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解説記事2019年07月15日 【税制改正解説】 令和元年度における相続税関係の改正について(上)(2019年7月15日号・№795)

税制改正解説
令和元年度における相続税関係の改正について(上)
 早川貴之

相続税法の改正
1 民法(相続法)の改正に伴う見直し

 「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」が平成30年3月に国会に提出され、同年7月6日に可決・成立し、同月13日に公布された(法律第72号)。
 このうち、配偶者居住権の創設、遺留分制度に関する見直し及び特別寄与料の創設に対応した相続税法等の改正が行われた。

Ⅰ 配偶者居住権の創設に伴う改正

1 制度の概要
 配偶者居住権の主な内容は以下のとおり。
〔存続期間〕
 配偶者居住権の存続期間は、原則として配偶者の終身の間とされているが、遺産分割協議等により別の期間を定めることもできる(民法1030)。
〔使用収益〕
 配偶者は善良な管理者の注意をもって居住建物の使用及び収益をしなければならないこととされる。また、配偶者居住権を譲渡することはできない(民法1032①②)。

2 相続税法上の扱い
(1)財産評価
① 配偶者居住権
 次の算式により算出する(相法23の2①)。

 イ 居住建物の時価
  居住建物に配偶者居住権が設定されていないものとした場合のその居住建物の相続開始時における時価をいう。
 ロ 耐用年数
  居住建物の全部が住宅用であるものとした場合におけるその居住建物に係る耐用年数に1.5を乗じて計算した年数(6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨て。)をいう(相法23の2①二イ、相令5の8②、相規12の2)。
 ハ 経過年数
  居住建物の新築時から配偶者居住権の設定時までの年数(6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨て。)をいう(相法23の2①二イ)。
 ニ 存続年数
  次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれに定める年数(6か月以上の端数は1年とし、6か月に満たない端数は切り捨て。)をいう(相法23の2①二イ、相令5の8③)。
 (イ)配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間とされている場合 その配偶者居住権が設定された時におけるその配偶者の平均余命(厚生労働省が男女別、年齢別に作成する完全生命表に掲載されている平均余命をいう(相規12の3)。)
 (ロ)(イ)に掲げる場合以外の場合 遺産分割協議等により定められた配偶者居住権の存続年数(配偶者居住権が設定された時における配偶者の平均余命を上限とする。)
 ホ 存続年数に応じた法定利率による複利現価率
  次の算式により算出した率をいう(相法23の2①三、相規12の4)。
② 居住建物の所有権
 居住建物の相続開始時における配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価から、上記①により計算した価額を控除した残額(相法23の2②)
③ 配偶者居住権に基づき居住建物の敷地を使用する権利
 次の算式により算出する(相法23の2③)。
《算式》
 土地等の時価-土地等の時価×存続年数に応じた法定利率による複利現価率
(注)「土地等の時価」とは、居住建物に配偶者居住権が設定されていないものとした場合のその居住建物の敷地の用に供されている土地等の相続開始時における時価をいう。
④ 居住建物の敷地の用に供される土地等
 土地等の相続開始時における配偶者居住権が設定されていないものとした場合の時価から、上記③により計算した価額を控除した残額(相法23の2④)
(2)物納の扱い  配偶者居住権が設定されている建物とその敷地については、物納劣後財産とされた(相令19五)。

3 適用関係  上記2の改正は、令和2年4月1日以後に開始する相続により取得する財産に係る相続税について適用される(改正法附則1七ロ、改正相令附則①二)。

Ⅱ 特別寄与料の創設に伴う改正

1 制度の概要
 被相続人に対し、無償で療養看護その他の労務を提供したことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした親族(相続人など一定の者を除く。以下「特別寄与者」という。)は、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができることとされた。

2 相続税法上の扱い
(1)特別寄与者の課税関係
 相続人からの特別寄与料の取得を被相続人から特別寄与者に対する遺贈とみなし、相続税を課税することとされた(相法4②)。
(2)特別寄与料を支払った者の課税関係  特別寄与者が支払いを受けるべき特別寄与料の額がその特別寄与者に係る相続税の課税価格に算入される場合には、その特別寄与料を支払うべき相続人の課税価格は、相続又は遺贈により取得した財産から特別寄与料の額のうちその相続人が負担すべき金額を控除した金額とすることとされた(相法13④)。

3 適用関係  上記2の改正は、令和元年7月1日以後に開始する相続に係る相続税について適用される(改正法附則1三ロ)。

Ⅲ 遺留分減殺請求の改正に伴う所要の整備

1 制度の概要
 改正前の民法の規定では、遺留分による減殺の請求をすると、物権的効力が生じ、遺贈又は贈与をされていた財産に関する権利が請求者に移転することとされていたが、今般の改正により、減殺請求から生ずる権利を金銭債権化することとされた(民法1046①)。

2 相続税法上の扱い
(1)改正前の制度の概要
 申告期限後に遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定した場合には、その事由が生じたことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をすることができる旨が定められていた(旧相法32①三)。
 あわせて、遺留分による減殺の請求を行い、財産を取得することが確定した場合には、その取得した相続人は期限後申告又は修正申告ができることとされていた(相法30①、31①)。
(2)改正の内容  改正前と同様の課税関係とし、民法における用語の改正に伴う規定の整備のみ行うこととされた(相法32①三)。

