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資料2019年08月27日 【税制改正関連資料】 税制調査会(第24回総会)議事録

税制調査会(第24回総会)議事録
日 時:令和元年8月27日(火)14時00分~15時20分
場 所:財務省第3特別会議室(本庁舎4階)
○中里会長
それでは、時間ですので、第24回税制調査会を開会します。
本日の議題について、御説明します。
本日は、連結納税制度の見直しと納税環境整備の二つを議題とします。
まず連結納税制度の見直しについては、専門家会合での御議論の結果を田近座長か
ら御報告いただきます。
次に、納税環境整備については、専門家会合で出た御意見のうち、主なものを岡村座
長から御報告いただきます。
本日もペーパーレス会議とさせていただいておりますので、その点、御理解と御協
力をよろしくお願いします。
それでは、申し訳ありませんが、ここでカメラの皆様は、御退室をお願いします。
(報道関係者退室)
○中里会長
それでは、第一の連結納税制度の見直しの議題に入りたいと思います。
田近座長から、御報告をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○田近委員
田近です。
それでは、連結納税制度の見直しについて、これまで専門家会議で行ってきたこと、
その報告について、お話しさせていただきます。
資料は、お手元の総24-1というのが、専門家会合の報告書ということで、連結納税
制度の見直しについてです。
総24-2がその説明資料です。基本的には、時間が限られていますので、総24-2に
基づいて、お話ししたいと思います。
総24-3が、それに関連した部会等で議論してきたことの資料です。
そういうことで、早速、始めさせていただきますが、お手元の資料の総24-2を開い
ていただいて、それをもとに話させていただきます。
総24-2の3ページに、連結納税制度の関する専門家メンバーが出ています。ここ
に記載されているように、税調メンバーの方は、ここであえて申し上げませんが、外部
有識者として、小田嶋税理士、それから、太陽有限責任監査法人の梶川会長、慶應義塾
大学のロースクールの佐藤教授、日立製作所の濱田部長、早稲田大学の渡辺教授に御
参加いただき、非常に活発に議論していただきました。
その議論の様子ですが、その次のページをご覧になっていただいて、ここに書かれ
たように、第1回、第2回、第3回、第4回、第5回ということで、議論してきました。
それに基づいて、先ほど申し上げた、総24-1の取りまとめを行ったということにな
ります。
中身に入らせていただきますが、基本的に総24-2の資料の2ページ、連結納税制
度見直しについての概要と、これで説明させていただくつもりですが、全体的にこの
報告書は、連結納税制度の見直しがなぜ必要なのか、見直しの時期に来たのか。それか
ら、見直しに当たっての基本的な考え方、そして、具体的に新しい制度をどう作るの
か。
連結納税制度も三のところに書かれたように、名前もグループ通算制度と仮称です
が、そのような名前にして、幾つかの主要な改革をしていきたいと取りまとめていま
す。
一 連結納税制度の見直しの意義のところですが、連結納税制度は、導入から15年
余りが経過し、この間、企業のグループ経営をめぐる環境等も変化している。税制にお
いても、一方、連結納税制度と並んで、企業再編税制の改正やグループ法人税制の創設
など、類似の改正が行われてきています。
そうした中で、連結納税制度は、グループ内の事業再編を後押しするなど、企業グル
ープの一体的経営を進展させ、競争力を強化する中で、有効に活用されてきました。こ
の辺については、先ほど紹介させていただいた、日立の濱田部長、中小企業に関して
は、梶川会長の説明を受けました。
その一方で、経営が多様化し、親法人に情報や意思疎通が必ずしも集約されていな
い、税額等の計算が煩雑、特に税務調査後の修正申告、更正に時間がかかり過ぎるとい
った指摘もあります。
このため、連結納税制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえた上で、事務負
担の軽減を図るための簡素化やグループ経営の多様化に対応した、中立性、公平性の
観点から、見直しを行うことにより、日本の企業がより効率的にグループ経営を行い、
競争力を十分に発揮できる環境を整備する。
このとおりですが、基本的には、この十何年培われてきた連結納税制度を活用して、
グループ経営を行っている。それを十分踏まえて、そのメリットを生かしつつ、この間
に生じてきた問題を見直していこう、そういうスタンスで議論しました。
連結納税制度に関する専門家会合では、完全支配関係にある企業グループ内におけ
る損益通算を可能とする基本的な枠組みを維持するという前提に立って、議論を重ね、
見直し後の制度の考え方や基本的仕組みについて、論点を整理しました。今、申し上げ
たとおりです。
二 見直しに当たっての基本的な考え方は何かということですが、見直しに当たっ
ては、企業グループの一体性に着目し、損益通算の基本的な枠組みを維持しつつ、制度
の簡素化により、企業の事務負担の軽減を図ることで、同様の経営を行っている企業
グループ間で、課税の中立性・公平性を確保する。
申し上げたように、キーワードは、グループ経営の一体性に着目し、もちろん損益通
算も維持しつつ、制度をどう簡素化していくか。それがこの議論の対象になりました。
具体的にどうするのかということで、企業グループ全体を一つの納税単位として、
一体として計算した課税所得金額及び法人税額を親法人が申告する現行制度にかえて、
各法人が納税単位として、個別に課税所得金額及び法人税額を計算して申告する中で、
グループ内での損益通算の調整を行う仕組みです。
いろいろ息長く書きましたが、要するに制度の執行上の簡素化、あるいは効率化と
いうことから、キーワードは、一体申告、連結法人を全部一つとしての一体申告から、
連結納税にかかわる子会社等の個別申告、一体申告から個別申告に組みかえてはどう
かということになります。
また、連結納税制度と組織再編税制とでは、様々な違いがあり、課税の中立性が損な
われている面があることから、現行の組織再編税制と整合性がとれた制度を目指し、
課税の中立性を確保することや、租税回避の防止の観点も重要です。
これもこれから具体的な改革案を議論させていただきますが、一方で、連結納税制
度があり、もう一つは、企業の合併、再編ということで、企業再編があります。その場
合、両者をできるだけ課税上、等しく扱えることはできないかということで、これから
三で申し上げる具体的な改正案を議論させていただいたということです。
なお、地方税については、地域における受益と負担の関係等に配慮し、損益通算を可
能とする仕組みとはなっておらず、今般の検討は、現行の地方税の基本的な枠組みを
見直すものではないということで、連結納税と地方納税との親和性を考えて、地方は
単体ということは、今回は見直してはいない。それと同時に、親、子の100%の所有関
係ということも、ここでは前提としているということです。
三 新たな制度の基本的な仕組みということで、専門家会合でどのようなことを検
討したかということで、見直し後の新たな制度については、企業グループ内の法人格
を有する各法人を納税単位とする個別申告方式とすることが適当ということで、新た
な制度では、一体申告から個別申告方式と先ほど申し上げた点です。
