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解説記事2020年11月23日 レポート エフオーアイの粉飾決算事件、最高裁で弁論(2020年11月23日号・№859)

レポート
エフオーアイの粉飾決算事件、最高裁で弁論
主幹事証券会社の免責認めた高裁判決が見直しも

 粉飾決算が発覚しマザーズを上場廃止となったエフオーアイの元株主ら約200人が主幹事証券会社(元引受証券会社)のみずほ証券に対して損害賠償を求めた事件で、上告審の弁論が11月17日に最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)で開かれた。原審の東京高裁では、粉飾を指摘する匿名投書に対する追加調査は一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意義務を尽くしたものであり、「相当な注意を用いた」ものと認められると判断。主幹事証券会社の免責を認めていたが、弁論が開かれたことで原審の結論が見直される可能性が高まっている。判決は12月22日が予定されている。

粉飾決算発覚で上場廃止

 本件は、半導体製造装置の製作販売会社であるエフオーアイが、架空の売上げを計上して粉飾決算を行い、虚偽記載のある有価証券届出書を提出して東京証券取引所の市場であるマザーズへの上場を行ったが、その後粉飾決算の事実が発覚したもの(その後、上場廃止)。このため、上場時の募集若しくは売出しに応じ、又は上場後の取引所市場においてエフオーアイ株式を取得した株主らが、エフオーアイの役員、同社株式の募集又は売出しを行った元引受証券会社及び販売を受託した証券会社、当該売出しに係る株式の所有者並びに東京証券取引所等を被告として、金融商品取引法21条1項1号、2号、4号、22条1項及び17条、会社法429条2項又は民法上の不法行為に基づき、損害賠償を求めた事案である。

売上高の97.3%が架空の売上げ

 エフオーアイにおいては、平成16年3月期において、決算が大幅な赤字となって銀行融資を受けることができなくなることを防ぐため、役員らが相談の上、架空の売上げを計上することにより、決算書類には売上高が23億2,799万9,328円である旨記載する粉飾決算を行った(実際の売上高は7億1,941万328円であった)。平成17年3月期以降も平成21年3月期までの間、売上高を実際よりも水増しして計上する方法による粉飾決算を継続。平成21年3月期の粉飾額は115億3,639万5,000円に及び、決算書類に記載された売上高の97.3%が架空の売上げとなっていた。

東京地裁、主幹事証券会社の追加調査は不十分

 東京地裁では、エフオーアイの元役員(取締役5名、監査役3名)について金融商品取引法21条等の賠償責任を認めた。また、主幹事証券会社に対しては、粉飾を疑わせる事情について十分な審査を行ったとしているが、匿名投書(粉飾の経緯や偽装の手口を具体的に指摘したほか、エフオーアイの役職者名、決算書上の売上高、取引先、主幹事証券会社の担当者名が実際と合致しているなど、エフオーアイの実情をよく知る内部者による通報であることが推認された)に対する対応(追加調査)については不十分であったと認定。主幹事証券会社としての注意を尽くしていたとは認め難いとし、上場に際して証券会社による募集又は売り出しに応じてエフオーアイ株式を取得した投資家に対して、金商法21条等の責任を負うとの判断を示した(平成22年(ワ)第36767号等)。

東京高裁では注意義務を尽くしたと判断

 東京高裁は、匿名投書の内容は有価証券届出書に記載された「特別情報」や目論見書に記載された「経理の状況」の内容に著しく抵触するものであるから、公認会計士等による監査結果(無限定適正意見)の信頼性に疑義を生じさせる事情であるということができるとし、追加調査を実施することが求められるとした。
 その上で主幹事証券会社は、会計監査人への確認や、取締役及び監査役に対するヒアリングなどを実施。一連の追加調査の結果は会計監査人の報告内容を裏付けるものであり、会計監査人の監査結果(無限定適正意見)に関する信頼性について疑義が払拭されたと判断したことは合理的であると指摘。一般の元引受証券会社を基準として通常要求される注意義務を尽くしたものであって、「相当な注意を用いた」ものと認められると判断。主幹事証券会社の金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任について同条2項3号による免責を認め、株主らの請求を棄却した(平成29年(ネ)第1110号)。

争点は主幹事証券会社の免責の可否

 金融商品取引法では、有価証券届出書の重要な事項について虚偽記載等があった場合には損害賠償責任を負うとされているが(金商法21条1項4号)、虚偽記載等であることを知らず、かつ財務計算に関する書類に係る部分以外は相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかった場合には免責することができるとされている(同法21条2項3号)。最高裁では、主幹事証券会社(被上告人)の免責の可否が争点となっている。

株主、監査の信頼が成立せず

 株主ら(上告人)は、主幹事証券会社は粉飾決算の存在を疑わせる事情が存在する場合には、虚偽記載等の存在可能性を打ち消すのに十分な程度の注意を尽くして審査を実施する義務を負っていると主張。金商法21条2項3号においては監査済みの財務諸表部分は「相当な注意」の対象ではないが、この部分についても財務諸表の記載が虚偽であることを疑わせる事情が存在する場合は公認会計士の監査への信頼という前提が成立しないと述べた。
 また、主幹事証券会社は預金通帳の原本確認、残高確認書の確認、注文書の原本確認を実施するなど、虚偽記載の存在可能性を打ち消すのに十分な程度の調査を実施すべきであったとした。

「相当な注意」を用いたと主張

 一方、主幹事証券会社(被上告人)は、一般に要求される注意をもって当該疑義が払拭されたと合理的に判断するために必要な限度での追加調査を実施し、追加調査の結果等に基づき、会計監査の信頼性に対する疑義が払拭されたと判断したことが合理的であったすれば、主幹事証券会社が会計監査の結果を信頼することができると主張。仮に有価証券届出書に虚偽記載があったとしても、「相当な注意」を用いたにもかかわらず、虚偽記載を知ることができなかったというべきであると述べた。

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