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解説記事2018年12月03日 【ニュース特集】 相続税・財産評価の審理事例をチェック(2)(2018年12月3日号・№765)

ニュース特集
対象株式が未分割である場合の評価方式の判定etc.
相続税・財産評価の審理事例をチェック(2)

 今号の特集は、前回(本誌763号4頁参照)に引き続き、課税当局が相続税・財産評価の審理上の留意点として掲げているQ&Aを紹介する。相続税では、相続人が相続欠格者となった場合の更正の請求についてなど、財産評価では、耕作権の目的となっている生産緑地の評価、対象株式が未分割である場合の評価方式の判定に関する取扱いが示されている。

相続税編
01 
相続人が相続欠格者となった場合の相続税
Q
 被相続人甲(以下「甲」という。)は平成30年1月に死亡し、甲の相続人は長男乙及び長女丙の2人であるところ、甲は、亡くなる直前の平成29年12月、財産の全てを長女丙に相続させる旨の遺言書(以下「本件遺言書」といい、本件遺言書に係る遺言を「本件遺言」という。)を作成していた。
 長男乙は、相続開始後の平成30年10月、本件遺言書は長女丙が甲を強迫したことにより作成されたものであり、この長女丙の行為は民法891条《相続人の欠格事由》第3号の事由に該当するとして、本件遺言書の無効確認訴訟及び長女丙の相続権不存在確認訴訟をそれぞれ提起した。
 そして、長男乙は、甲の遺産は未分割であるとして、相続税法55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき、また、長女丙は本件遺言書に基づきその財産の全てを自らが取得したものとして、それぞれ甲に係る相続税の申告を期限内に行った。 
 その後、平成31年3月、上記の各訴訟において、本件遺言書は無効であること及び長女は相続欠格者であり相続権がないことがそれぞれ確定した。
この場合、
1 長女丙は、更正の請求をすることができるか。
2 長女丙には子A及び子Bがいるところ、両者は代襲相続人となるか。また、代襲相続人となる場合、相続税の申告期限はいつになるか。
A
1 長女丙は、相続税法32条1項2号に基づき、相続欠格であることが確定したことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることができる。 
2 A及びBは代襲相続人となる。また、その相続税の申告期限は、長女丙が相続欠格であることが確定したことを知った日の翌日から10か月以内となる。
(理由)
 民法891条《相続欠格事由》は、相続人の欠格事由を掲げ、当該事由に該当する者は相続人となることができない旨規定している。 
 この規定は、相続人の地位を占める者であっても、一定の重大な事情が存することにより、この者に相続させることが一般の法感情からみて妥当でない場合があるとして、このような事情として5つの事由を掲げ、相続人がそのいずれか一つに該当するときは、被相続人の意思を問うことなしに、法律上当然に相続人たる資格を失うものとしたものであり、相続人の一定の重大な非行に対する制裁を趣旨とするものである。 
 そして、相続欠格の効果は、(裁判や審判による確定をせずとも)法律上当然に発生し、欠格事由が相続開始前に生じた場合には、その時に欠格の効果が発生し、欠格事由が相続開始後に生じた場合には、相続開始時に遡って欠格の効果が発生する。
 また、欠格の効果は本人に限られ、直系卑属には及ばないため、当該直系卑属は欠格者の代襲相続人となる(民法887②)。 
 なお、民法には相続欠格と同様の制度として相続人廃除を規定し(民法892)、これは軽度の非行に対する制裁を趣旨とするものであり、法律上当然に相続人たる資格を失うものではなく、被相続人の意思によって相続人たる資格を剥奪できるとしている点において、相続欠格と性質を異にする。
1 長女丙の更正の請求について 
 本事例のように、相続においては、相続開始後の訴訟等において後発的に相続欠格が明らかにされることもあり、これは、相続特有の後発的事由に基づく更正の請求を規定した相続税法32条1項の第2号に掲げる「……その他の事由により相続人に異動を生じたこと」に該当する。 
 したがって、長女丙は、相続欠格であることが確定したことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることができる。
2 代襲相続人A及びBの甲の相続税に係る申告期限について 
 上記のとおり、相続欠格の効果は本人に限られ、直系卑属には及ばないところ、本事例の場合、相続開始後に長女丙が相続欠格者であることが確定したことから、長女丙の子であるA及びBは、相続開始時に遡って甲の代襲相続人となる。 
 そして、相続税の申告期限については、相続税法27条《相続税の申告書》に規定する「その相続の開始があったことを知った日」の翌日から10か月となるところ、この「その相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知った日をいう(相基通27-4)こととされている。 
 したがって、代襲相続人A及びBの甲の相続税に係る申告期限は、長女丙の相続欠格が確定したことを知った日の翌日から10か月以内となる。

