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解説記事2021年02月15日 レポート 令和2年版 個人課税関係の誤りやすい事例(2021年2月15日号・№870)

レポート
令和2年版 個人課税関係の誤りやすい事例
当局作成の職員向け資料から掲載

 本レポートでは、大阪国税局が職員向けに作成している「令和2年版 個人課税関係誤りやすい事例(国税通則法・所得税法・消費税法)」から令和2年版において新たに追加された事例を紹介する。


所得金額調整控除の計算etc.
 所得税法関係では、非課税となる通勤手当の取扱い、所得金額調整控除が適用される場合の公的年金等控除額の計算、65万円の青色申告特別控除が適用される電子申告の要件などが記載されている。
 消費税法関係では、数次にわたる相続があった場合の納税義務の判定、歯科医師による患者の金冠売却の事業区分など、国税通則法関係では、医療費控除を失念した場合の更正の請求書への添付書類などを確認している。

【所得税法関係】

○非課税

【誤った取扱い】
 新型コロナウイルス感染症に関連して、市町村から家計への支援の観点から給付される令和2年度の一般会計補正予算(第1号)における特別定額給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金について、課税されるとした。
【正しい取扱い】
 新型コロナウイルス感染症に関連して、市町村から家計への支援の観点から給付される令和2年度の一般会計補正予算(第1号)における特別定額給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金(給付対象者1人につき10万円が給付される特別定額給付金)については課税されない(新型コロナ税特法4①一、新型コロナ税特規2①)。
 ただし、持続化給付金や雇用調整助成金など、事業者の営業自粛等に伴う収益の補償や経費の補填として給付される金品等については事業所得等として課税される(所令30本文かっこ書、94①)。

【誤った取扱い】
 通勤費を加算せずに給与が支給されている場合でも、実際の通勤費が明確にできればその金額は非課税に該当するとした。
【正しい取扱い】
 通勤手当で非課税とされるのは、所得税法で「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるためのものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの」と規定されている(所法9①五)。
 すなわち、給与所得者が通常の給与のほかに通勤手当の支給を受ける場合に限り通勤手当の非課税の取扱いを受けることができるのであり、通常の給与に通勤手当が加算されていない場合には、実際の通勤費が算出できたとしても、当該金額は非課税にならない。

○雑所得

【誤った取扱い】
 令和2年分以後の給与所得と公的年金等に係る雑所得がある者の公的年金等に係る雑所得の金額を計算する場合において、「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」を計算する際、所得金額調整控除後の給与所得により計算した。
【正しい取扱い】
 公的年金等に係る雑所得の金額を計算する場合における「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」とは、公的年金等の収入金額がないものとして計算した場合における合計所得金額とされているため、措法41の3の3②(給与所得と公的年金等に係る雑所得を有する者の場合)の規定による所得金額調整控除の適用はないものとして計算することとなる。
 したがって、事例の場合、「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額」の計算の際には、所得金額調整控除前の給与所得により計算する(所法35④、所基通35−8)。
 なお、措法41の3の3①(子ども・特別障害者等を有する者等の場合)の規定による所得金額調整控除を適用する場合は、所得金額調整控除後の給与所得で計算する。
 具体的な計算方法については、次の【例1】【例2】のとおりである。
【例1 給与所得と公的年金等に係る雑所得を有する者(措法41の3の3②)の場合】
 年齢:63歳
 収入に関する事項:給与収入1,200万円、公的年金等の収入100万円
 所得控除に関する事項:本人、同一生計配偶者及び扶養親族のいずれも特別障害者ではなく、23歳未満の扶養親族もいない
(計算過程)
① 給与所得(所得金額調整控除前)……1,200万円−195万円(給与所得控除)=1,005万円
② 公的年金等に係る雑所得……100万円−50万円(公的年金等控除※)=50万円
③ 給与所得(所得金額調整控除後(措法41の3の3②))……1,005万円−10万円(所得金額調整控除。給与所得、公的年金等に係る雑所得がどちらも10万円を超えているため上限額)=995万円
※ 所得金額調整控除前の給与所得1,005万円で判定するため、公的年金等控除は50万円である。しかし、誤って所得金額調整控除後(措法41の3の3②)の給与所得(995万円)で判定してしまうと、公的年金等控除が60万円になってしまう。
【例2 子ども・特別障害者を有する者等(措法41の3の3①)であり、給与所得と公的年金等に係る雑所得を有する者(措法41の3の3②)の場合】
 年齢:63歳
 収入に関する事項:給与収入1,200万円、公的年金等の収入100万円
 所得控除に関する事項:20歳の扶養親族がいる
(計算過程)
① 給与所得(所得金額調整控除前)……1,200万円−195万円(給与所得控除)=1,005万円
② 給与所得(所得金額調整控除後(措法41の3の3①))……1,005万円−15万円(所得金額調整控除。給与収入が1,000万円を超えているため上限額)=990万円
③ 公的年金等に係る雑所得……100万円−60万円(公的年金等控除※)=40万円
④ 給与所得(所得金額調整控除後(措法41の3の3②))……990万円−10万円(所得金額調整控除。給与所得、公的年金等に係る雑所得がどちらも10万円を超えているため上限額)=980万円
※ 所得金額調整控除(措法41の3の3①)の適用がある場合は、所得金額調整控除後の給与所得(990万円)で判定するため、公的年金等控除が60万円になる。しかし、誤って所得金額調整控除前の給与所得(1,005万円)で判定してしまうと、公的年金等控除が50万円になってしまう。

