税務ニュース2003年09月16日 各省庁の平成16年度税制改正要望の主要項目を紹介(2003年9月15日号・№035) ニュース特集 今年の目玉はこれだ!!住宅ローン減税制度の適用期限延長など
ニュース特集
今年の目玉はこれだ!!
住宅ローン減税制度の適用期限延長など
各省庁の平成16年度税制改正要望の主要項目を紹介
各省庁の税制改正要望が出揃いました。6月に公表された政府税制調査会の中期答申「少子・高齢化における税制のあり方」では、公的年金等控除の見直しの他、各種控除の見直しや社会保険料控除の縮減などが盛り込まれており、今後の議論が注目されますが、各省庁からは、住宅ローン減税制度の期限延長や欠損金の繰越期間延長等の要望が寄せられています。今回の特集では、経済産業省、国土交通省、金融庁の税制改正要望を中心に、その主要項目について紹介します。
住宅ローン減税制度の延長は?
国土交通省や経済産業省では、平成15年12月31日で期限切れとなる所得税控除制度の延長を求めています。住宅取得支援を引き続き行うことにより、経済効果の大きい住宅投資の促進による景気の下支えを図る目的があります。国土交通省の試算によれば、住宅ローン減税制度が廃止された場合、平成14年着工戸数より9.9万戸減少し、経済損失は4.6兆円に至るとされています。
その他にも、新築後20年未満(マンションは25年未満)でないものであっても、一定の基準を満たすものを対象とすることや増改築等の借入金の償還期間要件である「10年以上」を短縮することなどを求めています。しかし、財務省としては、住宅ローン減税制度の適用期限を仮に延長したとしても、要件を緩和するのではなく、厳しくする方向の見解を持っているようです。
住宅投資の促進を図るための特例措置の創設は?
また、今回注目すべき点として、国土交通省では、住宅投資の促進を図るための特例措置を求めています。これは、個人が一定以上の質・要件を満たす住宅投資(リフォーム投資を含む)を行う場合に、借入金ではなく、投資額を対象として一定率の減税を行うもの。ただし、財務省の感触としてはあまり芳しくなく、現時点において、同特例措置の実現は難しい状況のようです。
欠損金の繰越期間の延長は?
次に注目すべき点は欠損金の繰越期間の延長と繰戻還付の凍結解除。経済産業省では、企業規模、形態を問わず、すべての法人について、繰越期間を7年(現行5年)に延長するとともに、繰戻還付(1年)の凍結解除を求めています。一方、金融庁では、金融機関に限り、繰越期間を10年、繰戻還付の凍結解除及び期間を16年に延長する他、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲拡大(全額損金算入)を求めています。
しかし、政府税調の中期答申では、この点について、金融機関に限った特例措置は他の納税者との公平性を著しく欠くなど税制上も極めて問題が大きいとしているため、実現には難しそうな状況です。ただ、繰越期間を7年に延長する点については、帳簿保存期間である7年との整合性を図る意味から、実現の可能性はありそうです。
事業再生関連の税制は?
事業再生関連では、経済産業省が欠損填補を行った場合の法人事業税の課税標準の適正化などを求めています。これは、事業再生の過程で減資による欠損填補を行った場合、資本金は減少しますが、資本等の金額は変化しないため、再建前よりも多くの課税負担が生じるケースがあることによるもの。このため、無償減資した金額のうち、欠損填補に当てた金額を外形標準課税の資本割、法人住民税の均等割の課税標準である資本等の金額から控除することを求めています(本誌No.9・11頁参照)。
また、金融庁では、右記にある税制措置や再生企業の経営者が合理的な企業再生計画に基づき私財を提供した場合の譲渡所得の非課税措置の創設などを求めています。
金融関連の税制は?
金融庁や経済産業省では、個人による株式投資を促進させるための措置として日本版PEPの創設を挙げています(本誌No. 34・ことばのコンビニ参照)。 同制度は、年間の一定限度額までは、特別な口座(PEP口座)を通じた株式投資について、そこから生じる株式譲渡益等を非課税とするもので、英国において1987年に導入されています。今回の要望の背景には、欧米諸国と比べて個人金融資産のうち株式投資の割合が4.8%と低いことがあります。
また、平成15年度税制改正では、公募株式投資信託の償還(解約)損失と株式等に係る譲渡益について損益通算が可能になりましたが、さらに金融商品課税の一体化を推進する観点から、上場株式等の譲渡損失と配当との損益通算を可能にする点などが挙げられています(メモ参照)。その他、非上場株式の譲渡益に係る税率を上場株式等と同様に20%(現行26%)に引き下げることなども求めています。
その他の改正要望項目は?
その他、平成16年度税制改正において何らかの形で検討課題にのぼるであろう改正要望項目としては、①連結付加税の確実な廃止、②減損会計の導入に伴い計上される減損損失の損金算入、③固定資産税負担水準の引き下げ、④中小企業投資促進税制やエネルギー需給構造改革投資促進税制の適用期限延長、⑤事業承継税制の拡充、⑥住民税へのエンジェル税制の導入、⑦特別法人税の撤廃、⑧確定拠出年金限度額の引き上げ、⑨約束手形CPに関する印紙税の軽減措置の適用期限の延長、⑩外国法人の発行する短期外債(いわゆるサムライ電子CP)の償還差益に係る源泉徴収の免除措置の創設、⑪外形標準課税に関する特例など、さまざまなものが挙げられます。
このうち、⑤では、自社株に対する軽減措置として、相続税の課税価格を10%軽減する措置(平成14年度税制改正で措置)を50%軽減に拡充することを求めています(右図参照)。
なお、これらについては、下記の各省庁のホームページから閲覧することが可能です。
今年の目玉はこれだ!!
