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解説記事2019年04月15日 【未公開裁決事例紹介】 再生計画による弁済期間、最終弁済日まで(2019年4月15日号・№783)

未公開裁決事例紹介
再生計画による弁済期間、最終弁済日まで
再生計画認可の決定時には確定している必要あり

○欠損金の繰越控除の適用をめぐり「再生計画で定められた弁済期間が満了した」(法令112条14項2号ハ)との事由が生じたか否かが争われた事案。国税不服審判所は、「再生計画で定められた弁済期間」とは、再生計画認可決定の確定時において、再生計画上確定している最終弁済日までの期間をいうものと解するのが相当であると指摘。金銭債権に係る最終弁済日は本件事業年度末までに到来しているため、「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じており、本件特例の適用は認められないとの判断を示した(平成30年6月11日、棄却)。

基礎事実等
(1)事案の概要
 再生手続開始の決定を受けた審査請求人(以下「請求人」という。)は、当該再生手続に係る再生計画認可及び当該再生手続終結の決定を受けた後の事業年度である平成27年4月1日から平成28年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)において、法人税法第57条《青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し》第1項本文(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下、同項本文について同じ。)所定の欠損金額に相当する金額について、本件事業年度が、当該再生計画認可の決定の日以後7年を経過する日までの期間内の日の属する事業年度であり、当該欠損金額の損金算入限度額(原則として、当該欠損金額の控除前の所得金額に相当する金額の100分の65)を当該欠損金額の控除前の所得金額に相当する金額まで増加させる特例が適用されるとして、当該欠損金額の控除前の所得金額に相当する金額を損金に算入して法人税及び地方法人税の確定申告をした。これに対し、原処分庁は、上記再生計画で定められた弁済期間が、本件事業年度の末日までに既に満了していることから、上記特例が適用されず、当該欠損金額について、当該欠損金額の控除前の所得金額の100分の65に相当する金額までしか損金に算入することができないとして、法人税及び地方法人税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
 本件は、請求人が、上記再生計画には、当該再生計画認可の決定の確定時に債権額が確定していない再生債権についての弁済期間が定められているところ、当該弁済期間は本件事業年度においていまだ満了していないことから、上記特例が適用され、上記欠損金額に相当する金額について、当該欠損金額の控除前の所得金額に相当する金額まで損金に算入することができるとして、原処分の全部の取消しを求めるほか、本件事業年度の法人税の確定申告書に記載された翌期へ繰り越す欠損金額の増額を求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実
 イ 当事者
 請求人は、土木建築総合工事請負等の事業を営む同族会社である。
 ロ 請求人の民事再生手続  請求人は、××××××××、××××××に対して再生手続開始の申立てを行い、同裁判所は、××××、同手続開始の決定をした(以下、請求人に係る再生手続を「本件再生手続」という。)。
 その後、請求人は、××××××に対し、本件再生手続に係る再生計画(以下「本件再生計画」という。)を提出し、同裁判所は、××××××××、再生計画認可の決定(以下「本件再生計画認可決定」という。)をし、同決定は、××××××に確定した。
 ハ 本件再生計画  本件再生計画の内容は、要旨以下のとおりである。
(イ)一般条項
 A 金銭債権
(A)権利の変更(第1章第2の1の(1))
 元本及び開始決定日の前日までに発生した利息・遅延損害金のうち、金50万円以下の部分については免除を受けず、金50万円を超える部分については再生計画認可決定確定日に78%に相当する金額の免除を受ける。また、開始決定日以降に発生した利息・遅延損害金については、再生計画認可決定確定日に全額の免除を受ける。
(B)弁済の方法(第1章第2の1の(2))
 再生計画認可決定確定日から6か月を経過した日の属する月の末日を第1回弁済日とし、第2回以降の弁済日を第1回弁済日の属する年の翌年以降毎年6月末日限りとして、以下のとおり分割して支払う。
  a 免除後の弁済金額が2,000万円以下の債権については、1回当たり400万円を上限とした最大5回の分割弁済(残債権額が400万円未満となるまでは毎回400万円)
