会社法ニュース2003年05月18日 中小企業の視点からの商法改正論点を整理 今後の中小会社法制はどうなる?(2003年4月28号・№017) ニュース特集
ニュース特集
中小企業の視点からの商法改正論点を整理
今後の中小会社法制はどうなる?
現在、法務省の法制審議会では、会社法制の現代語化について検討を行っています。具体的には、現行の会社法制が、①商法は片仮名の文語体で標記されていること、②商法本体に株式会社、合名会社、合資会社についての規定が置かれ、有限会社については有限会社法、監査に関しては商法特例法があり、会社法制が複雑になっていること-といった理由から利用者にとって分かりやすいものに見直すというもの。平成17年の通常国会で改正法案を提出する予定です。これを受けて中小企業庁の中小企業政策審議会・会社制度部会は、中小企業政策の視点から商法改正を見直すべく検討を開始。その概要が明らかとなっています。今後、中小企業庁では、法務省・法制審議会の会社法部会に要望書を提出する予定となっています。今回の特集では、中小企業庁の同部会がまとめた「中小企業政策の視点からの新しい会社法制のあり方について」の要点を紹介します。
最低資本金規制
2月から施行されている中小企業挑戦支援法では、最低資本金規制を免除する特例が設けられていますが、通常、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が必要となっています。廃業率(約4.5%)が開業率(約3.1%)を逆転し、会社数が減少している状況を考慮し、創業を阻害する要因を少しでもなくすことが必要であるなどの理由により、最低資本金を大幅に引き下げ又は廃止することを論点として挙げています。

会社の目的記載の柔軟化
株式会社、有限会社は、定款に会社の目的を記載することが義務付けられていますが、登記事務において、語句の使用等が厳格なため、審査に時間と手間がかかるなどの弊害が指摘されています。このため、会社の目的の記載の登記事務の運用を緩和し、包括的な記載を認めるべきとしています。

取締役の員数
株式会社では、最低3名の取締役が必要ですが、譲渡制限株式会社は、家族や知人が株主となっていることが多いのが実情。このため、譲渡制限株式会社では、取締役の員数を有限会社と同様に1人でも可能とすることを求めています。

取締役会の設置
株式会社は、株主総会に加えて、取締役会と代表取締役の設置が義務付けられています。しかし、譲渡制限株式会社では、株主が限られ、経営者に対するチェックが比較的容易であることから、取締役会と代表取締役の設置義務を任意化すべきことを求めています。

取締役の任期
株式会社では、取締役の任期は2年ですが、譲渡制限株式会社は株主構成がほとんど変動せず、取締役会の構成メンバーも長期間固定しています。このため、取締役の任期を有限会社と同様に自由に決められることとすべきとしています。
取締役会の書面決議
取締役会決議は、会議の物理的な開催が前提となっていますが、IT関係の技術が普及している状況下では、取締役全員が集まって取締役会を開催することは実益に乏しい面もあります。このため、譲渡制限株式会社では、取締役全員の同意を要件として、取締役会の書面決議を認めるべきだとしています。

監査役の設置
株式会社では監査役の設置が義務付けられていますが、譲渡制限株式会社では、株主が限られており、監査役がいなくても株主による監視で十分な場合もあると指摘。このため、譲渡制限株式会社では、監査役の設置義務を任意化すべきとしています。
自己株式(持分)の取得
株式会社、有限会社では自己株式を買い受けるには、決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までに取得する株式の種類、数、取得価額の総額を定時総会で決議する必要があります。ただ、現行商法でも譲渡制限株式の売渡請求により、会社が株式の譲渡の相手方となった場合には、期中に総会の特別決議を行うことにより自己株式を取得することができますが、中小企業としては、相続などの突発的な事情により自己株式を買い受ける場合には、現行法では対応できないといったことが指摘されています。このため、自己株式の取得について、定時総会だけでなく、期中の総会決議でも可能とすべきとしています。
相続・合併時の株主移転の制限
現行の商法では、株式移転について制限できるのは譲渡の場合だけとされており、相続や合併時の地位の包括承継による移転については制限する手段がないのが現状。このため、譲渡制限会社においては、定款の定めにより、譲渡以外の事由(相続・合併)により譲渡制限株式を取得した場合には、その会社の承認を要することとすることを求めています。

