会社法ニュース2003年06月30日 法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点(株主側編)(2003年6月30日号・№025) ニュース特集 商法改正でぐーんと使いやすくなった
ニュース特集
商法改正でぐーんと使いやすくなった
法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点
株主側編
T&Amaster19号(5月19日号)・20号(5月26日号)では、法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点(発行会社編)を特集しました。今回は、いよいよ株主側編です。商法289条2項による取崩しの場合に焦点をあて、法人株主・個人株主ごとにわけ、法務・会計・税務処理に関する注意点をまとめてみました。なお、会計面に関しては法人株主を想定しています。
289条2項による取崩額を配当にまわした場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、×1期の定時総会における商法289条2項に基づく取崩額を、実際に配当にまわせるのは×2期の定時総会となります。
会計:(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)配当受取時:企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」によりますと、売買目的有価証券か否かで処理が異なります。
売買目的有価証券の場合
配当落ち日に未収計上する場合(42ページの「ことばのコンビニ」参照)の仕訳は次のとおり。
売買目的有価証券以外の場合
配当落ち日に未収計上する場合の仕訳は下図のとおり。
なお、原則としてその他資本剰余金の処分による配当(投資そのものの払戻し)か未処分利益の処分よる配当(投資成果の分配)かにより処理がわかれます。
配当金受領時
未収金を取り崩し、源泉所得税を計上します。
税務:株主が受取る①「資本準備金」を取崩した「資本剰余金」を原資とした配当も、②「利益準備金」を取り崩した「未処分利益」を原資とした配当も、税法上は、同じく「配当」として取り扱われます。発行会社側では、原資の性格によらず、「利益積立金額」の減少として取り扱っていることに平仄を合わせています。「配当」として取り扱われていますので、支払法人で源泉徴収された残額を受取ることになります。
289条2項による取崩額を払戻した場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、商法289条2項に基づく取崩額につき債権者保護手続終了後に直接払戻すことができます。
会計:原則として「289条2項による取崩額を配当にまわした場合」と同じです。もっとも、発行会社での資本積立金額の減額部分は税務では「配当」と扱われないことから、その分については源泉所得税が発生しないという違いがあります。
(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)払戻金受取時:未収計上に関しては「289条2項による取崩額を配当にまわした場合」と同様です。
払戻金受領時
未収金を取り崩し、みなし配当分についての源泉所得税を計上します。
税務:法人税法・所得税法に明文規定がみられないため、資本の減少の規定を準用するものと考えられます。
すなわち、交付金銭等額のうち、資本等に相当する部分については、株主側は、資本の払戻しとして当該株式の譲渡損益を認識します。資本等に相当する部分を超える部分については、株主側は(みなし)配当を認識します。(みなし)配当部分は源泉徴収の対象となり、みなし配当金額は払戻法人から通知されます(法令23④)。
289条2項による取崩額で自己株式を取得した場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、発行会社は商法289条2項に基づく取崩額を財源として自己株式を取得できます。株主から見ると単なる有価証券の譲渡となります。
会計:(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)有価証券譲渡時(発行会社から見たら自己株式取得時):
売買約定日に有価証券の譲渡ならびに有価証券売却損益を認識します。
税務:株式の発行会社に当該株式を譲渡した場合、対価として取得した金銭等の額が、当該株式に対応する譲渡時の発行会社の資本等の額を超える場合には、その超える部分の金額をみなし配当として認識します。みなし配当とされる部分の金額を除いた金額が譲渡損益の収入になります。
しかし、株式の発行会社が公開会社で、市場において自己株式を購入した場合は、譲渡した側においては譲渡先が不明であることから、みなし配当課税は行われず、対価として取得した金銭等の全額が譲渡損益の収入になります。
商法改正でぐーんと使いやすくなった
法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点
株主側編
T&Amaster19号(5月19日号)・20号(5月26日号)では、法定準備金の取崩に際しての法務・会計・税務処理の注意点(発行会社編)を特集しました。今回は、いよいよ株主側編です。商法289条2項による取崩しの場合に焦点をあて、法人株主・個人株主ごとにわけ、法務・会計・税務処理に関する注意点をまとめてみました。なお、会計面に関しては法人株主を想定しています。
289条2項による取崩額を配当にまわした場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、×1期の定時総会における商法289条2項に基づく取崩額を、実際に配当にまわせるのは×2期の定時総会となります。
会計:(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)配当受取時:企業会計基準適用指針第3号「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」によりますと、売買目的有価証券か否かで処理が異なります。
売買目的有価証券の場合
配当落ち日に未収計上する場合(42ページの「ことばのコンビニ」参照)の仕訳は次のとおり。
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売買目的有価証券以外の場合
配当落ち日に未収計上する場合の仕訳は下図のとおり。
なお、原則としてその他資本剰余金の処分による配当(投資そのものの払戻し)か未処分利益の処分よる配当(投資成果の分配)かにより処理がわかれます。
配当金受領時
未収金を取り崩し、源泉所得税を計上します。
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税務:株主が受取る①「資本準備金」を取崩した「資本剰余金」を原資とした配当も、②「利益準備金」を取り崩した「未処分利益」を原資とした配当も、税法上は、同じく「配当」として取り扱われます。発行会社側では、原資の性格によらず、「利益積立金額」の減少として取り扱っていることに平仄を合わせています。「配当」として取り扱われていますので、支払法人で源泉徴収された残額を受取ることになります。
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289条2項による取崩額を払戻した場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、商法289条2項に基づく取崩額につき債権者保護手続終了後に直接払戻すことができます。
会計:原則として「289条2項による取崩額を配当にまわした場合」と同じです。もっとも、発行会社での資本積立金額の減額部分は税務では「配当」と扱われないことから、その分については源泉所得税が発生しないという違いがあります。
(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)払戻金受取時:未収計上に関しては「289条2項による取崩額を配当にまわした場合」と同様です。
払戻金受領時
未収金を取り崩し、みなし配当分についての源泉所得税を計上します。
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税務:法人税法・所得税法に明文規定がみられないため、資本の減少の規定を準用するものと考えられます。
すなわち、交付金銭等額のうち、資本等に相当する部分については、株主側は、資本の払戻しとして当該株式の譲渡損益を認識します。資本等に相当する部分を超える部分については、株主側は(みなし)配当を認識します。(みなし)配当部分は源泉徴収の対象となり、みなし配当金額は払戻法人から通知されます(法令23④)。
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289条2項による取崩額で自己株式を取得した場合
法務:19号(5月19日号)で述べたとおり、発行会社は商法289条2項に基づく取崩額を財源として自己株式を取得できます。株主から見ると単なる有価証券の譲渡となります。
会計:(1)準備金取崩時:取崩自体では株式の価値は変わりませんので、株主側は仕訳不要です。
(2)有価証券譲渡時(発行会社から見たら自己株式取得時):
売買約定日に有価証券の譲渡ならびに有価証券売却損益を認識します。
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税務:株式の発行会社に当該株式を譲渡した場合、対価として取得した金銭等の額が、当該株式に対応する譲渡時の発行会社の資本等の額を超える場合には、その超える部分の金額をみなし配当として認識します。みなし配当とされる部分の金額を除いた金額が譲渡損益の収入になります。
しかし、株式の発行会社が公開会社で、市場において自己株式を購入した場合は、譲渡した側においては譲渡先が不明であることから、みなし配当課税は行われず、対価として取得した金銭等の全額が譲渡損益の収入になります。
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