02
納税猶予の特例を適用した場合に納付すべき相続税額が算出されない配偶者についての同特例の適用の可否
Q
 被相続人甲に係る相続税の申告において、配偶者乙(以下「乙」という。)を租税特別措置法70条の6《農地等についての相続税の納税猶予及び免除等》第1項に規定する農業相続人(以下「農業相続人」という。)として、同条の規定(以下「納税猶予の特例」という。)を適用して計算すると、相続税法19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第1項の規定(以下「配偶者の税額軽減」という。)の適用により納付すべき相続税額が算出されない。また、乙を農業相続人でないものとして、納税猶予の特例を適用して相続税額の計算をした場合には、配偶者の税額軽減をしてもなお納付すべき相続税額が算出される。 
 この場合、乙は、農業相続人として納税猶予の特例の適用を受けることができるか。
A
 乙は、納税猶予の特例の適用を受けることができる。
(理由)
 納税猶予の特例は、相続税の納付についての特例であることから、その制度の目的に照らし、納付すべき相続税額が算出される者に限って、その適用があるものとされている。 
 ところで、被相続人の配偶者については、配偶者自身が農業相続人となった場合と、配偶者自身が農業相続人とならずに配偶者以外の者が農業相続人となった場合とで、配偶者の税額軽減額の計算が異なることとされているため、本事例のように、配偶者が農業相続人となったときは納付すべき相続税額が算出されず、農業相続人とならなかったときは納付すべき相続税額が算出される場合がある。
 そうすると、納付すべき相続税額が算出されない場合には、この制度の目的に照らし、乙は納税猶予の特例の適用を受けることができないのではないかとの疑義が生じるところ、措置法通達70の6-37では、配偶者について、配偶者以外の者が農業相続人であり、配偶者が農業相続人でないものとして計算すると納付すべき相続税額が算出される場合、例外的に納税猶予の特例の適用があるものとして取り扱うこととしている。 
 したがって、本事例の場合、乙は、農業相続人として納税猶予の特例を適用して相続税の計算をすると、配偶者の税額軽減により納付すべき相続税額が算出されないものの、農業相続人でないものとして相続税の計算をした場合には、納付すべき相続税額が算出されることから、納税猶予の特例の適用を受けることができることとなる。


財産評価編
01
耕作権の目的となっている生産緑地の評価
Q
 耕作権の目的となっている農地が生産緑地に指定されている場合、生産緑地の評価減を行ってもよいか。
A
 当該農地の自用地としての価額から、耕作権に相当する金額を控除した価額に、当該生産緑地の買取り申出のできる日までの期間に応じて定められた一定の割合を減額して評価する。
(理由)
 生産緑地の価額は、その生産緑地が生産緑地でないものとして財産評価基本通達第2章の定めにより評価した価額から買取り申出をすることができることとなる日までの期間に応じて35/100までの減額を行って評価することとなる(評基通40-3)。 
 一方、耕作権の目的となっている農地の価額は、財産評価基本通達41《貸し付けられている農地の評価》により、同通達37《純農地の評価》から40《市街地農地の評価》までの定めにより評価したその農地の自用地としての価額から、42《耕作権の評価》の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価すると定められている。 
 ところで、生産緑地は、生産緑地法の規定に基づき、市街化区域内にある農地等について、市町村が所有権者及び対抗要件を備えた地上権者若しくは賃借権者等の同意を得て都市計画の一環として生産緑地地区を定めることにより決定される(生産緑地法3)。そして、その農地等が生産緑地地区に指定されると、建築物の新築や宅地造成などを行う場合には、市町村長の許可を受けなければならないこととされ(生産緑地法8①)、更にこの許可は、農産物等の生産集荷施設や市民農園に係る施設等を設置する場合以外は原則として下りないこととされている(生産緑地法8②)ことから、農地等以外の利用は原則的にできなくなる。
 このように、生産緑地に指定された場合には、耕作権の目的となっている農地自体にも当然に上記の行為制限が及ぶこととなる。
 したがって、耕作権の目的となっている農地が生産緑地に指定されている場合の価額は、その農地の自用地としての価額から耕作権の価額を控除した金額に、買取り申出をすることができることとなる日までの期間に応じた35/100までの割合を乗じて算出した金額を控除した金額となる。