親法人と親法人の完全支配関係にある子会社を対象とすること、制度を適用化する
かどうかを選択制とすることについては、現行の連結納税制度と変わりません。これ
も先ほど申しました。
損益通算に関しては、つまり一体申告から個別申告にするわけで、そのときの損益
通算をどうするかということについては、赤字法人の欠損金を黒字法人の所得金額の
比で配賦するプロラタ方式により、損益通算を行う。分かりにくいような書き方です
が、要するに一体から個別申告にするわけで、仮に子会社に欠損がある、その欠損は、
その他の黒字法人の黒字所得の割合で割り振ろうということが、一つのアイデアです。
この仕組みは、現行の制度の考え方を踏襲する中での制度設計が可能となり、また、
税負担の軽減のための恣意的な調整を回避できるといった観点からも、適当であると
考えます。そういうことで、一体申告から個別申告、そして、プロラタ方式による損益
通算です。
また、個別申告方式を前提とした場合、納税者や課税庁の事務負担の軽減を図るた
めに、修正・更正の場合には、損益通算できる損益等の額を当初申告に固定することに
より、企業グループの中の他の法人の税額計算に反映させないということで、事後的
に修正・更正があるときには、その効果を連結法人全部に訴求することのないような
仕組みも必要ですということを言っているわけです。
新たな制度の開始をグループ通算制度と呼ばせていただきますが、新たな制度のグ
ループ通算制度の加入時における時価評価課税及び損金等の持ち入れというのですか、
欠損金の取り扱いについては、現行の組織再編税制と整合がとれた制度を目指し、課
税の中立性を確保する観点から、見直しを行う。
少し具体的に言えば、合併等による組織再編が行われている。そのようなときには、
整合的に連結する、グループ通算制度においても、グループ通算制度をつくるときに、
企業の適切な要件が満たされれば、時価評価による評価益を出さないで、横に滑らせ
る。それから、親会社との欠損金の持ち込みを一定程度許すという話です。
複雑だということを申し上げましたが、中でも、グループ調整計算については、でき
る限り制度の簡素化を図ることが必要である。他方、グループ調整計算の見直しに当
たっては、企業経営の実態や制度趣旨、目的、濫用可能性等を勘案した調整計算の必要
性についても、考慮する必要があります。
これらの点と、一応最後まで報告させていただいて、ポイントに戻らせていただき
ますが、要するにグループ調整をこれから考えるときに、その必要性と調整計算をや
めることに伴う事務負担の軽減、それを勘案しましょう。したがって、グループ調整計
算の事務負担の軽減を図る。
②企業経営の実態や制度趣旨等から見て、調整計算を行うことの必要性。
制度が乱用されないかどうか。
④制度を選択しない企業グループとの公平性。
そういった観点を踏まえ、個別制度ごとに調整していきます。
少し悩ましい問題ですが、グループ通算制度のもとでも、グループ内の調整計算に
ついては、執行の効率性を一方で考えつつ、企業の一体的な経営にも十分配慮してい
きますということを言っています。
このほか、新たな制度の導入については、納税者や課税庁に新制度に対するシステ
ムの対応など、一定の期間を要することから、円滑な移行のために法改正から1~2
年の準備期間が必要だということで、簡単であったかどうかはわかりませんが、以上
が専門家会議の取りまとめということで、報告させていただきました。
以上です。
○中里会長
田近座長、ありがとうございました。
それでは、今の御報告につきまして、委員の皆様から、御意見や御質問があれば、お
願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
かなりテクニカルですからね。
神津特別委員、どうぞ。
○神津(信)特別委員
今、田近座長の御説明のとおりの議論をしてきて、大変有意義に進んだと思いまし
て、方向性についても、大いに評価したいと思います。
今後の御議論に委ねることになると思うのですが、2ページの三の○の四つ目に、
グループ調整計算については、個別に検討することが必要とされており、特に研究開
発税制等は、個別適用とグループ調整計算の両論が並び立っております。研究開発税
制等については、グループ調整計算があるからこそ、連結納税制度を利用している法
人があるという認識を踏まえつつ、できたら、個別計算ではなく、グループ調整計算の
中に取り入れていただけると、議論の方向としては、いいと思う次第です。
以上です。
○中里会長
神津特別委員、ありがとうございます。
田近委員、どうぞ。
○田近委員
先ほど私も指摘したことですが、そのとおりで、先ほどの資料の三の下から二番目
の○で、今、神津特別委員がおっしゃったのは、研究開発税制ですが、そのほか、外国
税額控除、その他についても、それぞれ個別に全体調整と個別調整をどう図るか、これ
が課題だということは明記したつもりです。
○中里会長
ありがとうございます。
佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員
ありがとうございます。
一点、確認ですが、まさに今、御指摘のあった、個別項目ごとについての個別制度に
ついて、連結を全体で調整するのか、個々の法人ベースで調整するのかということに
ついては、これは税調で議論するというよりは、実務レベルの議論という理解でいい
のか、あるいは引き続き、これを税調の中で議論していくことなのか、整理で教えてい
ただければと思います。
あと、まさに今の御指摘のとおりで、連結納税は何のためにやっていたのかという
と、法人のガバナンスは、複数の企業を持って、1つの意思決定、主体である。例えば
企業の研究開発などを考えると、グループ全体の研究開発というものを意思決定して
いるのだと考えるのであれば、だからこそ、そのようなグループ経営の実態があると
すれば、全体、つまり連結で対応するべきです。
ただ、他方で、今回、なぜグループ通算制度を入れるかといえば、そこはもう一つあ
った適用実態だと思うのです。連結納税制度の適用実態に応じて、ある程度の簡素化
を図るという観点だと思うので、何が言いたいかというと、簡素化という部分とグル
ープの経営実態というところ、それぞれが税務の問題と税制の問題だと思うのです。
税務の観点から個別申告の方にやっていくという簡素化はあっていいのですが、た
だ、税制として、連結納税の基本的な趣旨というか、そこを損なうことはあってはいけ
ないと思いますので、そのような点で、先ほど御指摘のある研究開発税制もそうです
し、外税控除もそうですが、そのあたりは、グループの経営実態に即する形で対応して
いくというのが、多分正しいと思いました。
あと、もっと大きな質問は、どうやって中期答申の中に織り込んでいくのかという
ことで、まさに田近座長もおっしゃっていたように、かなりテクニカルなので、これを
このまま載せてしまったら、すごいテクニカルレポートになってしまうので、今回の
連結納税制度の見直しを、どういう形で中期答申としてメッセージ性を持って対外的
に発信していくかということは、ある程度工夫が要ると思います。
個人的には、税制の問題と税務の問題を分けたほうがよいと思っていて、例えば組
織再編税制との中立性、これは税制にかかわる話でありますし、グループ経営の実態
に即した見直しも税制にかかわる部分ですから、くどいようですが、簡素化のところ
は適用実態で、簡素化のところは、むしろ税務にかかわる話になりますので、このあた
