会計ニュース2003年11月17日 パーチェス法と持分プーリング法の識別は?会計ビッグバン完了!(2003年11月17日号・№043) ニュース特集 企業会計審議会の企業結合会計基準を紹介!
ニュース特集
パーチェス法と持分プーリング法の識別は?会計ビッグバン完了!
企業会計審議会の企業結合会計基準を紹介!
企業会計審議会(会長:加古宜士早稲田大学教授)は10月31日、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を決定し、公表しました。いわゆる会計ビッグバンの最後の大きな会計基準の導入といえます。今回の企業結合会計では、パーチェス法を原則としつつも、一定の要件の下、持分プーリング法の適用も認めています。今回の特集では、同意見書における企業結合会計ついて、簡単にご紹介します。適用時期は平成18年4月1日以後開始事業年度からとなります。なお、意見書については、金融庁のホームページからダウンロード可能です。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/15/singi/f-20031031-1/02.pdf
企業結合とは?
近年では、商法改正により、株式交換・移転制度、会社分割制度など、企業を再編成する法制度が相次いで導入されていますが、これらの会計処理については、明確に定められていないのが現状。このため、現行では、商法の規定の範囲内で幅広い会計処理が可能になっています。一方、海外の状況をみると、企業結合の経済的実態に応じた会計基準が整備されており、わが国においても、平成12年9月から企業会計審議会において審議を開始。企業結合会計の整備を急いでいたわけです。
企業結合会計には、主にパーチェス法と持分プーリング法の二つの会計処理があります。企業結合といっても、「取得」と「持分の結合」とでは経済的実態が異なるため、「取得」であれば、「ある企業が他の企業の支配を獲得することとなるという経済的実態」に対応してパーチェス法により、また、「いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する支配を獲得したとは合理的に判断できない」場合は「持分の結合」として持分プーリング法により会計処理を行います。具体的に、パーチェス法は、被結合企業から取得した資産・負債は時価で受け入れ、のれん(又は負ののれん)は20年以内に規則的に償却する方法。持分プーリング法は、結合当事企業の資産、負債及び資本の簿価を引き継ぐ方法です。
持分の結合か取得か
国際的には、パーチェス法に一本化する方向ですが、現行では、ほとんどの企業が持分プーリング法を適用しているため、経済界の意向に配慮して、意見書では、パーチェス法を原則としつつも、一定の要件の下で持分プーリング法も認めています。要件は3つあり、このすべての要件を満たした場合には、持分の継続があるものとして「持分の結合」と判定され、持分プーリング法の適用が可能です。逆に1つでも要件を満たさなければパーチェス法を適用することになります(右図のフローチャート参照)。
なお、企業結合会計では、合併、株式交換等の企業結合の他、「共同支配企業の形成」(ジョイント・ベンチャー等)や「共通支配下の取引」(親子会社の合併等)も対象としています(ことばのコンビニ参照)。「共同支配企業の形成」では、フローチャートの要件の①及び③に該当すれば、持分プーリング法に準じた会計処理が適用されます。
また、「共通支配下の取引」では、企業集団内で行われる企業再編のため、基本的に連結財務諸表には影響しない取引であることから、個別財務諸表上の会計処理が示されています。具体的には、①共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として移転前に付された適正な帳簿価額により計上、②移転された資産及び負債の差額は資本として処理、③移転された資産及び負債の対価として取得する株式の取得価額は、当該資産及び負債の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて算定することになります。連結財務諸表上は、内部取引としてすべて消去します。
優先株などの種類株式も可能へ
なお、8月1日に公表された公開草案では、要件①について、「結合の対価が議決権付普通株式である」とされていましたが、実務上、優先株などの種類株式を対価とするケースがあるため、「結合の対価が議決権のある株式である」ことに変更されています。
開示
注記事項については、①パーチェス法を適用した企業結合、②持分プーリング法を適用した企業結合、③共通支配下の取引等、④重要な後発事象の場合に分けて定められています。参考までに、①及び②の注記事項は以下のとおりとなっています。
詳細は適用指針で
「企業結合に係る会計基準」が公表されたことで、企業結合に関する会計の方向性は示されました。また、注記事項についてもかなり具体的に明らかとなりました(前ページ参照)。もっとも、実際に実務を行うには、より詳細な適用指針が必要となってきます。それについては、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」四3において次のような記載があります。
また、企業結合に係る会計基準は主に結合する側の視点から記述されています。そこで、会社分割・現物出資・営業譲渡等の場合、事業を分離する側の会計処理についても、あらたに会計基準及び適用指針を定める必要があります(下図参照)。
さらに、企業再編に係る株主の会計処理を整備するとともに、吸収合併に関する自己株式の会計処理について規定している企業会計基準適用指針第5号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針(その2)」についても手直しが必要となります。
そこで、企業会計基準委員会(ASB)では、それらの会計基準・適用指針の審議・開発を目的として、「企業結合専門委員会」と「事業分離専門委員会」の2つの専門委員会を立ち上げました。早速、11月中旬から審議をはじめる予定です。
ASBでは、平成17年2~3月頃を目途に
①企業結合に係る会計基準の適用指針
②事業分離に係る会計基準及び適用指針
③企業再編に係る株主の会計処理(会計基準とするか適用指針とするかは現時点では未定です)
④自己株式等会計基準適用指針の改訂
を確定する予定です。
そのためのスケジュールとして、平成16年3月頃に第1回目の論点整理を、また、同年8月頃に第2回目の論点整理を公表したのち、同年12月頃に公開草案を公表してパブリック・コメントを求める予定です。なお、詳細につきましては11ページのニュースを参照して下さい。
パーチェス法と持分プーリング法の識別は?会計ビッグバン完了!
