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税務ニュース2003年03月17日 平成15年3月期決算直前・資本準備金を原資とした場合でも、配当決議なら「配当課税」 「会計基準との整合性」対応は設けられず

平成15年3月期決算直前・資本準備金を原資とした場合でも、配当決議なら「配当課税」
「会計基準との整合性」対応は設けられず


 平成13年6月の金庫株関係商法改正で法定準備金に関わる規制が緩和され、法定準備金(資本準備金・利益準備金)については、所定の手続き・所定の範囲で、目的を制限しない減少手続きが明確にされた。資本準備金の株主への払戻し及び資本準備金の取崩額を原資とする株主への配当が可能になった。
 平成14年2月に公表された「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準」では、上記商法改正を受け、「資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止」の原則を明らかにした上で、資本金及び法定準備金の取崩の会計処理及び表示を定めている。
 一方、法人税法では、利益の配当として株主等に交付する金銭等は、利益積立金額から減算されることが規定されるだけであり、配当の原資の性格(資本剰余金・利益剰余金)による区分はされてはいない。資本剰余金を原資とする配当は、その性格上「利益の配当」ではなく「資本の払戻し」であるとして、法人税法に対応を求める要望も見受けられたが、現行の取扱いで平成15年度3月期決算を迎えることになる。

発行法人の「法人所得」計算には影響がないが 
 会計上の資本剰余金が、株主等に「利益の配当」として交付されたとしても、当該法人の所得計算に直ちに影響が出るわけではない。資本剰余金の増減も、利益積立金額の増減も課税所得には影響しないからである。
 しかし、「資本の払戻し」となる部分については、交付を受けた株主側でも課税関係が生じないのに対し、「利益の配当」として取扱われる場合には、株主側で全額受取配当金となり、課税関係が生じる。さらに、株主には、「資本の払戻し」として、有価証券の帳簿価額を減額するのか(配当の対象となる有価証券が売買目的有価証券である場合を除く。)、「利益の配当」として、有価証券の帳簿価額を維持するのか、対応が迫られる。
 発行法人も「利益の配当」部分には源泉徴収義務が生じるので、株主同様に対応が迫られる。

発行法人での別表調整
 発行法人では、「法人所得」計算には影響がないものの、当期利益以外から配当(社外流出)が行われることになるので、別表四上での次の振替調整が必要となる。
別表四
当期利益欄 留保 △ ××× 社外流出(配当) ×××
 さらに発行法人では、会計上の資本剰余金の取崩が、税務上の利益積立金額の減算として取り扱われるため、別表五(一)上で次の調整が必要となる。
別表五(一)
利益積立金明細 資本積立金 利益処分欄 △ ×××
資本積立金明細 利益積立金 増欄 ×××
会計理論・経済界からの要望を黙殺
 「資本剰余金と利益剰余金の混同の禁止」の原則からいっても、資本準備金の取崩金額を原資とする配当を利益積立金額から減算して株主に課税するのは、会計理論的に無理がある。商法・会計・税法学者の多くもこの点を指摘している。
 経済界(経団連)も、「資本準備金取崩額が配当可能財源に組み込まれて配当されると、損益取引に基づく利益配当と混同し、源泉徴収の対象となるおそれがある。よって、資本準備金取崩に起因する配当相当額(株主への資本払戻し額。有償減資に類似。)は、従前の利益配当と峻別し課税対象とならぬよう、その区分・名称等に留意すべきである。」とコメントを発していた。
 この点について、平成15年度税制改正では何らの手当てもされていない。本誌プレ創刊1号8ページにもあるように、資本準備金の取崩額を原資とする配当については、「利益積立金額の減算」・「配当課税」の対象となるのである。

「株式消却を伴わない有償減資」とどう違う?
 さて、配当原資の性格に関わらず、「配当課税」として取扱われることが、現行法上の帰結であるが、資本準備金取崩に起因する配当は、「株式消却を伴わない有償減資」の場合とその効果が類似しているとみることができる。
 資本準備金の減少(取崩)決議を行い、取崩と同時に金銭の分配を行う場合には、税務上も有償減資と同様の処理になると考えられている。 
 「株式消却を伴わない有償減資」と同様の取扱いとすると、交付金銭等の額のうち、資本等に対応する部分の金額(減資資本等金額)から、減少資本金額(資本準備金だけの取崩を仮定しているため0)を減算した金額の資本積立金額を減算することが規定されている。全額が「配当課税」される場合と取扱いを異にしているのである。「株式消却を伴わない有償減資」の場合と「資本準備金取崩に起因する配当」の場合とでは、その手続きは異なるが、その経済的な効果の実質(資本準備金を現金で株主に払戻すという効果)は異ならない場合が想定される。しかし、その手続きにより、課税上の取扱いが異なってくるものと考えられているのである。

「配当」・「取崩」という発行法人の意思が課税の根拠?
 本誌の取材によれば、資本準備金の取崩(払戻し)を「株式消却を伴わない有償減資」と同様に取扱うかは、まだ明確にされていない。しかし、発行法人の「利益処分による配当」あるいは、「資本準備金の取崩と併せた金銭の交付」という明確な意思を根拠として課税関係が決まっていく方向が容認されそうだ。
 言い換えれば、租税回避目的とでも認定されない限り、発行法人側で、株主の課税関係を選択することが可能とも読み取れる。発行法人が選択する手続により、株主の立場にたった「配当課税」あるいは、「有価証券の簿価引下げ」という選択が可能となるのである。
 必ずしも課税上の取扱いが明確化されたわけではないが、平成15年3月期決算で留意しておきたいポイントの一つである。

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