りを少し分けて議論して、中期答申には反映させたほうがいいと思いました。
以上です。
○中里会長
ありがとうございます。
この報告は、連結納税制度に関する専門家会合における議論の結果をまとめて整理
して、田近座長から御報告いただいたものですので、総会に対する専門家会合からの
御報告、つまり報告書としては、これで一応完結しているということですので、これに
ついて、総会でその中身について、改めてということにはならないと思います。
今後の取りまとめ等について、これをどう扱っていくかについては、今後の話とい
う以外に、今はないのではないかと思うのですが、田近委員、それでよろしいですか。
○田近委員
ここで税制と税務の違いについて、議論するキャパシティーはないですが、ただ、佐
藤委員がおっしゃったのは重要で、要するに企業がいろんな環境でダイナミックに活
動していく中で、事業再編、合併をするのも一つだし、合併はしないが、連結にして、
機動的にやっていこうと、そのような意味で、税制との関係で言えば、再編税制をしっ
かり見ながら、連結納税、この場合は、グループ通算制度に名前を変えたらどうかと主
張していますが、グループ通算制度においても、企業の弾力的な運営を損なわない、そ
のような仕組みをどうしたらいいのかというところでは、私自身、何回かにわたって
司会もさせてだきましたが、税制との接点もあるのではないか、私自身はそう考えま
した。
○中里会長
せっかく佐藤委員から貴重な御意見を頂戴しましたので、これについては、御意見
として承った上で、今後、財務省等において、今の御意見等も十分に踏まえつつ、具体
的な制度設計の御検討を進めていただければと思います。それでよろしいですか。
○田近委員
はい。
○中里会長
ありがとうございます。
他にいかがですか。どうぞ。
○赤井特別委員
ありがとうございます。
私も近い意見なので、手を挙げさせていただきました。今回は、方向性というイメー
ジだと思うので、具体的なところが余り見えなくてもいいと思うのですが、一言。もと
もとの論点であった簡素性とか、中立性の簡素は、もちろん望ましいわけですが、簡素
にすればするほど、デメリットのようなものも出てくる、たとえば、本来の意義が損な
われるみたいな、したがって、今回の文章だけでは、ちょっと分かりにくいところがあ
ると思います。簡素にしていきますという方向性はわかるのですが、それによって、目
的が達成できなくなるデメリットと、簡素にするメリットのバランスのようなもので、
もう少し簡素にしたほうが社会的には望ましいだろうというような、両論の方向を踏
まえた上でこうなっているということが分かると、今後の制度設計でもそうだと思う
のですが、国民も理解しやすい気がします。また、中立性も、もう少し具体的にこのよ
うな中立なところにしたほうがいいということが分かればいいと思いました。中身が
十分分かっていないので、イメージだけです。
○中里会長
どうぞ。
○田近委員
いろいろなメッセージが伝わったと思いました。
○中里会長
特にコメントはいいですか。
○田近委員
ないです。そのとおりだと思います。
○中里会長
分かりました。
赤井特別委員の御発言に同意いたします。法律家の御意見のようで、こちらとこち
らのバランスをとっています。
○赤井特別委員
最適な簡素なレベルが存在するはずなので、今のものに比べると、もう少し簡素に
したほうが、メリット、デメリットを踏まえた上では、望ましいのではないかという形
で移動するということが分かればいいです。
○田近委員
そのとおりですが、その点を踏まえて、活発な議論をだと思います。
○中里会長
赤井特別委員のおっしゃるとおりで、難しい問題があります。目的を複数追求しな
ければいけませんから、それはこれからのわざというのか、技術で、また、実務の御要
望等も十分聞いて、きちんとやっていくことなのだろうと思います。それはまた税調
の総会で議論する話でもないような気がしますが、できる限り、何か問題がありまし
たら、こちらにということはあると思いますので、よろしくお願いします。
ほかにいかがですか。よろしいですか。
事務局では、何かありますか。
○山下主税局税制第三課長
ありません。今、いただきました御意見を踏まえて、今後、しっかりと検討を進めて
いくということかと思います。ありがとうございます。
○中里会長
あまり個人的なことをいうのはどうかと思いますが、六法全書の編集をしています
と、連結のところがすごいのです。ちょっと大げさですが、一体この複雑さは何なのだ
というところがありまして、それが大分すっきりするのではないか。使いやすいもの
になるのではないかというその方向性は、田近座長のほうできっちりと議論してくだ
さいましたので、結構いい方向が目指せているのではないかと思っています。
具体的には、その都度、いろんな問題が出てくると思うのですが、アドホックという
のでしょうか、それについては、その都度、また対応していくということで、一時にが
らがらぽん、全部というわけにはなかなかいかない問題ですから、そこは継続的に頑
張っていくということなのではないかと思っています。
佐藤委員、どうぞ。
○佐藤委員
議事録に残して欲しいだけの発言ですが、今回の国税での連結納税の見直しですが、
地方税もいずれ考えないといけない時期が来ると思うのです。例えばある町で研究開
発をやりました、そこは赤字です、でも、その成果は、別の町の工場で成果として生ま
れて、売上げが生じましたというと、そこはプラスです。
そうすると、本来の価値がどこで創造されたかということを考えると、研究開発の
ところにコントリビューションは当然あるはずなので、本来はそこを連結させて、も
ちろん分割基準に応じてですが、それぞれに利益配分することが正しいやり方だと思
うのです。
今回は、国税の枠の中でということではありますが、まさに応益課税だから単体だ
というのは、本当はおかしな話で、単体法人が利益の全てを体現しているわけではな
く、今、申し上げたとおり、どこかで赤字を出して投資を行って、どこかでその利益を
享受している場合はあるわけなので、そうすると、地域のインフラのメリットは、赤字
の法人、つまり研究開発などをやっている赤字の法人も利益を得ているはずですので、
そこも含めて、応益課税という観点から見ても、連結納税という仕組みは、本来、地方
税にも適用されるべきだと思うので、その辺はすぐにはできないことですが、いずれ
考えていく必要があると思いました。
以上、コメントです。
○中里会長
これはどうでしょうか。
○田近委員
その問題ももちろんありますが、形としての答えは、連結法人の適格要件というこ
とで、100%所有関係を前提にした。それから、地方税に関しては、現行の単体という
ことを前提にしたと申し上げましたが、地方とのはね返りを考えれば、それはその他
の例えば法人事業税にしても、各地方への配分基準もあるわけで、重要な論点だと思
います。
ただ、私の聞いた範囲だと、これだけに必ずしも限定されるわけではないので、法人
税等の地方への配賦ということでは、議題を整理してかかるべきだというのが、お話
しを伺った私の考えです。
○中里会長
この点ですが、私の意見ではなく、専門家会合で出たことのまとめで、佐藤委員にコ
メントを申し上げたいと思いますが、地方税は、あくまでも地方団体ごとに、地域内の
法人それぞれが事業活動を行うに当たって、提供される行政サービスの対価のような
ものとして、課税することが原則です。それにそもそも法人の選択による地域外の法
人の欠損金との損益通算に伴い、地域内の法人の税負担が変動する仕組みは、地方税
