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解説記事2019年05月27日 【税務マエストロ】 軽減税率制度(4)(2019年5月27日号・№788)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
軽減税率制度(4)

#230 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

マエストロの解説
 いわゆる外食サービスやケータリング(出張料理)は「軽減対象課税資産の譲渡等」の定義から除外され、標準税率を適用することとしている(消法2①九の二・別表第1一・平成28年改正法附則34①一・食品表示法2①)。
 「外食」とは、レストランやフードコートでの食事の提供など、飲食設備のある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供をいう(Q&A(制度概要編)問7)。ただし、飲食料品の持ち帰り販売(テイクアウト)や出前、宅配(デリバリ)による飲食料品の提供は軽減税率が適用される(Q&A(制度概要編)問9・(個別事例編)問50・66)。今月は、標準税率が適用される「外食」の範囲について確認する。

1 外食とは?
(1)外食・飲食設備の意義(Q&A(制度概要編)問7・8)
 飲食店業等を営む者が行う食事の提供(いわゆる「外食」)とは、レストランやフードコートなどで行う食事の提供をいい、次の①と②のいずれの要件も満たすような飲食サービスをいう(改正法附則34①一イ)。
① 飲食店業等を営む者が、テーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備(飲食設備)のある場所において行うものであること
② 飲食料品を飲食させる役務の提供であること
 なお、「飲食店業等を営む者」とは、食品衛生法施行令に規定する飲食店営業、喫茶店営業その他の飲食料品をその場で飲食させる事業を営む者をいい、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供を行う全ての事業者が該当する(改正令附則3①、軽減通達7)。
 また、「飲食に用いられる設備」(飲食設備)とは、飲食に用いられるテーブル、椅子、カウンター等の設備であれば、飲食のための専用の設備である必要はなく、飲食料品の提供を行う者と設備を設置又は管理する者(設備設置者)が異なる場合であっても、飲食料品の提供を行う者と設備設置者との間の合意等に基づき、当該飲食設備を飲食料品の提供を行う者の顧客に利用させることとしているときは、「飲食設備」に該当する(軽減通達8、9)。

参考:飲食料品の提供を行う者と設備設置者が異なる場合の取扱い
 〜消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より
答(一部省略)
(屋台での飲食料品の提供)
 屋台のおでん屋やラーメン屋での飲食料品の提供は、軽減税率の適用対象となりますか。また、テーブル、椅子などを設置せずに行う縁日などにおける屋台のお好み焼きや焼きそばの販売は、軽減税率の適用対象となりますか(問44)。
 屋台のおでん屋やラーメン屋で、テーブル、椅子、カウンター等の飲食設備で飲食させている場合は、軽減税率の適用対象となりません。
 ここでいう飲食設備は、飲食のための専用の設備である必要はなく、また、飲食料品の提供を行う者と飲食設備を設置又は管理する者(以下「設備設置者」といいます。)が異なる場合であっても飲食料品の提供を行う者と設備設置者との間の合意等に基づき、当該飲食設備を飲食料品の提供を行う者の顧客に利用させることとしているときは、「飲食設備」に該当します(軽減通達9)。
そのため、屋台を営む事業者が、
① 自らテーブル、椅子、カウンター等を設置している場合
② 自ら設置はしていないが、例えば、設備設置者から使用許可等を受けている場合は、軽減税率の適用対象となりません。
一方、
③ テーブル、椅子、カウンター等がない場合
④ テーブル、椅子、カウンター等はあるが、例えば、公園などの公共のベンチ等で特段の使用許可等をとっておらず、顧客が使用することもあるがその他の者も自由に使用している場合は、軽減税率の適用対象となります。
(フードコートでの飲食)
 当社は、ショッピングセンターのフードコートにテナントとしてラーメン店を出店していますが、フードコートのテーブル、椅子等はショッピングセンターの所有で、当社の設備ではありません。このような場合であっても、当社が行うラーメン等の飲食料品の提供は、軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」となりますか(問56)。
 ご質問のショッピングセンターのフードコートが、設備設置者と飲食料品を提供している事業者との間の合意等に基づき、その設備を顧客に利用させることとされている場合には、貴社の行う飲食料品(ラーメン等)の提供は、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供に該当しますので、軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」になります。
(公園のベンチでの飲食)
 当社は、移動販売車で「食品」を販売しています。公園のベンチのそばで販売し、顧客がその公園のベンチを利用して飲食している場合、この食品の販売は、軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」となりますか(問57)。
 ご質問の公園のベンチが、こうした合意等に基づき貴社の顧客に利用させることとしているものではなく、誰でもベンチを利用できる場合には、飲食設備に該当せず、貴社の飲食料品の提供は、「食事の提供」ではなく、「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の適用対象となります。