計算書類の公告
計算書類の公告は、平成13年の商法改正により、従来の新聞・官報に加え、インターネット公告も認められていますが、現状では9割以上の会社が計算書類の公告を実施していないといわれています。金融機関や取引先では、中小企業から直接財務情報を入手しており、特に公告を行う側の中小企業のメリットが何もないという点が公告を実施しない原因の一つだといわれています。このため、中小企業による計算書類の充実に向けた取組みを促進する上では、何らかのインセンティブの付与を与えることなどが効果的であるとしており、義務の必要性を含め、見直すべきとしています。
今後の商法改正の動きに注目!
上記の論点の他にも、①合名会社・合資会社についても1人会社を認めるべき(※現行は最低2人の社員が必要)、②合名会社・合資会社から有限会社・株式会社への組織変更を認めるべき(※現行では認められていません)-といった点が挙げられています。
ただ、中小企業庁が求めるこれらの商法改正の論点が、すべて今後の商法改正に盛り込まれるかどうかは未定です。今後の改正動向に注目したいところです。
中小企業の視点からの商法改正論点を整理
今後の中小会社法制はどうなる?
現在、法務省の法制審議会では、会社法制の現代語化について検討を行っています。具体的には、現行の会社法制が、①商法は片仮名の文語体で標記されていること、②商法本体に株式会社、合名会社、合資会社についての規定が置かれ、有限会社については有限会社法、監査に関しては商法特例法があり、会社法制が複雑になっていること-といった理由から利用者にとって分かりやすいものに見直すというもの。平成17年の通常国会で改正法案を提出する予定です。これを受けて中小企業庁の中小企業政策審議会・会社制度部会は、中小企業政策の視点から商法改正を見直すべく検討を開始。その概要が明らかとなっています。今後、中小企業庁では、法務省・法制審議会の会社法部会に要望書を提出する予定となっています。今回の特集では、中小企業庁の同部会がまとめた「中小企業政策の視点からの新しい会社法制のあり方について」の要点を紹介します。
最低資本金規制
2月から施行されている中小企業挑戦支援法では、最低資本金規制を免除する特例が設けられていますが、通常、株式会社は1,000万円、有限会社は300万円の最低資本金が必要となっています。廃業率(約4.5%)が開業率(約3.1%)を逆転し、会社数が減少している状況を考慮し、創業を阻害する要因を少しでもなくすことが必要であるなどの理由により、最低資本金を大幅に引き下げ又は廃止することを論点として挙げています。

会社の目的記載の柔軟化
株式会社、有限会社は、定款に会社の目的を記載することが義務付けられていますが、登記事務において、語句の使用等が厳格なため、審査に時間と手間がかかるなどの弊害が指摘されています。このため、会社の目的の記載の登記事務の運用を緩和し、包括的な記載を認めるべきとしています。

取締役の員数
株式会社では、最低3名の取締役が必要ですが、譲渡制限株式会社は、家族や知人が株主となっていることが多いのが実情。このため、譲渡制限株式会社では、取締役の員数を有限会社と同様に1人でも可能とすることを求めています。

取締役会の設置
株式会社は、株主総会に加えて、取締役会と代表取締役の設置が義務付けられています。しかし、譲渡制限株式会社では、株主が限られ、経営者に対するチェックが比較的容易であることから、取締役会と代表取締役の設置義務を任意化すべきことを求めています。

取締役の任期
株式会社では、取締役の任期は2年ですが、譲渡制限株式会社は株主構成がほとんど変動せず、取締役会の構成メンバーも長期間固定しています。このため、取締役の任期を有限会社と同様に自由に決められることとすべきとしています。

取締役会の書面決議
取締役会決議は、会議の物理的な開催が前提となっていますが、IT関係の技術が普及している状況下では、取締役全員が集まって取締役会を開催することは実益に乏しい面もあります。このため、譲渡制限株式会社では、取締役全員の同意を要件として、取締役会の書面決議を認めるべきだとしています。

監査役の設置
株式会社では監査役の設置が義務付けられていますが、譲渡制限株式会社では、株主が限られており、監査役がいなくても株主による監視で十分な場合もあると指摘。このため、譲渡制限株式会社では、監査役の設置義務を任意化すべきとしています。

自己株式(持分)の取得
株式会社、有限会社では自己株式を買い受けるには、決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までに取得する株式の種類、数、取得価額の総額を定時総会で決議する必要があります。ただ、現行商法でも譲渡制限株式の売渡請求により、会社が株式の譲渡の相手方となった場合には、期中に総会の特別決議を行うことにより自己株式を取得することができますが、中小企業としては、相続などの突発的な事情により自己株式を買い受ける場合には、現行法では対応できないといったことが指摘されています。このため、自己株式の取得について、定時総会だけでなく、期中の総会決議でも可能とすべきとしています。

相続・合併時の株主移転の制限
現行の商法では、株式移転について制限できるのは譲渡の場合だけとされており、相続や合併時の地位の包括承継による移転については制限する手段がないのが現状。このため、譲渡制限会社においては、定款の定めにより、譲渡以外の事由(相続・合併)により譲渡制限株式を取得した場合には、その会社の承認を要することとすることを求めています。

計算書類の公告
計算書類の公告は、平成13年の商法改正により、従来の新聞・官報に加え、インターネット公告も認められていますが、現状では9割以上の会社が計算書類の公告を実施していないといわれています。金融機関や取引先では、中小企業から直接財務情報を入手しており、特に公告を行う側の中小企業のメリットが何もないという点が公告を実施しない原因の一つだといわれています。このため、中小企業による計算書類の充実に向けた取組みを促進する上では、何らかのインセンティブの付与を与えることなどが効果的であるとしており、義務の必要性を含め、見直すべきとしています。

今後の商法改正の動きに注目!
上記の論点の他にも、①合名会社・合資会社についても1人会社を認めるべき(※現行は最低2人の社員が必要)、②合名会社・合資会社から有限会社・株式会社への組織変更を認めるべき(※現行では認められていません)-といった点が挙げられています。
ただ、中小企業庁が求めるこれらの商法改正の論点が、すべて今後の商法改正に盛り込まれるかどうかは未定です。今後の改正動向に注目したいところです。
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