  b 免除後の弁済金額が2,000万円を超える債権については、5回の定額均等分割弁済
 B 非金銭債権(第1章第2の2)
  非金銭債権を有する再生債権者は、再生計画認可決定確定日から1か月以内に以下の(A)又は(B)の方法を選択して届出をし、再生債務者は、その選択に従って履行を行う。上記再生債権者が上記期間内に選択を行わなかった場合には、同(A)を選択したものとみなす。
 (A)再生債務者は、各工事請負契約によって定められた定期点検を実施し、再生債権者は、再生債務者に対し、定期点検終了時に定期点検に要した費用のうち78%相当額を支払う。
 (B)再生債務者は、各工事請負契約によって定められた定期点検の実施に代わり、再生債務者の見積りに基づく今後発生する定期点検費用のうち22%相当額を、上記Aの(B)の区分に従って支払う。
(ロ)個別条項
 A 金銭債権(第1章第3の1)
  本件再生計画に添付された金銭債権の弁済計画を記載した表(当該表には、金銭債権を有する各債権者の氏名又は名称、確定債権額、再生債権免除額、弁済金額の総額及び弁済方法ら(1回当たりの弁済金額及び弁済期)が記載されている。このうち弁済期については、各金銭債権の弁済金額に対応した上記(イ)のAの(B)の内容が記載されている。)に記載された各金銭債権のうち、開始決定日以降に発生した利息・遅延損害金については、再生計画認可決定確定日に全額の免除を受け、元本及び開始決定日の前日までに発生した利息・遅延損害金については、再生計画認可決定確定日に、上記表に記載されたとおり免除を受ける。再生債務者は、上記免除後の各金銭債権について、上記表に記載された方法により支払う。
 B 非金銭債権(第1章第3の2)
  本件再生計画に添付された非金銭債権の弁済計画を記載した表(当該表には、非金銭債権を有する各債権者の氏名又は名称が記載されるとともに、各債権者の「再生債権額」欄に「非金銭債権」と記載され、権利の変更及び弁済の方法として、上記(イ)のBの内容が記載されている。)に記載された非金銭債権を有する各債権者は、上記(イ)のBに従って弁済を受ける。
(ハ)再生計画の認可決定時に債権額が確定していない再生債権(以下「未確定再生債権」という。)に関する措置
 A 未確定再生債権の内容(第2章第2)
  未確定再生債権、すなわち、①再生債務者が債権を否認し、これに対して再生債権者が争っているために債権の存否又は債権額が確定していない再生債権及び②具体的な損害が未発生又は未確定のために債権額が確定していない再生債権(将来の瑕疵修補請求権又はそれに代わる損害賠償請求権。以下「将来瑕疵修補関連再生債権」という。)の内容は、本件再生計画に添付された未確定再生債権を一覧化した表(当該表には、未確定再生債権を有する各債権者の氏名又は名称が記載されているが、その大部分の「再生債権額」欄及び「届出再生債権額」欄並びにその全ての「債務免除額」欄及び「弁済額」欄に「額未定」と記載されている。また、上記表には、将来瑕疵修補関連再生債権の弁済方法として、下記Bの内容が記載されている。)のとおりである。
 B 将来瑕疵修補関連再生債権が確定したときの措置(第2章第3の3)
  上記Aの表に記載された将来瑕疵修補関連再生債権(以下「本件将来瑕疵修補関連再生債権」という。)の債権額が確定した場合には、当該確定した債権は、その確定した債権額の78%に相当する金額の免除を受ける。再生債務者は、上記免除後の本件将来瑕疵修補関連再生債権について、上記(イ)のAの(B)の区分に従って弁済する。なお、本件将来瑕疵修補関連再生債権が確定した日において、既に到来した弁済日が存在する場合には、当該弁済日に支払われるべき弁済額を、当該確定した日から2か月を経過した日の属する月の末日を弁済日として弁済する。
 ニ 本件再生手続の終結等  請求人は、××××××、本件再生計画の変更を申し立て、××××、再生計画変更の決定を受けた。なお、本件再生計画のうち上記ハに記載された部分については、上記再生計画変更の決定により変更されていない。
 その後、請求人は、××××××××で、××××××に対し、××××に上記変更後の本件再生計画に定める全ての弁済を遂行したとして、本件再生手続の終結の申立てを行い、同裁判所は、××××、再生手続終結の決定をした。
(4)審査請求に至る経緯 イ 請求人は、本件事業年度の法人税について、本件特例の適用を受けるとして、繰越欠損金額のうち、繰越欠損金額控除前所得金額に相当する金額を損金の額に算入し、青色の確定申告書に別表(略)の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
  また、請求人は、本件事業年度を課税事業年度とする地方法人税について、別表(略)の「確定申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告した。