○収入金額

【誤った取扱い】
 一定の条件が付された譲渡制限付株式の付与を受けた個人が、令和2年6月1日(譲渡制限が解除される日前)に死亡し、その後の取締役会において譲渡制限が解除された場合、譲渡制限が解除された日(取締役会等の日)における価額を収入金額として、当該個人の相続人の一時所得等として課税するとした。
【正しい取扱い】
 譲渡制限付株式を付与された個人が、令和2年4月1日以後に死亡した場合、当該譲渡制限付株式については、当該個人の死亡の日における価額を収入金額として、当該個人の給与所得等として課税する(所令84①、109①二、令2改正所令附則4①、所基通23〜35共−5の3、23〜35共−6、23〜35共−6の2)。

○必要経費

【誤った取扱い】
 令和2年分の確定申告において、青色申告者(電子帳簿保存法に係る承認は受けていない)が確定申告書を電子申告により期限内に提出し、青色申告決算書を別途書面により提出した場合にも、65万円の青色申告特別控除を受けられるとした。
【正しい取扱い】
 次の要件のいずれかを満たす場合には、青色申告特別控除額55万円ではなく65万円を適用することができる(措法25の2③④⑥)。
1 所定の期限内に電子帳簿保存法4条1項又は5条1項の承認申請書を提出し、その年中の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について税務署長の承認を受けて、電磁的記録による備付け及び保存を行い、かつ、期限内に貸借対照表及び損益計算書等を添付した確定申告書を提出した場合
2 期限内に電子申告により確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等を送信(提出)した場合
 事例の場合、青色申告決算書を電子申告により提出しておらず、上記の要件を満たさないため、青色申告特別控除の金額は55万円となる。

【誤った取扱い】
 調査により消費税の免税事業者が課税事業者になり、令和X課税期間分の消費税の期限後申告が必要となった。
 令和X年分の帳簿上、売上金額及び必要経費の額について、消費税等相当額をそれ以外の金額と区分して記録されていなかったが、令和X年分の所得税の修正申告書を提出する際、税抜経理方式を採用し、仮受消費税額と仮払消費税額の差引き額と実際の消費税額との差額を必要経費に算入できるとした。
【正しい取扱い】
 帳簿上、売上金額及び必要経費の額について、消費税等相当額をそれ以外の金額と区分して記録されていない場合には、修正申告において税抜経理方式を採用することはできず、税込経理方式による処理がされていたものとみなされる。
 したがって、事例の場合、令和X課税期間分の消費税の期限後申告書により納付することとなった消費税額は、当該申告書が提出された年分の必要経費になる。
 なお、税抜経理方式による経理処理は、原則として取引の都度行うこととされているが、期末一括税抜経理方式を採用することも可能とされている(平元.3.29直所3−8「消費税法等の施行に伴う所得税の取扱いについて」の「4」)。