02
対象株式が未分割である場合の評価方式の判定
Q
 被相続人である甲(平成30年相続開始)は、丙株式会社(以下「丙社」という。)の株式を210株(丙社は非上場会社であり、発行済株式数は1,000株である。)保有していた。
 甲の法定相続人であるB、C、F及びHは、相続税の申告期限までに、遺産分割協議が調わないため、全ての財産を法定相続分により取得したものとして相続税の申告書を提出することになった。
 この場合、丙社株式について、取引相場のない株式を評価する際の相続人Cに適用されるべき評価方式をどのように判定するか。

A
 相続人Cが取得した株式の評価方式は、原則的評価方式となる。
(理由)
1 対象株式が未分割である場合の株主及び評価方式の判定方法
  
 取引相場のない株式は、純資産価額方式、類似業種比準方式又はこれらの併用方式により評価することを原則としている(原則的評価方式)が、少数株主が取得した株式については、特例的な措置として配当還元方式により評価することとしている(特例的評価方式)。 
 遺産未分割の状態は、遺産の分割により具体的に相続財産を取得するまでの暫定的、過渡的な状態であり、将来、各相続人等がその法定相続分等に応じて確定的に取得するとは限らないことから、その納税義務者につき特例的評価方式を用いることが相当か否かの判定は、当該納税義務者が当該株式の全部を取得するものとして行う必要がある。
2 相続人Cが取得した株式の判定について
(1)議決権割合の判定
  
 丙社株式210株は、未分割の状態であることから、相続人Cが丙社株式210株を取得するものとして、同人の取得した丙社株式の評価方式の判定を行う。そうすると、相続人Cを納税義務者とする場合の「第1表の1 評価上の株主の判定及び会社規模の判定の明細書」の「1 株主及び評価方式の判定」における丙社株式に係る議決権割合及び記載については、次表のとおりである。

(2)評価方式の判定 
 相続人Cが取得した株式の評価方式について、フローチャート(次頁参照)に基づき判定すると、次のとおりである。
① 相続人Cを中心とすると、相続人Cの同族株主グループ(C、E及びF)の議決権割合が議決権総数30%以上50%以下(50%)であるため、丙社は、同族株主のいる会社に該当する。
② 丙社の同族株主グループで、議決権割合が議決権総数の50%を超えるグループは存しない。
③ 相続人Cが属する同族株主グループの議決権割合の合計は30%以上(50%)であるため、相続人Cは同族株主となる。 
④ 相続人Cが相続により取得した後の議決権割合が5%以上(21%)であることから、同人が取得した株式の評価方式は原則的評価方式と判定される。
【参考】
1 株主及び評価方式判定のフローチャート


2 相続税法55条に規定する未分割財産に対する課税について  上記(理由)1の取扱いは、評価方式の判定における取扱いにすぎないため、相続税の課税価格を計算する場合には、未分割財産は民法の相続分(寄与分を除く。)の規定により分割したものとして、配偶者であるBは105株、相続人C、F及びHは35株を取得したものとすることに留意する。

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