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解説記事2019年03月18日 【第2特集】 会計士協会の対応から読む「監査上の主要な検討事項」(2019年3月18日号・№779)

第2特集
東証1部上場企業は早期適用が必要か?
会計士協会の対応から読む「監査上の主要な検討事項」

 日本公認会計士協会は2月27日、企業会計審議会が公表した「監査基準の改訂に関する意見書」に対応する監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」(以下、「監基報701」)等を公表した。監基報701では、監査人は、監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から、更に監査を実施する上で監査人が特に重要であると判断した事項を「監査上の主要な検討事項」(いわゆるKAM)として決定しなければならないとした。2021年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用されるが、2020年3月31日以後終了する事業年度に係る監査からの早期適用も認められている。本特集では、意見募集を行っていた監査基準委員会報告書等の公開草案に対して寄せられたコメントに対する日本公認会計士協会の対応などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。

個別財務諸表の数値が異なれば別途記載
Q
 KAMの内容が連結と単体で同じものとなりますが、数値や参照先が連単で異なる場合はどのように記載すればよいですか。(監査法人)
A
 個別財務諸表と連結財務諸表の監査におけるKAM が同一内容となる場合、個別財務諸表の監査報告書については、KAM の見出しの下に、連結財務諸表の監査報告書に記載されているKAM への参照を付した上でその記載を省略することができるとされている(「監基報701」A58 項(4))。したがって、個別財務諸表における数値や参照先がある場合は、個別財務諸表の監査報告書に別途記載することになる。

KAMの早期適用は監査人と会社で協議
Q
 東証1部上場企業については、可能な限り平成32年3月期決算に係る監査からの早期適用を促すこととされていますが、KAMの早期適用の決定はどのように決めることになりますか。(財務諸表作成者)
A
 KAMの早期適用は法令により強制されていないため、監査契約時の合意事項となる。したがって、監査人と被監査会社との間で協議の上、決定されることになる。

監査役等とは?
Q
 KAMは、監査人が監査役等とコミュニケーションを行った事項から選択されるとされていますが、「監査役等」とは具体的に誰を指しますか。(公認会計士)
A
 「監査役等」とは、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会とされている(「監基報701」3項等)。

KAMがあっても財務諸表への注記は強制されず
Q
 財務諸表には、KAMが記載されることを理由にその内容を注記しなければなりませんか。(財務諸表作成者)
A
 KAMの区分においては、① 関連する財務諸表における注記事項がある場合は、当該注記事項への参照、②個々の監査上の主要な検討事項の内容、③財務諸表監査において特に重要であるため、当該事項を監査上の主要な検討事項に決定した理由、④当該事項に対する監査上の対応を記載しなければならないとされているが、KAMはあくまで監査に関する情報であるため、KAMの記載を理由に財務諸表に同内容の注記を含めることは強制されない。ただし、財務諸表作成者として適用される財務報告の枠組みに照らして、財務諸表の適正表示が達成されているかどうかの観点から、十分な検討は必要になる。

セグメントごとの記載は要さず
Q
 KAMはセグメントごとに記載されることになりますか。(財務諸表作成者)
A
 KAMは、当期の財務諸表の監査において監査人が特に重要であると判断した事項であるため、セグメントごとにKAMを記載することは求められていない。

KAMは未公表の情報の提供を目的とせず
Q
 KAMに未公表の情報を含める必要がある場合には、監査人はどのような対応をとることになりますか。(財務諸表作成者)
A
 KAMは、監査の内容に関する情報を提供するものであり、監査報告書において企業に関する未公表の情報を提供することを目的とはしていない。このため、監査人がKAMを記載するに当たり、企業に関する未公表の情報を含める必要があると判断された場合には、財務諸表への注記が強制されるわけではないが、監査人は経営者に追加の情報開示を促すとともに、必要に応じて監査役等と協議を行うことが適切となる。