3 適用関係  上記2の改正は、令和元年7月1日以後に開始する相続に係る相続税又は贈与税について適用し、同日前に開始した相続に係る返還すべき、又は弁償すべき額に係る相続税又は贈与税については、従前のとおり(改正法附則23④)。

2 民法(成年年齢)関係の改正に伴う見直し

1 改正の内容
 成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに伴い、20歳を基準としている次の規定について18歳を基準とすることとされた。
(1)相続税法 ① 未成年者控除(相法19の3)
② 相続時精算課税適用者の要件(相法21の9)
(2)租税特別措置法 ① 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例(措法70の2の5)
② 相続時精算課税適用者の特例(措法70の2の6)
③ 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除(措法70の7)
④ 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(措法70の7の5)

2 適用関係  上記1(1)①の改正は、令和4年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用され、同日前に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については、従前のとおり(改正法附則23①)。
 上記1(1)②の改正は、令和4年4月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用され、同日前に贈与により取得した財産に係る贈与税については、従前のとおり(改正法附則23③)。

3 添付書類の見直し

1 改正内容
 次に掲げる書類について、住民票の写し等の添付を要しないこととされた。
(1)障害者非課税信託申告書(旧相規2二)
(2)相続時精算課税選択届出書(旧相規11①二、②三)

2 適用関係  上記1(1)の改正は、平成31年4月1日から適用される(改正相規附則1)。
 上記1(2)の改正は、令和2年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用し、同日前に贈与により取得した財産に係る贈与税については、従前のとおり(改正相規附則2)。

租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正
1 個人の事業用資産についての納税猶予制度の創設
Ⅰ 制度の内容