<筆者コメント>  国税庁のQ&Aは少々回りくどい解説をしているようであるが、標準税率の適用となる「飲食設備」のポイントを箇条書で整理すると下記のようになる。
① 飲食ができるテーブル、椅子、カウンター等の設備であれば、飲食のための専用の設備である必要はない
② 飲食店と設備設置者が異なっていてもよい
③ 飲食店と設備設置者との間の合意等に基づき、顧客に利用させることとしている飲食設備であること
 また、上記国税庁Q&Aの内容を要約すると下記のようになる。

飲食設備の形態 適用税率 ポイント
屋台のおでん屋・ラーメン屋など 10% 丼や皿を置くスペース(テーブル)がある限り、たとえ立食でも標準税率が適用されることになる。
縁日などにおける屋台のお好み焼きや焼きそばの販売 8% 椅子、テーブルなどの飲食設備を設置していなければ軽減税率を適用することができる。
ショッピングセンターなどに設置してあるフードコート 10% フードコートは、ショッピングセンターの経営者が設置して契約店舗に利用させるものであるが、飲食店自らが設置した飲食設備でなくても「飲食設備」として扱われるため、結果、各店舗における飲食料品の提供には標準税率が適用されることになる。
顧客が公園のベンチを利用することを予定して移動販売車により飲食料品を販売する場合 8% 公園のベンチは、いうなれば「公共物」である、したがって、移動販売車による営業が顧客の利便性を考慮し、ベンチに移動販売車を横付けして営業していたとしても、ベンチは「飲食設備」には該当しないため、単なる飲食料品の譲渡として軽減税率を適用することができる。

(2)配膳(給仕)とセルフサービス  会社内や事業所内に設置した社員食堂における食事の提供も「外食」に該当するので、標準税率の適用となる(Q&A(個別事例編)問42)。
 また、校舎内に設置した学生食堂における食事の提供も「外食」に該当し、軽減税率を適用することはできない(Q&A(個別事例編)問70)。
 社員食堂や学生食堂では、券売機などを利用して料理を注文し、カウンターで定食などの提供を受けてから空いているテーブルで食事をし、食事が終わったら利用者自身で食器を片づけるシステム(セルフサービス)を採用しているところが多いと思われるが、たとえセルフサービスによる食事の提供であっても、テーブルや椅子などの飲食設備を利用させる限りは標準税率の適用になる(Q&A(個別事例編)問43)。

参考:〜消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より
答(一部省略)
(社員食堂での飲食料品の提供)
 社員食堂で提供する食事は、軽減税率の適用対象となりますか(問42)。
 会社内や事業所内に設けられた社員食堂で提供する食事も、その食堂において、社員や職員に、飲食料品を飲食させる役務の提供を行うものであることから、「食事の提供」に該当し、軽減税率の適用対象となりません(改正法附則34①一イ、軽減通達10)。
(セルフサービスの飲食店)
 セルフサービスの飲食店での飲食は、軽減税率の適用対象となりますか(問43)。
 セルフサービスの飲食店であっても、顧客にその店舗のテーブル、椅子、カウンター等の飲食設備を利用させて、飲食料品を飲食させていますので、軽減税率の適用対象となりません。
(学生食堂)
 当校は、学生食堂を設けています。利用は生徒の自由ですが、この学生食堂の飲食料品の提供は、学校給食法の規定に基づく「学校給食」として、軽減税率の適用対象となりますか(問70)。
 軽減税率の適用対象となる「学校給食」とは、学校給食法第3条第2項に規定する義務教育諸学校の施設において、当該施設の設置者が、その児童又は生徒の全てに対して学校給食として行う飲食料品の提供をいいますので、利用が選択制である学生食堂での飲食料品の提供はこれに該当しません(改正法附則34①一イ、改正令附則3②三)。
 また、学生食堂での飲食料品の提供は、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供に該当しますので、軽減税率の適用対象となりません。

