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解説記事2020年12月21日 SCOPE 塩野義事件二審、国は「規定の趣旨から解釈すべき」と主張(2020年12月21日号・№863)

被控訴人は、国の主張を支える品川評釈に反論
塩野義事件二審、国は「規定の趣旨から解釈すべき」と主張


 令和2年3月21日に東京地裁で国が敗訴した塩野義製薬事件(本誌830号40頁、837号19頁、849号14頁参照)では国が控訴し、令和2年12月7日、東京高裁第22民事部において控訴審第1回口頭弁論が開かれ、控訴審での弁論が終結した。
 国は、「原判決の解釈は、我が国の課税権確保を目的とする法人税法施行令4条の3第9項(現10項)の趣旨からも到底採り得ないもの」と原判決に異を唱えた。判決言渡しは令和3年4月が予定されている。

国、「本件CILP持分を経常的に管理していたのは被控訴人本社」と反論

 本件訴訟では、被控訴人が行った本件CILP(特例有限責任パートナーシップ)持分の現物出資が(その譲渡益の計上が繰り延べられる)適格現物出資に該当するか否かが争点となっている。具体的には、本件現物出資の対象資産が法人税法施行令4条の3第9項(現10項)に規定する「国内にある事業所に属する資産」に該当するか否かである。法人税法2条12号の14は、外国法人に国内にある事業所に属する資産等の移転を行うものは適格現物出資から除かれるものと規定する。
 上記争点について、原判決は次のように判示した。
 「本件CILP持分を1個の資産とみた場合のその経常的な管理が行われていた事業所は、CILPの事業用財産、中でもその主要なものの経常的な管理が行われていた事業所とみるのが相当である。(略)CILPの事業用財産のうち主要なものの経常的な管理は、いずれにしてもGSK/ViiV側が米国その他の我が国以外の地域に有する事業所において行われていたということができる。(略)当該事業所が原告の国内にある事業所に当たるとはいえない。」
 原判決に対し、国は次のように主張する。「ある資産が国内にある事業所において経常的に管理されている場合、当該事業所に備え付けられた帳簿に記載されているのが通常であるところ、本件CILP持分のような各種権利義務の総体である法的地位は、何かに記録されなければ管理を行うことはできないから、当該事務所の帳簿に記載することが正に当該法的地位を管理することになる。本件CILP持分については、その取得から本件現物出資に基づく喪失に至るまでの間、被控訴人本社有価証券台帳に投資有価証券として記載されていたから、被控訴人本社が経常的に管理していたことは明らかである。」「原判決の上記判示は、本件CILP持分を一つの不可分な資産と捉えながら、法的地位そのものを管理する事業所ではなく、その価値に包含される事業用財産を管理する個々の事業所をもって同持分を管理する事業所と判断している点において、論理の展開を誤っているものというほかない。」「『主要な』財産とまではいえなくとも、我が国の課税権確保の観点から無視できない程度の価値を有する財産が我が国にある事業所において経常的に管理されていた場合にも、本件CILP持分の含み益に対し我が国において課税できない結果を招く上記原判決の解釈は、我が国の課税権確保を目的とする施行令4条の3第9項の趣旨からも到底採り得ないものである。」

被控訴人、「記帳の場所は含み益の生じた場所とは関係せず」

 一方、控訴人である国の主張に対して、塩野義製薬(被控訴人)側は次のように反論する。
 「そもそも、本件CILP持分を株式会社における株式と同様の資産と取り扱うことが誤りである。更に加えて、任意組合等の出資持分の記帳は単なる同持分の『過去の投資の記録(歴史的原価)』であるから、任意組合等の出資持分(ないし組合員たる地位)を現物出資した場面において任意組合等の出資持分(ないし組合員たる地位)自体の記帳や経常的な管理を検討することは、本規定の趣旨に反するものであって、控訴人の主張が誤りであることに変わりはない。」「共有持分権ないし『CILP持分』なる抽象的な権利に対する『管理』は観念できない。」「CILP持分の記帳の場所等によって『属する事業所』を判断しようとする控訴人の主張は、海外支店の現地法人化の場面と国外の組合事業の現物出資の場面とで法律の規定も合理的な理由もなく検討対象を変えており、自己に都合良くルールを変えようとするものである。」「本件CILP持分自体の記帳の場所は本件現物出資の対象となる資産の含み益が生じた場所とは関係しない。」

本誌の論考・評釈が事案の本質に

 控訴人は、原判決の問題点を指摘するものとして、品川芳宣筑波大学名誉教授の評釈(TKC税研情報令和2年10月号)、西中間浩弁護士の評釈(税経通信令和2年9月号)を書証として提出した。
 一方、被控訴人は、原判決を肯定的に評価するものとして、岡村忠生教授の評釈(国際税務令和2年6月号)、吉村政穂教授の評釈(ジュリスト2020・7月号)、佐藤修二弁護士・浜崎祐紀弁護士・野口大資弁護士の評釈(本誌837号)を提出し、それぞれの評釈に対して、評価あるいは反論する主張を行っている。控訴人が提出した書証の中でも品川名誉教授の評釈に対しては、控訴人の起死回生の切り札(主張の骨格)になりかねないとの危機感を抱く被控訴人は、特に厳しく反論している。
 原判決への品川名誉教授の「適格要件を制限した制度の趣旨(引用者注:当該資産に係る含み益相当額が我が国で課税できなくなることを防止する)に照らし疑問が残る。」(本誌849号23頁)と佐藤弁護士らの「全体として、本判決は、理論的に精緻であるとともに、結論の座りも良い。」(本誌837号22頁)との指摘の交錯が本件訴訟の本質であることが窺い知れるものとなっている。
 佐藤弁護士らによる「結論の座りも良い。」との指摘には、ビジネス界の通念に合致するというだけでなく、信義則の問題も含まれていると言えよう。

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