1 個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除
(1)制度の概要
 特例事業受贈者が、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間に、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その特例事業受贈者が納付すべき贈与税額のうち、贈与により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する贈与税の納税が猶予される。
① 特例事業受贈者の範囲
 贈与者から贈与により特定事業用資産の取得をした個人で、次に掲げる要件の全てを満たす者をいう(措法70の6の8②二、措規23の8の8③~⑥)。
 イ 贈与の日において20歳(令和4年4月1日以降は、18歳)以上であること
 ロ 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第2条に規定する中小企業者であって同法第12条第1項の経済産業大臣(経済産業大臣の権限に属する事務を都道府県知事が行うこととされている場合には、当該都道府県知事)の認定(以下「円滑化法認定」という。)を受けていること
 (注)この認定を受けるには、事前に後掲トの確認を受ける必要がある。
 ハ 贈与の日まで引き続き3年以上にわたり特定事業用資産に係る事業に従事していたこと
 ニ 贈与の時からその贈与税の申告書の提出期限まで引き続き特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること
 ホ 贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限において、特定事業用資産に係る事業について開業の届出書を提出していること及び青色申告の承認(みなし承認を含む。)を受けていること
 ヘ 贈与により取得した特定事業用資産に係る事業が、贈与の時において、資産保有型事業、資産運用型事業及び性風俗関連特殊営業のいずれにも該当しないこと
(注1)「資産保有型事業」とは、贈与の日の属する年の前年から納税猶予期間が終了するまでのいずれかの日において、特定事業用資産に係る事業についての貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額の総額に占める特定資産の帳簿価額の合計額の割合が70%以上となる事業をいう(措法70の6の8②四、措令40の7の8⑭)。ただし、資産保有型事業に該当した場合であっても、その該当した事由が、事業活動のために必要な資金を調達するための資金の借入れなど、事業活動上生じた偶発的な事由である場合には、その事由が生じた日から6か月間は資産保有型事業に該当しないものとされている(措令40の7の8⑭、措規23の8の8⑦)。
(注2)「資産運用型事業」とは、納税猶予期間中のいずれかの年(贈与の日の属する年の前年を含む。)において、特定事業用資産に係る事業についての事業所得に係る総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が75%以上となる事業をいう(措法70の6の8②五、措令40の7の8⑰)。ただし、資産運用型事業に該当した場合であっても、その事由が事業活動のために必要な資金を調達するために特定資産を譲渡したことなど、事業活動上生じた偶発的な事由である場合には、その事由が生じた日の属する年とその翌年は資産運用型事業に該当しないものとされている(措令40の7の8⑰、措規23の8の8⑨)。
(注3)「特定資産」とは、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則(以下「円滑化省令」という。)第1条第26項第2号イからホまでに掲げる有価証券、不動産、預貯金、ゴルフ会員権、貴金属等並びに特例事業受贈者及びその関係者に対する貸付金・未収金をいう(措規23の8の8⑧)。
 ト 円滑化省令の定めるところにより都道府県知事の確認を受けた個人事業承継計画に定められた後継者であること
(注1)この確認を受けるためには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて個人事業承継計画を作成し、令和6年3月31日までに都道府県知事に申請しなければならない(円滑化省令16三、17①④)。
(注2)「認定経営革新等支援機関」とは、中小企業等経営強化法の規定による認定を受けた税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等(税理士、公認会計士、金融機関、商工会等)であって、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行うものをいう。
② 特例の対象となる事業の範囲
 この特例の対象となる事業の範囲からは、不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業が除かれている(措法70の6の8②一、措令40の7の8⑤)。
③ 贈与者の範囲
 贈与の時前に特定事業用資産を有していた個人で次に掲げる者(既にこの特例の適用に係る贈与をしている者を除く。)をいう(措令40の7の8①)。
 イ 先代事業者であって次に掲げる要件を満たす者(措令40の7の8①一)
 (イ)贈与の時において特定事業用資産に係る事業の廃業届を提出していること又は贈与税の申告書の提出期限までに廃業届を提出する見込みであること
 (ロ)特定事業用資産に係る事業について、贈与の日の属する年以前3年間にわたり確定申告書を青色申告書により提出していること
 ロ 上記イの贈与者(先代事業者)と生計を一にするその親族であって、上記イの贈与者からの贈与の後に特定事業用資産の贈与をしている者(措令40の7の8①二)
 (注)事業をしていない者からの贈与については、上記イの贈与者からの贈与の後1年以内にされた贈与に限る。
④ 特定事業用資産・特例受贈事業用資産の範囲
 特定事業用資産とは、贈与者(当該贈与者と生計を一にする配偶者その他の親族等を含む。)の事業の用に供されていた次に掲げる資産(贈与者の贈与の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されているものに限る。)の区分に応じそれぞれ次に定めるものをいう(措法70の6の8②一)。
 イ 宅地等(土地又は土地の上に存する権利であって、建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち一定のものをいう。) 宅地等の面積の合計のうち400㎡以下の部分
 ロ 建物(事業の用に供されている一定のものに限る。) 建物の床面積の合計のうち800㎡以下の部分
 ハ 減価償却資産(ロの建物を除く。) 地方税法第341条第4号に規定する償却資産、自動車税又は軽自動車税において営業用の標準税率が適用される自動車その他これらに準ずる減価償却資産
 また、特例受贈事業用資産とは、贈与により取得した特定事業用資産のうち贈与税の申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載があるものをいう(措法70の6の8①)。
(2)納税猶予分の贈与税額の計算  特例受贈事業用資産の価額を特例事業受贈者に係るその年分の暦年課税又は相続時精算課税の贈与税の課税価格とみなして、相続税法に規定する贈与税の基礎控除及び税率を適用して計算した金額が納税猶予分の贈与税額となる(措法70の6の8②三)。
(注)特例事業受贈者が贈与者から特例受贈事業用資産とともに債務を引き受けた場合には、次の算式により計算した金額を特例受贈事業用資産の価額として納税猶予分の贈与税額を計算する(措令40の7の8⑧)。
《算式》
納税猶予分の贈与税額の計算の基礎となる価額=A -(B-C)
A:特例受贈事業用資産の価額
B:特例受贈事業用資産の贈与とともに引き受けた債務の金額
C:Bの債務の金額のうち事業に関するものと認められるもの以外の債務(住宅ローン、教育ローンなど)の金額
(3)猶予税額の全部を納付しなければならない場合  この特例の適用を受ける特例事業受贈者、特例受贈事業用資産又はその事業について、次に掲げる場合に該当することとなったときは、それぞれ次に定める日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の6の8③)。
① 特例事業受贈者が事業を廃止した場合又は特例事業受贈者について破産手続開始の決定があった場合 その事業を廃止した日又はその決定があった日