住宅ローン減税制度の適用期限延長など
各省庁の平成16年度税制改正要望の主要項目を紹介
各省庁の税制改正要望が出揃いました。6月に公表された政府税制調査会の中期答申「少子・高齢化における税制のあり方」では、公的年金等控除の見直しの他、各種控除の見直しや社会保険料控除の縮減などが盛り込まれており、今後の議論が注目されますが、各省庁からは、住宅ローン減税制度の期限延長や欠損金の繰越期間延長等の要望が寄せられています。今回の特集では、経済産業省、国土交通省、金融庁の税制改正要望を中心に、その主要項目について紹介します。
住宅ローン減税制度の延長は?
国土交通省や経済産業省では、平成15年12月31日で期限切れとなる所得税控除制度の延長を求めています。住宅取得支援を引き続き行うことにより、経済効果の大きい住宅投資の促進による景気の下支えを図る目的があります。国土交通省の試算によれば、住宅ローン減税制度が廃止された場合、平成14年着工戸数より9.9万戸減少し、経済損失は4.6兆円に至るとされています。
その他にも、新築後20年未満(マンションは25年未満)でないものであっても、一定の基準を満たすものを対象とすることや増改築等の借入金の償還期間要件である「10年以上」を短縮することなどを求めています。しかし、財務省としては、住宅ローン減税制度の適用期限を仮に延長したとしても、要件を緩和するのではなく、厳しくする方向の見解を持っているようです。
住宅投資の促進を図るための特例措置の創設は?
また、今回注目すべき点として、国土交通省では、住宅投資の促進を図るための特例措置を求めています。これは、個人が一定以上の質・要件を満たす住宅投資(リフォーム投資を含む)を行う場合に、借入金ではなく、投資額を対象として一定率の減税を行うもの。ただし、財務省の感触としてはあまり芳しくなく、現時点において、同特例措置の実現は難しい状況のようです。
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欠損金の繰越期間の延長は?
次に注目すべき点は欠損金の繰越期間の延長と繰戻還付の凍結解除。経済産業省では、企業規模、形態を問わず、すべての法人について、繰越期間を7年(現行5年)に延長するとともに、繰戻還付(1年)の凍結解除を求めています。一方、金融庁では、金融機関に限り、繰越期間を10年、繰戻還付の凍結解除及び期間を16年に延長する他、貸倒れに係る無税償却・引当の範囲拡大(全額損金算入)を求めています。
しかし、政府税調の中期答申では、この点について、金融機関に限った特例措置は他の納税者との公平性を著しく欠くなど税制上も極めて問題が大きいとしているため、実現には難しそうな状況です。ただ、繰越期間を7年に延長する点については、帳簿保存期間である7年との整合性を図る意味から、実現の可能性はありそうです。
事業再生関連の税制は?
事業再生関連では、経済産業省が欠損填補を行った場合の法人事業税の課税標準の適正化などを求めています。これは、事業再生の過程で減資による欠損填補を行った場合、資本金は減少しますが、資本等の金額は変化しないため、再建前よりも多くの課税負担が生じるケースがあることによるもの。このため、無償減資した金額のうち、欠損填補に当てた金額を外形標準課税の資本割、法人住民税の均等割の課税標準である資本等の金額から控除することを求めています(本誌No.9・11頁参照)。
また、金融庁では、右記にある税制措置や再生企業の経営者が合理的な企業再生計画に基づき私財を提供した場合の譲渡所得の非課税措置の創設などを求めています。
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金融関連の税制は?
金融庁や経済産業省では、個人による株式投資を促進させるための措置として日本版PEPの創設を挙げています(本誌No. 34・ことばのコンビニ参照)。 同制度は、年間の一定限度額までは、特別な口座(PEP口座)を通じた株式投資について、そこから生じる株式譲渡益等を非課税とするもので、英国において1987年に導入されています。今回の要望の背景には、欧米諸国と比べて個人金融資産のうち株式投資の割合が4.8%と低いことがあります。
また、平成15年度税制改正では、公募株式投資信託の償還(解約)損失と株式等に係る譲渡益について損益通算が可能になりましたが、さらに金融商品課税の一体化を推進する観点から、上場株式等の譲渡損失と配当との損益通算を可能にする点などが挙げられています(メモ参照)。その他、非上場株式の譲渡益に係る税率を上場株式等と同様に20%(現行26%)に引き下げることなども求めています。
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その他の改正要望項目は?
その他、平成16年度税制改正において何らかの形で検討課題にのぼるであろう改正要望項目としては、①連結付加税の確実な廃止、②減損会計の導入に伴い計上される減損損失の損金算入、③固定資産税負担水準の引き下げ、④中小企業投資促進税制やエネルギー需給構造改革投資促進税制の適用期限延長、⑤事業承継税制の拡充、⑥住民税へのエンジェル税制の導入、⑦特別法人税の撤廃、⑧確定拠出年金限度額の引き上げ、⑨約束手形CPに関する印紙税の軽減措置の適用期限の延長、⑩外国法人の発行する短期外債(いわゆるサムライ電子CP)の償還差益に係る源泉徴収の免除措置の創設、⑪外形標準課税に関する特例など、さまざまなものが挙げられます。
このうち、⑤では、自社株に対する軽減措置として、相続税の課税価格を10%軽減する措置(平成14年度税制改正で措置)を50%軽減に拡充することを求めています(右図参照)。
なお、これらについては、下記の各省庁のホームページから閲覧することが可能です。
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