ロ 原処分庁は、本件再生計画で定められた弁済期間が平成26年6月30日に満了し、本件事業年度の末日までに、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じたことから、本件特例が適用されず、本件事業年度における繰越欠損金の損金算入限度額は繰越欠損金額控除前所得金額の100分の65に相当する金額であるなどとして、別表(略)の各「更正処分等」欄のとおり、本件事業年度の法人税の更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに本件事業年度を課税事業年度とする地方法人税の更正処分(以下「本件地方法人税更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、法人税に係る過少申告加算税の賦課決定処分と併せて「本件各賦課決定処分」という。)をした。
ハ 請求人は、原処分を不服として、平成29年7月31日、別表(略)の「審査請求」欄記載のとおり審査請求をした。

争点および主張  本件事業年度の末日までに、請求人に、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じたか。
 当事者の主張はのとおり。

【表】当事者の主張
原処分庁 請 求 人
 以下のとおり、本件再生計画で定められた弁済期間は、本件事業年度の末日以前の平成26年6月30日をもって満了しているから、本件事業年度の末日までに、請求人に「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じたものである。
 「再生計画で定められた弁済期間」とは、以下の理由から、確定再生債権の弁済期間をいうものと解すべきである。
イ 民事再生法第157条第1項は、再生計画に変更されるべき権利を明示して変更後の権利の内容を定めなければならない旨規定しているところ、未確定再生債権については、変更後の権利内容を具体的に記載することができないから、同項の例外として、再生計画に「適確な措置」を定めなければならないとされている(同法第159条)。
  したがって、再生計画に変更後の権利の内容を定めなければならないのは、確定再生債権のみであるから、再生計画によって債務の期限が猶予される際に定められた債務の期限は、確定再生債権の債務の期限をいい、「再生計画で定められた弁済期間」というのは、確定再生債権の弁済期間をいうものと解される。
  これに対し、未確定再生債権についての「適確な措置」の定めは、当該債権が確定した場合に行使できる権利内容等の定めであって、特定の弁済期限を定めるものではないから、「再生計画で定められた弁済期間」ではない。
ロ 請求人の主張に対して
  民事再生法第181条第2項は、「再生債務者に知れたる債権で、再生債務者が自認しなかった再生債権」は、「再生計画で定められた弁済期間が満了した」後などに弁済を受けることができる旨規定しているところ、「再生計画で定められた弁済期間」についての請求人の主張によれば、同条第1項第3号に規定する再生債権を有する債権者は、未確定再生債権の確定事由が発生しない限り、いつまでも権利行使できないことになる。
  よって、請求人の主張(1)は、民事再生法第181条第2項の趣旨に反するものである。
 以下のとおり、本件再生計画で定められた弁済期間は、本件事業年度の末日までにいまだ満了していないから、本件事業年度の末日までに、請求人に「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じていない。
 「再生計画で定められた弁済期間」とは、以下の理由から、未確定再生債権がある場合には、当該未確定再生債権についての「適確な措置」として定められた弁済期間も含まれると解すべきである。
イ 民事再生法第154条第1項第1号は、再生計画で定められるべき事項として、「全部又は一部の再生債権者の権利の変更」を掲げているところ、ここでいう「再生債権」には、未確定再生債権も含まれる。その上で、同法第159条は、未確定再生債権がある場合には、再生計画に「適確な措置」を定めなければならないとする。
  以上のとおり、民事再生法第154条及び第159条は、未確定再生債権がある場合に、再生計画において未確定再生債権に関する「適確な措置」を定めることを要請している。
ロ 法人税法施行令第112条第14項第2号ハは、法人税法第57条第11項第2号の「内国法人の事業の再生が図られたと認められる事由」の一つとして「再生計画で定められた弁済期間が満了したこと」と定めているところ、未確定再生債権が存在する場合には、当該債権について「適確な措置」として定められた弁済期間が満了しない限り、事業の再生が図られたと認定することができない。
ハ 法人税法第57条第11項第2号ロの、再生手続開始の決定があった法人についての本件特例の趣旨は、当該法人の再建を税制面で支援するとともに、債権者への弁済能力を担保することにある。
