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解説記事2019年10月07日 SCOPE 検証・租税回避の否認手法(2019年10月7日号・№806)

総則6項と132条による紛争事案で再び脚光
検証・租税回避の否認手法


 政府税制調査会の答申(9月26日)には、「資産課税の有する再分配機能は引き続き重要である。」との記述が盛り込まれた。係争事案も増加しており、課税当局は財産評価基本通達総則6項を適用した否認事案を積み重ねることで、相続税対策に警鐘を鳴らしている。
 一方、法人税での否認事案を見ると、新しいタイプの租税回避事案に対して、個別的否認規定では間に合わない実態が浮かび上がる。法人税法132条の適用のハードルは高く、一般的租税回避否認規定の導入を模索せざるをえない状況だ。

総則6項適用の時代が再び到来

 不動産及び株式の時価がうなぎ上りのバブルの全盛期、相続税評価額も時価に引きずられ上昇し、相続税対策が流行した。その典型が「A社B社方式」だ。A社B社方式は、当時の財産評価基本通達に則して相続財産の評価減を図るという触れ込みだったが、課税当局は総則6項を適用して、A社B社方式の節税効果を否認した。それから約30年経過した今、バブル再来とはいえないまでも地価は上昇し、不動産を保有する資産家は相続税のために保有する不動産を売却する事態を恐れ、時価と相続税評価額の乖離した不動産を取得して相続対策に奔る事態となった。課税当局は再び総則6項を適用して節税効果を否認する。
 租税法は租税法律主義を標榜するが、課税当局にとって、相続税法64条(同族会社等の行為又は計算の否認等)を適用するよりは、総則6項の使い勝手がはるかに勝っているようだ。

財産評価基本通達
(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
相続税法
(同族会社等の行為又は計算の否認等)
第64条 同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合においてはその株主若しくは社員又はその親族その他これらの者と政令で定める特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、税務署長は、相続税又は贈与税についての更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、その認めるところにより、課税価格を計算することができる。
 (2項以下 略)

時代についていけない個別的否認規定

 ユニバーサルミュージック(「UMLCC」)事件の一審判決では、伝家の宝刀ともいわれる法人税法132条を適用した課税当局の主張が斥けられた。国際的企業グループの組織再編自体には経済的合理性が認められると判断されても、UMLCCが突然巨額の債務を背負い、多学の借入金利子を損金に算入することを当局は容認できなかったのだろう。確かに、「デット・プッシュ・ダウン」という親会社の借入金の返済に係る経済的負担を企業グループの資本関係の下流にある子会社(UMLCC)に負担させることには違和感が残る。判決では、「デット・プッシュ・ダウン」では「税率の高い国で多額の利益を計上し多額の税金を負担している会社に対してより多くの負債を負担させることが合理的」との説明まで付されている。
 しかしながら、どのようなロジックでこの多額の借入金利子の損金算入を否認できるのか、答えは容易には見つからない。課税当局は法人税法132条を適用したが、この「デット・プッシュ・ダウン」が同族会社に特有な行為かといえばそうではない。グループ会社の組織再編という大義のもとにグループ内の各社は同族会社・非同族会社にかかわりなく組織再編に参加する。この借入金利子の損金算入を否認するには、使い勝手の悪い法人税法132条よりも、一般的租税回避規定の方が説得力があるだろう。本来は「個別的否認規定」で対応すべきだが、個別的否認規定である過大利子支払税制は平成25年4月1日以後に開始する各事業年度に係る支払利息に適用されるものであるため、この事案には適用できない。本事案は、グローバル化の流れに過大利子支払税制(個別的否認規定)が間に合わなかったケースと言えよう。

法人税法
(同族会社等の行為又は計算の否認)
第132条 税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一 内国法人である同族会社
 (2号以下 略)
租税特別措置法
(関連者等に係る支払利子等の損金不算入)
第66条の5の2 法人の平成25年4月1日以後に開始する各事業年度に関連者支払利子等の額がある場合において、当該法人の当該事業年度の関連者支払利子等の額の合計額から当該事業年度の控除対象受取利子等合計額を控除した残額(以下この項及び第4第1号において「関連者純支払利子等の額」という。)が当該法人の当該事業年度の調整所得金額(当該関連者純支払利子等の額と比較するための基準とすべき所得の金額として政令で定める金額をいう。)の百分の五十に相当する金額を超えるときは、当該法人の当該事業年度の関連者支払利子等の額の合計額のうちその超える部分の金額に相当する金額は、当該法人の当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
 (2項以下 略)

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