に寄託していた者から相続又は遺贈によりその特定美術品を取得した相続人(以下「寄託相続人」という。)が、その特定美術品の寄託先美術館の設置者への寄託を継続する場合には、寄託相続人が相続税の申告書の提出により納付すべき相続税の額のうち、その特定美術品に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税については、相続税の申告書の提出期限までに納税猶予分の相続税額に相当する担保を提供した場合に限り、寄託相続人の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の6の7①)。
(2)納税猶予分の相続税額の計算  納税が猶予される税額は、次の①と②の税額の差額である(措法70の6の7②六、措令40の7の7③)。
① 特定美術品の価額(相続税法第13条の規定により控除すべき債務がある場合において控除未済債務額があるときは、その特定美術品の価額の合計額から控除未済債務額を控除した残額をいう。以下②において「特定価額」という。)を寄託相続人に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第13条から第19条までの規定を適用して計算したその寄託相続人の相続税の額
② 特定価額に100分の20を乗じて計算した金額を寄託相続人に係る相続税の課税価格とみなして、相続税法第13条から第19条までの規定を適用して計算したその寄託相続人の相続税の額
(3)納税猶予が終了し、納付を要する場合  次の①から⑦までに掲げる場合に該当したときは、それぞれ①から⑦までに定める日から2か月を経過する日に納税猶予分の相続税額の猶予の期限が到来し、確定した税額を利子税とともに納付する必要がある(措法70の6の7③)。
① 特定美術品を譲渡した場合(特定美術品を寄託先美術館の設置者に贈与した場合を除く。) 譲渡があったことについての文化庁長官からの通知を寄託相続人の納税地の所轄税務署長が受けた日
② 特定美術品が滅失(災害による滅失を除く。)をし、又は寄託先美術館において亡失し、若しくは盗み取られた場合 これらの事由が生じたことについての文化庁長官からの通知を寄託相続人の納税地の所轄税務署長が受けた日
③ 特定美術品に係る寄託契約の契約期間が終了をした場合 その終了の日
④ 特定美術品に係る認定保存活用計画の認定が取り消された場合 その認定が取り消された日
⑤ 認定保存活用計画の計画期間が満了した日から4か月を経過する日において認定保存活用計画に記載された特定美術品について新たな認定を受けていない場合 計画期間が満了した日から4か月を経過する日
⑥ 特定美術品について、重要文化財の指定が解除された場合又は登録有形文化財の登録が抹消された場合(災害による滅失に基因して解除され、又は抹消された場合を除く。) その指定が解除された日又は登録が抹消された日
⑦ 寄託先美術館について、登録博物館の登録を取り消された場合又は登録を抹消された場合(寄託先美術館が博物館相当施設である場合には、取消し又は抹消に類する事由が生じた場合) その取り消され、若しくは抹消され、又は事由が生じた日
(4)納税猶予税額の免除  次の①から③までのいずれかに該当した場合には、その特定美術品に係る納税猶予分の相続税額に相当する相続税は、免除される(措法70の6の7⑭)。
① 寄託相続人が死亡した場合
② 寄託相続人が寄託先美術館の設置者に特定美術品の贈与をした場合
③ 特定美術品が災害により滅失した場合(保険が付されていない場合を除く。)

2 適用関係  上記1の規定は、平成31年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する特定美術品に係る相続税について適用される(改正法附則118⑲)。

3 農地等に係る納税猶予制度の見直し

Ⅰ 相続税の納税猶予を適用している場合の都市農地の貸付けの特例の創設(措法70の6の4・70の6の5)