  このことからすると、原処分庁の主張に従って確定再生債権の弁済中にのみ上記特例が適用されるとすると、未確定再生債権の確定時期いかんによっては、当該未確定再生債権の弁済期間において上記特例が適用されず、その債権者への弁済能力に影響を与え得る。このような事態は、再生債務者間の公平を害するものである。

審判所の判断
(1)法令解釈
 再生手続開始の決定を受けた内国法人は、原則として、当該再生手続開始の決定の日の属する事業年度以後の所定の事業年度について、繰越欠損金額の損金算入限度額を増加させる本件特例の適用を受けるのであるが(法人税法第57条第11項第2号ロ)、「(当該)再生計画で定められた弁済期間が満了した」(法人税法施行令第112条第14項第2号ハ)場合、当該満了の日以後に終了する事業年度については、本件特例の適用を受ける事業年度から除かれる(法人税法第57条第11項第2号ロ、法人税法施行令第112条第14項第2号ハ)。
 そこで、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」の意義について検討するに、民事再生法上、再生計画認可の決定があったときは、一定の債権について、「再生計画で定められた弁済期間」が満了する時までの間は、時効が進行しないとされ(同法第39条第4項)、また、弁済をしたり受けたりすることが禁止される(同法第181条第2項)。そのため、これらの条項が適用される債権の債権者は、「再生計画で定められた弁済期間」の満了する時が確定しておらず、それが未確定の状態では、当該債権について、消滅時効の起算日あるいは請求が可能な時期を把握することができず、当該債権の管理・保全に支障を来たすこととなる。したがって、民事再生法第39条第4項及び同法第181条第2項に規定する「再生計画で定められた弁済期間」は、再生計画認可の決定の確定時には確定している必要があるというべきであり、再生計画認可の決定の確定時において、再生計画上確定している最終弁済日までの期間をいうものと解される。
 そして、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」の意義について、法人税法施行令上、これを定める規定はなく、民事再生法第39条第4項及び同法第181条第2項に規定する同一の語句の解釈と別の解釈をすべき理由は見当たらないから、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」とは、再生計画認可の決定の確定時において、再生計画上確定している最終弁済日までの期間をいうものと解するのが相当である。
(2)検討  本件再生計画は、金銭債権の弁済の方法に関し、一般条項として、弁済金額が2,000万円を超える債権について、再生計画認可決定確定日から6か月を経過した日の属する月の末日を第1回弁済日とし、第2回以降の弁済日を第1回弁済日の属する年の翌年以降毎年6月末日限り全5回の定額均等分割弁済を行う旨定め、弁済金額が2,000万円以下の債権についても、同様の期日に最大5回の分割弁済を行う旨定め、また、個別条項として、個々の金銭債権の弁済日について、その弁済金額に対応した上記一般条項の内容を定めている。そして、本件再生計画の認可決定が確定したのは、××××××××であるから(同ロ)、金銭債権については、本件再生計画認可決定の確定時において、本件再生計画の一般条項及び個別条項上、平成26年6月30日が最終弁済日となる。
 他方で、本件再生計画は、非金銭債権、別除権付再生債権及び未確定債権の弁済の方法についても定めているが、非金銭債権については、一般条項及び個別条項において、債権者が本件再生計画の認可決定の確定日から1か月以内に選択した方法により弁済・履行をするなどと定められていることなどから(同ハの(イ)のB、ハの(ロ)のB)、本件再生計画認可決定の確定時において、本件再生計画の一般条項及び個別条項上、弁済の方法自体明らかではなく、最終弁済日も確定していない。また、未確定債権及び別除権付債権については、本件再生計画において、債権額が確定したときに既に到来した弁済日が存在する場合には、当該弁済日に支払われるべき弁済額を、当該確定の日から2か月を経過した日の属する月の末日を弁済日として弁済するなどと定められており、債権額が確定しない限り、最終弁済日が明らかにならないから、本件再生計画の認可の決定の確定時において、本件再生計画上、最終弁済日が確定していない。
 そうすると、本件再生計画認可決定の確定時において、本件再生計画上確定している最終弁済日は、金銭債権の最終弁済日である平成26年6月30日であると認められるから、本件再生計画で定められた弁済期間は、同日までとなり、本件事業年度の末日(平成28年3月31日)までに満了していることとなる。
