解説記事2019年04月15日 【SCOPE】 土地の固定資産税評価をめぐる最近の裁判事例(2019年4月15日号・№783)
税額に影響を与える「地目」の認定が問題に
土地の固定資産税評価をめぐる最近の裁判事例
土地の評価(時価)をめぐっては、相続税評価額が問題となるケースが目立つが地方税である固定資産税の評価額が問題となるケースも少なくない。スコープでは、土地の固定資産税評価額をめぐり、税額に影響を与える土地の「地目」の認定が問題となった最近の裁判事例を2つ紹介する。最初に紹介する事例は、商業施設を開発するための条件として洪水対策などのために設けられた同施設隣接の調整池が「宅地」に該当するか否かが問題となったもの。そしてもう1つの事例は、テニスコートとして使用されている土地の地目が「宅地」と「雑種地(宅地の80%相当で評価)」のいずれかであるかが問題となったものである。
商業施設に隣接する調整池の地目は「宅地」か否か
最初に紹介する税務訴訟で問題となったのは、納税者が商業施設に貸与していた本件各土地(本件土地1及び本件土地2)の固定資産税評価額(固定資産課税台帳の登録価格)である。具体的には、その地目が「宅地」に該当するか否かが問題となっていた。本件各土地は、商業施設を開発するための条件として洪水対策のために設けられた調整池(大雨の際における洪水を防ぐための受け皿)である(商業施設の東側に所在)。本件土地1は、その面積の80%以上に水が溜まっていた。また、本件土地2は、面積の大半は調整池としての機能を持つ平地であり、平時は商業施設の従業員の駐車場として利用されていた。本件各土地に対し志摩市は、商業施設敷地の一画の調整池としての役割を有する土地であり、商業施設の開発に必要不可欠なものとして設置されていることなどを踏まえたうえで、宅地である商業施設の維持効用を果たすものであることから、商業施設の敷地と一体として地目を宅地と評価していた。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、現況及び利用目的に照らせば本件各土地の地目は商業施設とは別に池沼と認定されるべきであると指摘したうえで、本件各土地を商業施設と一体として宅地とすることは違法であると主張した。
原審の名古屋高裁は、商業施設に係る開発行為に調整池の設置等が義務付けられ、本件各土地が調整池の用に供されることになっていることなどから、本件各土地は商業施設が適法に開発許可を受け、同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものであると指摘。本件各土地は宅地である商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められることから、本件各土地の地目をいずれも宅地と認定したうえで決定された登録価格は評価基準によって決定された価格を上回るものではなく適法であると判断していた。これを不服とした納税者は、上告及び上告受理申立てを提起していた。
宅地と判断した原審判決を破棄・差戻し 最高裁は、宅地とは建物の敷地のほか、これを維持し、又はその効用を果たすために必要な土地をも含むものと解されるとしたうえで、開発許可の条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに本件各土地が商業施設の敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないと指摘。商業施設に係る開発行為に伴い本件各土地が調整池の用に供され、その調整機能を保持することが開発行為の許可条件になっていることを理由に、本件各土地の現況等(本件土地1の面積の80%以上に常時水が溜まっていることなど)について十分に考慮することなく、その地目を宅地と認定するなどして算出された本件各土地の登録価格を適法とした原審の判断に違法があると判断したうえで、審理を原審に差し戻した(最高裁第三小法廷平成31年4月9日判決)。
テニスコートとして利用されていた土地の地目は「宅地」か「雑種地」か
次に紹介する税務訴訟で問題となったのは、テニスコートとして使用されている本件土地の固定資産税評価額である。具体的には、その地目が「宅地」と「雑種地(宅地の80%相当で評価)」のいずれかであるかが問題となった。本件土地は、南側及び西側は道路と接し、北側の住宅との間には塀が建てられていた。また、東側の土地は、不動産登記上の地目は雑種地とされており、納税者が運営するテニスカレッジのクラブハウスの敷地及び駐車場として利用されていた。本件土地に対して都税事務所は、その地目を宅地として評価していた。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、不動産登記準則によるとテニスコートは宅地に接続するものは宅地とされ、その他は雑種地と定められている点を指摘。本件土地はテニスの練習のために存在するものであり、その現況は建物の維持又は効用を果たすことを目的とした土地でもないから、宅地に接続しないテニスコート(雑種地)として評価すべきであると主張した。
隣接土地の状況等を踏まえ宅地と判断 東京地裁は、固定資産税評価でテニスコートの地目を認定するに当たっては、その土地の現況や利用目的に重点を置いて土地全体としての状況を観察して、宅地(建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地)と接続するといえるかを検討すべきとした。そして本件については、本件土地の東側に隣接する土地がテニスカレッジのクラブハウス(建物)の敷地及び駐車場として一体的に利用されていることから、登記上の地目は雑種地であっても、固定資産税評価上の地目は宅地と認められるとした。
また、本件土地は納税者が運用するテニスカレッジが使用しており、クラブハウス(建物)を納税者の関連会社が所有している点などを指摘。これらの事情を踏まえ東京地裁は、本件土地は東側に隣接する土地(宅地)に接続してテニスカレッジのクラブハウス建物が存在する宅地と一体としてテニスカレッジ事業に利用されている土地であるから宅地の一部として評価すべきであると判断したうえで、雑種地として評価すべきとした納税者の主張を斥けた(東京地裁平成30年12月20日判決)。
