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解説記事2018年08月27日 【税務マエストロ】 免税(4)~非居住者との取引(その1)(2018年8月27日号・№752)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
免税(4)~非居住者との取引(その1)

#218 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

マエストロの解説  非居住者との取引については、その効果が国外で生ずるものについて、輸出免税の規定を適用することとしている。ただし、非居住者に対する役務の提供であっても、国内における飲食や宿泊など、国内において直接便益を享受するものは免税とはならず、当然に消費税が課税されることになる。
 今月は、非居住者に対する役務の提供のほか、特許権などの無形固定資産を非居住者に譲渡・貸付けをした場合の取扱いを確認する。

1 特許権の譲渡・貸付けをした場合の内外判定と輸出免税  特許権の譲渡又は貸付けの内外判定は、登録機関の所在地によることとされている。
 したがって、日本で登録した特許権の譲渡又は貸付けは、外国法人(非居住者)が行っても国内取引となるのに対し、外国で登録した特許権の譲渡又は貸付けは、たとえ内国法人が行っても国外取引となり、課税の対象とはならない。
 ところで、国際特許の登録申請に際しては、1カ国だけで登録申請するのではなく、先進国で一斉に同時登録することが一般的となっている。このように、2以上の国で登録した特許権については、個人事業者の場合には住所地、法人の場合には本店所在地が国内かどうかで内外判定をすることになる(消令6①五)。
 2以上の国で登録した特許権の譲渡又は貸付けについては、たとえ日本で登録していなくとも国内取引に該当することに留意されたい。
 次に、輸出免税の適用の有無についてであるが、非居住者に対する特許権の譲渡又は貸付けは、その効果が国外で発生することから輸出免税の規定が適用される(消令17②六)。


 したがって、非居住者から収受する特許権の賃貸料収入は、国内取引に該当することを前提に、課税売上割合の計算上、分母と分子に計上することになる(図表1参照)。

 また、居住者が支払う特許権の使用料は、貸付先が非居住者であっても輸出免税の適用はない。たとえ貸付先が非居住者であったとしても、国内取引に該当することを前提に、仕入控除税額の計算に取り込むことができる(図表2参照)。


2 27年度改正(内外判定)と非居住者との取引の関係
(1)平成27年度改正
 平成27年度税制改正において、国境を越えた役務の提供に係る課税の見直しが行われたことに伴い、役務の提供に係る内外判定基準の改正が行われている。本改正により、旧消費税法施行令6条2項5号(情報の提供又は設計に係る内外判定)又は同項7号(役務の提供に係る内外判定の包括条項)の規定により内外判定が行われていた電気通信利用役務の提供に係る内外判定の基準が新たに法定化されたことに伴い、旧消費税法施行令6条2項5号の規定が削除されている。
旧消費税法施行令第6条(資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定)
  :
2 法第4条第3項第2号に規定する政令で定める役務の提供は、次の各号に掲げる役務の提供とし、同項第2号に規定する政令で定める場所は、当該役務の提供の区分に応じ当該役務の提供が行われる際における当該各号に定める場所とする。
 一~四 (略)
 五 情報の提供又は設計 情報の提供又は設計を行う者の情報の提供又は設計に係る事務所等の所在地
 六 (略)
 七 前各号に掲げる役務の提供以外のもので国内及び国内以外の地域にわたって行われる役務の提供その他の役務の提供が行われた場所が明らかでないもの 役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地
(2)情報の提供  内国法人(居住者)が外国法人(非居住者)から日本国内の市場調査を依頼され、報告書を提出したことにより手数料を収受するケースについて、内外判定と輸出免税の適用の有無について検討する。
 国内情報の提供については、役務提供地が国内であることから、いわゆる原則判定により国内取引に該当することになる(消法4③二)。
 次に、輸出免税の適用の有無について検討する。非居住者に対する役務の提供であっても、国内で直接便益を享受する下記のような取引には輸出免税の適用はなく、消費税が課税される。
① 国内に所在する資産に係る運送又は保管
② 国内における飲食又は宿泊
③ ①及び②に準ずるもので、国内において直接便益を享受するもの
 つまり、非居住者に対する役務(情報)の提供で、上記①~③以外のものについてだけ、輸出免税の規定が適用されるということである(消令17②六)。
 外国法人(非居住者)に対する情報の提供は、その役務提供の効果が依頼者である外国法人に対して発生するものであり、国内において直接便益を享受するものではないことから上記①~③のいずれにも該当しない。したがって、情報提供者である内国法人が収受する手数料収入は輸出免税売上高として処理することができる。
 なお、本取引において、依頼者である外国法人が国内に支店又は出張所等を有している場合には、その情報の提供は支店又は出張所等を経由して行われたものとされ、輸出免税の規定は適用されないことになる。
 ただし、次のいずれにも該当する場合には、国内に支店又は出張所があったとしても、その情報の提供は輸出免税の対象とすることが認められている(消基通7-2-17)。
① その情報の提供が、外国法人の本店との直接取引であり、支店又は出張所等が直接的にも間接的にも係わっていないこと。