1 制度の内容
(1)制度の概要
 相続税の納税猶予制度の適用を受ける農業相続人(以下「猶予適用者」という。)が、納税猶予制度の適用を受ける生産緑地(生産緑地法の規定による買取りの申出がされたもの及び下記Ⅱ2(2)①の特定生産緑地の指定の解除がされたものを除く。)の全部又は一部について次の貸付けを行った場合において、その貸付けを行った日から2か月以内にその貸付けを行った旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その貸付けを行った生産緑地(以下「貸付都市農地等」という。)については、その貸付けに係る賃借権等の設定はなかったものと、農業経営は廃止していないものとみなして、引き続き相続税の納税猶予制度の適用を受けることができる特例が創設された(措法70の6の4①)。
① 都市農地の貸借の円滑化に関する法律に規定する認定事業計画に基づく貸付け
② 次に掲げる貸付け(以下「農園用地貸付け」という。)
 イ 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(以下「特定農地貸付法」という。)の規定により地方公共団体又は農業協同組合が行う特定農地貸付けの用に供されるための貸付け
 ロ 特定農地貸付法の規定により地方公共団体及び農業協同組合以外の者が行う特定農地貸付け(その者が所有する農地で行うものであって、都市農地の貸借の円滑化に関する法律に規定する協定に準じた貸付協定を締結しているものに限る。)の用に供されるための貸付け
 ハ 都市農地の貸借の円滑化に関する法律に規定する特定都市農地貸付けの用に供されるための貸付け
(2)旧法猶予適用者の扱い  改正前の相続等により農地等についての相続税の納税猶予の適用を受けている者(以下「旧法猶予適用者」という。)についても、その選択により認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行うことができることとされている(措法70の6の4⑦)。
 ただし、この場合には、これらの貸付け以後は、猶予期限(免除)、利子税の割合等はすべて改正後の租税特別措置法の規定によることとなる(措法70の6の4⑦)。
(3)認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行った農地についての相続税の課税の特例(措法70の6の5) ① 認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行っていた被相続人が死亡した場合には、これらの貸付けを行っていた農地は、その被相続人がその死亡の日まで農業の用に供していたものとみなされ、その被相続人の相続人は、期限内申告書の提出など所定の要件を満たせば、その農地について相続税の納税猶予の特例を適用することができる(措法70の6の5①)。
② 被相続人が納税猶予の適用を受けていなかった場合又は適用を受けていたが認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行っていなかった場合であっても、相続人が相続又は遺贈により取得した農地について申告期限までに新たにこれらの貸付けを行った場合には、その貸し付けた農地についても、相続人の農業の用に供する農地に該当するものとみなして、相続税の納税猶予を適用することができる(措法70の6の5②)。
③ 贈与税の納税猶予の適用を受けている受贈者に係る贈与者が死亡したときは、受贈者が贈与税の納税猶予の適用を受けている農地等については、租税特別措置法第70条の5の規定により、贈与者から相続により取得したものとみなして、相続税の課税対象とされるが、受贈者は、その贈与者の死亡に係る相続税の申告期限までに贈与税の納税猶予の適用を受けていた農地について新たに認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行った場合には、その農地はその受贈者の農業の用に供しているものとみなして、相続税の納税猶予を適用することができる(措法70の6の5③)。
④ 認定都市農地貸付け又は農園用地貸付けを行った旨の届出書は、これらの貸付けを行った日から2か月を経過する日と相続税の申告期限のいずれか遅い日までに提出すればよいこととされている(措法70の6の5④、措令40の7の5②)。

2 適用関係 (1)上記1(2)を除く。)の改正は、都市農地の貸借の円滑化に関する法律(平成30年法律第68号)の施行の日以後に相続又は遺贈により取得をする特例農地等に係る相続税について適用する(改正法附則118⑱)。
(2)上記1(2)の改正は、都市農地の貸借の円滑化に関する法律の施行の日以後に農地を貸し付けた場合について適用する(改正法附則1十六)。