○寄附金控除

【誤った取扱い】
 令和2年8月のスポーツイベントが新型コロナウイルス感染症の影響で中止になったため、当該イベントのチケットに係る払戻請求権を放棄した場合に、当該払戻請求権相当額について、寄附金控除等の対象にならないとした。
【正しい取扱い】
 令和2年2月1日から令和3年12月31日までの期間において、新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により中止等となった一定のイベント(文部科学大臣が指定したものに限る)の入場料金等について、払戻請求権の全部又は一部を放棄した場合には、その放棄をした部分の払戻請求権相当額の合計額(当該合計額が20万円を超える場合には、20万円)について、寄附金控除(所法78)又は公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除(措法41の18の3)の適用を受けることができる(新型コロナ税特法5①③)。
 なお、当該控除の適用を受ける個人は、確定申告書に当該控除に関する事項を記載するとともに、明細書、主催者が発行した「指定行事証明書」及び主催者が発行した「払戻請求権放棄証明書」を添付等しなければならない(所法120①十一、同条③一、所令262①六、所規47③十九、新型コロナ税特令3②、新型コロナ税特規3等)。

○寡婦控除・ひとり親控除

【誤った取扱い】
 Aは、妻と死別した後婚姻しておらず、子を扶養しており、令和元年分までは寡夫控除を適用していたが、令和2年分から、寡夫控除は廃止されたため、妻との死別・子の扶養に関する控除(寡夫控除に代わるもの)はないとした。
 なお、Aの令和2年分の合計所得金額は400万円である。
【正しい取扱い】
 令和2年分以後、居住者が、ひとり親(現に婚姻をしていない者又は配偶者の生死の明らかでない一定の者のうち、①生計を一にする子(総所得金額等が48万円以下)を有すること、②合計所得金額が500万円以下であること及び③その者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者がいないことを満たす者)に該当する場合には、ひとり親控除(35万円)が適用される(所法81、所令11の2、令2改正法附則2)。
 事例の場合、Aは、事実上婚姻関係と同様の事情にある者がいなければ、上記の「ひとり親」に該当することから、ひとり親控除が適用される。
※ 事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる者とは、住民票の続柄に「夫(未届)」、「妻(未届)」などの記載がある者をいう。

【誤った取扱い】
 B(合計所得金額1,000万円)は、夫と離婚した後婚姻しておらず(事実上婚姻関係と同様の事情がある者はいない)、子を扶養していることから、令和2年分において、寡婦控除が適用されるとした。
【正しい取扱い】
 令和元年分以前は、夫と離婚した後婚姻しておらず、子を扶養している者は、その者の合計所得金額にかかわらず、寡婦控除27万円(合計所得金額500万円以下の場合は35万円)が適用されていた(旧所法2①三十、81、旧措法41の17)。
 しかし、令和2年分から、寡婦控除の適用を受けるためには、その者の合計所得金額が500万円以下であることが要件となる(所法2①三十、令2改正法附則2)。
 よって、事例の場合、令和2年分において、Bの合計所得金額が1,000万円であるため、寡婦控除は適用されない。
 なお、Bの合計所得金額が500万円以下である場合、令和2年分以後は、ひとり親に該当することから、寡婦控除ではなく、ひとり親控除が適用されることとなる。

○配偶者控除

【誤った取扱い】
 確定申告に際して、退職所得の申告が不要であることから、配偶者控除を適用するための納税者の合計所得金額の計算において、当該退職所得の所得金額を加えなかった。
【正しい取扱い】
 配偶者控除はその納税者の合計所得金額により、適用を受けられる控除額が決定するとされており(所法83①)、同合計所得金額は、所法70条(純損失の繰越控除)及び同法71条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における第22条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額とされている(所法2①三十イ(2))。
 したがって、納税者が退職所得の申告は不要であったとしても、合計所得金額の計算には加算する必要がある。

○基礎控除

【誤った取扱い】
 Aの令和X年分の合計所得金額は3,000万円であるが、居住者であることから、基礎控除として、38万円の控除を受けることができるとした。
【正しい取扱い】
 令和2年分以後、基礎控除については、控除額を10万円引き上げ48万円にするとともに、合計所得金額2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はない(所法86①、平成30改正法附則1六イ)。
 なお、令和元年分以前の基礎控除については、個人の合計所得金額にかかわらず、一律38万円である。