② 支店又は出張所等の業務は、その情報提供に係る業務と同種、あるいは関連する業務でないこと。
(3)設計業務  設計(役務の提供)については、役務提供地が明らかでないことから、その設計を行う者の設計に係る事務所等の所在地が国内かどうかで内外判定をすることになるものと思われる(消令6②六)。
 したがって、海外での建築工事であっても、設計図面を日本国内の事務所で作成する場合には、その設計業務(役務の提供)は国内取引に該当する。
 次に、輸出免税の適用の有無についてであるが、非居住者から依頼された海外での建築物件に係る設計図面の作成は、非居住者に対する役務の提供で、国内において直接便益を享受するものではない。したがって、非居住者から収受する設計料収入は、輸出免税売上高として処理することができる。
 なお、海外での建築工事については、その工事の施工場所が国外であることから国内取引には該当しないため、工事売上高は課税対象外収入(国外取引)として処理することになる(消法4③二)。ただし、海外での建築工事のための資材などを国内で調達して現地に移送する場合には、「国外移送をした場合の仕入税額控除の特例」を適用することができるので、個別対応方式の適用にあたっては、その資材の課税仕入れは課税売上対応分に区分され、課税売上割合の計算上、移送した資材のFOB価格を分母と分子に計上することになる(消法31②、消令51③④)。

3 非居住者に対する役務の提供(事例)
○広告宣伝(1)
 広告代理店である当社は、外国法人A社からの依頼により、国内で発行する雑誌に依頼者の商品広告を掲載し、手数料を収受しました。この場合の手数料は、国内での広告宣伝であることから国内取引に該当し、課税の対象となるのでしょうか。
 また、課税の対象となった場合には、輸出免税の規定の適用はあるのでしょうか。
 なお、A社は日本国内に販売店舗を設け、本社から輸入した商品を日本国内でも販売していますが、手数料収入はA社の本店から直接送金がされています。

 広告宣伝(役務の提供)については、原則として、その役務提供地が国内かどうかで内外判定をすることになります(消法4③二)。
 したがって、相手先が非居住者であっても質問の取引は国内取引に該当し、課税の対象となります。
 次に、輸出免税の適用の有無についてですが、A社は日本国内に販売店舗を設けていることから、その広告宣伝は、A社の国内店舗を経由して依頼されたものと認められます。
 したがって、たとえ手数料がA社の本店から直接送金されている場合であっても、その役務の提供については輸出免税の適用はなく、消費税が課税されることになります(消基通7-2-17)。
 なお、質問のケースにおいて、A社が日本国内に支店又は出張所等を有していない場合には、その役務提供の効果は依頼者である外国法人に対して発生するものであり、国内において直接便益を享受するものではありません。したがって、御社が収受する手数料収入は輸出免税売上高として処理することができます。


○広告宣伝(2)
 当社は、内国法人B社から中国での商品の広告宣伝を依頼され、広告の企画から立案、中国の雑誌社との交渉などの宣伝業務一切を請け負いました。
 この広告宣伝の請負については、役務提供地が国外(中国)であることから国外取引と考えてよいのでしょうか。なお、当社は、国外に事務所等は設置しておりません。

