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解説記事2020年11月02日 SCOPE 簡易課税制度選択届出書提出の有効性を巡る控訴審判決(2020年11月2日号・№856)

東京高裁、税務代理権に基づき提出と判断
簡易課税制度選択届出書提出の有効性を巡る控訴審判決


 簡易課税制度選択届出書は税理士の無権代理行為によって提出したものであるとし消費税の更正処分等の取消しを求めた事件で、東京高等裁判所(村田渉裁判長)は令和2年9月10日、簡易課税制度選択届出書は税理士の税務代理権に基づいて提出された有効なものであるとの判断を示し、納税者(控訴人)の請求を棄却した。原審の東京地裁の判断を支持したものである。上告はなされておらず、控訴審判決で確定した。

納税者は所得税の申告のみ税理士に委任と主張

 本件は、納税者(控訴人)が平成26年課税期間及び平成27年課税期間において本則課税により控除対象仕入税額を計算し各課税期間の消費税等の確定申告をしたところ、税務署は、控訴人は簡易課税制度選択届出書を提出していることから、簡易課税により控除対象仕入税額を計算すべきであるなどとして更正処分等を行ったものである。
 原審の東京地裁は、税理士は納税者から委任された税務全般に係る税務代理権に基づき、有効に簡易課税制度選択届出書を提出したものと認められるとの判断を示し、納税者の主張を斥けており、これを不服とした納税者が控訴したものである。
 納税者は、簡易課税制度選択届出書は無権代理行為によって提出されたものであり、その法的効力は控訴人に帰属しないから、各更正処分等は違法であるなどと主張。さらに控訴審では、税理士に対しては平成8年分の所得税の申告を委任したのであり、税務全般を委任しておらず、消費税等に係る税務も委任していないなどの主張を補充している(参照)。

【表】控訴審における納税者(控訴人)の補充主張に対する東京高裁の判断

納税者(控訴人)の主張 東京高裁の判断
 控訴人は税理士に対し平成8年分の所得税の申告を委任したのであり、控訴人の税務全般を委任して
おらず、消費税等に係る税務も委任していない。
 控訴人は、平成7年2月頃、税理士に対し所得税及び消費税等に係る税務を対象として、年分(期間)を限ることなく税務代理を委任したものと認められるから、控訴人の主張は採用することができない。
 税理士法の規定からすれば、税務代理についての包括的な代理権の内容は極めて広範に及ぶものであって、控訴人が税理士にそのように広範囲の税目や手続等について委任するような顧問契約を締結した事実はない。  控訴人は、税理士に対し所得税及び消費税等を対象とする税務代理を委任したものと認められ、税理士に委任した税務代理が広範囲に過ぎるとはいえない。
 税理士は控訴人に対し、簡易課税制度選択届出書の提出等について報告・説明すべき義務を負うにもかかわらず、同届出書の控えの交付もしておらず、これらの義務の履行がないことは、同届出書の作成・提出が無権代理行為であることを裏付ける。  税理士が控訴人の所得税及び消費税等に係る税務代理権を有していたことから、仮に税理士が控訴人に対し、簡易課税選択届出書の提出等について報告・説明し、同届出書の控えを交付すべき契約上の義務を履行していないとしても、そのことによって、同届出書の提出が無権代理行為であるということはできない。
 控訴人は税理士に対し、所得税確定申告書等に関する報酬は支払っているが、簡易課税選択届出書に関する報酬は支払っていないことから、控訴人が同届出書の作成・提出を委任していないことは明らかである。  仮に控訴人が税理士に簡易課税制度選択届出書に関する報酬を支払っていないとしても、報酬支払の有無が代理権限に影響を与えるものではない。
 国税の賦課権や徴収権は、原則として5年の除斥期間又は消滅時効に服するところ、本件簡易課税制度選択届出書の提出から20年以上も税務署が本件届出書に基づく賦課権を行使しなかったことからすれば、その賦課権等は除斥期間の経過によって行使できない。  国税通則法70条1項2号又は72条は、国税に係る更正、決定等の期間制限あるいは国税徴収権の消滅時効について定めているが、簡易課税制度選択届出書には有効期間の定め等はなく、簡易課税制度選択届出書が提出されているにもかかわらず、長期間にわたり税務署が簡易課税制度の適用を前提とした処分や指導等を行わなかったとしても、有効に提出された同届出書の法的効果に影響を与えるものではないから、簡易課税制度を適用した本件各更正処分等ができなくなるものではない。

所得税及び消費税等を対象として税務全般に係る税務代理権を有する

 東京高裁は原審の東京地裁に引き続き、簡易課税制度選択届出書は税理士の税務代理権に基づいて提出された有効なものであるとの判断を示した。
 東京高裁は原審の判決を引用しつつ、各事実によれば、納税者は税理士に対し、平成8年11月頃、同年分の所得税の確定申告に係る事務が終了するのと同時に平成7年2月に委任していた納税者の所得税及び消費税等を含む税務全般に係る税務代理を終了させる旨を告げたものと認められるのが相当であるとし、税理士は平成8年分の所得税の確定申告が終了するまで、納税者の所得税及び消費税等を対象として、税務全般に係る税務代理権を有していたとしている。
 また、東京高裁は、納税者の平成8年分の所得を前提とした課税仕入額の割合は48.28%であることを前提にすると、税理士において平成9年3月の段階で既に納税者が平成10年から消費税等の納税義務を負うことが確実であり、簡易課税制度の適用を受けることが納税者にとって得策であると考えたとしても合理性を欠くとまではいえず、提出を要することとなった課税事業者届出書とともに、簡易課税制度選択届出書を提出したことが税理士として不合理であるとはいえないとした。
 したがって、東京地裁の判決は相当であり、控訴人の請求を棄却している。

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