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解説記事2021年02月15日 ニュース特集 欠損金の繰越控除可能額&自社株等対価MAの譲渡損益計算(2021年2月15日号・№870)

ニュース特集
速報 令和3年度税制改正法案
欠損金の繰越控除可能額&自社株等対価MAの譲渡損益計算


 1月29日、令和3年度税制改正法案が国会に提出された。
 令和3年度税制改正では、コロナ禍で業績に大きなダメージを受けた企業の救済策である「認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例」という“守り”の税制と、自社株等を対価とした積極的なM&Aを促す「被買収企業株主における株式の譲渡損益の繰延べ」の拡充という“攻め”の税制が目玉措置として実施されるが、令和3年度税制改正法案により、それぞれの税制措置の核となる「欠損金の繰越控除可能額」「自社株等対価M&Aの譲渡損益」の計算方法などが判明している。
 本特集では、該当条文を解読した上で、具体的な数字を入れながら上記計算方法の詳細などを明らかにする。

欠損金の繰越控除の特例

改正産業競争力強化法は7月1日から施行へ、来年半ばまでに同法の認定を

 「認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例」(以下、「欠損金の繰越控除の特例」という)とは、コロナ禍で業績悪化に陥る企業が続出していることを踏まえ、改正産業競争力強化法の認定(認定事業適応計画)を受けることを条件に、「2年間」にわたって生じた欠損金額を、翌期以降、最長で「5年間」、最大で「100%」繰越控除できる税制措置である。
 1月29日に国会に提出された令和3年度税制改正法案によると、①青色申告書を提出する法人で産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律の施行の日から同日以後1年を経過する日までの間に産業競争力強化法の認定を受けたもののうち、②その認定に係る認定事業適応事業者であるものの適用事業年度(その認定に係る認定事業適応計画に記載された実施時期内の日を含む各事業年度であって、一定の要件を満たす事業年度に限る)において欠損金の繰越控除制度を適用する場合において、特例欠損事業年度において生じた欠損金額があるときは、③超過控除対象額に相当する金額を追加的に損金算入できることとされている(新措法66条の11の4)。
 改正産業競争力強化法は2月5日付で閣議決定され、同日に国会に提出されている。同法改正案には、「公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」(附則1条)とあり、明記はされていないが、本誌取材によると、改正法の施行日は本年7月1日となる見込み。すなわち、欠損金の繰越控除の特例の適用を受けるためには、遅くとも来年の半ばまでに産業競争力強化法の認定を受ける必要があるということになる。認定期間が短めに設定されているのは、そもそも本特例はコロナ禍による赤字からの早期Ⅴ字回復を目指す企業を支援するものであるためだと考えられる。

「特例事業年度(コロナ禍により赤字となった事業年度)」の意義は省令で規定

 条文要旨のカッコ書きにある「一定の要件を満たす事業年度」とは、①コロナ禍により赤字となった事業年度(特例事業年度)のうちその開始の日が最も早い事業年度(基準事業年度)後の事業年度で、黒字転換した最初の事業年度開始の日以後「5年以内」に開始する事業年度であること、②令和8年4月1日以前に開始する事業年度であること、③中小法人等に該当しない事業年度であること、の全てを満たす事業年度であり(同条1項各号)、大綱段階の記載から変更はない。
 注目を集めていた「特例事業年度(コロナ禍により赤字となった事業年度)」の意義については、大綱段階では「令和2年度及び3年度を基本としつつ、一定の場合には令和元年度及び2年度を指す」旨の記述があったが、法律段階ではこの点について何ら記載がなく、単に「経済社会情勢の著しい変化によりその事業の遂行に重大な影響を受けた事業年度として財務省令で定めるところにより証明がされた事業年度」とされるにとどまっている。
 令和元年度及び2年度のケースは、専ら原油価格の下落の影響を受けた石油業界の強い働きかけにより与党大綱とりまとめ直前に認められたというのが真相とみられるが、その全容が明らかになるのはもうしばらく先となる。基本的にはコロナ禍により業績にダメージを受けた期間に絞り込まれることになろう。

投資額により控除対象となる欠損金が変動

 特例欠損事業年度とは、特例事業年度において生じた欠損金額のうちに超過控除対象額がある場合における当該特例事業年度をいう。また、超過控除対象額とは、以下の一〜三号のうち最も少ない金額とされた(同条2項柱書及び各号)。

一号 特例事業年度において生じた欠損金−そのうち過年度においてすでに使用済の欠損金(一号イ)−その欠損金のうち本特例なかりせば損金算入される部分(一号ロ)
二号 産業競争力強化法の認定事業適応計画に従って適用事業年度終了の日までに行った累積投資額(二号イ)−既に本特例により所得の50%を超えて損金算入した欠損金に相当する金額(その適用事業年度前の事業年度に対応するものが二号ロ、その適用事業年度分に対応するものが二号ハ)
三号 欠損金控除前所得金額の50%-二号ハ