 役務の提供については、役務提供地が国内かどうかで内外判定をすることが原則ですが、消費税法施行令6条2項の1号から5号までに該当しないもの、つまり、役務提供地が明らかでないものや、役務の提供が国内と国外の間において連続して行われるものについては、役務提供者の役務提供に係る事務所等の所在地により内外判定をすることとされています(消令6②六、消基通5-7-15)。
 ご質問の広告の請負ですが、広告の立案や企画は国内事務所で行うものであり、また、雑誌社との交渉や広告は国外で行うものであるから、その役務の提供は国内と国外にわたって行われていることになります。したがって、この場合の内外判定は、役務の提供に係る事務所等の所在地で行うことになり、結果、国内取引に該当することになります。
 なお、国内取引に該当した場合において、広告の依頼主が非居住者である場合には、非居住者に対する役務の提供として輸出免税の規定が適用されるのですが、ご質問の依頼主は国内企業とのことですので、輸出免税の対象とはなりません。結果、B社から収受する広告料収入は課税売上高に計上することになります(消令17②七)。
 ところで、同じ海外での広告の請負であっても、契約の内容が単に海外の雑誌に広告記事を掲載するだけのものであれば、役務提供地は国外であるから国内取引にはならず、結果、消費税は課税されないことになりますのでご注意ください。
 広告宣伝などの役務の提供については、課税か免税かという結論を考える前に、まずは契約内容をしっかりと確認し、国内取引になるかどうかということを判断することが重要です。


○保守契約に基づく機械の修理
 当社は、外国法人X社(非居住者)との契約に基づき、X社が内国法人Y社に販売した機械装置の修理を請け負っています。
 X社からY社への機械の譲渡は保守条件付で行われている関係から、Y社は修理に要する費用は一切負担せず、当社がX社に対して修理代金を請求する取り決めとなっています。
 この場合において、当社がX社から収受する修理代金は、国内にある物品の修理として課税取引となるのでしょうか。あるいは、非居住者に対する役務の提供として輸出免税の規定の適用があるのでしょうか。
 なお、X社は、日本国内に機械装置の販売代理店を設置していますが、修理契約はX社の本店と当社とで交わしており、修理代金もX社の本店から直接送金されることとなっています。

 ご質問の事例について、仮に当社がX社に対して行う役務の提供が課税取引であるとした場合、X社は、当社に対して支払うことになる修理代金を見積もった上でY社に対する譲渡価格を決定する必要があります。そうすると、X社からY社への機械の譲渡は、譲渡時における資産の所在場所が国外であることから国外取引となるにもかかわらず、結果として譲渡価格に日本の消費税が転嫁されることとなってしまいます。
 さらに、その関税課税価格(CIF価格)を基に計算された輸入消費税をY社が通関時に納付することとなるため、事例のような取引については輸出免税の規定を適用することにより、X社からY社への譲渡価格には日本の消費税が転嫁されないようにする必要があるわけです。
 なお、輸出免税の規定の適用を受けるためには、輸出許可証などの輸出を証明する書類を保存することが要件とされているのですが、本件のように非居住者に対する役務の提供の場合には、貨物を通関させるわけではないので輸出許可証などの証明書類は発行されないことになります。
 このような場合には、相手方との契約書その他の書類で次の①~⑤に掲げる事項が記載されているものを保存することにより、輸出証明をすることとされています(消法7②、消規5①四)。
① 資産の譲渡等を行った事業者の氏名又は名称と当該事業者のその取引に係る住所等
② 資産の譲渡等を行った年月日
③ 資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 資産の譲渡等の対価の額
⑤ 資産の譲渡等の相手方の氏名又は名称と当該相手方のその取引に係る住所等
 また、ご質問のケースでは、国内の販売代理店は機械装置の販売のみを行っており、御社が行う修理はX社との直接取引と認められますので、たとえ国内に販売代理店があったとしても、御社が収受する修理代金は輸出免税売上高として処理することができます。

○外国人旅行者から収受する弁護士報酬
 弁護士が、外国人旅行者から日本国内で発生した交通事故に係る示談を依頼され、報酬を受け取った場合には、その報酬は課税取引となるのでしょうか。あるいは、非居住者に対する役務の提供として輸出免税の規定の適用があるのでしょうか。

 国内での「交通事故に係る示談」という役務の提供(弁護士業務)は国内取引に該当し、依頼者である非居住者が国内において直接便益を享受するものではありませんので輸出免税の対象となります。
 なお、非居住者に対する役務の提供であっても、次に掲げるものには輸出免税の適用はなく、消費税が課税されることとなりますのでご注意ください(消基通7-2-16)。
① 国内に所在する資産に係る運送や保管
② 国内に所在する不動産の管理や修理
③ 建物の建築請負
④ 電車、バス、タクシー等による旅客の輸送
⑤ 国内における飲食又は宿泊
⑥ 理容又は美容
⑦ 医療又は療養
⑧ 劇場、映画館等の興業場における観劇等の役務の提供
⑨ 国内間の電話、郵便又は信書便
⑩ 日本語学校等における語学教育等に係る役務の提供

記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
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