② 事業が資産保有型事業、資産運用型事業又は性風俗関連特殊営業のいずれかに該当することとなった場合 その該当することとなった日
③ 特例事業受贈者のその年の事業に係る事業所得の総収入金額が零となった場合 その年の12月31日
④ 特例受贈事業用資産の全てが特例事業受贈者のその年の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されなくなった場合 その年の12月31日
⑤ 特例事業受贈者が青色申告の承認を取り消された場合又は青色申告書の提出をやめる旨の届出書を提出した場合 その承認が取り消された日又はその届出書の提出があった日
⑥ 特例事業受贈者がこの特例の適用を受けることをやめる旨を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出した場合 その届出書の提出があった日
 なお、上記①から⑥までのほか、後掲(8)の継続届出書の提出義務に違反した場合等にも猶予税額の全額を納付しなければならない(措法70の6の8⑪⑫)。
(4)猶予税額の一部を納付しなければならない場合  特例受贈事業用資産が特例事業受贈者の事業の用に供されなくなった場合には、納税猶予分の贈与税額(既に猶予税額の一部を納付している場合には、猶予中贈与税額)のうち、事業の用に供されなくなった部分に対応する贈与税については、その事業の用に供されなくなった日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の6の8④)。
(注)「猶予中贈与税額」とは、納税猶予分の贈与税額から、既に期限が一部到来し、確定した税額を除いたものをいう。
 なお、一定の手続に則って特例受贈事業用資産を廃棄した場合には、納税猶予が継続する措置が講じられている(措令40の7の8⑱)。
(5)特例受贈事業用資産に係る買換え特例  特例受贈事業用資産が事業の用に供されなくなった場合において、その事業の用に供されなくなった事由が特例受贈事業用資産の譲渡であるときは、その譲渡があった日から1年以内にその譲渡の対価の全部又は一部をもって事業の用に供される資産を取得する見込みであることについて所轄税務署長の承認を受け、その期間内に事業の用に供される資産を取得した場合には、その取得に係る資産は特例受贈事業用資産とみなされ納税猶予が継続する(措法70の6の8⑤)。
(6)事業を法人化した場合の扱い(法人化特例)  納税猶予の適用から5年経過後に特例受贈事業用資産の全てを現物出資して会社を設立し、その会社の株式等を保有し続ける間は、引き続き納税猶予が認められる措置が講じられている(措法70の6の8⑥)。
(7)猶予税額が免除等となる場合 ① 特例事業受贈者の死亡等による猶予税額の免除
 この特例の適用を受ける特例事業受贈者又はその贈与者が次に掲げる場合のいずれかに該当することとなった場合には、次に定める贈与税が免除される(措法70の6の8⑭、措規23の8の8)。
 イ 贈与者の死亡の時以前に特例事業受贈者が死亡した場合 猶予中贈与税額に相当する贈与税
 ロ 贈与者が死亡した場合 猶予中贈与税額のうち、贈与者が贈与をした特例受贈事業用資産に対応する部分の金額に相当する贈与税
 ハ 特定申告期限の翌日から5年を経過する日後に、特例事業受贈者が特例受贈事業用資産の全てにつきこの特例の適用に係る贈与をした場合 猶予中贈与税額に相当する贈与税
(注)「特定申告期限」とは、特例事業受贈者についての次に掲げる日のいずれか早い日をいう(措法70の6の8⑥)。
 (イ)最初の贈与税の納税猶予(措法70の6の8①)の適用に係る贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限
 (ロ)最初の相続税の納税猶予(措法70の6の10①)の適用に係る相続に係る相続税の申告書の提出期限
 ニ 特例事業受贈者がやむを得ない事由(身体障害1級等の重度障害)により事業を継続できなくなった場合 猶予中贈与税額に相当する贈与税
② 法的な倒産等による猶予税額の免除
 特例事業受贈者が次に掲げる場合のいずれかに該当することとなった場合には、それぞれ次に定める贈与税が免除される(措法70の6の8⑯ 、措令40の7の8 )。
 イ 特例事業受贈者が特例受贈事業用資産の全てを特例事業受贈者の特別関係者以外の一定の者に対して譲渡等をした場合又は民事再生計画の認可の決定に基づき再生計画等を遂行するために譲渡等をした場合 猶予中贈与税額から次に掲げる金額の合計額を控除した残額に相当する贈与税
 (イ)譲渡等があった時における特例受贈事業用資産の時価(時価が譲渡等をした特例受贈事業用資産の譲渡等の対価の額より低い金額である場合には、譲渡等の対価の額)
 (ロ)譲渡等があった日以前5年以内において、特例事業受贈者の特別関係者が特例事業受贈者から受けた必要経費不算入対価等の合計額
 (注)「必要経費不算入対価等」とは、特例事業受贈者の特別関係者に対して支払われた対価等であって、特例事業受贈者の事業所得の金額の計算上、当該事業に係る事業所得の金額の計算上必要経費に算入されるもの以外のものをいう(措法70の6の8②四ハ、措令40の7の8⑯)。
 ロ 特例事業受贈者について破産手続開始の決定があった場合 猶予中贈与税額から破産手続開始の決定の日以前5年以内に特例事業受贈者の特別関係者が特例事業受贈者から受けた必要経費不算入対価等の合計額を控除した残額に相当する贈与税
③ 経営環境の変化に対応した猶予税額の免除
 特例事業受贈者の特例事業用資産に係る事業の継続が困難な一定の事由が生じたことにより特例事業受贈者が次に掲げる場合のいずれかに該当することとなった場合には、それぞれ次に定める贈与税が免除される(措法70の6の8⑰、措令40の7の8、措規23の8の8)。
 イ 特例事業受贈者が特例受贈事業用資産の全てを特例事業受贈者の特別関係者以外の者に譲渡等をした場合 猶予中贈与税額から次に掲げる金額の合計額を控除した残額に相当する贈与税
 (イ)譲渡等の対価の額(その額が譲渡等をした時における特例受贈事業用資産の時価の2分の1以下である場合には、その2分の1に相当する金額)をこの特例の適用に係る贈与により取得をした特例受贈事業用資産のその贈与の時における価額とみなして計算した納税猶予分の贈与税額
 (ロ)譲渡等があった日以前5年以内に特例事業受贈者の特別関係者が特例事業受贈者から受けた必要経費不算入対価等の合計額
 ロ 特例受贈事業用資産に係る事業を廃止した場合 猶予中贈与税額から次に掲げる金額の合計額を控除した残額に相当する贈与税
 (イ)事業の廃止の直前における特例受贈事業用資産の時価に相当する金額をこの特例の適用に係る贈与により取得をした特例受贈事業用資産のその贈与の時における価額とみなして計算した納税猶予分の贈与税額
 (ロ)事業の廃止の日以前5年以内に特例事業受贈者の特別関係者が特例事業受贈者から受けた必要経費不算入対価等の合計額
④ 再生計画の認可決定等があった場合の猶予税額の再計算の特例
 特例事業受贈者について民事再生計画の認可が決定された場合等において資産評定が行われたときは、その認可決定があった日における特例受贈事業用資産の価額に基づき納税猶予分の贈与税額を再計算し、再計算後の納税猶予分の贈与税額(以下「再計算猶予中贈与税額」という。)を猶予税額として納税猶予が継続し、再計算前の猶予中贈与税額から再計算猶予中贈与税額を控除した残額が免除される(措法70の6の8⑱~、措令40の7の8)。
(8)納税猶予期間中の継続届出書の提出義務  この特例の適用を受ける特例事業受贈者は、贈与税の申告書の提出期限の翌日から猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定する日までの間に特例贈与報告基準日(特定申告期限の翌日から3年を経過するごとの日をいう。)が存する場合には、届出期限(特例贈与報告基準日の翌日から3か月を経過する日をいう。)までに、引き続いてこの特例の適用を受けたい旨等を記載した届出書に必要な書類を添付して提出しなければならない(措法70の6の8⑨、措令40の7の8、措規23の8の8⑰~⑲)。
(9)利子税の納付  猶予中贈与税額が免除される前に納税の猶予に係る期限が到来したことにより、猶予中贈与税額の全部又は一部の納付を要することとなった場合には、納税が猶予されていた贈与税とともに申告期限から年3.6%(注)の利子税を併せて納付しなければならない(措法70の6の8)。
(注)この利子税の割合は、特例により軽減措置(令和元年の場合は、年0.7%)が講じられている(措法93⑤)。

