カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

税務ニュース2003年07月14日 最高裁の上告不受理決定で「医療法人の出資額払戻し」が確定!(2003年7月14日号・№027) 出資額限度法人の制度化には追い風だが、評価には難問山積

最高裁の上告不受理決定で「医療法人の出資額払戻し」が確定!
出資額限度法人の制度化には追い風だが、評価には難問山積



最高裁判所第二小法廷は、医療法人社団の出資持分の払戻請求に関して、「医療法人の持分の払戻額を払込の出資額とする定款変更」の有効性を認めた控訴審判決に対する上告の申立てについて、上告不受理の決定を行った(平成15年6月27日、平成13年(受)850号)。この裁判については、医療法人社団の事業承継という問題にとどまらず、広く事業承継(税制)のあり方・相続財産の評価の観点から注目されていた。

相続直前の定款変更により「払込出資額」の払戻しを規定
 今回の事件では、出資持分の定めのある医療法人に対する出資持分について払戻額が争われた。医療法人に対する出資の払戻しについて、定款モデル例では、下記のとおり規定されている。
第○条 社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。
 社員が死亡した場合には、定款により社員の資格を失い、相続人に出資払戻請求権が生ずることになるが、本件では、遺言により、出資払戻請求権は、原告(前理事長の後妻)が相続することになっていた。
 「出資額に応じて払戻す」ことの意義について、原告は、これまでの判例などを挙げて、払戻し時の当該法人の時価純資産価額に出資額の割合を乗じて計算することを主張したが、被告の医療法人(理事長は前理事長の亡き先妻の子)では、医療法人の公益性の観点からも、出資額の割合に応じた分配はできないことを主張した。
 本件では、当該医療法人が明治12年に創立された個人病院を母体とした歴史ある医療機関であり、昭和31年に前理事長(被相続人)が医療法人化したもので、借地権等の含み益を考慮すると、被相続人の出資額1,087万円余りに対応する純資産価額が37億円4,900万円であると原告は主張した。
 医療活動に投じられたこれらの「出資及び収益」の払戻しを請求されるとなれば、医療法人の存続が脅かされる。医療法人側では、「出資持分に対する払戻し請求は、出資額を限度とする」規定を定款に盛り込んだ。医療法人社団の定款変更は、東京都知事の認可事項となっているが、「出資額限度方式による定款の変更」については、営利法人(合名会社)を除く社員全員の承認が、東京都の指導により求められ、平成8年6月20日に、東京都知事により、「出資額限度方式による定款の変更」は認可された。医療法人の定款は次のように変更された。
第○条 社員資格を喪失した者は、出資額を限度として払戻しを請求することができる。
 その後間もない平成8年6月27日に前理事長は、死亡した。
医療法人だけでない出資評価の問題点
 このような問題は、医療法人社団に限定される問題ではない。合名会社の無限責任社員あるいは、農業共同組合等の出資でも同様の問題が生じうる。合名会社に対する出資は、相続税評価上も取引相場のない株式の評価方法に準じて計算した価額によって評価することになっている(評基通194)が、農業協同組合等の出資では、相続税評価上も払込出資額によって評価することになっている(評基通195)。これらの評価取扱い上の相違は、営利法人的な色彩の強いものには時価による持分課税を、組合員の相互扶助を目的とするようなものに対しては、払込済出資価額により、評価することが妥当と説明されている。

出資額限度法人の制度化 
 医療法人社団に対する出資の評価は、かなりの高額となる場合がある。相続税負担及び、出資持分の払戻し請求の場合には、医療法人そのものの存続が危ぶまれることが指摘されていた。医療界からは、本件の定款変更の例と同様な「払戻し額を出資額を限度とする法人の制度化」と「相続税における出資額評価の容認」を求める要望が出されている。また、厚生労働省の「これからの医業経営のあり方に関する検討会」最終報告書(平成15年3月26日)においても、「社団医療法人の持分について」という項目において、出資額限度法人の制度化が必要であるとする意見が掲載されている。本決定は、出資額限度法人の制度化に追い風となるものと考えられる。
判決の意義と財産評価は直結できない
 本件の控訴審以降では、出資額を限度とすることの是非は争われていない。定款変更手続きの瑕疵を起因とする出資額限度法人への定款変更の有効性が争われたものである。そのため、「最高裁が出資額限度の払戻しを認めた。」ということではないのだが、結果だけをみると、定款に出資額限度規定を盛り込むことが認められたとの印象も強い。実務家の関心はさらに一歩進んで、出資額限度法人に対する出資の税務上の取扱いにあるだろう。
 しかし、本件判決は、税務上の取扱いに直接に言及するものではない。確かに、1,087万円の払戻しに対して、37億円余りの評価で課税することは、実際困難であろう。実際の払戻し額による評価が認められるのが自然であろう。だが、税務上の問題は、相続財産の評価に留まるものではない。医療法人に集積された収益部分は、払戻しにより残存社員に移転したとみることもできる。制度化される出資額限度法人では、出資額限度法人から、一般の医療法人社団への変更は認めないことを検討しているようだが、営利法人にまでの適用を視野に入れた場合には、私的自治の原則との調整も図っていかなければならない。社員(株主)が出資額限度の規定を廃することも考えられるからだ。
 この裁判の結果は、確かに、定款の規定に基づく出資額限度の払戻しを命じているが、それが、直ちに税務上の財産評価の取扱いの変更に結びつくと考えるのは早計に思われる。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索