との関係ではなじみにくいのではないかという議論が、専門家会合では出ていたとい
うことです。
それから、法人税の連結納税制度導入時の議論ですが、政府税調、与党税調のいずれ
においても、地方税については、地域における受益と負担との関係等に配慮するでし
たか、されていたというのが前提ですので、一応その前提で専門家会合の議論はなさ
れました。
地方税に連結納税を波及させないことには、実は事務的にすっきりする点もありま
す。というのは、具体的に現行制度では、法人税において、グループ内の一法人の構成
等による変動があった場合、地方税においても、グループ内の他の法人について、それ
ぞれ再計算を行って、分割基準を適用し、事業所と所在地の全ての都道府県、市町村に
構成等に関する事務を行わせる、このような必要が出てくるわけで、非常に複雑なも
のとなってしまうわけです。
新たな制度のもとでは、法人税において、原則としてグループ内の一法人の構成等
による変動が、他の法人に影響を与えないこととなりますので、地方税においても、現
在の一連の構成等に関する事務を行う必要がなくなり、事務負担軽減の効果が期待さ
れるというメリットもあるので、これは様子を見ていこうということで、今のところ、
専門家会合では、地方税のことは考えていないという報告になっていると理解してい
ます。
お考えはお考えで、別途、論文等で発表していただくということで、一緒にまた議論
しましょう。そんなところでよろしいですか。
それでは、今、御報告いただいた内容に沿って、見直しの検討を進めることについ
て、皆様に御了解いただいたということで、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○中里会長
ありがとうございます。
田近座長、本当に複雑なものについてありがとうございました。
○田近委員
慣れない仕事をしました。
○中里会長
それでは、今後、財務省等において、この報告書の内容を踏まえ、さらに技術的、具
体的に検討を進めていただきます。どうかよろしくお願いします。
続きまして、納税環境整備の議題に入りたいと思います。
これについては、納税環境整備に関する専門家会合の岡村座長から、御報告をお願
いしたいと思います。よろしくお願いします。
○岡村委員
岡村です。
それでは、納税環境整備に関する専門家会合の議論の状況について、説明をさせて
いただきます。
資料については、総24-4になります。あと、参考資料もありますが、説明は総24-
4に従って行わせていただきます。
専門家会合につきまして、メンバーと開催実績は、この資料の一番最後、33ページに
掲載してあります。4回の専門家会合を開催して、今回の御報告に至ったということ
になります。
専門家会合は、納税環境整備の分野について、外部有識者の意見も聞きつつ、総会に
おける議論の素材を整理する場ということで、昨年10月の第19回総会において設置さ
れたものです。昨年は、仮想通貨あるいは暗号資産の取引やシェアリングエコノミー
などの分野において、自主的な適正申告を確保するためにはどうすればよいかという
点を中心に議論を行い、総会でも議論の状況を説明させていただいたところです。
納税環境整備については、その後、本年4月の第22回の総会で、今後の基本的な方向
性等の議論が行われたわけですが、経済社会のICT化や多様化、国際化など、納税実務
を取り巻く環境の変化は、非常に目まぐるしいものがあります。そこで、総会での議論
の取りまとめに先立ち、いま一度、専門家会合で議論を行うこととしてはどうかとい
うことで、先週の21日に会合を開催しました。
そういった経緯ですので、何か具体的な見直しに向けての報告書を取りまとめると
いうものではないわけですが、ICT化や申告納税制度に関し、専門的な事項も多く、ま
た、昨年の総会以降の進捗もいろいろあったことから、この機会にまず専門家会合に
おいて事務局から説明があった主な資料について、私から簡単に紹介と説明をさせて
いただく、続きまして、専門家会合での委員の皆様の主な御意見について、報告させて
いただく、このような段取りで、今回の報告をさせていただきます。
それでは、説明資料、総24-4の4ページを御覧ください。これは昨年4月の税制調
査会第22回総会において、御議論いただいた事項です。この時の総会では、経済社会の
ICT化、多様化、国際化という環境変化の中で、今後の納税環境整備に当たって、基本
的な方向性をまとめていただいたわけですが、最初に、先進的な技術を活用して、納税
者利便のさらなる向上を図りつつ、同時に、取引や申告の段階から正確な手続を行う
ような取り組みの構築を目指すことにより、税務当局による事後的な対応、税務調査
等についても、特に必要度の高い分野に的確に対応することを後押しするといった方
向性が示されました。
5ページですが、この方向性を踏まえて、具体的な対応を検討するに当たっての視
点といたしまして、①納税者のコンプライアンスコストの極小化、②納税者の予見可
能性の向上、③納税者の自主的な情報開示を促すための環境整備、④効率的かつ効果
的な税務調査の実施の四つが重要ではないかということが示されました。いずれも第
22回総会において議論したものですが、この場で確認しておきたいと思います。
先日、8月21日の専門家会合では、それぞれの視点に対応する具体的な検討課題に
ついて、事務局より説明がありました。先ほど申し上げたように、まずその内容につい
て、総会に御報告申し上げたいと思います。事務局説明は、大きく分けますと、第一番
目に税務関係手続の電子化、第二番目には適正・公平な課税の実現という、二つのテー
マに分けられます。
税務手続の電子化については、6ページ以降に資料を用いておりますが、7ページ
を御覧ください。スマホ申告ですが、本年1月からスマホ申告のサービスを開始して
おり、本年の確定申告、これは還付申告を含みますが、ここでは36万6000人の方々が利
用されたとのことです。資料の表にもありますが、国税庁では、今後、対応の範囲を拡
大していく予定とのことです。
8ページですが、これは年末調整手続の簡便化です。例えば生命保険料控除につい
て申し上げると、現在は保険会社から送られてくる紙の控除証明書をもとに、従業員
が保険料控除申告書を手作業で作成して、勤務先に提出するということをしているわ
けですが、これを一貫して電子データによって行うことにより、簡便化を図るもので
あり、そのためのソフトウエアを開発して、無料で配付する予定だということです。た
だ、こうした仕組みの構築には、保険会社等の関係機関との調整が必要といった説明
がありました。
9ページですが、マイナポータルを利用した、確定申告の簡便化になります。確定申
告が必要な方は、控除証明書等の情報をマイナポータル経由で一括入手して、そのデ
ータを確定申告書に自動入力できる仕組みが、現在、検討されています。
この図を見ていただきますと、右端に記載されていますが、さまざまなデータがこ
うやって入ってくるということですが、将来的にはさらにこの範囲を拡大することも
含めて、検討しているという説明がありました。
10ページですが、デジタル・ガバメントの推進の観点から、マイナポータルを活用し
て、企業が行う手続のオンライン・ワンストップ化を図るとされております。
法人設立に関する手続については、法人設立届出書など、十五の手続について、本年
度中の実現を目指し準備をしており、従業員の採用、退職などのライフイベントに伴
