税務ニュース2008年10月06日 逆パターン養老保険、給与課税済み保険料のみ満期保険金から控除(2008年10月6日号・№277) 審判所、支払保険料全額を否認した更正処分を一部取消し
逆パターン養老保険、給与課税済み保険料のみ満期保険金から控除
審判所、支払保険料全額を否認した更正処分を一部取消し
国税不服審判所は、死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員(請求人)とする契約の養老保険(いわゆる逆パターン養老保険)について、役員が受領した満期保険金から控除される額は当該役員に対する報酬として経理処理された保険料部分に限られるとの判断を示した。
原処分庁は、支払保険料総額について控除を否認する更正処分を行ったが、その一部が取り消された(福裁(所)平19第26号・平成20年6月6日裁決)。
2分の1「保険料」、残額「役員報酬」 請求人が理事長を務めるA医療法人は、生命保険会社と養老保険契約(下表参照)を締結し、その養老保険に係る保険料31,101,780円を支払い、請求人は平成17年12月7日、下表の「満期保険金」欄に掲げる金額の合計額30,000,000円を受領した。
なお、この養老保険契約は所得税法施行令183条(生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)3項に規定する生命保険契約に該当し、満期保険金に係る所得は、所得税法34条(一時所得)に規定する一時所得に該当する。
A医療法人の総勘定元帳、仕訳伝票、保険の保険料の内訳メモ、合計残高試算表によると、同法人は、支払保険料のうち、その2分の1の金額15,550,890円を「保険料」(以下「法人経理保険料」という)として経理処理し、その残額を請求人に対する「役員報酬」として経理処理している。
支払保険料全額を満期保険金から控除 請求人は満期保険金に係る一時所得の金額の計算上、支払保険料31,101,780円を、一時所得の収入を得るために支出した金額として控除した。これに対して原処分庁は、法人が保険料として損金経理した支払保険料および請求人に対する報酬として損金処理した支払保険料について、満期保険金(一時所得)の総収入金額からの控除を認めないとする更正処分を行った。
審査請求における請求人の主張(要旨)は、次のとおり。①当該医療法人は、本件支払保険料につき、法人税基本通達9-3-4《養老保険に係る保険料》の(3)の取扱いを類推して、本件支払保険料の2分の1を保険料として、残りの2分の1については、報酬として損金経理を行っており、本件支払保険料の2分の1は、請求人の給与所得として課税されているものであり、原処分庁の見解に従ったとしても、本件支払保険料の2分の1については控除されなければならない。②原処分庁は、本件支払保険料の経理処理については、平成18年3月に行ったA医療法人に対する法人税、源泉所得税の調査により把握しており、支払保険料の経理状況確認調査に応じなかったとしても「本件支払保険料の2分の1について、請求人の給与所得として課税処理されている事実を確認できなかった」ということにはならない。
原処分庁、やむを得ず全額の控除を否認 一方、原処分庁は、次のように主張した。本件支払保険料のうち、請求人の給与所得として課税されたものは、所得税法施行令183条2項2号に規定する保険料または掛金に含まれることから、本件調査において、請求人および妻に対し、支払保険料の経理状況確認調査への協力要請を行ったが、任意調査であり書類はみせない旨、結論は出ているので、会う必要はない旨等の発言を繰り返すのみで、支払保険料の経理状況確認調査に一切応じなかった。このため、原処分庁は、請求人が本件支払保険料のうち請求人の給与所得として課税されている金額がある事実を確認することができなかったため、やむを得ず、給与所得として課税されている金額はないものと判断した。
所得税法34条2項に係る解釈と判断 審判所は、所得税法34条2項に規定されている「収入を得るために支出した金額」について、所得者である請求人自らが負担した金額(実質的に負担した金額を含む)に限られると解するのが相当とした。
そのうえで、原処分庁による更正処分に対して、当該養老保険に係る支払保険料のうち、法人の「保険料」として経理処理された以外の保険料(請求人の報酬として経理処理された保険料)は、請求人が負担したものと認められるとして、請求人が受け取った満期保険金からの控除を認め、原処分庁による更正処分の一部を取り消した。
なお、法人が「保険料」として経理処理した支払保険料について、満期保険金(一時所得)からの控除を認めないとする裁決事例は、既に公表されている(平成18年6月30日裁決・裁決事例集No.71)。
法基通9-3-4(養老保険に係る保険料)(3)