土地の固定資産税評価をめぐる最近の裁判事例
土地の評価(時価)をめぐっては、相続税評価額が問題となるケースが目立つが地方税である固定資産税の評価額が問題となるケースも少なくない。スコープでは、土地の固定資産税評価額をめぐり、税額に影響を与える土地の「地目」の認定が問題となった最近の裁判事例を2つ紹介する。最初に紹介する事例は、商業施設を開発するための条件として洪水対策などのために設けられた同施設隣接の調整池が「宅地」に該当するか否かが問題となったもの。そしてもう1つの事例は、テニスコートとして使用されている土地の地目が「宅地」と「雑種地(宅地の80%相当で評価)」のいずれかであるかが問題となったものである。
商業施設に隣接する調整池の地目は「宅地」か否か
最初に紹介する税務訴訟で問題となったのは、納税者が商業施設に貸与していた本件各土地(本件土地1及び本件土地2)の固定資産税評価額(固定資産課税台帳の登録価格)である。具体的には、その地目が「宅地」に該当するか否かが問題となっていた。本件各土地は、商業施設を開発するための条件として洪水対策のために設けられた調整池(大雨の際における洪水を防ぐための受け皿)である(商業施設の東側に所在)。本件土地1は、その面積の80%以上に水が溜まっていた。また、本件土地2は、面積の大半は調整池としての機能を持つ平地であり、平時は商業施設の従業員の駐車場として利用されていた。本件各土地に対し志摩市は、商業施設敷地の一画の調整池としての役割を有する土地であり、商業施設の開発に必要不可欠なものとして設置されていることなどを踏まえたうえで、宅地である商業施設の維持効用を果たすものであることから、商業施設の敷地と一体として地目を宅地と評価していた。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、現況及び利用目的に照らせば本件各土地の地目は商業施設とは別に池沼と認定されるべきであると指摘したうえで、本件各土地を商業施設と一体として宅地とすることは違法であると主張した。
原審の名古屋高裁は、商業施設に係る開発行為に調整池の設置等が義務付けられ、本件各土地が調整池の用に供されることになっていることなどから、本件各土地は商業施設が適法に開発許可を受け、同施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものであると指摘。本件各土地は宅地である商業施設の敷地を維持するために必要な土地と認められることから、本件各土地の地目をいずれも宅地と認定したうえで決定された登録価格は評価基準によって決定された価格を上回るものではなく適法であると判断していた。これを不服とした納税者は、上告及び上告受理申立てを提起していた。
宅地と判断した原審判決を破棄・差戻し 最高裁は、宅地とは建物の敷地のほか、これを維持し、又はその効用を果たすために必要な土地をも含むものと解されるとしたうえで、開発許可の条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに本件各土地が商業施設の敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないと指摘。商業施設に係る開発行為に伴い本件各土地が調整池の用に供され、その調整機能を保持することが開発行為の許可条件になっていることを理由に、本件各土地の現況等(本件土地1の面積の80%以上に常時水が溜まっていることなど)について十分に考慮することなく、その地目を宅地と認定するなどして算出された本件各土地の登録価格を適法とした原審の判断に違法があると判断したうえで、審理を原審に差し戻した(最高裁第三小法廷平成31年4月9日判決)。
テニスコートとして利用されていた土地の地目は「宅地」か「雑種地」か
次に紹介する税務訴訟で問題となったのは、テニスコートとして使用されている本件土地の固定資産税評価額である。具体的には、その地目が「宅地」と「雑種地(宅地の80%相当で評価)」のいずれかであるかが問題となった。本件土地は、南側及び西側は道路と接し、北側の住宅との間には塀が建てられていた。また、東側の土地は、不動産登記上の地目は雑種地とされており、納税者が運営するテニスカレッジのクラブハウスの敷地及び駐車場として利用されていた。本件土地に対して都税事務所は、その地目を宅地として評価していた。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、不動産登記準則によるとテニスコートは宅地に接続するものは宅地とされ、その他は雑種地と定められている点を指摘。本件土地はテニスの練習のために存在するものであり、その現況は建物の維持又は効用を果たすことを目的とした土地でもないから、宅地に接続しないテニスコート(雑種地)として評価すべきであると主張した。
隣接土地の状況等を踏まえ宅地と判断 東京地裁は、固定資産税評価でテニスコートの地目を認定するに当たっては、その土地の現況や利用目的に重点を置いて土地全体としての状況を観察して、宅地(建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地)と接続するといえるかを検討すべきとした。そして本件については、本件土地の東側に隣接する土地がテニスカレッジのクラブハウス(建物)の敷地及び駐車場として一体的に利用されていることから、登記上の地目は雑種地であっても、固定資産税評価上の地目は宅地と認められるとした。
また、本件土地は納税者が運用するテニスカレッジが使用しており、クラブハウス(建物)を納税者の関連会社が所有している点などを指摘。これらの事情を踏まえ東京地裁は、本件土地は東側に隣接する土地(宅地)に接続してテニスカレッジのクラブハウス建物が存在する宅地と一体としてテニスカレッジ事業に利用されている土地であるから宅地の一部として評価すべきであると判断したうえで、雑種地として評価すべきとした納税者の主張を斥けた(東京地裁平成30年12月20日判決)。
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