う手続についても、青色事業専従者給与に関する届出など九つの手続について、令和
2年11月から、順次、開始すべく準備中との説明がありました。
11ページから15ページですが、経済社会のICT化の進展を踏まえた電子帳簿等保存制
度の見直しについて、説明がありました。
11ページを御覧ください。帳簿や請求書等の書類については、法人税法や所得税法
などの規定により、紙での備えつけや保存が原則とされておりますが、電子帳簿等保
存制度により、自己が最初の記録段階から作成する帳簿や決算関係書類等については、
税務署長の承認により、電子的に保存することが可能となっており、また、取引の相手
方から受領する請求書・領収書等についても、書面で受け取る場合には、税務署長の承
認により、一定の要件のもと、スキャナで記録したデータ等を保存することにより、紙
での保存に代えることが可能ということになっています。
今回の専門家会合では、一番下にある電子取引によるデータ保存、取引相手から電
子データによって請求書等を受け取る場合には、特に税務署長の承認なく、データの
まま保存することとされており、こちらについては、実態に即した見直しの必要性な
どの議論が行われました。
12ページです。今年の6月に閣議決定された、政府の成長戦略フォローアップであ
りますが、事業者の経理・税務手続を電子化・自動化し、バックオフィスの効率化等を
実現するため、電子的な請求書等の普及に向けた電子帳簿等保存制度の改善を含め、
オンラインでの請求・支払い・領収、関連する書類等の電子保存及び電子申告・納税を
推進することになっております。
この点について、事務局からは、納税者利便の向上や納税者のコンプライアンスコ
ストの極小化の観点から、電子的にやりとりされた請求書等々のデータがそのまま帳
簿データに反映され、保存されることが望ましく、特に2023年10月以降の適格請求書
等保存方式、いわゆるインボイス方式の導入を見据えれば、その円滑な実施のために
も、電子的な請求書等のやりとりの普及促進を図ることが必要であり、こうした観点
からの見直しが必要であるといった説明がありました。
13ページですが、具体的な見直しのイメージということで、電子取引によるデータ
保存の要件について、現行制度では、取引相手よりデータを受領した後、受領者側が遅
滞なくタイムスタンプを付すことにより、受領時点からの改ざんを防止するか、また
は改ざん等の防止のための事務処理規程を作成し、運用することのいずれかが必要と
されております。
しかし、一方で、現在提供されているサービスの中には、請求書等の発行者と受領者
が、第三者が管理するクラウド上で請求書データを参照することで、事実上、改ざんが
できない形で、請求書の受領が電子的に行える例もあり、こうした実態に即した要件
の見直しが考えられるのではないかといった説明がありました。
14ページですが、請求書等のデータの授受やその活用方法も多様化している。その
一例が示されています。
上段の典型的なケースでは、例えば従業員が外出先でタクシー等を利用し、立替払
をした場合、受け取った領収書を会社の経理に提出し、会社は領収書を紙のまま保存
するとか、スキャンして保存する。このようなことで対応しているわけです。
下の段にありますように、同様の立替えを従業員がアプリを使って決済した場合、
利用明細データがアプリ提供業者を経由して、直接会社の経理に提供されるという取
引も見られます。下の場合、会社は電子データを適正に保存しさえすれば、それでよい
わけですが、念のために、領収書を受け取ってしまうようなケースも見られることか
ら、紙の領収書等の受領は不要である旨の周知が十分に行われていないといったこと
があり、何らかの対応が必要ではないかといった説明がありました。
15ページは、将来的なイメージですが、納税者と取引相手との間で、電子的に授受さ
れた請求書等のデータがそのまま帳簿データに反映され、さらに帳簿と申告データが
自動連携して、電子申告を簡便に行う。このような一連の仕組みが実現できれば、納税
者の事務負担の軽減や簡便かつ正確な経理、税務手続は実現するのではないか。特に
インボイスの電子的な交付が普及すれば、納税者の負担軽減が図られ、制度の円滑な
実施に資することから、民間のクラウド事業者等とも協力しながら、検討を進める必
要があるという説明がありました。
16ページですが、納付のキャッシュレス化の推進についてです。キャッシュレス納
付比率については、令和7年までに四割程度を目指すとされているわけですが、現状、
キャッシュレス納付の割合は約二割にとどまっており、この割合を高めるため、利用
勧奨や広報・周知、既存の納付手段の改善等に取り組むとともに、金融機関や税務署の
窓口で納付している納税者でも、申告は電子で行っている方の割合が多いことから、
納付まで電子で行ってもらえるよう、取組を進めていきたいといった説明がありまし
た。
17ページから20ページについては、地方税の申告、納付手続の電子化や納付手段に
ついてです。
17ページですが、eLTAXについては、地方税の電子申告及び国税連携のためのシステ
ムとして、地方税の電子化の基盤となっており、平成31年4月1日からは地方団体の
共同運営組織として設立された、地方税共同機構がeLTAXの運営主体となっています。
18ページですが、10月から地方税共通納税システムが導入され、法人納税者の申告
税目ですと、全ての地方団体に対する電子納税が可能となることから、法人納税者の
事務負担は大きく軽減される見込みです。
19ページは、地方税共通納税システムのメリットとして、合計金額をeLTAX共通口座
に一回送金するのみで、複数地方団体への納付が可能となり、加えてダイレクト納付
も可能となることが紹介されています。
なお、地方税の納付が便利になることを契機に、国税についても、キャッシュレス納
付の一層の利用勧奨を進めていきたい旨、国税庁から説明がありました。
20ページですが、個人向け税目では、従来から行われてきた口座振替に加えて、コン
ビニ納付は平成15年から実施、クレジットカード納付は平成18年から実施など、累次
の制度改正により、収納手段は多様化しており、今後もICT環境の変化に対応し、さら
なる収納手段の多様化を推進していきたいといった説明がありました。
以上が、税務関係手続の電子化についての話になります。
続きまして、21ページからは、もう一つの大きなテーマである、経済取引の国際化・
多様化を踏まえた適正・公平な課税の実現に関する資料になります。
22ページを御覧ください。左側に申告から税務調査、是正、ペナルティーの課税とい
った一連の流れを並べつつ、それぞれに対応する主な制度を右側に整理した資料とな
っています。経済社会の国際化・多様化が進む中、税務当局が調査の端緒、どのように
調査を始めるかを把握する仕組みについては、国外財産調書や共通報告基準(CRS)に
基づく非居住者の金融口座情報の自動的情報交換など、順次、整備が進められてきて
います。
一方で、実際に課税処分を行うためには、端緒情報では足りず、後ほど御説明します
が、税務調査において事実関係を的確に把握する必要があります。事実認定を行うた
めの制度として、現在は質問検査権や情報交換制度があるわけですが、日本の税務調
査は、従来、相手方の理解と協力を前提として実施されており、これは任意調査と呼ば
れています。したがって、中には、自己に不利益な情報を開示しない納税者がいるとい
うこと、特に情報が国外に所在している場合には、執行管轄権の制約上、現地、外国に
