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税務ニュース2007年02月26日 外国子会社の保有するD放送株式のみに法人税等相当額を控除(2007年2月26日号・№200) 旺文社事件差戻し控訴審、課税処分を一部取り消す判決

外国子会社の保有するD放送株式のみに法人税等相当額を控除
旺文社事件差戻し控訴審、課税処分を一部取り消す判決


東京高裁第24民事部(大喜多啓光裁判長)は平成19年1月30日、いわゆる旺文社事件の差戻し控訴審において、①A社(100%出資の外国子会社)が保有するD放送株式の評価については、法人税等相当額を控除する純資産価額方式で評価すべきもの、②D放送などが保有するHテレビ株式については、重ねて法人税等相当額を控除しない時価純資産価額で評価すべきもの、③A社が保有するテレビC株式については、法人税等を控除しない時価純資産価額方式によって評価すべきもの、などと判示し、課税処分の一部を取り消す判決を言い渡した。

事案の概要
 被控訴人(会社)は、100%出資の外国子会社A社を設立した。その後、同社は、増資して新株全部を被控訴人の関連会社B社に著しく有利な価額で割り当てたところ、所轄税務署長は、被控訴人保有のA社株式の資産価値をB社に移転させたものであり、移転した資産価値相当額はB社に対する寄附金に当たるとして、被控訴人の平成7年9月期の法人税につき更正および過少申告加算税賦課決定をした。本件は、被控訴人が本件各処分の取消しを求める事案である。

本件訴松の経過
 第一審(東京地裁)は、被控訴人の保有する資産価値がB社に移転したとしても、それはA社とB社間の行為であり、被控訴人はB社に対して何らの行為もしておらず、「無償による資産の譲渡又はその他の取引」にも「同族会社の行為計算否認」にも該当しないとして、被控訴人の求める限度で本件各処分を取り消した。
 差戻前の控訴審(東京高裁)は、①増資により法人税法22条2項に規定する事実が生じたものであり、②A社の資産を時価純資産価額方式(法人税等相当額を控除しないもの)で評価して、B社へ移転した資産価値を算定すべきであるとして、被控訴人の請求を棄却した。
 上告審判決(最高裁)は、上記①の判断は是認することができるが、②の資産評価方法の判断については、A社保有のD放送株式の評価(特段の事情がない限り、純資産価額方式によるときには法人税等相当額を控除するべき)、D放送およびI社(A社保有株式)保有のHテレビ株式の評価ならびにA社保有のテレビC株式の評価(配当還元方式の採用の適否など)について更に審理を尽くすべきであるとして、本件を東京高裁に差し戻した。

差戻し控訴審の判示
(1)法人税法22条2項の適用について
 「A社の株式に表章された資産価値は、被控訴人において支配し、処分することができたところ、被控訴人は、このような利益をB社との合意に基づいて同社に移転したものということができる。すると、この資産価値の移転は、被控訴人が意図し、B社が了解したところが実現したものということができるから、法22条2項の取引、すなわち『無償による資産の譲渡』に当たるということができる。」
(2)A社の資産額について
 ① A社の保有するD放送株式の評価方法について
 財産評価基本通達は、企業の継続を前提とした場合においても、1株当たりの純資産価額の算定に当たり法人税等相当額を控除することとしており、これは、平成7年2月当時において、一般に通常の取引における当事者の合理的意思に合致するものとして、「1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」に当たるというべきである。そして、このような価額によって株式の価額を評価し、これを前提に法人の収益の額を算定することは、法人税法の解釈として合理性を有する。本件においては、関係法人がD放送株式について法人税等相当額を控除しない方式で評価する方が適切であると認識していたことを窺い知る証拠はないから、D放送の1株当たりの純資産価額の評価においては、法人税等相当額を控除すべきである。
 ② D放送およびI社が保有するHテレビ株式の評価方法について
 平成7年2月当時、D放送およびI社が保有していたHテレビ株式は、財産評価基本通達上、配当還元方式により評価すべきこととなる。
 しかし、D放送およびI社が単に配当を期待してHテレビ株式を保有していたといえないこと、増資当時、A社が被控訴人の100%出資のいわゆるペーパーカンパニーであったことなどから、D放送およびI社が保有していたHテレビ株式を配当還元方式によって評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ、Hテレビ株式は時価純資産価額方式で評価するのが相当である。なお、D放送の純資産価額の算定において法人税等相当額を控除するから、Hテレビの純資産価額については、重ねて法人税等相当額を控除することなく、これを算定すべきである。
 ③ A社が保有するテレビC株式の評価方法について
 平成7年2月当時、A社が保有するテレビC株式は、財産評価基本通達上、配当還元方式により評価すべきこととなる。
 しかし、A社は、テレビCの事業経営につき持株割合に基づく影響力を有していたと推認するのが相当であり、しかも、被控訴人が当時にテレビCの株式1,242株を1株540万円で売買したのは、同株式を配当還元方式で評価するよりも時価純資産価額方式(法人税等相当額を控除しない)による方が適切であることを認識していたものということができ、被控訴人の100%出資の子会社であるA杜も同様の認識であったと推認することができる。したがって、テレビC株式を配当還元方式で評価すると著しく不合理な結果を生じさせて課税上の弊害をもたらすということができ、同社の株式は時価純資産価額方式によって評価するのが相当である。



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