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解説記事2020年12月07日 SCOPE 国・地方税とも押印・署名原則廃止、スキャナ保存は抜本改正(2020年12月7日号・№861)

税務手続きのデジタル化の全容
国・地方税とも押印・署名原則廃止、スキャナ保存は抜本改正


 令和3年度改正における税務手続きのデジタル化の全容が判明した。
 国税・地方税ともに原則として押印義務、署名が原則廃止されるほか、スキャナ保存制度では、「定期検査要件」「相互牽制要件」が廃止され、領収書への自署も不要となる。また、タイムスタンプ付与までの期間は「最長約2か月(67日)」と大幅に伸長され、さらに税務署による同制度の承認制度も廃止する。ただし、要件の大幅な緩和と引き換えに、電子データの改ざん等の不正については重加算税を10%重課する。
 電子取引に係るデータ保存制度については、「日付・金額に関する記録項目については範囲を指定しての条件設定」「2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定」という検索要件を条件付きで廃止する。「日付、金額、取引先」による検索機能自体は残るが、中小企業についてはすべての検索要件が不要となる。
 本誌取材によると、以上の改正事項の施行は、準備期間を踏まえ、「令和4年1月1日」となる見込みだ。
 租税条約に関する届出書も電子化される。同届出書の現状の作業フローはすべて紙で行われているが、改正後は支払いの受取者の署名欄、支払者の支払者受付印欄の双方が廃止され、PDFを利用したe-Taxによる電子的な提出が可能となる。

担保提供関係書類、遺産分割協議書など実印が必要な手続きは押印規定が存続

 コロナ禍とデジタル化推進を政策の柱に掲げる菅政権の下、税務手続きのデジタル化が一気に進むことになる。
 まず、国税・地方税ともに原則として押印義務を廃止する。また、事実上、押印と同等の意味合いしかない「署名」についても、同様の見直しを行う。この結果、例外的に押印規定が残るのは、実印が必要な手続き(担保提供関係書類、遺産分割協議書)などに限られることになる(本誌859号10頁参照)。
 地方税においては、これらに加え、法令に根拠のない自治体独自の押印欄を見直すよう、各自治体に通知で対応を促すことになる。

スキャナ保存では定期検査要件・相互牽制要件廃止の一方、不正には10%重課

 電子帳簿保存法(以下、電帳法)についても抜本改正が行われる。その中心となるのが、スキャナ保存制度の見直しだ。
 具体的には、コロナ禍の中、テレワークの妨げになっているとの指摘があった「定期検査要件」が廃止されるほか、社内での相互牽制要件も廃止。領収書への自署も不要とする。「短い」との批判があったタイムスタンプ付与までの期間(例えば営業担当者が自らスキャンする場合には、概ね3営業日以内にタイムスタンプ付与が必要)は、最長約2か月(67日)に統一される。さらに、スキャナ保存制度に係る税務署による承認制度も廃止する。
 一方、要件を大幅に緩和することとのバランスを図る観点から、電子データに関連して改ざん等の不正が把握されたときは、重加算税を10%重課する。
 なお、上記の通り、今回の改正では不正防止のための「内部統制要件」の緩和に重点が置かれたことから、企業側からの要望が強かった解像度要件については緩和には至らなかった。

電子データ保存の検索要件、税務職員のダウンロード要求に応じる場合は不要に

 電子取引に係るデータ保存制度も緩和される。
 現行制度は、検索要件において「日付・金額に関する記録項目については範囲を指定しての条件設定」「2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定」といった紙保存よりも重い要件が課されており、これらは企業にとってシステム投資コストの発生と相俟って高いハードルとなってきた。
 改正後は、企業が税務職員の質問検査権行使に基づく関連書類のダウンロード要求に応じる場合には、上記要件を不要とする。ただし、「日付、金額、取引先」による検索機能自体は残す。中小企業(売上高1,000万円未満の事業者等)についてはすべての検索要件を不要とする。このほか、電子帳簿保存制度における各種の要件緩和が行われる。
 本誌取材によると、以上の改正の施行は「令和4年1月1日」となる。大規模改正ゆえ、一定の準備期間を置く。

租税条約届出書 e-Taxで提出可能に、受取者署名欄・支払者受付印欄は廃止

 また、税務手続きのデジタル化の一環で、租税条約に関する届出書も電子化される。
 現状の作業フローとしては、まず利子・配当・使用料等の受取者である非居住者等が本様式に必要事項を記入した上で署名、支払者たる内国法人に国際郵送する。支払者はその内容を確認し押印、郵送又は持参により税務署に提出する。これらのプロセスはすべて紙であり、ただでさえ国際郵送のため届出書の来着時間が読めない中、コロナ禍にあってはテレワークを阻害するとして問題視されていた。
 改正後は、まず、押印原則の見直しにより受取者の署名欄、支払者の支払者受付印欄の双方が廃止されることになる。その上で、PDFを利用したe-Taxによる電子的な提出を可能とする。支払者を経由する方式は変わらない。
 ただし、署名を廃止するにしても、租税条約に基づく源泉税の減免を受けようとする受取者の意思確認は必要であることから、①「電子署名及び電子証明書」方式、②ID、パスワード」方式を認める。いずれも簡易な方策を模索する。
 企業によっては租税条約に関する届出書を年間数百件単位で取り扱っており、その事務負担は決して小さくない。電子化の実現により、作業フローの簡便化が期待されるところだ。

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