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コラム2020年10月19日 SCOPE 評価通達により難い特別の事情を認め、相続税更正処分を取消(2020年10月19日号・№854)

東京地裁、「特別の事情」の判断枠組み示す
評価通達により難い特別の事情を認め、相続税更正処分を取消


 東京地裁民事3部(市原義孝裁判長)は10月9日、東京都八王子市にある相続土地(無道路地の市街地農地)の評価に「評価通達により難い特別の事情」があるかが争点となっている事案について、「本件土地を実際に宅地開発するために必要な宅地造成費等が広大地補正率による減価額を著しく超えるもの」と認定し、評価通達により難い特別の事情があると認めるのが相当と判示し、原告(相続人)の請求どおり、相続税の更正処分を取り消す判決を言い渡した。

取引が期待できない事情ある市街地農地に旧広大地通達を適用する課税処分

 本件は、平成27年1月に死亡した本件被相続人の相続人(子)である原告が、その相続に係る相続税に関し更正の請求をしたところ、所轄税務署長からその一部のみを認める減額更正処分を受けたことから、更正処分のうち更正の請求に係る額を超える部分の取消しを求めていた事案である。
 争点となったのは、原告(相続人)が相続した東京都八王子市○○町に所在する本件土地(地目:畑、地積1,461㎡)の評価である。
 原告は、本件土地の宅地開発は困難であり、最有効利用は栗林であるとして、これを前提に本件土地の適正な時価は571万円であると主張した。
 一方、課税庁は、旧評価通達40−2(広大な市街地農地等の評価、平29課評2−46により削除)、評価通達40−3(生産緑地の評価)、及び旧評価通達24−4(広大地の評価、平29課評2−46により削除)の定めに基づき、近傍宅地の1㎡当たりの価格27,000円を基礎として、本件土地の価額を21,721,417円と評価した。
 すなわち、原告は、「本件土地は取引の対象となるような土地ではない(宅地比準評価するのであれば宅地造成費用がかかり過ぎる)」との「特別の事情」が存すると主張し、課税庁が「本件土地には評価通達により難い特別の事情があるとは認められない。」と反論するというのが本訴の構図である。
 本件に適用された旧評価通達40−2及び旧評価通達24−4は平成29年改正により削除されており、現行の評価実務への影響は限定されるものの、納税者側から「評価通達により難い特別の事情」を主張する場合の判断基準・適用事例を裁判所が示したという点で、本判決は実務に影響を及ぼすものと考えられる。
 また、接道などの事情により事実上宅地としての取引(売却・開発)が期待できない状況にある市街地農地は各地に少なからず存在している。税の専門家としては詳細な状況を把握しておきたい事例といえよう。

本件土地の「特別の事情」とは?

 原告は「本件土地は建築基準法上の接道義務を満たしていない無道路地であり、そのままでは建築物を建築することはできず、宅地に転用することができない。」「本件土地を宅地に転用するには、北側道路に達するまで、西側農道を幅員6mに拡幅して開発を行う必要がある。」「道路開設予定地上には未登記の倉庫が存在し、道路開設には当該倉庫を取り壊す必要がある。」、「①造成工事費用、②開設道路上の倉庫取壊費用、③買収対象土地の所有権移転登記費用、④買収対象土地の測量、境界画定、土地分筆登記費用、⑤道路提供土地買取費用を合わせて5604万円余の費用が見込まれ、旧評価通達24−4の広大地補正率による減額2052万円余をはるかに上回る。」と主張した。
 一方、課税庁は、「本件における道路開設予定地の所有者が開発事業者による買取りを求めることなく道路開設に同意することは十分に想定され、そうすると、道路提供土地買取費用(1473万円余)は、本件土地の開発に当たり必ずしもその全額が必要になる費用とは認められない。」、「本件土地について、評価通達40−2や24−4の定めが想定する程度を著しく超える程度の宅地造成費等を要するとはいえない。」などとし、評価通達により難い特別の事情は認められないと反論した。

「実際の宅地造成費等>>広大地補正率による減価額」で「特別の事情」認定

 裁判所は、本件について評価通達により難い特別の事情の有無について検討した。そのうえで、本件土地を実際に宅地開発するために必要な宅地造成費等が広大地補正率による減価額(2052万円余)を著しく超えるものであれば、本件土地には「評価通達により難い特別の事情」があると解されるとの判断枠組みを示した。
 次いで、原告が主張する「実際に宅地転用するに当たり必要な宅地造成費等」について、「③買収対象土地の所有権移転登記費用、④買収対象土地の測量、境界画定、土地分筆登記費用は必ずしも宅地造成に必要な費用とは認められないというべきである。」としつつも、「本件土地を宅地として造成するのに必要な費用は、⑤道路提供土地買取費用(1473万円余)、①造成工事費用(3570万円余)、②開設道路上の倉庫取壊費用(14万円余)の合計5058万円余となる。」と判示した。
 上記の判断に基づき裁判所は、「本件土地は、宅地転用に当たり、評価通達40−2や24−4の定めが想定する2052万円余程度を著しく超える5058万円余(評価通達ベース額である80%に引き直して4046万円余)の宅地造成費等を要するのであるから、評価通達により難い特別の事情があると認めるのが相当である。」と判示した。
 なお、裁判所は、本件においては「裁判所において本件土地の適正な時価を探求するまでもなく、本件更正処分が違法であるから納税者の請求どおりに全部取り消した上で、国税通則法71条1項1号の期間内において改めて(本件土地には評価通達により難い特別の事情があることを前提に)本件土地の適正な時価を算定し、本件更正請求に対する判断をさせるのが相当である。」とも判示している。

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