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税務ニュース2011年01月31日 小規模企業共済の契約解除権、徴収職員による行使を認める(2011年1月31日号・№388) 東京地裁、国が原告の取立債権請求事件で判断

小規模企業共済の契約解除権、徴収職員による行使を認める
東京地裁、国が原告の取立債権請求事件で判断

京地裁民事第45部(石井浩裁判官)は11月18日、小規模企業共済契約を締結している租税滞納者に対する租税債権を徴収するため、当該共済契約に基づく解約手当金請求権を差し押さえた原告(国)が、被告に対し、取立権に基づき滞納者の有する共済契約解除権を行使したうえで、解約手当金および遅延損害金の支払いを求めた事案で、共済契約の契約解除権は、一身専属的権利ではなく、その行使は、差し押さえた解約手当支払請求権を現実化させるために必要不可欠な行為であるなどと判断。被告に解約手当金等の支払いを求める国の請求を認める判決を言い渡した(平成21年(ワ)第29929号等)。

解除権の行使は必要不可欠な行為  本件における争点は、(1)共済契約の解除権行使の可否、(2)履行遅滞の有無および時期、(3)遅延損害金の利率の3点。
 判決は、争点(1)について、税務署長その他国税の徴収に関する事務に従事する徴収職員は、差し押さえた債権の取立てをすることができるとされており(徴収法67①)、その取立権の内容として、原告(徴収職員)は、自己の名で被差押債権の取立てに必要な範囲で滞納者の一身専属的権利に属するものを除く一切の権利を行使することができるものと解するのが相当(最高裁平成11年9月9日第一小法廷判決・民集53巻7号1173頁参照)と指摘。
 共済契約の解除権の行使により、共済契約者は被告に対する解約手当金支払請求権を取得することになるところ、かかる解除権は、身分法上の権利と性質を異にし、その行使を共済契約者のみの意思にゆだねるべき事情はないから、一身専属的権利ではないと解するのが相当と判断している。
 また、共済法は、原則として、共済金等の支給を受ける権利は差し押さえることができないとしているが、国税滞納処分により差し押さえる場合については、その例外としているところ、共済契約に係る解約手当金支払請求権は、共済契約者が共済契約の解除権を行使することによって生じる権利であり、解除権の行使は、差し押さえた解約手当金支払請求権を現実化させるために必要不可欠な行為であると指摘。原告が、上記解除権を行使することができないとすれば、共済法15条が解約手当金支払請求権の差押えを認めた実質的意味が失われる結果となり、他方で、差押禁止の例外とされている共済契約に係る解約手当金支払請求権について、預貯金債権等と異なる取扱いをして取立ての対象から除外すべき理由は認められないことからすれば、原告による共済契約の解除権の行使が被差押債権である解約手当金支払請求権の取立ての目的の範囲を超えるということはできず、これは、原告による本件各契約の解除権の行使についてもそのまま当てはまるものということができると判断した。

解約手当金は差押禁止債権ではない  また、判決は、共済法12条1項に規定する解約手当金のうち、①同法2条3項に規定する共済契約者で年齢65歳以上であるものが共済契約を解除したことにより支給される解約手当金(所令72②三ロ)および②共済法7条4項の規定により共済契約が解除されたものとみなされたことにより支給される解約手当金(同ハ)以外のものは、差押禁止債権から除外されている(徴収法施行令35④六)が、本件滞納者らの有する本件各解約手当金支払請求権に係る解約手当金は、いずれも所令72条2項3号ロまたはハに該当せず、差押禁止債権ではないと指摘している。

遅延損害金の請求は可能  争点(2)では、共済金契約の解除によって生じる解約手当金支払債務は、通常の金銭債務であり、その債務の履行について時期および遅滞を当然に観念することができるものであるから、債務の履行遅滞による遅延損害金に関する規定がないからといって、上記債務が履行遅滞になることはないと解することはできないと指摘。
 共済法が、共済契約者はいつでも共済契約を解除することができ、同契約が解除された場合、被告は共済契約者に対して所定の解約手当金を支給すると規定するにとどまり、解約手当金の支給時期の定めはないことからすれば、共済契約の解除によって生じる解約手当金支払債務は期限の定めのない債務であり、履行の請求を受けた時から履行遅滞になるものと解される(民法412③)とした。また、解約手当金の支給手続に一定程度の期間が必要であるとしても、これだけで直ちに支給手続に通常要すべき合理的期間が経過するまでは履行遅滞にはならないと解することはできないとして、原告は、被告に対し、本件解約手当金支払請求権に係る解約手当金について、催告日または履行期限の翌日からの遅延損害金を請求することができるとした。

契約締結は付随的商行為に当たる  争点(3)については、本件滞納者らが、いずれも商人であることから、同人らによる本件各契約の締結は、付属的商行為に当たり(商法503)、本件各契約の解除によって被告が負担することになる解約手当金支払債務の履行遅滞による遅延損害金の利率は年6分となる(同法514)と判断した。なお、共済制度が、特別立法による公的制度であることや共済契約者の生活保障を目的とする制度であり、共済契約を締結し得るのは商人に限らないことからすれば、解約手当金支払債務の履行遅滞による遅延損害金の利率には商事法定利率ではなく、民法所定の利率が適用されるべきとの被告の主張に対しては、共済制度には、小規模企業者の福祉の増進という目的のほか、小規模企業の振興に寄与するという目的もあり(共済法1)、そのための貸付制度も設けられていることや、本件滞納者らはいずれも商人であることなどから、当該主張のような事情があったとしても、上記の判断が左右されるものではないとした。

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