Ⅱ 農地等についての相続税及び贈与税の納税猶予制度の改正

1 改正前の制度の概要
(1)相続税の納税猶予制度
 農業相続人が農業を営んでいた被相続人から相続又は遺贈により農地(特定市街化区域農地等を除く。以下同じ。)及び採草放牧地(特定市街化区域農地等を除く。以下同じ。)の取得をした場合におけるその農地及び採草放牧地並びに準農地(以下「特例適用農地等」という。)の農業投資価格を超える部分に対応する相続税については、担保の提供を条件に納税猶予期限までその納税を猶予し、その日において猶予していた相続税は免除することとされている(旧措法70の6①)。
(注1)「特定市街化区域農地等」とは、市街化区域内に所在する農地又は採草放牧地(以下「市街化区域内農地等」という。)で、平成3年1月1日において三大都市圏の特定市の区域内に所在するもの(都市営農農地等を除く。)をいう(旧措法70の4②三)。
(注2)「都市営農農地等」とは、平成3年1月1日において、三大都市圏の特定市の区域内に所在する生産緑地をいう(旧措法70の4②四)。
(注3)「農業投資価格」とは、特例適用農地等に該当する農地、採草放牧地又は準農地につき、それぞれ、その所在する地域において恒久的に耕作又は養畜の用に供されるべき農地若しくは採草放牧地又は農地若しくは採草放牧地に開発されるべき土地として自由な取引が行われるものとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格としてその地域の所轄国税局長が決定した価格をいう(旧措法70の6⑤)。
(注4)「納税猶予期限」とは、次に掲げる農業相続人の区分に応じそれぞれ次に定める日をいう(旧措法70の6⑤、旧措令40の7⑰)。
 イ 相続又は遺贈により取得をした日において特例適用農地等のうちに都市営農農地等を有する農業相続人 その農業相続人の死亡の日
 ロ 相続又は遺贈により取得をした日において特例適用農地等の全てが市街化区域内農地等である農業相続人(イに掲げる農業相続人を除く。) その農業相続人の死亡の日又は相続税の申告書の提出期限の翌日から20年を経過する日のいずれか早い日
 ハ 相続又は遺贈により取得をした日において特例適用農地等のうちに市街化区域内農地等以外のものを有する農業相続人(イに掲げる農業相続人を除く。) その農業相続人の死亡の日(相続税の申告書の提出期限の翌日から同日以後20年を経過する日までの間に、その農業相続人が相続又は遺贈により取得をした特例適用農地等のうちその取得をした日において市街化区域内農地等以外のものである特例適用農地等に係る相続税の全てについて、猶予期限が確定している場合には、その死亡の日又はその20年を経過する日のいずれか早い日)
(2)贈与税の納税猶予制度  農業を営む個人が、その推定相続人のうちの1人に農地の全部及び採草放牧地の3分の2以上並びに準農地の3分の2以上の贈与をした場合におけるその特例適用農地等に係る贈与税については、担保の提供を条件に贈与者の死亡等の日までその納税を猶予し、その日において猶予していた贈与税は免除することとされている(旧措法70の4①)。