行って反面調査を行うといったことができないことから、必要な情報を把握すること
が難しいという問題があることについて、説明がありました。
24ページが具体的な例になっているわけですが、ここでは、OECDが策定した国際基
準に基づく情報交換、先ほど申しました、いわゆるCRSの仕組みを説明しています。CRS
情報は、利子、配当等の申告漏れや相続財産の申告漏れを把握するためには、非常に有
効なものですが、あくまでもCRSで得られる情報というのは、口座残高や利子・配当の
受取総額等の情報ですので、国外財産がどのように形成されたものなのかといった点
については、税務調査において解明をしなければならないわけです。その際、先ほども
申しましたが、納税者の協力が得られないといったことから、十分な解明に至らない
ケースも中にはあるといった説明がありました。
26ページですが、これはシェアリングエコノミー等の新しい分野に対する国税庁の
具体的な取組の概要を示した資料です。例えば動画配信や暗号資産取引、仮想通貨な
どの分野に関し、国税庁では、情報発信や業界団体への働きかけを通じて、適正申告の
ための環境づくりに努め、納税者の予見可能性の向上を図っているということです。
しかし、他方で、適正に申告していない納税者に対しては、情報の収集や分析を的確に
行い、適正納税の確保に向けて、税務調査や行政指導を含めた取り組みを強化してい
く必要があるという御説明がありました。
以上が当局からの御説明ですが、専門家会合でいただいた主な意見の御紹介が28ペ
ージからになります。こうしたさまざまな取組の現状や課題に関しまして、委員の皆
様からいただきました主な意見につきまして、税務関係の手続の電子化の部分と適正・
公平な課税の実現の二つのテーマに分けて整理をしています。
28ページですが、税務関係手続の電子化についてです。こちらについては、内容が多
岐にわたりますが、大きく分けて、第一に確定申告、年末調整の電子化、第二に納付の
キャッシュレス化、第三に請求書などの取引に関する書類の授受の電子化等について、
意見をいただきました。
一つ目の確定申告、年末調整の電子化については、28ページの上から二つ目と四つ
目のポツになりますが、マイナポータルやスマートフォンを活用した確定申告や年末
調整の電子化は、利便性の向上や計算誤りのない申告を可能にすることに加え、企業
の生産性向上や行政の効率化にもつながるものであるところから、具体的な工程を示
しつつ、官民が協働して推進すべきであるといった意見がありました。
また、今度は28ページの三つ目のポツや、29ページの一番上のポツになりますが、そ
のような手続の電子化の実現のためには、前提として、マイナンバーカードやマイナ
ポータルの普及が進んでいることが必要であり、手続の簡便化についても、ユーザー
である国民への周知・広報に努め、普及を促進すべきであるという意見がありました。
二つ目の納付のキャッシュレス化については、29ページの上から二つ目のポツにあ
るように、納税者利便の向上に加え、金融機関や税務当局の業務の効率化にもつなが
るが、国税については、オンラインやクレジットカードによる納付が可能であるにも
かかわらず、金融機関の窓口での納付が全体の七割に上ることから、納税者がキャッ
シュレス納付を利用しない理由を分析して、それに応じた対応策を検討したほうがよ
いのではないかといった意見がありました。
三つ目の取引に関する書類の授受の電子化については、28ページの最初のポツにあ
るとおりですが、電子的に授受された請求書等のデータがそのまま帳簿データに反映
され、さらにそのデータを活用して電子申告を行うことができれば、納税者の利便性
が向上するだけでなく、正確な記帳や申告を実現し、社会全体のコストが削減するこ
とにもつながることから、29ページの下から二つ目のポツ、30ページの最初のポツで
すが、令和5年(2023年)10月以降のインボイス方式の導入を見据えて、データの適正
化を確保するための手段の見直しも考慮しつつ、税務関係業務の電子化について、官
民が協働して推進すべきであるといった意見がありました。
このほかも、30ページの二つ目、三つ目のポツにありますが、地方税に特有の事情と
して、地方税の手続の電子化は、結果的に様式の統一化や社会的コストの削減につな
がる点に留意をする必要があるといった意見、また、全国統一で新たな取組を進める
と、個々の地方団体のシステムにも少なからず影響があるので、地方団体のシステム
改修費用を念頭に置いた、計画的な対応が必要ではないかといった意見がありました。
続きまして、適正・公平な課税の実現については、31ページ、32ページになります
が、こちらについては、31ページの上から一つ目、三つ目のポツにありますが、経済取
引の多様化や国際化が進む中、税務調査における事実関係の把握は重要であるが、納
税者の中には、適正な申告・納税を行わない者もおり、厳正な対応が求められるという
こと、そして、そのことから、適正な課税を実現するための当局による情報収集につい
て、既存の権限や行政指導での限界があるということであれば、新たな枠組みについ
ても検討すべきであるという意見がありました。
下から二番目のポツですが、特に執行管轄権の国際的な制約上、税務当局が国外事
業者の保有する情報を入手することについて、困難が生じていることがあるわけです
が、こういった場合、国内の関連する事業者に対して、その入手を求めることも当然考
えられるわけですが、求める情報の範囲についてどうするか。特に国内事業者が当該
外国の情報にアクセスし得るかどうか、あるいは権利保護や事務負担といったことに
も配慮しつつ、検討を進めることが重要であるといった意見がありました。
一つ下のポツですが、さらに納税者に特定の資料の入手や保存を義務づけたり、行
政命令によって、その提出を求めたりといった制度を構築する場合には、実効性を担
保するための方策についても検討が必要であり、罰則による間接強制や経済的なディ
スインセンティブのような、行政上の制裁も考えられるのではないかといった意見も
ありました。
このほか、32ページの上から一つ目のポツ、推計課税の仕組みを設けるなど、実体法
面での検討も必要であるとか、次のポツですが、立証責任を転換することや課税庁側
の立証責任の程度を緩和することなどについても、検討してはどうかといった意見も
ありました。
一つ下のポツですが、納税義務違反を抑止し、その是正を図るための仕組みについ
て、税務当局による更正・決定権限や加算税や延滞税などのあり方について、体系的に
見直すことも必要ではないかといった意見、さらに一番最後のポツですが、BEPS行動
計画にも掲げられている、タックス・プランニングの義務的開示制度、いわゆるMDRに
ついて、周辺環境の整備も含めて、計画的に検討を進めるべきであるといった意見も
ありました。
以上、専門家会合における議論の状況を説明させていただきました。
この資料に述べられている様々な意見は、あくまでこのような意見があったという
ものです。もちろん本日御出席の皆さんの中にも、様々な御意見があろうかと思いま
す。ただ、専門家会合の役割は、議論の素材を整理するということだと考えております
ので、こうした素材を踏まえ、総会において、引き続き有意義な議論が行われることを
期待しまして、私の報告とさせていただきます。
ありがとうございました。
○中里会長
岡村座長、ありがとうございました。
それでは、今の御報告につきまして、委員の皆様から、御意見、御質問があれば、お
