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解説記事2019年09月23日 ニュース特集 令和元年度改正における法人税関係の通達を読む(2019年9月23日号・№804)

ニュース特集
事業継続力強化税制や仮想通貨など
令和元年度改正における法人税関係の通達を読む


 令和元年度税制改正では、事業継続力強化税制の創設や仮想通貨に関する会計上の取扱いを踏まえた法人税法上の取扱いの整備などが行われている。まだ令和元年度税制改正項目のすべてについて法人税基本通達の改正が行われているわけではないが、今回の特集では、国税庁が7月3日及び9月13日に公表した令和元年度税制改正などを踏まえた「法人税基本通達等の一部改正について」のうち、主だった改正事項(移転価格税制を除く)を解説する。

適用除外事業者の判定、修正申告等があれば変更後の金額で

 7月3日に国税庁のホームページで公表された「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」(令和元年6月28日)では、適用除外事業者であるかどうかの判定が明らかにされている。この改正は平成29年度税制改正項目であり、令和元年度税制改正項目ではないが、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるということで今回の一部改正に盛り込まれている。
 具体的に平成29年度税制改正では、中小企業向けの租税特別措置について、中小企業者のうち事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人を「適用除外事業者」と定義し、適用除外事業者に該当する事業年度については中小企業向けの租税特別措置の適用を停止することとされている。対象となる租税特別措置は図表1の通りである。

 適用除外事業者であるかどうかは、判定対象年度終了時に確定申告の所得の金額で判定することにる(図表2参照)。ただし、その後において修正申告や更正により確定申告により確定した所得の金額が変更された場合には、その判定を改めて行う必要がある(措通42の3の2-1)。仮に再判定で基準年度の平均所得金額が15億円超となれば遡って中小企業向けの租税特別措置の適用はないことになるので留意したい。

ノウハウやデザインなど
 令和元年度税制改正では、研究開発税制の見直しが行われている。オープンイノベーション型については、対象範囲に「委託する試験研究費が受託法人の有する知的財産権そのほかこれに準ずるものを活用して行う場合の企業間の委託研究費の額」が追加されている。この「そのほかこれに準ずるもの」とは、知的財産権以外の資産のうち、特別の技術による生産方式その他これに準ずるもの(技術的知識等財産)を利用する権利で受託者が対価を支払って第三者から設定又は許諾を受けたものとされており、改正通達において、「特別の技術による生産方式その他これに準ずるもの」の意義が明らかにされている(措通42の4(4)-3)。
 具体的には、知的財産権(特許権、実用新案権などの知的財産基本法の知的財産及び外国におけるこれに相当するもの)以外で、生産その他業務に関し繰り返し使用し得るまでに形成された創作、すなわち、特別の原料、処方による独自の考案又は方法を用いた生産についての方式、これに準ずる秘けつ、秘伝その他特別に技術的価値を有する知識及び意匠等であることを明らかにしている。ノウハウのほか、機械、設備等の設計及び図面等に化体された生産方式、デザインが含まれるが、技術の動向、製品の販路、特定の品目の生産高等の情報又は機械、装置、原材料等の材質等の鑑定若しくは性能の調査、検査等は該当しないとしている。
附属設備は建物とセットで
 そのほか、令和元年度税制改正では、構想適合病院用建物等の特別償却制度が創設されている。同制度は、青色申告書を提出する法人で医療保健業を営むものが、平成31年4月1日から令和3年3月31日までの間に、構想区域等内において、構想適合病院用建物等の取得等をして、これをその法人の営む医療保健業の用に供した場合には、その医療保健業の用に供した日を含む事業年度において、その構想適合病院用建物等の取得価額の8%相当額の特別償却ができるというもの(措法45条の2③)。適用対象資産は、病院用又は診療所用の建物及びその附属設備とされているが、対象資産となる建物の附属設備は、当該建物とともに取得等をする場合における建物附属設備に限られるとされている(措通45の2-5)。

仮想通貨に関する法人税法上の取扱いを整備

 令和元年度税制改正では、企業会計基準委員会(ASBJ)が平成30年3月14日に公表した実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を踏まえ、法人税の課税関係の整備が行われており(図表3参照)、7月3日に国税庁のホームページで公表された「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」(令和元年6月28日)では、仮想通貨関係の取扱いが新たに規定されることになった。