企業会計審議会の企業結合会計基準を紹介!
企業会計審議会(会長:加古宜士早稲田大学教授)は10月31日、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」を決定し、公表しました。いわゆる会計ビッグバンの最後の大きな会計基準の導入といえます。今回の企業結合会計では、パーチェス法を原則としつつも、一定の要件の下、持分プーリング法の適用も認めています。今回の特集では、同意見書における企業結合会計ついて、簡単にご紹介します。適用時期は平成18年4月1日以後開始事業年度からとなります。なお、意見書については、金融庁のホームページからダウンロード可能です。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/15/singi/f-20031031-1/02.pdf
企業結合とは?
近年では、商法改正により、株式交換・移転制度、会社分割制度など、企業を再編成する法制度が相次いで導入されていますが、これらの会計処理については、明確に定められていないのが現状。このため、現行では、商法の規定の範囲内で幅広い会計処理が可能になっています。一方、海外の状況をみると、企業結合の経済的実態に応じた会計基準が整備されており、わが国においても、平成12年9月から企業会計審議会において審議を開始。企業結合会計の整備を急いでいたわけです。
企業結合会計には、主にパーチェス法と持分プーリング法の二つの会計処理があります。企業結合といっても、「取得」と「持分の結合」とでは経済的実態が異なるため、「取得」であれば、「ある企業が他の企業の支配を獲得することとなるという経済的実態」に対応してパーチェス法により、また、「いずれの結合当事企業も他の結合当事企業に対する支配を獲得したとは合理的に判断できない」場合は「持分の結合」として持分プーリング法により会計処理を行います。具体的に、パーチェス法は、被結合企業から取得した資産・負債は時価で受け入れ、のれん(又は負ののれん)は20年以内に規則的に償却する方法。持分プーリング法は、結合当事企業の資産、負債及び資本の簿価を引き継ぐ方法です。
【持分プーリング法とパーチェス法の概要】
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持分の結合か取得か
国際的には、パーチェス法に一本化する方向ですが、現行では、ほとんどの企業が持分プーリング法を適用しているため、経済界の意向に配慮して、意見書では、パーチェス法を原則としつつも、一定の要件の下で持分プーリング法も認めています。要件は3つあり、このすべての要件を満たした場合には、持分の継続があるものとして「持分の結合」と判定され、持分プーリング法の適用が可能です。逆に1つでも要件を満たさなければパーチェス法を適用することになります(右図のフローチャート参照)。
なお、企業結合会計では、合併、株式交換等の企業結合の他、「共同支配企業の形成」(ジョイント・ベンチャー等)や「共通支配下の取引」(親子会社の合併等)も対象としています(ことばのコンビニ参照)。「共同支配企業の形成」では、フローチャートの要件の①及び③に該当すれば、持分プーリング法に準じた会計処理が適用されます。
また、「共通支配下の取引」では、企業集団内で行われる企業再編のため、基本的に連結財務諸表には影響しない取引であることから、個別財務諸表上の会計処理が示されています。具体的には、①共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として移転前に付された適正な帳簿価額により計上、②移転された資産及び負債の差額は資本として処理、③移転された資産及び負債の対価として取得する株式の取得価額は、当該資産及び負債の適正な帳簿価額による純資産額に基づいて算定することになります。連結財務諸表上は、内部取引としてすべて消去します。
優先株などの種類株式も可能へ
なお、8月1日に公表された公開草案では、要件①について、「結合の対価が議決権付普通株式である」とされていましたが、実務上、優先株などの種類株式を対価とするケースがあるため、「結合の対価が議決権のある株式である」ことに変更されています。
開示
注記事項については、①パーチェス法を適用した企業結合、②持分プーリング法を適用した企業結合、③共通支配下の取引等、④重要な後発事象の場合に分けて定められています。参考までに、①及び②の注記事項は以下のとおりとなっています。