2 改正の内容
(1)農作物栽培高度化施設の敷地の用に供される土地が農地とみなされることに伴う農地の定義の見直し
 相続税及び贈与税の納税猶予の対象となる農地は「農地法上の農地」とされているが、農地法の改正により、農地法第43条第1項の規定により農業委員会に届け出て農作物栽培高度化施設の底面とするために農地をコンクリートその他これに類するもので覆う場合にはその土地は引き続き農地として農地法を適用することとなったことから、本制度においても、この引き続き農地法が適用される土地は現行の農地と同様に取り扱うこととされた(措法70の4②一)。
(2)特定生産緑地制度、田園住居地域制度の創設に伴う都市営農農地等の範囲等の見直し  生産緑地法の改正により特定生産緑地制度が、都市計画法の改正により田園住居地域が創設されたことに伴い、相続税及び贈与税の納税猶予において、次の見直しが行われた。
① 都市営農農地等の範囲の見直し
 都市営農農地等の範囲に、特定生産緑地及び田園住居地域内にある農地が追加されるとともに、次の生産緑地が除外された(措法70の4②四)。
 イ 特定生産緑地のうち買取りの申出がされたもの
 ロ 申出基準日までに特定生産緑地の指定がされなかったもの
 ハ 指定期限日までに特定生産緑地の指定の期限の延長がされなかったもの
 ニ 特定生産緑地の指定が解除されたもの
② 買取りの申出等があった場合の納税猶予期限の確定の見直し
 納税猶予期間中に特例適用農地等について買取りの申出等があった場合には、その買取りの申出があった日の翌日から2か月を経過する日をもって納税猶予期限が確定するが、この買取りの申出等の範囲に、上記①イの買取りの申出及びニの指定の解除が追加された(措法70の4⑤一、70の6⑧一)。
 また、都市計画の変更により田園住居地域内の農地が特定市街化区域農地等に該当することとなった場合には、納税猶予期限が確定しないこととされた(措法70の4⑤二、70の6⑧二)。
(注1)「特定生産緑地」とは、申出基準日(生産緑地に係る生産緑地地区に関する都市計画についての告示の日から起算して30年を経過する日をいう。)が近く到来することとなる生産緑地のうち、その周辺の地域における公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して、当該申出基準日以後においてもその保全を確実に行うことが良好な都市環境の形成を図る上で特に有効であると認められるものとして、市町村長が指定したものをいう。
(注2)申出基準日までに特定生産緑地の指定がされなかった生産緑地及び指定期限日までに特定生産緑地の指定の期限の延長がされなかった生産緑地につき納税猶予の適用を受けている猶予適用者については、現に適用を受けている納税猶予に限り、その猶予が継続される(次の相続・贈与の際には適用対象とならない。)。
(3)納税猶予期限及び免除事由の見直し  農業相続人(都市営農農地等を有しない者に限る。以下(3)において同じ。)の有する三大都市圏の特定市以外の地域の市街化区域内の生産緑地については、20年免除が廃止され、農業相続人の死亡の日まで農業経営を継続する(納税猶予の期限を死亡の日とする)こととされた(措法70の6⑥)。

3 適用関係
(1)
上記2(1)の改正は、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律(平成30年法律第23号)の施行の日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得をする特例適用農地等に係る相続税又は贈与税について適用される(改正法附則118⑥⑪)。
(2)上記2(2)の改正は、平成30年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得をする特例適用農地等に係る相続税又は贈与税について適用される(改正法附則118⑦⑬)。
(3)上記2(3)の改正は、都市農地の貸付けの円滑化に関する法律の施行の日以後に相続又は遺贈により取得をする特例農地等に係る相続税について適用される(改正法附則118⑫)。

4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し

1 改正前の制度の概要
 個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続の開始の直前において、その相続若しくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業(準事業を含む。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない一定の事由により相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていなかった場合における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含む。)に供されていた宅地等で建物又は構築物の敷地の用に供されているもの(以下「特例対象宅地等」という。)がある場合には、その相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部で本特例の適用を受けることを選択したもの(以下「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」という。)に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、通常の方法によって評価した価額に、次に掲げる小規模宅地等の区分に応じ、それぞれに定める割合を乗じて計算した金額とされていた(旧措法69の4①)。
① 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等……20%
② 貸付事業用宅地等である小規模宅地等……50%
(注1)「準事業」とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいう(措令40の2①)。
(注2)「特例対象宅地等」とは、具体的には、次のイからニまでの宅地等をいう(措法69の4③、措令40の2④~⑫)。
 イ 特定事業用宅地等
  被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く。以下イ及びハにおいて同じ。)の用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。
 ロ 特定居住用宅地等
  被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、その被相続人の配偶者又は次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族(配偶者を除く。)が相続又は遺贈により取得したものをいう。
(イ)その親族が、相続開始の直前においてその宅地等の上に存する被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(被相続人、配偶者又は親族が居住していた部分に限る。)に居住していた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、その家屋に居住していること。
(ロ)その親族(被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者に限る。)が相続開始前3年以内に国内にあるその者又はその者の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがない者であり、かつ、相続開始の時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有していること(被相続人の配偶者又は民法第5編第2章の規定による同居の相続人がいない場合に限る。)。
(ハ)その親族が、被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始の時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること。
 ハ 特定同族会社事業用宅地等
  相続開始の直前において被相続人及びその被相続人の親族その他その被相続人と一定の特別の関係がある者が有する株式の総数又は出資の総額がその株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総額の10分の5を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、相続又は遺贈によりその宅地等を取得した個人のうちにその法人の役員であるその被相続人の親族がおり、その宅地等を取得した親族が相続開始の時から申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されている場合におけるその宅地等をいう。
 ニ 貸付事業用宅地等
  被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る。以下「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。