 例えば、仮想通貨信用取引に係る現渡しの方法による決済を行った場合の損益の計上時期については、現渡し決済の約定日となる旨が明らかにされている(法基通2-1-21の14)。また、信用取引に係る売付け及び買付けに係る金利、買委託手数料、品貸料については、原則として売付け対価の額又は買付け対価の額に含めることとするが、継続適用を条件として、買委託手数料を除き、発生に応じ益金の額又は損金の額に算入することができるとしている(法基通2-3-62)。現引きにより取得した仮想通貨の取得価額については、取得時における通常要する価額、つまり、仮想通貨の取得時における価額にいわゆる受渡決済に伴って新たに支出する委託手数料その他の費用を加算した金額となる(法基通2-3-63)。
 そのほか、仮想通貨信用取引を行った場合において、期末に未決済のものがあるときは、その時において決算したものとみなして算出した利益額又は損失額(みなし決済損益額)を益金又は損金に算入することになるが、外国通貨で受払いを行う場合のみなし決済損益額の円換算は、電信売買相場の仲値(T.T.M)によることになる(法基通2-1-49)。ただし、継続適用を条件として、利益の額に相当する金額は電信買相場(T.T.B)、損失の額に相当する金額は電信売相場(T.T.S)によることもできる。
 また、一時的に必要な仮想通貨を取得した場合については、一単位当たりの帳簿価額の算出方法において、「取得」に含まれないため、移動平均法又は総平均法は適用されない。したがって、個別法が適用されることになるが、「一時的に必要な仮想通貨を取得した場合」とは、仮想通貨を購入、売却、交換する際、通貨と直接交換ができないため、一時的に他の仮想通貨を有することが必要となる場合をいうこととされている(法基通2-3-65、図表4参照)。

 例えば、あるAコインが世界中のいずれの交換所でも通貨とペアとなっていない場合、Bコインは一時的に必要な仮想通貨の取得に該当することになる。

特定事業継続力強化設備も他の特別償却制度と同様の取扱い

 令和元年度税制改正では、特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(20%の特別償却)が創設されたが、同制度は中小企業強靭化法の改正が前提になっている。改正法では中小企業者が行う防災・減災の事前対策に関する計画(事業継続力強化計画)を国が認定し、認定を受けた者に対して課税の特例などの支援措置が講じられている。税制措置は改正法の施行日(令和元年7月16日)から令和3年3月31日までの間に取得等し、事業の用に供した特定事業継続力強化設備等(図表5参照)が対象。中小企業は事業継続力強化計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けることにより同計画に基づく特定事業継続力強化設備等への投資について課税の特例の適用が受けられる。

【図表5】特定事業継続力強化設備等

減価償却資産の種類 対象となるものの用途又は細目
機械及び装置
(最低投資額:100万円以上)
自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する次のいずれかに該当するものとして経済産業大臣が定めるもの。
一 自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプその他の自然災害に起因する電気、ガス又は水道水の供給の停止の影響の軽減に資する機能を有するもの
二 排水ポンプその他の自然災害に起因する浸水の影響の軽減に資する機能を有するもの
三 制震装置、免震装置その他の自然災害に起因する設備の転倒又は損壊の影響の軽減に資する機能を有するもの
器具及び備品
(最低投資額:30万円以上)
全ての設備
建物附属設備
(最低投資額:60万円以上)
電気設備(照明設備を含む。)
給排水又は衛生設備及びガス設備
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備
可動間仕切り
自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する次のいずれかに該当するものとして経済産業大臣が定めるもの。
一 制震装置、免震装置その他の自然災害に起因する設備の転倒又は損壊の影響の軽減に資する機能を有するもの
二 防水シャッターその他の自然災害に起因する浸水の影響の軽減に資する機能を有するもの
三 防火シャッターその他の自然災害に起因する発火の影響の軽減に資する機能を有するもの

 同制度に関しては、9月13日に「租税特別措置法関係通達(法人税編)等の一部改正について(法令解釈通達)」(令和元年9月11日)が公表されている。主だった内容をみると、まずは中小企業者であるかどうかの判定だ。同制度の対象となる中小企業者は、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とされている。ただし、発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く)の所有に属している法人、②①の法人のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人のうち次の法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人とされている。
 この中小企業者に該当するかどうかの判定は、資本金の額若しくは出資金の額又は従業員の数といった外形的基準に基づいて行うこととされているが、その判定時期については、特定事業継続力強化設備等の取得等をした日及び事業の用に供した日の現況によることとされている(措通44の2-1)。したがって、特定事業継続力強化設備等の取得等をした日及び事業の用に供した日において、中小企業者等に該当していれば、期首又は期末に中小企業者に該当していなくても本制度の適用が認められることになる。しかし、その取得等をした日において中小企業者等に該当していたが事業の用に供した日において中小企業者に該当しなくなった場合などについては、本制度の適用はないことになる。
取得価額は圧縮記帳後の金額で判定
 適用対象資産である機械及び装置については、1台又は1基の取得価額が100万円以上、器具及び備品については、1台又は1基の取得価額が30万円以上のものとされている。この取得価額の判定については、通常一単位として取引される単位ごとに判定することを原則とし、個々の機械及び装置の本体と同時に設置する自動調整装置又は原動機のような附属機器でその機械及び装置等の本体と一体となって使用するものがある場合には、これらの附属機器を含めたところでその取得価額が100万円(30万円)以上であるかどうかの判定を行うことができるとしている(措通44の2-3)。
 また、本制度と法人税法上の圧縮記帳とは重複適用が可能であるが、圧縮記帳をした場合の特定事業継続力強化設備等の取得価額については、圧縮記帳後の金額に基づいてその判定を行うこととされている(措通44の2-4)。

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