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税務ニュース2009年02月16日 固定合意の相当な価額の証明にガイドラインを取りまとめ(2009年2月16日号・№295) 国税庁の時価評価額との調整はどうなる?

固定合意の相当な価額の証明にガイドラインを取りまとめ
国税庁の時価評価額との調整はどうなる?

小企業庁は2月9日、「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」を取りまとめ公表した。「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」は、昨年5月に成立した「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継法)」が事業承継時に制約となり得る「遺留分」の問題を解決するため、非上場中小企業の後継者が贈与により取得した自社株式等について、「遺留分を算定する際の価額を合意の時における価額に固定する内容の合意(固定合意)」を行うことを可能としており、「合意の時における相当な価額」を弁護士・税理士・公認会計士といった専門家が証明する際の非上場株式等の評価方法についての考え方を示したものである。
 中小企業庁では、平成20年5月に「非上場株式の評価の在り方に関する委員会(委員長:岡村正日本商工会議所会頭)」を設置して検討を進めてきた。

「固定合意」で円滑な事業承継を  経営承継法は、後継者が贈与により取得した自社株式について、「遺留分を算定する際の価額を合意の時における価額に固定する」ことを内容とする合意(以下「固定合意」という)を行うことができる民法の特例を創設して、その手続を定めている。相続時の時価で持戻しの算定を行う現行民法(相続法)の取扱いに比べると、「固定合意」を活用することで、後継者は、将来の企業価値の上昇に伴う遺留分額の増大を心配することなく経営に専念することが可能となる。中小企業庁は、「固定合意」を活用することで、後継者が自社株式を確保したうえで、当該企業の経営意欲を持ち続けることができるとして、経営承継法に基づく「固定合意」の活用を図っている。

合意時価額は専門家が証明  固定合意における価額は、弁護士、税理士、公認会計士等の専門家がそのときにおける相当な価額として証明したものに限られている。ガイドラインでは、贈与税の課税価格となる贈与時の時価と、先代経営者の相続人間の権利関係を規律する遺留分制度の特例である固定合意とは、趣旨・目的が異なる制度であるとしている。
 ガイドラインは、固定合意の「価額」は贈与税の「時価」とは異なるものであることに留意する必要があるとする一方で、合理的に算定された「価額」は、「時価」の1つであり、唯一絶対の価額があるわけではないものの、専門家が相当な価額であると証明するには客観的合理性も求められるとしている。そこで専門家が株式評価の実施にあたって留意すべき事項・各種評価方法の考え方がガイドラインとして取りまとめられることになった。
 ガイドラインでは、非上場株式の評価方式(①収益方式②純資産方式③比準方式)・国税庁の評価方式の解説を行ったうえで、評価方式の選択に係る留意事項を記述している。
 収益方式の評価では、利益またはFCF(フリー・キャッシュ・フロー)の算定にあたり、過去数事業年度の利益またはFCFの平均値をベースとすることや、過去実績に基づく評価が望ましい例・将来の事業計画に基づく評価が望ましい例があげられ、割引率の算定ではWACC(加重平均資本コスト)により算定するのが一般的であるとしながら、専門家の判断により、過去数年間の長期プライムレートの平均値に各種のリスク率を加味して算定することも考えられるとして実例(裁判例)を示している。
 純資産方式の評価では、時価純資産方式が一般的との見方を示しつつ、法人税額等相当額の控除や、退職給付引当金の計上などについては、価額の相当性を証明する専門家の判断によるものと記述している。このような記述からは、たとえば、評価通達において控除することが認められている評価差額に対する法人税相当額も、会社の存続を前提とした「固定合意」の趣旨に照らして、控除が疑問となるケースもあり、反対に評価通達において控除することが認められていない退職給付引当金を控除すべきケースも想定すべきということであろう。
 比準方式では、対比する上場会社との比準では、客観性を高めるため、複数の上場会社を選択し、その価額を按分することが望ましいとし、類似業種比準方式については、一般的には、国税庁方式を採用することが考えられるが、同方式を一部修正する方法も考えられるとしている。

国税庁方式との関係  ガイドラインでは、課税を前提とした国税庁方式による評価額と、経営承継法の固定合意における価額とは、その趣旨・目的を異にすることから、乖離が生じること自体は問題がないとしている。しかしながら、実務家の主要な疑問は、(自らが証明した)固定合意による価額が税務上も容認されるかどうかということに尽きるであろう(税務上否認されることのさまざまなリスクも含め)。
 ガイドラインは、合意時価額が贈与税の計算における価額を下回った時には、いずれが相続税法上の「時価」として妥当であるか等を見極めて納税申告をすることが望まれると記述している。さらに、「国税庁方式は、常に画一的で固定的(形式的)な評価方式にこだわっている訳ではなく、弾力的に取り扱うことを明らかにしている。このため、固定合意において専門家が相当であると証明した合意時価額が、合意後の課税関係においても参考にされることも考えられる。」と記述している。ガイドラインには法的な拘束力はないものの、本ガイドラインを活用することで、国税庁が容認せざるを得ないしっかりとした「合意時価額」の証明が、専門家において行われることに、強い期待を示したものとなっている。
 このほか、ガイドラインには、「非上場株式の評価における証明書例」「収益方式における割引率(WACC)の算出例」「非上場株式の売買価格等の裁判例」が掲載されている。

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