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解説記事2019年05月13日 【レポート】 償却資産における申告制度の見直しの行方(2019年5月13日号・№786)

レポート
償却資産における申告制度の見直しの行方
「新方式」導入は電子申告態勢が整備された後

 平成30年度税制改正の際に検討項目に挙がった償却資産の申告制度の見直しだが、実現までにはまだ時間がかかりそうだ。償却資産に係る固定資産税の賦課期日をそのままに申告期限を法人の決算日から2か月以内にするというものだが、実際に課税事務を行う市町村からは、課税事務量の増加・煩雑化、基幹システムの改修・コストなどに対する懸念が寄せられている。このため、地方税共通納税システムの導入など、まずは申告制度の簡素化・効率化に向けた取組みが必要とされている。

中小企業は年2回の事務負担が  償却資産(固定資産税)の申告制度については、法人税申告のために決算後2か月以内に固定資産台帳の整備を行うとともに、償却資産の申告を行うため、毎年1月1日現在の固定資産台帳を1月末までに整備しているのが実情だ。多くの事業者は固定資産台帳の整備を年に2回行わなければならず、過度な事務負担が生じているとの指摘が日本税理士会連合会や中小企業等から寄せられている。
 平成30年度税制改正では、この償却資産の申告制度の見直しが検討項目の1つとして挙げられ、実現に向けた検討が行われたものの、最終的にはシステムなどの問題から平成30年度税制改正で実現することは難しいとの判断が行われ、見送りとなった経緯がある。

新方式は現行方式との選択制  償却資産の申告制度の見直しについては、これまで総務省の外郭団体である(一財)資産評価システム研究センターの「償却資産に関する調査研究委員会」(委員長:佐藤英明慶應義塾大学大学院法務研究科教授)において、経済界や日本税理士会連合会、市町村職員、地方電子化協議会等を委員とし、申告事務の簡素化に向けた議論を行ってきており、これを取りまとめた報告書(「償却資産課税のあり方に関する調査研究」)がこのほど明らかにされている。
 報告書で示された見直し案は、事業者が「現行方式」又は申告期限を法人税の申告期限と一致させる「新方式」から選択できるというものだ(図表1参照)。中小企業は申告時期を決算期と一致させてほしいとの強い要望があるが、資産状況を毎月把握している大企業にとっては「現行方式」で特に実務上のデメリットはない。このため、従来の「現行方式」が継続する選択制は大企業にとっても望むものといえよう。

 賦課期日は「現行方式」と「新方式」のいずれも1月1日と現在の制度からの変更はない。申告期限については、「新方式」は賦課期日直後に到来する決算日から2か月以内(11・12月決算法人の場合は2月末)とされ、電子申告に限り申告を受け付けるとしている。また、「新方式」の申告内容は決算日時点の資産状況(除却資産及びその除却時期を付記。ただし、11・12月決算法人は決算日から賦課期日までの取得資産及び取得時期も併せて付記)を記載する。
 納期については、「現行方式」の場合は4月、7月、12月及び2月中の年4回となるが、「新方式」を選択した法人は、決算期により納期数が1回~4回と変動する(図表2参照)。なお、仮徴収制度は導入しないとしている。


課税事務を行う市町村から新方式に懸念  「新方式」によれば、中小企業にとっては、償却資産の申告と法人税等の申告が同じ時期となり、固定資産台帳の整備を年1回行えばよく、実務上メリットが生じることになる。
 「新方式」のベースがまとまったことで、申告制度の見直しに一歩前進したといえそうだが、実現までにはまだ時間がかかりそうだ。実際に課税事務を行う市町村(課税庁)にとってはメリットが生じるとは限らないからだ。市町村からは、①課税事務量の増加・煩雑化、②基幹システムの改修・コスト、③新方式を希望する法人数とシステム改修費用の費用対効果などに対する懸念か寄せられており、報告書では、現実的には市町村の懸念を払拭しないことには「新方式」の導入は難しいと結論付けている。
 このため、一括電子申告システムや地方税共通納税システムの導入(下記参照)、eLTAXの使い勝手の向上等、課税庁・納税義務者双方の事務の簡素化・効率化の検討や実際のシステム改修を行い、電子申告のメリットが十分活用できるよう課税庁の受入態勢が整った後に改めて検討に着手するなど、段階を追って見直しを進めることが望ましいとされており、一気にトーンダウンした格好となっている。

【図表3】申告制度の簡素化・効率化に向けた取組み
一括電子申告システムの導入  事業者が複数の地方団体にわたる全償却資産のリストを一度の処理で申告できるシステムを構築することができれば、行政手続コストの大幅な削減が図れる。現在でも、CSVファイルを作成し、PCdesk(地方税電子化協議会が作成するeLTAXへ申告するためのソフトウェア)に取り込みを行えば、一括電子申告は可能であるが、PCdeskの画面上から直接手入力する場合については、複数地方団体への一括入力を行えない仕様(市町村ごとに入力する必要あり)になっていることから、今後、納税義務者等のニーズを踏まえ、誰でも一括電子申告が可能なシステムへの改修の検討を行うことが適当である。

地方税共通納税システムの導入  平成30年度税制改正大綱において、共通電子納税システムの導入が明記され、平成31年10月から主に地方法人二税が対象税目として稼働するが、実務上対応が可能となった段階で順次、税目の拡大を措置することとされているため、固定資産税(償却資産)についても導入を可能とする条件整備について引き続き検討する必要がある。その際には、固定資産税は、地方団体ごとに納期が異なる(特別の事情があれば法定納期と異なる納期の設定が可能)ため、複数の地方団体への一括納付方法について利便性が高まるようなシステム設計とすることが期待される。

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