 事例を単純化するため、令和元年度以前の欠損金を(業績好調により)零、令和2年度の欠損金額は(コロナ禍により)1,000、令和3年度中に認定を取得、令和3年度の所得を零、令和4年度の所得を1,200、令和4年度までの累積投資額を300とする。この場合、令和4年度の申告は下記の通りとなる。
 二号が一番小さいため、超過控除対象額は300となる。建前上、欠損金の繰越控除の特例は所得金額の100%まで繰越控除ができる制度ではあるが、令和4年度については所得1,200のうち900(600+300)、すなわち75%までしか控除できないことになる。この投資額による制約は、控除キャップの緩和が単なる内部留保の増加につながってはならないという与党及び税制当局の問題意識を踏まえたものと言えよう。
 なお、投資額の意義の詳細は、財務省令に委ねられている。財務省令の内容も注目されるところだ。

一号 1,000−零(一号イ)−600(一号ロ:1,200×50%)=400
二号 300(二号イ)−零(二号ロ、二号ハともに零)=300
三号 600(1,200×50%)−零=600

自社株等対価M&A特例

現行法人税法上の有価証券の譲渡損益の計算方法に係る規定を読み替え

 「被買収企業株主における株式の譲渡損益の繰延べ」(以下、「自社株等対価M&Aに係る特例」という)とは、被買収会社の株主に対しキャッシュを支払う代わりに自社株等を交付するM&Aであり、買収会社からの株式譲渡のオファーに応じた被買収企業株主における株式の譲渡損益の繰り延べを認めるもの。制度としては平成30年度税制改正で租税特別措置として導入されていたが、令和3年度税制改正では、これが租税特別措置のまま「恒久化」されたほか、産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」の認定も不要となり(特別事業再編計画の認定について定めた現行強化法の第25条等が全部削除)、使い勝手が大幅に向上することになった。さらに、自社株等対価M&Aのベースとなる改正会社法で導入される株式交付では自社株のみならず金銭等も対価としてミックスできることから、自社株等対価M&Aに係る特例においても、金銭等が「20%以内」にとどまる場合は、金銭等を対価とすることが認められる。株式交換と異なり、被買収会社の株主に「株式譲渡の強制性」がない自社株等対価M&Aは、100%子会社でない子会社を作る手法として活用されることになりそうだ。
 この新・自社株等対価M&Aに係る特例について規定した令和3年度税制改正法案における新租税特別措置法66条の2の2第1項を見ると、自社株等対価M&Aに係る特例は、有価証券の譲渡損益の計算方法について定めた法人税法の規定を読み替える内容となっている。
 すなわち、現行法人税法上、有価証券の譲渡利益額(譲渡益)は、同法61条の2第1項により、「有価証券の譲渡に係る対価の額(同項一号)−有価証券の譲渡に係る原価の額(同項二号)」によって求めることを原則としているが、会社法上の株式交付が行われた場合には、同項一号を上記のように読み替えることとしている。

<読み替え後の一号>

株式交付子会社株式の株式交付直前の帳簿価額
×株式交付割合(株式交付により交付を受けた株式交付親会社株式の価額/株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額)
+株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(株式交付親会社株式の価額を除く)

 上記の算式は、株式交付親会社株式と現金との混合対価のケースを念頭に置くと、以下のように噛み砕くことができる。

 本特例上、混合対価が認められるのは、株式交付の対価の総額に占める株式交付親会社株時価の割合が「80%以上」の場合に限られる(新措法66条の2の2①)。そこで、仮に株式交付子会社株簿価100に対し、対価総額120(株式交付親会社株時価96、現金24、株式交付の対価の総額に占める株式交付親会社株時価の割合80%)を当てた場合には、読み替え後の一号は次のように計算される。

「株式交付親会社株式の時価/株式交付の対価の総額=80%」の場合の読み替え後の一号の計算例

100×96/120+24=104

現金がミックスされる場合には譲渡益が生じるケースも

 二号は「原価の額=株式交付子会社株簿価=100」であることから、譲渡益は「104(一号)−100(二号)」により4となる。税制改正法案の要綱で、「その譲渡した所有株式(交付を受けた株式交付親会社の株式に対応する部分に限る。)の譲渡損益を計上しないこととする」とあるのは、まさにこの状況を指しており、現金が混ざる場合は譲渡益が生じることもあるということだ。これに対し、現金を混合させず、対価の120すべてを株式交付親会社株式のみとした場合には、読み替え後の一号は「100×120/120+零(現金なし)=100」となり、二号は100であることから、譲渡益は零となる。
 本特例は、施行日(2021年4月1日)以後に行われる株式交付について適用される(改正法附則1条、53条)。改正会社法の施行が今年3月1日であることから、使おうと思えば即座に使えるということである。
 なお、株式交付親会社における株式交付子会社株式の取得価額その他は政令事項とされる(新措法66条の6の2②)。

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