2 改正の内容
(1)持ち家がない相続人等の要件の見直し
 特定居住用宅地等の要件のうち、自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがない親族の要件(上記(注2)ロ(ロ)。措法69の4③二ロ)が、次のとおり見直された。
 その親族(被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した一定の者に限る。)が次に掲げる要件の全てを満たすこと(被相続人の配偶者又は民法第5編第2章の規定による同居の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)がいない場合に限る。)。
① 相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にあるその親族、その親族の配偶者、その親族の三親等内の親族又はその親族と特別の関係がある法人が所有する家屋(相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。
② その被相続人の相続開始時にその親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
③ 相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等を有していること。
(2)貸付事業用宅地等の要件の見直し  相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供されたものが除かれた(措法69の4③四)。
 ただし、相続開始の日まで3年を超えて引き続き準事業以外の貸付事業を行っていた被相続人等の貸付事業に供されたものは、この除外規定の対象外とされ、特例を適用することができる(措法69の4③四、措令40の2⑯)。
(3)介護医療院の追加  被相続人が介護医療院に入所したことによりその居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例を適用することとされた(措令40の2②一ロ)。

3 適用関係  上記2の改正は、原則として平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得した小規模宅地等に係る相続税について適用される(改正法附則118①)。
 なお、激変緩和の観点から次の経過措置が講じられている。
(1)特定居住用宅地等に係る経過措置  平成30年3月31日において相続又は遺贈があったものとした場合に改正前の租税特別措置法第69条の4第3項第2号ロの要件(相続開始前3年以内に自己又は自己の配偶者の所有する家屋に居住したことがない親族)を満たす特例対象宅地等に該当することとなる宅地等(以下「経過措置対象宅地等」という。)がある場合について、以下の特例が適用される。
① 平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得をする財産のうちに経過措置対象宅地等がある場合には、改正前の特例を適用することができる(改正法附則118②)。
② 平成32年4月1日以後に相続又は遺贈により取得をする財産のうちに経過措置対象宅地等がある場合において、平成32年3月31日においてその経過措置対象宅地等の上に存する建物の工事が行われており、かつ、その工事の完了前にその相続又は遺贈があったときは、その相続又は遺贈に係る相続税の申告期限までにその個人がその建物を自己の居住の用に供したときは、その経過措置対象宅地等は、被相続人の居住の用に供されていた建物に居住していたものとして、本特例を適用することができる(改正法附則118③)。
(2)貸付事業用宅地等に係る経過措置  平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に相続又は遺贈により取得する宅地等については、上記2(2)のうち、「相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等」とあるのは、「平成30年4月1日以後に新たに貸付事業の用に供された宅地等」とされる(改正法附則118④)。

5 国等に対して相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税措置の改正

1 改正の内容
 次の業務を行う地方独立行政法人が適用対象となる法人として追加された(措令40の3一の三)。
(1)申請等関係事務を当該市町村又は当該市町村の長その他の執行機関の名において処理する業務
(2)介護医療院の設置及び管理の業務

2 適用関係  上記1の改正は、平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用される(改正措令附則44①)。

租税特別措置法等(登録免許税関係)の改正

1 相続に係る所有権の移転登記の免税措置の創設

1 相続登記が未了で数次相続が発生している土地の免税
 個人が相続により土地の所有権を取得した場合において、その個人がその相続によるその土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間にその個人をその土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないこととされた(措法84の2の3①)。

2 行政目的のため相続登記を推進する必要のある土地の免税  個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)の施行の日から平成33年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、その土地が相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものであり、かつ、その土地のその登記に係る登録免許税の課税標準たる不動産の価額が10万円以下であるときは、その土地の相続による所有権の移転の登記については、登録免許税を課さないこととされた(措法84の2の3②)。

