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解説記事2019年03月11日 【ニュース特集】 平成30年中の会計監査人の交代理由と最近の動向(2019年3月11日号・№778)

ニュース特集
適時開示ガイドブック改訂で大きく開示内容が変更
平成30年中の会計監査人の交代理由と最近の動向

東京証券取引所等に上場している平成30年中に会計監査人の交代(追加選任及び退任も含む)を行っている企業が162社にのぼっていることが本誌編集部の調べで明らかとなった(平成30年1月1日~12月31日までに提出された臨時報告書を調査、7頁以降の参照)。監査法人同士の合併による理由を除けば交代理由の多くは「任期満了」によるもの。会計監査人から契約解除を申し出た事例などもあったが、会計監査人交代に伴い、臨時報告書に退任した会計監査人の意見を開示した企業はなかった。ただ最近の交代事例をみると、東京証券取引所の「会社情報適時開示ガイドブック」の改訂を踏まえ、具体的な交代理由を開示する企業が増えている。本特集では、平成30年中の会計監査人の交代理由の概要とともに最近の動向を紹介する。

監査工数の増加により監査契約打ち切りも
 企業の会計監査人が交代した場合には、交代した理由のほか、会計監査人の意見があれば臨時報告書で開示することになっている。今回、本誌編集部が平成30年中に提出された臨時報告書等を調査したところでは、162社が会計監査人を交代(追加選任及び退任も含む)していることがわかった(追加選任:細谷火工は会計監査充実強化のため江畑公認会計士事務所を追加選任。退任:①ツノダでは会計監査人非設置会社となるため、みかさ監査法人が退任、②日清紡ホールディングスの共同監査人であった監査法人ベリタスが退任)。
 162社のうち53社が太陽有限責任監査法人(存続監査法人)と優成監査法人(消滅監査法人)が合併したことによる交代で、2社が東邦監査法人(存続監査法人)と監査法人青柳会計事務所(消滅監査法人)の合併によるものとなっている。
 それ以外の多くは「任期満了」との理由によるものが大半となっているが、具体的な交代理由を開示している企業も中にはある。
 例えば、ソルガム・ジャパン・ホールディングスについては、監査法人との間で投資の評価やのれんの減損に関する会計処理などで見解の相違が生じ、期中で監査契約を合意解除している旨を開示。省電舎ホールディングスでは監査法人から不適切な会計処理が行われた可能性があると判断され、監査契約を合意解除している。ディー・エル・イーのアスカ監査法人も不適切な会計処理等により、監査契約の継続はできないとの申し出を行って
いる。
 また、監査法人側からの方針を受け、監査契約を解除している企業もある。例えば、FRONTEOでは、EY新日本有限責任監査法人から監査工数が相当な規模になるとの方針を受け、決算・監査対応スケジュールの観点及び経済的合理性の観点から検討を行い、合意の上、監査契約を継続しないことを決めている。地盤ネットホールディングスについても、東陽監査法人から平成30年3月期の監査状況を踏まえ、今後は慎重なリスク対応手続きなど行う必要があるために監査工数が相当な規模になるとの理由により、監査契約の終了を申し出されている。
 なお、交代理由を具体的に開示している企業についても退任会計士の意見を開示した企業は皆無であった。

「任期満了」の理由にプラスαの開示を行う企業が
 「任期満了」としている企業の理由としては、①継続監査年数等を考慮、②監査報酬等を含め総合的に勘案、③親会社と会計監査人を統一、④国際財務報告基準(IFRS)を任意適用するためなどの理由が挙げられているが、「任期満了」としか開示していない企業も多く、実質的な交代理由を開示している企業は少なく見受けられる。
退任会計士の再任しない理由の開示を  金融庁に設置された「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」(座長:八田進二青山学院大学名誉教授)が1月22日に公表した「会計監査に関する情報提供の充実について-通常とは異なる監査意見等に係る対応を中心として-」と題する報告書では、会計監査人の交代に関しては、実質的な交代理由が開示されていない点が問題として指摘されている。特に会計監査人の任期が通常1年で終了することからすれば、「任期満了」との記載は交代理由の開示として不適切であるとしている。このため、企業及び会計監査人は、監査人の交代理由について、実質的な内容を記載することを求めている。
 この金融庁の懇談会の報告書を受け、東京証券取引所は「会社情報適時開示ガイドブック」を改訂(本誌772号9頁参照)。会計監査人の交代については実質的な理由やその経緯を開示資料に具体的に記載することを求めている。任期満了時に退任を決定する場合には、退任する公認会計士等を再任しない理由の記載を求められている。また、期中に解任する場合又は短期間で退任を決定する場合には、期中又は短期間であるにもかかわらず、なぜ解任又は退任を決定することになったかがわかるように記載するほか、会計処理等に関する見解の相違が存在するといった事情がある場合には、その具体的な内容を記載することが求められる。


東証が適時開示ガイドブックを改訂

監査報酬改定の打診が契機に  この「会社情報適時開示ガイドブック」の改訂を受け、最近では具体的な会計監査人の交代理由を適時開示資料で開示する企業が増えている。
 例えば、東邦レマック(JASDAQスタンダード)は平成31年2月1日付で会計監査人を太陽有限責任監査法人からあかり監査法人に交代する旨を開示しているが、その理由として「任期満了」とともに監査費用等の削減を挙げている(表1参照)。西本Wismettacホールディングス(東証1部)も監査報酬改定の打診を契機に会計監査人の交代を検討している(表2参照)。
 また、スリーエフ(東証2部)は、会計監査人の在任期間が24年と長期にわたることなどを理由に挙げている。またリリカラ(JASDAQスタンダード)は、現任会計監査人から人員が不足していることを理由に契約更新を差し控えたい旨の打診を受けたことを明らかにしている(表3参照)。

【表1】東邦レマックの交代理由(太陽有限責任監査法人⇒あかり監査法人)
 当社の会計監査人であります太陽有限責任監査法人は、平成31年3月15日開催予定の第61回定時株主終結の時をもって任期満了となります。これに伴い、当社は、監査報酬増額の打診を受けておりましたが、当社の業績不振により監査費用等の削減を目的として、会計監査人を見直すこととし、(中略)その後任として新たにあかり監査法人を会計監査法人として選任するものであります。

【表2】西本Wismettacホールディングスの交代理由
   (有限責任監査法人トーマツ⇒EY新日本有限責任監査法人)
 当社の会計監査人である有限責任監査法人トーマツは、平成31年3月27日開催予定の当社第72回定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。当社の海外展開の拡大等を受け、有限責任監査法人トーマツから監査報酬改定の打診があり、それをきっかけに長年にわたり同監査法人が当社に関与を継続してきたことも考慮して、グローバルな監査体制について他の監査法人との比較検討を行うことにいたしました。その結果、当社の事業規模及びグローバルに展開する事業特性に即した監査対応、監査の効率性と監査報酬の相当性等を検討し、当社の現状に適した監査法人として、EY新日本有限責任監査法人を会計監査人として選任する議案の内容を決定したものであります。

【表3】リリカラ(有限責任監査法人トーマツ⇒清陽監査法人)
 当社の現任会計監査人である有限責任監査法人トーマツは、平成31年3月28日開催予定の第78期定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。
 現任会計監査人から人員が不足していることを理由に契約更新を差し控えたい旨の打診を受け、当社としても、現任会計監査人の当社への人員配置の困難さ及び現任会計監査人の監査継続年数が30年以上続いていることなどに鑑みこれを了承いたしました。これを契機として、(中略)新たに清陽監査法人を会計監査人として選任するものであります。

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