○外国税額控除

【誤った取扱い】
 外国税額控除の控除限度額の計算において、「その年分の調整国外所得金額」を、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除を適用した後の金額で計算した。
【正しい取扱い】
 「その年分の調整国外所得金額」は、純損失又は雑損失の繰越控除、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、特定中子小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除や先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の各種繰越控除の適用を受けている場合には、その適用前のその年分の国外所得金額をいう。
 したがって、上場株式等の譲渡損失の繰越控除がある場合、当該繰越控除を適用しないで計算することとなる(措令25の11の2⑳による読替適用後の所令221の3②、221の6①、措令25の12の2、措令26の7⑱一、措令26の7の2⑭、措令26の26⑪、所基通95−10)。
 なお、平成30年分以前は、「その年分の調整国外所得金額」については、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除、特定中小子会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除又は先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用を受ける場合には、その適用後の金額で計算することとされていた(純損失又は雑損失の繰越控除についてはその適用前の金額で計算)。

○住宅借入金等特別控除

【誤った取扱い】
 認定長期優良住宅による住宅借入金等特別控除の適用を受けるための添付書類のうち、「認定通知書」
の写しに代えて、評価機関の発行する「適合証」の写しによることもできるとした。
【正しい取扱い】
 認定長期優良住宅による住宅借入金等特別控除の適用を受ける際の添付書類の一つに、「認定通知書」の写しが要件とされている(措規18の21⑫一)。
 事例の「適合証」は所管行政庁へ認定通知書を申請する際に添付するものであり、「認定通知書」に代えることはできない。

【誤った取扱い】
 Aは、令和X1年に新規住宅をその居住の用に供したが、その3年後(令和X4年)に従前住宅を譲渡した。この場合において、従前住宅の譲渡につき、居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35①)の適用を受ける場合であっても、新規住宅について、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるとした。
【正しい取扱い】
 新規住宅をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年、その年の前年、前々年又は翌年以後3年以内(令和2年3月31日以前に従前住宅を譲渡する場合は翌年以後2年以内)の各年中において、従前住宅等を譲渡した場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできない(措法41⑳、令2改正法附則71、75)。
イ 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の3)
ロ 居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35①)
ハ 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2、36の5)
ニ 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例(措法37の5)

【誤った取扱い】
 令和2年8月に、新築住宅(消費税額等合計額の金額が10%の税率により課されるべきもの)を居住の用に供し、住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合、控除期間は10年間であると説明した。
【正しい取扱い】
 令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に、消費税額等合計額の金額が10%の税率により課税されるべきものである場合の住宅を居住の用に供した場合、控除期間は13年間となる(措法41⑬⑯)。
 なお、11年目から13年目までの3年間は、消費税増税分にあたる「建物購入金額(税抜)の2%」の範囲で控除することとなる。
※ 新型コロナウイルス感染症等の影響による特例については、次の事例を参照。

【誤った取扱い】
 令和2年2月に新築住宅に係る請負契約(同年11月引渡し予定)を締結したが、新型コロナウイルス感染症の影響により工事が遅延したため、令和3年1月に新築住宅の引渡しを受け入居することとなった。
 この場合、令和2年12月31日までに居住の用に供していないことから、住宅借入金等特別控除の適用期間は、令和3年からの10年間であると説明した。
【正しい取扱い】
 住宅の取得等で特別特定取得(消費税額等合計額の金額が10%の税率により課されるべきもの)に該当するものをした個人が、特別特定取得をした家屋を、令和2年12月31日までにその者の居住の用に供することができなかった場合において、①新型コロナウイルス感染症の影響等により、令和2年12月31日までに居住の用に供することができなかったこと、②注文住宅を新築する場合、家屋の特別特定取得に係る契約が令和2年9月30日まで(分譲住宅・既存住宅を取得する場合又は増改築等をする場合は令和2年11月30日まで)に締結されていること、③令和3年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供すること、の要件を満たせば、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除期間の特例(控除期間13年間)を適用できる(措法41⑬⑯、新型コロナ税特法6④⑤、新型コロナ税特令4③)。
 事例の場合、上記3つの要件を満たすことから、住宅借入金等特別控除の適用期間は、令和3年からの13年間となる。