 したがって、本件事業年度の末日までに、請求人に、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間が満了した」との事由が生じたものと認められる。
(3)請求人の主張について イ 請求人は、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」とは、未確定再生債権がある場合には、当該未確定再生債権についての「適確な措置」として定められた弁済期間も含まれると解すべきである旨主張し、その理由として、①民事再生法第154条及び第159条が、未確定再生債権がある場合に、再生計画において未確定再生債権に関する「適確な措置」を定めることを要請していること、②「再生計画で定められた弁済期間」は、「内国法人の事業の再生が図られたと認められる事由」(法人税法第57条第11項第2号)の一つとして定められているところ、未確定再生債権が存在する場合には、当該債権について「適確な措置」として定められた弁済期間が満了しない限り、事業の再生が図られたと認定することができないこと、③確定再生債権の弁済中にのみ法人税法第57条第11項第2号ロに規定する特例が適用されるとすると、未確定再生債権の確定時期によっては、当該債権の弁済期間において、上記特例が適用されず、再生債務者間の公平を害することを指摘する。
ロ しかしながら、上記(1)のとおり、民事再生法第39条第4項及び同法第181条第2項に規定する「再生計画で定められた弁済期間」については、再生計画認可の決定の確定時には確定している必要があり、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」についても同様に解すべきであるところ、請求人の主張する解釈を採用すると、再生計画認可の決定の確定時に、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」が確定しないこととなる。
  したがって、請求人の主張する法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」の解釈は、採用することができない。
  なお、請求人は、要するに、未確定再生債権と民事再生法第181条第1項第3号に規定する再生債権とは法的性格を異にするものであるから、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」の解釈において、民事再生法第181条第1項第3号に規定する債権についての規定である同条第2項に言及するのは失当である旨主張する。しかし、上記(1)の解釈は、法人税法施行令第112条第14項第2号ハにおいて用いられる「再生計画で定められた弁済期間」という文言が、民事再生法第181条第2項においても使用されていることに着目したものであり、未確定再生債権とは異なる民事再生法第181条第1項第3号に規定する再生債権の法的性格に着目して行われたものではないから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
ハ また、上記イの①の指摘をみるに、民事再生法第159条は、「異議等のある再生債権」、すなわち、再生債権の調査において、再生債権の内容について再生債務者等が認めず、又は届出再生債権者が異議を述べた場合における当該債権に係る規定であり(同法第105条《再生債権の査定の裁判》第1項)、未確定再生債権、すなわち、再生計画認可の決定の確定時に債権額が確定していない再生債権の全てに係る規定ではない。
  したがって、民事再生法第159条が、再生計画において、未確定再生債権についての「適確な措置」を定めることを要請しているという上記イの①の指摘は誤りである。
ニ さらに、上記イの②の指摘をみるに、未確定再生債権といっても、債権額が確定する可能性などの点において様々な債権が含まれるものであるから、再生計画において未確定債権の弁済期間が定められた場合に、当該弁済期間が満了していないことのみをもって、直ちに事業の再生が図られたと認められないものではないというべきである。このことに加えて、上記(1)で説示したところを考慮すると、上記イの②の指摘をもって、法人税法施行令第112条第14項第2号ハに規定する「再生計画で定められた弁済期間」についての請求人の主張する解釈を採用すべきとはいえない。
ホ 加えて、上記イの③の指摘をみるに、民事再生法第155条第1項本文は、再生計画による権利の変更の内容についての再生債権者間の平等・公平を規定するものにすぎず、繰越欠損金額の損金算入限度額に係る法人税法及び法人税法施行令の解釈・適用において、再生債権者間の平等・公平が要請されているものとは解されない。したがって、後者の意味での再生債権者間の平等・公平を前提とする上記イの③の指摘は、採用することができない。

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