KAMの並び順に特段の要求はなし
Q
 KAMの並び順に何か意味がありますか。(財務諸表作成者)
A
 複数のKAMの並び順は、特段の要求事項はなく、項目間の相対的重要性に基づく配列や財務諸表の記載の順番に沿った配列などが考えられる。会社の規模や状況によってKAMの個数や内容も異なるため、「相対的な重要性」による配列のみとすることは、実務的な観点からも難しい。なお、KAMであると同時に強調事項にも該当する事項については、利用者の目に触れやすくするためにKAM区分の初めに記載することも考えられる。

財務諸表以外での開示には参照は付されず
Q
 KAMについては、関連する財務諸表に注記事項がある場合のみ参照を付すこととされていますが、企業の任意開示や口頭情報など、財務諸表以外に開示されている場合には特に参照を付す必要はないのですか。(財務諸表利用者)
A
 関連する財務諸表に注記事項がある場合にのみ参照を付すこととされている。このため、すべてのKAMについて財務諸表への参照が付されるわけではない。KAMに関連する情報が財務諸表以外で開示されている場合には、監査報告書から参照は付されない。参照を付すと財務諸表外の情報まで監査対象かのような誤解が生じるためとしている。

経営者の判断に関する情報などを想定
Q
 KAMでの記述を考慮して企業が追加開示する情報の例として、「例えば、適正表示の観点から、財務諸表の利用者が適切に財務諸表を理解するために、会計処理の背景となる、より詳細な情報……」(「監基報701」A37項)とありますが、具体的には何を指していますか。(財務諸表利用者)
A
 例えば、「会計処理の背景となる、より詳細な情報」には、会計上の見積りに使用された主要な仮定の内容や経営者の判断に関する情報が考えられる。ただし、日本の会計基準においては検討段階であることを踏まえ、「会計処理の背景」との記載にとどめたものとなっている。
 また、有価証券報告書の記述情報(財務情報以外の開示情報)の充実の一環として、「会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識」の記載を求める開示府令の改正が行われているが(2020年3月期の有価証券報告書から適用、2019年3月期の有価証券報告書から早期適用可)、これらの情報が「その他の記載内容」として開示された場合、監査人はKAMの記述にあたり、当該情報を参考とすることができることになる。

守秘義務解除の正当な理由、特定の場合のみにあらず
Q
 KAMの記載において、監査人の守秘義務が解除される正当な理由の具体的な例示があれば教えてください。(監査役等)
A
 ある特定の場合のみKAMの記載が守秘義務解除の正当な理由に該当するというわけではなく、監査人が監査の基準に従って正当な注意を払っている限り、会社の未公表情報をKAMに含めることは、監査人の守秘義務が解除される正当な理由に該当することになる(倫理規則6条8項3号ニ)。
 一方、開示制度の目的から、KAMの記述内容が監査基準に準拠する上で必要な範囲には入らない例としては、被監査会社の取引先などの第三者の権利を不当に侵害する内容等が一般的には考えられ、KAMの記述の仕方に配慮が必要と考えられる。

不利益が公共の利益を上回るケースは限定的
Q
 不利益よりも公共の利益が上回ることを理由としてKAMを記載する場合、企業と利害関係者との間で係争リスクが生じる可能性があると考えられませんか。(財務諸表作成者)
A
 不利益が公共の利益を上回ることは極めて限定的であり、ほとんどの場合はKAMを記載しないという決定には至らず、KAMの記述の仕方を工夫することで対応可能と考えられるとしている。例えば、係争上の不利益が予想される場合、係争内容の詳細な説明は避けるなどの配慮が必要になる。
 なお、企業にもたらされる不利益は、企業情報の開示制度の目的に照らして判断する必要があり、企業の株価への影響や借入又は資金調達上への影響は含まれないと考えられる。

KAMがないケースはレア
Q
 上場会社の監査でKAMが1つもない状況というのはあるのでしょうか。(財務諸表作成者)
A
 上場会社が通常のビジネスを行っている限りは、KAMとして選定する項目はあるものと考えられる。また、KAMは1つ記載すればよいということではなく、KAMの数は個々の会社の監査の状況により異なる。なお、上場会社の監査でKAMがない状況としては、休眠会社のケースが考えられる。

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