2 個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例  個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予の適用を受ける特例事業受贈者に係る贈与者が死亡した場合には、贈与者の死亡による相続又は遺贈に係る相続税については、特例事業受贈者が贈与者から相続等により特例受贈事業用資産を取得したものとみなすこととされている(措法70の6の9①)。

3 個人の事業用資産についての相続税の納税猶予及び免除
(1)制度の概要
 特例事業相続人等が、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、その特例事業相続人等が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納税が猶予される。
① 特例事業相続人等の範囲
 被相続人から相続又は遺贈により特定事業用資産の取得をした個人で、次に掲げる要件
の全てを満たす者をいう(措法70の6の10②二、措規23の8の9④)。
 イ 円滑化法認定を受けていること(贈与税の納税猶予と同じ。)
 ロ 相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業に従事していたこと
 ハ 相続の開始の時からその相続税の申告書の提出期限までの間に特定事業用資産に係る事業を引き継ぎ、相続税の申告書の提出期限まで引き続き特定事業用資産の全てを有し、かつ、自己の事業の用に供していること
 ニ 相続税の申告書の提出期限において、特定事業用資産に係る事業について開業の届出書を提出していること及び青色申告の承認(みなし承認を含む。)を受けていること又は受ける見込みであること
 ホ 相続等により取得した特定事業用資産に係る事業が、相続開始の時において、資産保有型事業、資産運用型事業及び性風俗関連特殊営業のいずれにも該当しないこと
 ヘ 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者が、特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例の適用を受けていないこと
 ト 円滑化省令の定めるところにより都道府県知事の確認を受けた個人事業承継計画に定められた後継者であること(措規23の8の9④)
② 特例の対象となる事業の範囲
 この特例の対象となる事業の範囲は、贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の8②一、措令40の7の8⑤)。
③ 被相続人の範囲
 相続開始の時前に特定事業用資産を有していた個人で次に掲げる者をいう(措令40の7の10①)。
 イ 特定事業用資産に係る事業について、相続開始の日の属する年以前3年間にわたり確定申告書を青色申告書により提出している先代事業者(措令40の7の10①一)
 ロ 上記イの被相続人(先代事業者)と生計を一にするその親族であって、上記イの被相続人の相続開始の時後に開始した相続に係る被相続人である者(措令40の7の10①二)
④ 特定事業用資産・特例事業用資産の範囲
 宅地等については、基本的に贈与税の納税猶予と同様に400㎡の範囲までであるが、同一の被相続人から宅地等を相続等により取得した者のうちに特定同族会社事業用宅地等又は貸付事業用宅地等に係る小規模宅地特例の適用を受ける者がいる場合には、相続税の納税猶予の対象となる上限面積(400㎡)からその者が小規模宅地特例を適用するものとして選択した面積を差し引いた面積部分が相続税の納税猶予の適用対象となる(措法70の6の10②一イ、措令40の7の10⑦)。
 なお、宅地等以外の特定事業用資産の範囲は、贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10②一ロ、ハ)。
(2)納税猶予分の相続税額の計算  原則として、特例事業用資産の価額(相続税法第13条の規定により控除すべき債務がある場合において、特定債務額があるときは、特例事業用資産の価額から特定債務額を控除した残額)を特例事業相続人等の課税価格とみなして、相続税法の規定を適用して計算した特例事業相続人等の相続税の額が納税猶予分の相続税額となる(措法70の6の10②三、措令40の7の10⑨~⑪)。
(注)上記の「特定債務額」とは、次の算式により計算した金額をいう(措令40の7の10⑩)。
《算式》
特定債務額 =(A-B)+C   
※(A-B)が零を下回る場合には零とする。
A:相続税法第13条の規定により控除すべき特例事業相続人等の負担に属する部分の金額からCの金額を控除した残額
B:特例事業相続人等が相続等により取得した財産の価額から特例事業用資産の価額を控除した残額
C:相続税法第13条の規定により控除すべき特例事業相続人等の負担に属する部分の金額から特例事業用資産に係る事業に関する債務と認められるもの以外の債務の金額を控除した残額
(3)猶予税額の全部を納付しなければならない場合  特例事業相続人等が青色申告の承認を受ける見込みでこの特例の適用を受けていた場合において、その承認の申請が却下されたときは、その却下された日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(措法70の6の10③七)。それ以外の事由は贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10③一~六)。
(4)猶予税額の一部を納付しなければならない場合  特例事業用資産の全部又は一部が特例事業相続人等の事業の用に供されなくなった場合には、納税猶予分の相続税額又は猶予中相続税額の全部又は一部を納付しなければならない点は、贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10④、措令40の7の10⑮)。
(5)特例事業用資産に係る買換え特例  贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10⑤、措令40の7の10⑱~、措規23の8の9⑧)。
(6)事業を法人化した場合の扱い(法人化特例)  贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10⑥、措令40の7の10、措規23の8の9⑨⑩⑫⑬)。
(7)猶予税額が免除等となる場合 ① 特例事業相続人等の死亡等による猶予税額の免除
 この特例の適用を受ける特例事業相続人等が次に掲げる場合のいずれかに該当することとなった場合には、猶予中相続税額が免除される(措法70の6の10⑮)。
 イ 特例事業相続人等が死亡した場合
 ロ 特定申告期限の翌日から5年を経過する日後に、特例事業相続人等が特例事業用資産の全てにつき贈与税の納税猶予(措法70の6の8①)の適用に係る贈与をした場合
 (注)上記の「特定申告期限」とは、特例事業相続人等についての次に掲げる日のいずれか早い日をいう(措法70の6の10⑥)。
 (イ)最初の相続税の納税猶予(措法70の6の10①)の適用に係る相続に係る相続税の申告書の提出期限
 (ロ)最初の贈与税の納税猶予(措法70の6の8①)の適用に係る贈与の日の属する年分の贈与税の申告書の提出期限
 ハ 特例事業相続人等がやむを得ない事由により事業を継続できなくなった場合
② その他の猶予税額の免除等
 法的な倒産等による猶予税額の免除、経営環境の変化に対応した猶予税額の免除、再生計画の認可決定等があった場合の猶予税額の再計算の特例及びこれらの免除手続等については、贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10⑰~、措令40の7の10、措規23の8の9)。
(8)納税猶予期間中の継続届出書の提出義務  この特例の適用を受ける特例事業相続人等は、相続税の申告書の提出期限の翌日から猶予中相続税額に相当する相続税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定する日までの間に特例相続報告基準日(特定申告期限の翌日から3年を経過するごとの日をいう。)が存する場合には、届出期限(特例相続報告基準日の翌日から3か月を経過する日をいう。)までに、引き続いてこの特例の適用を受けたい旨等を記載した届出書に必要な書類を添付して提出しなければならない(措法70の6の10⑩、措令40の7の10、措規23の8の9⑮~⑰)。
(9)利子税の納付  贈与税の納税猶予と同じ(措法70の6の10)。