2 低未利用土地権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等の税率の軽減措置の創設
 低未利用土地について利用権の設定等を受けようとする者が、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(平成30年法律第22号)の施行の日から平成32年3月31日までの間に、低未利用土地権利設定等促進計画に基づき、土地又は建物の所有権、地上権又は賃借権の取得をした場合には、その土地又は建物の所有権の移転又は地上権若しくは賃借権の設定若しくは移転の登記に係る登録免許税の税率は、その低未利用土地権利設定等促進計画に係る公告があった日以後1年以内に登記を受けるものに限り、所有権の移転の登記にあっては1,000分の10(本則1,000分の20)とし、地上権又は賃借権の設定又は移転の登記にあっては1,000分の5(本則1,000分の10)とされた(措法83の2)。

3 特定連絡道路工事施行者が取得した特例連絡道路に係る土地の所有権の移転登記の免税措置の創設
 道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律に規定する特定連絡道路の工事を行う特定連絡道路工事施行者が、道路法等の一部を改正する法律(平成30年法律第6号)の施行の日から平成32年3月31日までの間に、その特定連絡道路の用に供する土地の所有権の取得をした場合には、その土地の所有権の移転の登記については、取得後1年以内に登記を受けるものに限り、登録免許税は課さないこととされた(措法84の2の2)。

4 認定経営力向上計画に基づき行う登記に係る特例の創設
 次に掲げる事項について登記を受ける場合において、その事項が、中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に係る認定に係るものであって産業競争力強化法等の一部を改正する法律(平成30年法律第26号)の施行の日から平成32年3月31日までの間にされたこれらの認定に係るものであるときは、その登記に係る登録免許税の税率は、その認定の日から1年以内に登記を受けるものに限り、次に掲げる事項の区分に応じ、それぞれ次に定める割合に軽減することとされた(措法80③)。
(1)事業に必要な資産の譲受けの場合における不動産の所有権の取得 1,000分の16(本則1,000分の20)
(2)合併による不動産の所有権の取得 1,000分の2(本則1,000分の4)
(3)分割による不動産の所有権の取得 1,000分の4(本則1,000分の20)

5 その他の改正

1 租税特別措置の適用期限の延長等
(1)特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記の税率の軽減措置の改正
① 改正前の制度の概要
 個人が、平成26年4月1日から平成30年3月31日までの間に宅地建物取引業者が増改築等をした建築後使用されたことのある住宅用家屋をその宅地建物取引業者から取得し、その者の居住の用に供した場合には、その住宅用家屋の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、その住宅用家屋の取得後1年以内に登記を受けるものに限り、1,000分の1(本則1,000分の20)に軽減されていた(旧措法74の3)。
② 改正の内容
 イ 上記①の増改築等のうち、省エネ改修については、改正前は「全ての居室の全ての窓の断熱改修」が必須の要件とされていたが、「断熱等級3かつ一次エネルギー等級4」又は「断熱等級4」の性能評価を改修後に取得すれば、全ての居室の窓全部の工事を行わなくても、適用対象とすることとされた(平成26年国土交通省告示第435号)。
 ロ 適用期限が、平成32年3月31日まで2年延長された。
(2)その他の租税特別措置の適用期限の延長  次に掲げる租税特別措置について、適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。
① 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減(措法74)
② 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等の税率の軽減(措法74の2)
③ マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等の免税(措法76)
④ 農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減(措法77の2)
⑤ 認定事業再編計画等に係る特例(措法80)
⑥ 認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減(措法81)
⑦ 特定国際船舶の所有権の保存登記等の税率の軽減(措法82)

2 特例措置の廃止  以下に掲げる特例措置が、適用期限の到来をもって廃止された。
(1)被災した鉄道事業者が取得した鉄道施設に係る土地の所有権の保存登記等の免税(震災税特法40の3)
(2)独立行政法人中小企業基盤整備機構が建築した仮設建築物に係る所有権の保存登記の免税(震災税特法40の4)

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