【誤った取扱い】
 令和元年10月30日に中古住宅を購入し、その後、増改築工事(令和2年2月15日契約締結)を行い令和2年4月15日に入居する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で増改築工事が長引き(令和2年5月30日工事完了)、入居できたのは令和2年6月1日であった。
 この場合、中古住宅の取得日から6か月以内に入居していないため、中古住宅の取得部分については、住宅借入金等特別控除を適用できないとした。
【正しい取扱い】
 既存住宅の取得をし、かつ、当該既存住宅をその者の居住の用に供する前に当該既存住宅の増改築等をした個人が、当該既存住宅をその取得の日から6月以内にその者の居住の用に供することができなかった場合において、①新型コロナウイルス感染症の影響により、既存住宅を取得の日から6月以内にその者の居住の用に供することができなかったこと、②増改築等の契約が、既存住宅の取得の日から5月を経過する日又は新型コロナ税特法の施行の日(令和2年4月30日)から2月を経過する日のいずれか遅い日までに締結されていること、③増改築等の日から6月以内に当該既存住宅をその者の居住の用に供すること、の3つの要件を満たす場合には、住宅借入金等特別控除を適用できる(措法41①、新型コロナ税特法6①②、新型コロナ税特令4①)。
 事例の場合、上記3つの要件を満たすことから、中古住宅の取得部分についても、住宅借入金等特別控除を適用できる。

○電子申告関係

【誤った取扱い】
 納税者が死亡した場合の準確定申告を電子申告により行う場合、相続人全員の電子署名等が必要であるとした。
【正しい取扱い】
 令和2年分以後の準確定申告を電子申告により行う場合、申告データを送信する相続人以外の相続人が申告内容を確認した上で、自署で署名・捺印した確認書のイメージデータを添付することにより、申告データを送信する相続人以外の電子署名等は不要である(オン化省令5①二、令和元年国税庁告示第25号)。

【消費税法関係】

○非課税取引

【誤った取扱い】
 建物を賃貸する際、居住用として賃貸すれば非課税であるが、賃貸借契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない(用途を問わない)契約が締結された場合、居住の用に供することが明らかでないため、課税となるとした。
【正しい取扱い】
 令和2年4月1日以後に行われる建物の貸付けについて、賃貸借契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない(用途を問わない)契約が締結された場合であっても、その貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合については、非課税となる(消法別表1十三、令2改正法附則46)。
 なお、貸付け等の状況からみて人の居住の用に供することが明らかな場合とは、例えば、住宅を賃貸する場合において、住宅の賃借人が個人であって、当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合をいう(消基通6−13−11)。

○納税義務者

【誤った取扱い】
 令和X年3月に個人事業者相続により父親Aが死亡したため、Aの相続人である個人事業者BがAの事業を承継したが(Aの基準期間の課税売上高は1,000万円超、Bの基準期間の課税売上高は1,000万円以下)、Bが令和X年9月に死亡したため、個人事業者Bの相続人である個人事業者C(C自身の基準期間の課税売上高は1,000万円以下)は、Bが第一次相続によりAから相続した事業を更に相続(第二次相続)した。
 この場合、Cの令和X年課税期間の消費税の納税義務の判定上、A及びBの基準期間の課税売上高を合計して判断するとした。
【正しい取扱い】
 自己が事業者でない者又は免税事業者である相続人の場合、相続があった年の納税義務は、被相続人の基準期間における課税売上高により判定する(消法10①)。
 なお、消費税法上、被相続人が相続により他の被相続人の事業を承継している場合における納税義務の判定についての特段の規定が置かれていないことから、数次にわたる相続があった場合には、それぞれの相続ごとに納税義務の判定を行うこととなる。
 したがって、事例の場合、第二次相続のCの納税義務については、被相続人Bの基準期間における課税売上高で判断することとなり、被相続人Bの基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることから、Cは令和X年課税期間の消費税の納税義務は免除される(消法10①、消基通1−5−4)。

○仕入税額控除

【誤った取扱い】
 令和2年11月に住宅の貸付けの用に供するためのアパート(居住用賃貸建物)を購入した場合、令和2年課税期間において課税売上がある場合には、居住用賃貸建物に係る消費税の還付を受けることができるとした。
【正しい取扱い】
 事業者が、令和2年10月1日以後、国内において行う居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象とならない(消法30⑩、令2改正法附則1イ)。
 なお、上記「居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限」の適用を受けた居住用賃貸建物について、①第三年度の課税期間(※1)の末日にその居住用賃貸建物を有しており、かつ、その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間(※2)に課税賃貸用(※3)に供した場合、②その居住用賃貸建物の全部又は一部を調整期間に他の者に譲渡した場合には、仕入税額控除を調整することとなる(消法35条の2①、令2改正法附則1イ)。
※1 居住用賃貸建物の仕入れ等の日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間をいう。
※2 居住用賃貸建物の仕入れ等の日から第三年度の課税期間の末日までの間をいう。
※3 非課税とされる住宅の貸付け以外の貸付けの用をいう。
※4 令和2年3月31日までに締結した契約に基づき令和2年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等については、上記の制限は適用されない。