Ⅱ 適用関係
 上記Ⅰ1及び3の特例は、平成31年1月1日以後に贈与又は相続若しくは遺贈により取得する特定事業用資産に係る贈与税又は相続税について適用される(改正法附則79⑪⑬)。

2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し

1 改正前の制度の概要
 個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、その相続開始の直前において、その相続若しくは遺贈に係る被相続人又はその被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(以下「被相続人等」という。)の事業(準事業を含む。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない一定の事由により相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていなかった場合における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含む。)に供されていた宅地等で建物又は構築物の敷地の用に供されているもの(以下「特例対象宅地等」という。)がある場合には、その相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、その個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの特例の適用を受けることを選択したもの(以下「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合のその選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」という。)に限り、相続税の課税価格に算入すべき価額は、通常の方法によって評価した価額に、次に掲げる小規模宅地等の区分に応じ、それぞれ次に定める割合を乗じて計算した金額とされている(旧措法69の4①)。
① 特定事業用宅地等である小規模宅地等、特定居住用宅地等である小規模宅地等及び特定同族会社事業用宅地等である小規模宅地等 20%
② 貸付事業用宅地等である小規模宅地等 50%
(注1)上記の「準事業」とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいう(旧措令40の2①)。
(注2)上記の「特例対象宅地等」とは、具体的には、次の①から④までの宅地等をいう(旧措法69の4③、旧措令40の2④~⑫)。
① 特定事業用宅地等
 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除く。以下①及び③において同じ。)の用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したもの
② 特定居住用宅地等
 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、その被相続人の配偶者又は一定の要件を満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。
③ 特定同族会社事業用宅地等
 相続開始の直前において被相続人及びその被相続人の親族等が有する株式等の総額がその株式等に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総額の10分の5を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、相続又は遺贈によりその宅地等を
取得した個人のうちにその法人の役員であるその被相続人の親族がおり、一定の要件を満たす親族が取得し、かつ、申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供されている場合におけるその宅地等をいう。
④ 貸付事業用宅地等
 被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限る。以下「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等で、一定の要件を満たすその被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいう。