願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。思いっきり税務です。佐藤委員、どう
ぞ。
○佐藤委員
思いっきり税務ですが、電子化の話というのは、二つポイントがあると思います。
一つは、例えば今スマホをみんなが使っています。当たり前です。あと、アプリが普
及しました。ある種ビジネスサイドでペーパーレス化が進んでいる。このようなもの
に我々が税制として乗っかっていくというやり方です。例えば13ページで紹介いただ
いたクラウドの利用であるとか、14ページで紹介いただいているような、利用明細デ
ータの送信、これは既にやられていることなので、これをうまく税制の中に取り込ん
でいくということが、一つあっていいと思います。それはいい意味で、税務の電子化
だと思います。
もう一つ、先ほどちょっと出てきましたが、今度、インボイスが導入されてきま
す。逆に税制のサイドからビジネスの電子化を進められないかというところで、イン
ボイスを今さら紙でやるというのは、もはや無理というか、かなり大変なことになり
ます。インボイスは、あくまで電子化をベースとすると、小売業におけるデジタル化
の推進に寄与していくことになります。ひいては、中小企業とか、零細事業者などの
生産性の向上にもつながってきます。もちろんそれなりの初期投資は要りますが、初
期投資をどう支援するかというのは、また別の問題なので、ある種、税制の面から経
済の電子化、デジタル化を進めていけるかどうか。多分一つはインボイスだと思った
のですが、私なりの整理ということです。コメントです。
○中里会長
ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。田中特別委員、どうぞ。
○田中特別委員
今のインボイスのお話もそうですが、中小企業が実際にどのように使えるのかとい
うことからいうと、まず一つ、9ページに出てきているような電子化はどこまでゴー
ルを考えているのか。今まででいえば、エビデンスを電子化して、ストックを簡単に
しようとか、閲覧を簡単にしようということでとまるのか、これを読んでいくと、最
後は一気通貫で帳簿まで全部やればいいのではないかのようなことになっていると思
うのですが、通常、企業からいえば、一回、伝票に起こして、チェックをして、それ
を帳簿に持っていくという作業が入るのです。これがなくなって一気通貫でいくとい
うのは、ソフトとしても、業務フローとしても、簡単ではない、難しいと思います。
そうであるとすれば、どこをどう押さえたらいいのかということですが、エビデン
スをそのまま電子化するメリットはどこにあるのか。帳簿を電子化しているところ
は、たくさんあると思います。通常の簡易ソフトで電子化をして、プリントアウトし
なくても、データで残っている。それをチェックすればいいのか、そうではなく、改
めてエビデンスについてもオーソライズしたシステムで、データで残しておいて、か
つ帳簿についても、帳簿でオーソライズしたものでやらなければいけないのか。この
辺について、どうお考えになっているのかということを聞いてみたい。それが難しく
なればなるほど、現実の延長上でなければ、中小企業はシステムとして追いつかない
と思います。
もう一つは、電子化についてのインセンティブをどうしようかということの一つ
に、印紙税がかからないという話があります。中小企業は電子化が得意ではないの
で、印紙税がついているけれども、電子化が得意なところは、払っていないのではな
いかという声があります。ですから、うまくいけば、推進に利用できるようになると
思うのですが、現場サイドの話をもう少し詰めないと、現実的でないのではないかと
思うところがいっぱいあると思うし、将来のことを考えて、電子化と言っていても、
追いつけないところがかなりあるのではないかというのが、中小企業の実態を見てい
ると、感じているところです。その辺について、どの程度のことを現実的にお話しに
なっているのか、考えているのかということを、少しお聞かせいただければ、ありが
たいと思います。
○中里会長
どうぞ。
○岡村委員
どうもありがとうございます。税務の実際的なことで、非常に貴重な御意見を伺っ
たと思います。
専門家会合のメンバーを見ていただくとわかりますが、ほとんどが学者・研究者
で、神津特別委員に入っていただいていますが、そういう点で、実際のインボイスを
含む電子的な情報のやりとりというものが、特に中小企業にとってどういう影響を与
えるかということについては、今後さらに検討を進める必要があると思います。
どうもありがとうございました。
○中里会長
どうぞ。
○佐藤委員
今のことにコメントというわけではないのですが、電子化が難しいというのは、中
小企業だけではなく、自治体とか、病院関係などでも、なかなか電子化が進まない。
そのときに必ず出てくるのは、まさに業務フローですが、業務フローをちゃんと見て
いく、見える化させるということが前提です。その上で、業務フローとソフトをちゃ
んとマッチングさせて、整合的になるかとか、電子化にちゃんと乗るかどうかという
ことを確認するというのが、基本みたいです。ただ、今の業務フローがこうだから、
電子化ができないというわけではなく、一回、業務フローを見直して、その中でどう
いうふうに電子化を進めていくかということは、今、それぞれの現場、自治体とか、
病院などでは検討をしているので、中小企業でももちろんできないことではないと思
います。
ただ、御指摘のとおり、すごく大事なのは、我々は税制の面から電子化というお話
をしているが、企業から見ると、自分たちの生産性の向上の一環としての電子化とい
うこともあるので、これは中小企業庁の話になってしまいますが、一種の産業政策と
しての電子化のところと納税環境の整備のための電子化のところと、ちゃんとすり合
わせていくということはあっていいと思いました。
感想ですが、以上です。
○中里会長
岡村委員、いかがですか。
○岡村委員
貴重な御意見ありがとうございます。
また検討の必要があると思います。
○中里会長
ほかにいかがでしょうか。
こちらの専門家会合は、多種多様なものを扱いましたので、整理するのは、なかな
か大変だったと思うのですが、本当にありがとうございました。結論を出すというよ
りも、今ある問題点をきれいに整理して、こんな方向性もあるのではないかという、
ある種の枠のようなものを提示するということをやったわけですが、それで決め打ち
ということではなく、今後、中小企業も含めて、実態を見ながら、具体的な制度に起
こす場合には、実態の調査なども絶対に必要ですから、そこは丁寧にやるということ
なのではないでしょうか。実態から乖離した制度をつくったところで、それは動きま
せんから、このメンバーの方々は、随分真剣に考えてくださったのではないかと思っ
ているわけです。
これも余計なことですが、時間があるので、あれですが、昔、若いころ、IMFのエ
コノミストで、Milka Casanegraという女性の方がいらっしゃいました。
その方の論文に、主として途上国についてだったのかもしれませんが、Tax
Administration is Tax Policy、税務こそ税制だという言葉があるのです。税務と税
制は、確かに理念上は分かれるのですが、しかし、税務の重要性というのは、税制の
根幹部分になるということを強調なさったわけです。
考えて見ますと、シャウプ勧告の中で、シャウプ先生たちは、田んぼの中に入って
実態調査をしたり、津々浦々、何カ月かかけて回って、実態調査をしたりした上で、