パ ・ チ ェ ス 法 の 場 合 | ① 被取得企業の名称及び事業の内容、企業結合を行った主な理由、事業を取得した場合は相手企業の名称及び取得した事業の内容、企業結合日、企業結合の法的形式、結合後企業の名称及び取得した議決権比率 ② 財務諸表に含まれている被取得企業又は取得した事業の業績の期間 ③ 被取得企業又は取得した事業の取得原価及びその内訳。株式を交付した場合には、株式の種類別の交換比率及びその算定方法、交付又は交付予定の株式数及び評価額。株式交付日の株価を算定している場合は、その旨。 ④ 発生したのれん又は負ののれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間 ⑤ 企業結合日に受入れた資産及び引受けた負債の額並びにその主な内訳 ⑥ 企業結合契約に規定される条件付取得対価の内容及びそれらの今後の会計処理方針 ⑦ 取得原価のうち研究開発費等に配分され費用処理された金額及びその科目名 ⑧ 取得原価の大部分がのれん以外の無形資産に配分された場合には、のれん以外の無形資産に配分された金額及びその主要な種類別の内訳並びに全体及び主要な種類別の加重平均償却期間 ⑨ 取得原価の配分が完了していない場合は、その旨及びその理由。企業結合年度の次年度以降において取得原価の当初配分額に重要な修正がなされた場合は、その修正内容及び金額 ⑩ 連結財務諸表を作成しない場合において、取得企業が存続会社と異なる企業結合に持分プーリング法に準じた処理方法を適用したときは、パーチェス法を適用したとした場合に貸借対照表及び損益計算書に及ぼす影響の概算額。ただし、当該影響額に重要性が乏しい場合は、注記を省略することができる。 ⑪ 当該企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額。ただし、当該影響額に重要性が乏しい場合は、注記を省略することができる。 |
持 分 プ ・ リ ン グ 法 の 場 合 | ① 結合当事企業の名称及びその事業の内容、企業結合の目的、企業結合日、企業結合の法的形式及び結合後企業の名称 ② 議決権のある株式の交換比率及びその算定方法、交付又は交付予定の株式数、企業結合後の議決権比率及び当該企業結合を持分の結合と判定した理由 ③ 個別財務諸表に含まれる被結合企業の業績の期間 ④ 被結合企業から引継いだ資産、負債及び資本の内訳 ⑤ 会計処理方法の統一及び企業結合前の取引等の消去の内容並びに企業結合に要した支出額及びその科目名 ⑥ 企業結合の結果、処分することが決定された重要な事業 |
税務上の取扱いは? |
今回の企業結合会計基準では、パーチェス法を原則としつつも、一定の要件を満たした持分プーリング法を認めていますが、会計基準にある3要件を満たさなければ持分プーリング法を適用できないため、今後は、パーチェス法の適用も増えることが予想されます。このパーチェス法を適用した場合に問題となるのは、税務上の取扱い。パーチェス法の場合、取得した資産・負債は時価で受け入れるため、その時価評価益に対して課税されるかどうかが今後の論点となりそうです。 |
詳細は適用指針で
「企業結合に係る会計基準」が公表されたことで、企業結合に関する会計の方向性は示されました。また、注記事項についてもかなり具体的に明らかとなりました(前ページ参照)。もっとも、実際に実務を行うには、より詳細な適用指針が必要となってきます。それについては、「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」四3において次のような記載があります。
本基準を実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係府令を整備するとともに、次の事項を含め、企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当である。 (1)合併、株式交換・株式移転、会社分割、営業譲渡・譲受等、企業再編の形式ごとの連結財務諸表上及び個別財務諸表上の適用方法 (2)取得した事業用土地の時価の算定方法 (3)取得企業が存続会社と異なる企業結合について、パーチェス法を適用したとしたときの影響額を注記する場合の注記項目等 |
また、企業結合に係る会計基準は主に結合する側の視点から記述されています。そこで、会社分割・現物出資・営業譲渡等の場合、事業を分離する側の会計処理についても、あらたに会計基準及び適用指針を定める必要があります(下図参照)。
さらに、企業再編に係る株主の会計処理を整備するとともに、吸収合併に関する自己株式の会計処理について規定している企業会計基準適用指針第5号「自己株式及び法定準備金の取崩等に関する会計基準適用指針(その2)」についても手直しが必要となります。
そこで、企業会計基準委員会(ASB)では、それらの会計基準・適用指針の審議・開発を目的として、「企業結合専門委員会」と「事業分離専門委員会」の2つの専門委員会を立ち上げました。早速、11月中旬から審議をはじめる予定です。
ASBでは、平成17年2~3月頃を目途に
①企業結合に係る会計基準の適用指針
②事業分離に係る会計基準及び適用指針
③企業再編に係る株主の会計処理(会計基準とするか適用指針とするかは現時点では未定です)
④自己株式等会計基準適用指針の改訂
を確定する予定です。
そのためのスケジュールとして、平成16年3月頃に第1回目の論点整理を、また、同年8月頃に第2回目の論点整理を公表したのち、同年12月頃に公開草案を公表してパブリック・コメントを求める予定です。なお、詳細につきましては11ページのニュースを参照して下さい。
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