2 改正の内容
(1)特定事業用宅地等の範囲の見直し
 特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等(その宅地等の上で事業の用に供されている次に掲げる資産(その事業の用以外の用に供されていた部分がある場合には、その事業の用に供されていた部分に限る。)で、被相続人等が有していたものの相続開始の時の価額が、その宅地等の相続開始の時の価額の15%以上である場合を除く。)が除外された(措法69の4③一、措令40の2⑧)。
 イ その宅地等の上に存する建物又は構築物
 ロ 所得税法第2条第1項第19号に規定する減価償却資産でその宅地等の上で行われるその事業に係る業務の用に供されていたもの(イに掲げるものを除く。)
 ただし、被相続人が相続開始前3年以内に開始した相続又はその相続に係る遺贈により事業の用に供されていた宅地等を取得し、かつ、その取得の日以後その宅地等を引き続き事業の用に供していた場合におけるその宅地等については、被相続人が相続により取得した事業用宅地等の上で事業を営んでいた期間が3年未満の場合であっても、特定事業用宅地等の範囲から除外されない(措令40の2⑨)。
(2)個人の事業用資産についての納税猶予制度の創設に伴う所要の措置  個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予制度(措法70の6の8)の適用に係る贈与者から相続又は遺贈により取得をした特定事業用宅地等及び個人の事業用資産についての相続税の納税猶予制度(措法70の6の10)の適用に係る被相続人から相続又は遺贈により取得をした特定事業用宅地等についてはこの小規模宅地特例を適用できない(措法69の4⑥)。

3 適用関係  上記2(1)(2)の改正は、平成31年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係る相続税について適用され、同日前に相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税については、従前のとおり。ただし、上記2(1)の改正について、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用されない(改正法附則79①②)。

3 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の改正

1 改正前の制度の概要
(1)概要
 平成31年3月31日までに、教育資金管理契約を締結する日において30歳未満の者が、その直系尊属と受託者との間の教育資金管理契約に基づき信託の受益権(以下「信託受益権」という。)を取得した場合、その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を教育資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金等として預入をした場合又は教育資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(旧措法70の2の2①)。
(2)教育資金の範囲(旧措法70の2の2②一)。 ① 学校等の設置者に対して直接支払われる金銭で一定のもの
② 学校等以外の者に直接支払われる金銭であって、教育のために支払われるものとして社会通念上相当と認められるもの
(3)終了事由及び終了時の課税関係 ① 教育資金管理契約の終了事由
 教育資金管理契約は、次に掲げる事由により終了し、その終了の日はそれぞれ次に定める日のいずれか早い日とされている(旧措法70の2の2⑩)。
 イ 受贈者が30歳に達したこと その受贈者が30歳に達した日
 ロ 受贈者が死亡したこと その受贈者が死亡した日
 ハ 教育資金管理契約に係る信託財産の価額が零となった場合等において、受贈者と取扱金融機関との間でこれらの教育資金管理契約を終了させる合意があったこと その教育資金管理契約が合意に基づき終了する日
② 終了時に贈与税が課税される場合
 上記①イ又はハに該当したことにより教育資金管理契約が終了した場合において、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、その残額については、これらの事由が生じた日の属する年の贈与税の課税価格に算入される(旧措法70の2の2⑪)。
③ 終了時に贈与税が課税されない場合
 受贈者が死亡したことにより教育資金管理契約が終了した場合には、その教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(旧措法70の2の2⑫)。

2 改正の内容  次の見直しが行われた上、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長された。
(1)受贈者の所得要件の設定  信託受益権等を取得した日の属する年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、この特例は適用できないこととされた(措法70の2の2①④)。
(2)受贈者の年齢が23歳以上となった場合の使途の制限  23歳以上の者の教育資金の使途について、以下の学校教育・一定の教育訓練に限定された(令和元年文部科学省告示第15号)。
① 学校等に支払われる費用
② 学校等に関連する費用(通学定期券代、留学渡航費等)
③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用
(3)贈与者死亡時における残額の相続財産への加算  贈与者の相続開始前3年以内に行われた贈与について、一定の場合を除き、相続開始時におけるその残高が相続財産に加算されることとなった(措法70の2の2⑩⑪)。
(注)上記の「一定の場合」とは、受贈者が以下の場合に該当する場合をいう。
 ① 23歳未満である場合
 ② 学校等に在学している場合
 ③ 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
(4)教育資金管理契約の終了事由の見直し  30歳到達時に現に、
① 学校等に在学している場合
② 教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
のいずれかに該当する場合には、この特例を継続して適用できることとされた。その後、上記イ又はロの事由が1日もなかった年の12月31日又はその受贈者が40歳に達する日のいずれか早い日に、この特例の適用が終了することとされた(措法70の2の2⑫)。