税務に深く立ち入った勧告を出したわけです。その最大の成果が青色申告ということ
になるのだと思います。
だから、今、佐藤委員がおっしゃったように、税務の具体的な問題をどうやって消
化していくというか、そのような手続を我々がここでやっていくという意欲を持たな
いと、この種の問題はとてもではないが、対応できないということなのだと思いま
す。取っ掛かりとして、これだけの議論をしていただけたというのは、非常に大きな
意味があったのではないか。これを素材として、例えば商工会議所とか、税理士会と
か、経団連もそうですが、また多方面でいろいろな議論をしていただいた上で、具体
的な制度設計に結びつけられたら、税調の役割として、決めるということもあります
が、実態を整理して、問題提起し、皆さんに情報を提供するということもあっていい
のではないかと思っているわけです。私が思っているだけかもしれませんが。任期も
もうじき切れますから、とりあえず、この間の議論としては、きっちりとできたので
はないかと思っています。
それでは、納税環境整備については、これでよろしいでしょうか。神津特別委員、
お願いします。
○神津(信)特別委員
デジタルの関係について、税理士として実務上の感想をお話ししたいと思います。
今の確定申告の状況ですが、例えば医療費控除が必要だという方は、現行では、お医
者様の領収書を集めたり、両親等の介護費用の中から、医療費控除に対応できるもの
をピックアップしたり、それに伴う必要な交通費を整理したり、そのようなことをや
って、自分の所得から医療費控除を引いて、還付請求を行っています。これが9ペー
ジの表にあるように、保険者から医療費情報がマイナポータルにデータで送られてく
るようになり、医療費控除に関係する交通費はどうするのかとか、議論しなければな
らないことはありますが、革命的に確定申告がたやすくなると思います。
例えば年金情報等も、老齢年金や企業年金など、いろいろと年金をもらっている方
が多くいらっしゃいますが、そうした年金情報を寄せて、税務署等へ行って確定申告
をなさるわけです。そんな簡単なものではないということは、よく理解はしています
が、年金情報がマイナポータルに集約することができれば、より簡便性・利便性に資
するシステムになると思うし、そのようなシステムにすべきと思います。
以上です。
○中里会長
ありがとうございます。
シャウプ勧告のときにも、日本の小さな企業は、帳簿をつけておりませんでして、
青色申告のような制度をつくって、帳簿をつけることは、いいこともいっぱいあると
いう形で、何十年もかけてここまで来てという歴史があるものですから、税理士の先
生方はその重みを背負っていらっしゃるわけで、貴重な御意見だと思います。ありが
とうございます。
中小企業のほうも、ポジティブな面も、ネガティブな面も、いろいろあると思うの
ですが、そこはありのままの実態を当局に伝えていただいて、そのようなコミュニケ
ーションが重要になると思いますので、よろしくお願いします。
それでは、この点につきましても、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○中里会長
ありがとうございました。
最後に、先ほど9月末までの任期ということをお話ししましたが、それを踏まえ
て、税制調査会の今後の進め方について、お諮りさせていただければと思います。
6月に開かれました、前回の税制調査会で、それまでの議論を継続し、9月中の取
りまとめを目指すことを前提に、皆様の任期を9月末まで延長することについて、御
了承をいただきました。
つきましては、次回の総会で、いわゆる中期答申の取りまとめに向けた、具体的な
議論を始めていきたいと考えております。9月中に取りまとめるというタイトな日程
となりますが、今までさまざまな取りまとめをその都度やってきて、その蓄積もあり
ますし、今度の海外調査の結果もありますし、また、専門家会合の結果等もあります
ので、何もないところからスタートするわけではございませんので、その点は随分気
持ちが楽だと思いますが、いずれにせよ、皆様の精力的な御議論と御協力をよろしく
お願いいたします。
今後の進め方について、今、申し上げた点との関連で、皆様から御意見があれば、
ぜひ伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。これは重要な点です。どう
ぞ。
○佐藤委員
素朴な質問ですが、今後の中期答申のところは、どれくらいのものが入るのです
か。結果的に見ると6年なので、いろいろな論点があったと思います。所得税の話も
しましたし、例の税額控除、所得控除の話もやりましたし、もちろん今回のような納
税環境の整備の話、老後の資産形成に対する支援の話、国際課税の話から、今日のよ
うな連結納税の話、さて、スコープとしては、例えばここまで6年間全体を振り返っ
てみてやるのか、あるいは所得税などはある程度結論や方向性を出したので、最近の
議論、恐らくは老後の資金の話と今回の連結納税と納税環境だと思うのですが、この
あたりにテーマを絞っていくものなのか、その辺はどういう相場観というか、スコー
プ感なのでしょうか。
○中里会長
まだ始めていないので、どうなるかは、やってみないとわからないところはあるの
ですが、これまでほぼ同じメンバーで、様々なことを議論してきましたので、それに
ついて、できる限り丁寧に整理したいと思います。どういう形にするかはともかく、
整理して、国民の皆様にそれを御報告したいと思います。直接的には官邸の総理にと
いうことになりますが、提出したいと思っているわけです。ですから、今までの議論
を無駄にして、昔やったものは無視するとか、できればそのようなことにはしたくな
いと思っています。もちろん古くなってしまってということはあるのかもしれません
が、今までの議論を踏まえた上で、それをきれいに整理し、一定の方向性が出せるも
のは出すし、出せないものは今後の課題ということで、それについて、対応していく
ということで、論点は多岐にわたると思います。でも、それだけのものを私たちは今
まで議論してきたわけですから、厚くまとめるか、薄くまとめるかとか、そのような
技術的なことはあるとしても、きちっと整理したいと思います。皆様の御協力による
わけですが、私の頭の中では、今、そのように考えているわけです。
いかがでしょうか。何か御意見がございましたら、お願いします。よろしいです
か。
(「異議なし」と声あり)
○中里会長
ありがとうございます。
今、佐藤委員からの御質問に、私も一定程度の感じで答えたのですが、そのような
運びにさせていただければと思います。
委員の皆様には、もうしばらくの間、これからタイトでちょっと大変ですが、御協
力を賜ることになりますが、どうかよろしくお願いします。
なお、皆様から今後の取りまとめに向けての御意見等がございましたら、ぜひ事務
局までお寄せいただければと思います。それを取り入れて、できるだけ有意義な取り
まとめをしていきたいと思っております。
それでは、このあたりで、本日の議事は終了したいと思いますが、さらに何かあり
ますか。大丈夫ですか。
会議の内容については、この後、記者会見で御紹介したいと思います。
次回の総会については、また改めて事務局から御案内します。
本日は、お忙しい中、お集まりくださいまして、ありがとうございました。
[閉会]

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