【参考】学校給食法
第三条
 この法律で「学校給食」とは、前条各号に掲げる目標を達成するために、義務教育諸学校において、その児童又は生徒に対し実施される給食をいう。
 2 この法律で「義務教育諸学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。

<筆者コメント>  義務教育である小学校や中学校の施設において、児童や生徒に提供する「給食」には軽減税率を適用することができる。小中学校の給食は、児童や生徒が料理を選定することができないのに対し、高等学校や大学の学生食堂は、学生が自由に料理を選ぶことができるので、巷にあるレストランや食堂と実態は何ら変わらないことから標準税率の適用になるものと思われる。
 なお、軽減税率の対象となる小中学校で支給する給食のほか、学校教育法に規定する幼稚園、特別支援学校、高等学校における夜間学校給食などについても軽減税率を適用することが認められている(Q&A(個別事例編)問64)。

【表】学校給食の取扱い 
内  容 適用税率
小中学校で支給する給食
8%
高等学校や大学の学生食堂で提供する定食
10%
学校教育法に規定する幼稚園、特別支援学校、高等学校における夜間学校給食など 8%

 ただし、小中学校との給食調理委託契約に基づき、学校の施設内にある給食センターで調理した給食を児童(生徒)に提供する場合には、その受託者が行う給食の提供は児童(生徒)に対するものではなく、委託者である小中学校に対するものである。


 したがって、下記の①又は②のいずれの契約についても軽減税率を適用することはできない(Q&A(個別事例編)問72)。
① 献立作成や食材購入を教育委員会が行い、調理だけを受託する場合
② 献立の作成や栄養バランスなどについての指導は受けるものの、食材の購入から調理までを一貫して受託する場合
(3)缶飲料・ペットボトル飲料をそのまま提供する場合  屋台のラーメン屋などでは、缶飲料やペットボトル飲料をコップに注がずにそのまま顧客に提供することがあるが、たとえ缶飲料やペットボトル飲料をそのまま顧客に提供した場合であっても、店内で飲食設備を利用して飲食させるのであり、「外食」として標準税率が適用されることになる(Q&A(個別事例編)問54)。
 なお、セルフサービスの食堂などでは、券売機を利用して食券を販売し、定食はカウンターで支給するものの、飲料は顧客自らが店内の自動販売機で購入するシステムの店舗がある。カウンターで定食と共に支給する飲料も、自動販売機で購入した飲料も、どちらも店内で飲むものであるから、簡易課税の事業区分は第4種事業に区分することになる。 
 ただし、たとえ店内で飲食するものであったとしても、自動販売機で販売する飲食料品には軽減税率が適用されることとなるので注意が必要だ(Q&A(個別事例編)問29)。

参考:〜消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より
答(一部省略)
(自動販売機)
 自動販売機のジュースやパン、お菓子等の販売は、軽減税率の適用対象となりますか(問29)。
 自動販売機により行われるジュース、パン、お菓子等の販売は、飲食料品を飲食させる役務の提供を行っているものではなく、単にこれらの飲食料品を販売するものであることから軽減税率の適用対象となる「飲食料品の譲渡」に該当することとされています(改正法附則34①一、軽減通達6)。
(飲食店で提供する缶飲料、ペットボトル飲料)
 当社は、ラーメン屋を営んでおります。ラーメンの提供のほか、缶飲料、ペットボトル飲料をコップに入れず、缶又はペットボトルのまま提供していますが、これら飲料の提供は、軽減税率の適用対象となりますか(問54)。
 軽減税率の適用対象とならない「食事の提供」とは、飲食設備がある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供をいいます(改正法附則34①一イ、軽減通達10)。
 ご質問の飲食店で缶飲料、ペットボトル飲料をそのまま提供したとしても、店内で飲食させるものとして提供しているものであることから、「食事の提供」に該当し、軽減税率の適用対象となりません。

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