3 適用関係  上記2(1)(3)の改正は、平成31年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用され、同日前に取得した信託受益権等に係る贈与税については、従前のとおり(改正法附則79③)。なお、上記2(3)の改正について、平成31年4月1日前に贈与者から取得した信託受益権等については、管理残額の計算上、贈与者の相続開始前3年以内に取得したものには含まれない(改正措令附則38②)。
 上記2(2)の改正は令和元年7月1日以後の教育資金の支出について、上記2(4)の改正は同日以後30歳に達する受贈者について適用される(令和元年文部科学省告示第15号附則、改正法附則1三)。

4 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の改正

1 改正前の制度の概要
 平成31年3月31日までに、結婚・子育て資金管理契約を締結する日において20歳以上50歳未満の者が、その直系尊属と受託者との間の結婚・子育て資金管理契約に基づき信託の受益権(以下「信託受益権」という。)を取得した場合、その直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭を結婚・子育て資金管理契約に基づき銀行等の営業所等において預金等として預入をした場合又は結婚・子育て資金管理契約に基づきその直系尊属からの書面による贈与により取得した金銭等で金融商品取引業者の営業所等において有価証券を購入した場合には、その信託受益権、金銭又は金銭等の価額のうち1,000万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しないこととされている(旧措法70の2の3①)。

2 改正の内容  贈与の日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合にはこの特例を適用できないこととする見直しが行われた上、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長された(措法70の2の3①④)。

3 適用関係  上記2の改正は、平成31年4月1日以後に取得する信託受益権等について適用され、同日前に取得した信託受益権等については、従前のとおり(改正法附則79⑤)。

5 農地等に係る納税猶予制度等の見直し

1 改正前の制度の概要
(1)農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予及び免除等
 農業を営む個人で一定の者(以下「贈与者」という。)が、その農業の用に供している農地(特定市街化区域農地等に該当するもの及び農地法に規定する利用意向調査に係るもののうち一定のものを除く。)の全部及び当該用に供している採草放牧地(特定市街化区域農地等に該当するものを除く。)のうち一定部分並びに準農地のうち一定部分を贈与した場合には、その農地及び採草放牧地並びに準農地(以下「農地等」という。)の贈与を受けた者(以下「受贈者」という。)に係る贈与税については、担保の提供を条件に、その贈与者の死亡の日まで、その納税が猶予される(措法70の4①)。
(2)農地等を買い換えた場合の特例  農地等を譲渡した場合において、譲渡があった日から1年以内に譲渡の対価の額の全部又は一部をもって農地又は採草放牧地を取得する見込みであることにつき、納税地の所轄税務署長の承認を受けたときには、その承認に係る譲渡はなかったものとみなされ、その譲渡等があった日から1年を経過する日までに取得された農地又は採草放牧地について、納税猶予が継続することとされている(措法70の4⑮)。

2 改正の内容
(1)農地中間管理事業の見直しに伴う措置
 農地利用集積円滑化事業の農地中間管理事業への統合に伴い、法令の規定上、農地利用集積円滑化事業に関する部分が削られた(措法70の4の2①②、70の6の2①、措令40の6⑪、40の6の2⑪、40の7⑩、40の7の2⑥)。
(2)帰還困難区域等において農地等を買い換えた場合の特例措置  上記1(1)の適用を受ける受贈者が、農地等(一定の市町村内の区域で福島復興再生特別措置法に規定する避難解除区域又は現に一定の避難指示の対象となっている区域(以下「特例対象区域」という。)内に所在するものに限る。)を福島復興再生特別措置法に規定する特定復興再生拠点区域復興再生計画に記載された事業その他東日本大震災からの復興のための一定の事業の用に供するために譲渡をした場合において、その特例対象区域内に所在する農地又は採草放牧地を取得する見込みであるときにおける上記1(2)の代替農地の取得期限については、譲渡をした農地等が所在する市町村内の区域で福島復興再生特別措置法に規定する避難指示の対象となった区域に係る当該避難指示の全てが解除された日から5年以内とされた(震災税特法38の2の2)。
(注)上記の「一定の市町村」とは、福島県南相馬市、双葉郡富岡町、大熊町、双葉町、浪江町及び葛尾村並びに相馬郡飯舘村とされている。
 なお、相続税についても同様の措置が講じられている。

3 適用関係  上記2(1)の改正は、農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第12号)附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(公布日から1年3か月以内)から施行される。
 上記2(2)の改正は、平成31年4月1日以後に農地等を譲渡する場合について適用される(改正法附則99)。

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