死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
審判所、支払保険料全額を否認した更正処分を一部取消し
国税不服審判所は、死亡保険金受取人を法人、満期保険金受取人を役員(請求人)とする契約の養老保険(いわゆる逆パターン養老保険)について、役員が受領した満期保険金から控除される額は当該役員に対する報酬として経理処理された保険料部分に限られるとの判断を示した。
原処分庁は、支払保険料総額について控除を否認する更正処分を行ったが、その一部が取り消された(福裁(所)平19第26号・平成20年6月6日裁決)。
2分の1「保険料」、残額「役員報酬」 請求人が理事長を務めるA医療法人は、生命保険会社と養老保険契約(下表参照)を締結し、その養老保険に係る保険料31,101,780円を支払い、請求人は平成17年12月7日、下表の「満期保険金」欄に掲げる金額の合計額30,000,000円を受領した。
なお、この養老保険契約は所得税法施行令183条(生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)3項に規定する生命保険契約に該当し、満期保険金に係る所得は、所得税法34条(一時所得)に規定する一時所得に該当する。
A医療法人の総勘定元帳、仕訳伝票、保険の保険料の内訳メモ、合計残高試算表によると、同法人は、支払保険料のうち、その2分の1の金額15,550,890円を「保険料」(以下「法人経理保険料」という)として経理処理し、その残額を請求人に対する「役員報酬」として経理処理している。

支払保険料全額を満期保険金から控除 請求人は満期保険金に係る一時所得の金額の計算上、支払保険料31,101,780円を、一時所得の収入を得るために支出した金額として控除した。これに対して原処分庁は、法人が保険料として損金経理した支払保険料および請求人に対する報酬として損金処理した支払保険料について、満期保険金(一時所得)の総収入金額からの控除を認めないとする更正処分を行った。
審査請求における請求人の主張(要旨)は、次のとおり。①当該医療法人は、本件支払保険料につき、法人税基本通達9-3-4《養老保険に係る保険料》の(3)の取扱いを類推して、本件支払保険料の2分の1を保険料として、残りの2分の1については、報酬として損金経理を行っており、本件支払保険料の2分の1は、請求人の給与所得として課税されているものであり、原処分庁の見解に従ったとしても、本件支払保険料の2分の1については控除されなければならない。②原処分庁は、本件支払保険料の経理処理については、平成18年3月に行ったA医療法人に対する法人税、源泉所得税の調査により把握しており、支払保険料の経理状況確認調査に応じなかったとしても「本件支払保険料の2分の1について、請求人の給与所得として課税処理されている事実を確認できなかった」ということにはならない。
原処分庁、やむを得ず全額の控除を否認 一方、原処分庁は、次のように主張した。本件支払保険料のうち、請求人の給与所得として課税されたものは、所得税法施行令183条2項2号に規定する保険料または掛金に含まれることから、本件調査において、請求人および妻に対し、支払保険料の経理状況確認調査への協力要請を行ったが、任意調査であり書類はみせない旨、結論は出ているので、会う必要はない旨等の発言を繰り返すのみで、支払保険料の経理状況確認調査に一切応じなかった。このため、原処分庁は、請求人が本件支払保険料のうち請求人の給与所得として課税されている金額がある事実を確認することができなかったため、やむを得ず、給与所得として課税されている金額はないものと判断した。
所得税法34条2項に係る解釈と判断 審判所は、所得税法34条2項に規定されている「収入を得るために支出した金額」について、所得者である請求人自らが負担した金額(実質的に負担した金額を含む)に限られると解するのが相当とした。
そのうえで、原処分庁による更正処分に対して、当該養老保険に係る支払保険料のうち、法人の「保険料」として経理処理された以外の保険料(請求人の報酬として経理処理された保険料)は、請求人が負担したものと認められるとして、請求人が受け取った満期保険金からの控除を認め、原処分庁による更正処分の一部を取り消した。
なお、法人が「保険料」として経理処理した支払保険料について、満期保険金(一時所得)からの控除を認めないとする裁決事例は、既に公表されている(平成18年6月30日裁決・裁決事例集No.71)。
法基通9-3-4(養老保険に係る保険料)(3)
死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。
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