○簡易課税制度

【誤った取扱い】
 「農業、漁業、林業」のうち、「飲食料品の譲渡」に係る事業区分を令和元年10月1日以後についても第三種事業に該当するとした。
【正しい取扱い】
 消費税の軽減税率制度が実施される令和元年10月1日以後、「農業、漁業、林業」のうち、「飲食料品の譲渡」に係る事業区分が第三種から第二種に変更されている(平28改正消附11の2①)。

【誤った取扱い】
 簡易課税制度(第五種事業)を適用している歯科医師が、患者から取り外した金冠の売却代金を申告していなかったため、金冠の売却代金を第一種事業として修正申告書を提出させた。
【正しい取扱い】
 第五種事業に該当する医療を営む事業者が診療の過程で生じた不要物の譲渡を行う事業は、「他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで」販売する事業には該当しないことから、第一種事業(卸売業)には該当せず、第四種事業に該当することとなる(消令57⑤六)。
 なお、2以上の事業を営む事業者が、課税資産の譲渡等について事業ごとの区分をしていない場合には、その者が営む事業のうち最も低いみなし仕入率を適用することとなるので、金冠の売却代金が他の収入と区分されていない場合には、金冠の売却代金の事業区分は第五種事業に該当することとなる(消法37①一、消令57④四、消基通13−3−1)。

【国税通則法関係】

○確定申告

【誤った取扱い】
 令和X1年5月31日に死亡した者の令和X1年分の所得税の準確定申告書(還付申告書)を提出できる最終日は、令和X6年12月31日であるとした。
【正しい取扱い】
 還付申告書を提出できる期間は、申告書を提出できる日から起算して5年間である(通法74①)。
 居住者が年の途中で死亡した場合に、その相続人が還付請求をすることができるのは、死亡の日の翌日からであるため(所法125)、最終日は、死亡の日の翌日(令和X1年6月1日)の5年後の応当日の前日(令和X6年5月31日)となる。

○更正の請求

【誤った取扱い】
 当初申告で医療費控除の適用を失念した者に対し、「医療費控除の明細書」を添付した更正の請求書を提出させた。
【正しい取扱い】
 更正の請求書には、請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を添付しなければならない。
 したがって、医療費控除の適用を求める場合は、「事実を証明する書類」として支払った医療費の全てに係る「領収書」又は「医療費通知」を添付する必要がある(通法23③、通令6②)。
 なお、電子により更正の請求書を提出する場合についても同様である。

○更正・決定

【誤った取扱い】
 更正決定期限は、法定申告期限から5年間であるから、国外取引等の申告漏れについても法定申告期限から5年間が経過すると、更正決定はできないとした。
【正しい取扱い】
 令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について、国外取引等の課税に係る更正決定等の期間制限に関し、次のイに掲げる事由が生じた場合において、次のロに掲げる事由に基づいてする更正決定等について、租税条約等の相手国等に対して情報提供要請に係る書面が発せられた日から3年間は行うことができる(通法71①四、令2改正法附則52②)。
イ 国税庁等の当該職員が納税者に国外取引又は国外財産に関する書類又はその写しの提示等を求めた場合において、その提示等を求めた日から60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示等がなかったこと。
ロ 国税庁長官が租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等に上記イの国外取引又は国外財産に関する情報提供要請をした場合(一定の制限あり)において、その課税標準等又は税額等に関し、租税条約等の相手国等から提供があった情報に照らし非違があると認められること。

○加算税

【誤った取扱い】
 期限後申告等があった場合の加算税の賦課決定期限は、法定申告期限から5年間であるから、法定申告期限から4年11か月後に自主的な期限後申告書が提出された場合であっても、法定申告期限から5年を経過した場合は無申告加算税が賦課できないとした。
【正しい取扱い】
 令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について、賦課決定をすることができなくなる日前3月以内にされた納税申告書の提出(調査による更正決定を予知してされたものを除く)に係る無申告加算税(5%)の賦課決定については、当該申告書の提出がされた日から3月を経過する日まで行うことができる(通法70④、改正法附則52①)。

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