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解説記事2021年03月22日 SCOPE コインパーキング事業者への土地賃貸は駐車場業に該当せず(2021年3月22日号・№875)

個人事業税対象巡り都の認定基準否定する判決
コインパーキング事業者への土地賃貸は駐車場業に該当せず


 東京地裁は令和3年3月10日、東京都の個人事業税賦課決定処分を取り消す判決を言い渡した。コインパーキングは都心部でよく見かける事業形態であるが、東京地裁は、コインパーキング事業者に土地を賃貸した個人への個人事業税の賦課決定に対し、「原告が第1種事業である『駐車場業』を行う者であるとは認めることができず、これを前提としてされた本件処分は、いずれも違法な処分として取消しを免れない。」との判断を下した。東京都は土地を駐車場用地として貸し付けている場合も「駐車場業」に含まれるとしている。課税実務と相反する司法判断が課税実務に与える影響が懸念される。

納税者は「不動産所得」として確定申告

 本件は、所有する土地を訴外A社に貸し付けて同社の運営する駐車場用地として使用させている原告が、平成28年分から平成30年分までの所得税及び復興特別所得税につき、上記土地の賃料収入を不動産所得として確定申告をしたところ、東京都から、原告は個人事業税上の駐車場業を行う者に該当するとして、平成28年分から平成30年分までの各個人事業税賦課決定処分を受けたことから、当該賦課決定処分の取消しを求めて提訴した事案である。
 本件においては、原告がA社に上記土地を貸し付けているにすぎず、駐車場業を行っていないなどと主張する中、本件各処分の適法性、具体的には、原告が「駐車場業」(地方税法72条の2第3項13号)を行う者に該当すると認められるか否かが争点となった。

【表】当事者の主張(要旨)

原告の主張 東京都の主張
駐車場業について  原告は、訴外A社が「自動車の駐車のための場所を提供する事業」を営むための土地を貸し付けて定額の賃料を受領しているにすぎず、原告自身は、本件土地に自動車を駐車する者から対価の取得をしていないし、本件土地に自動車を駐車する者に対して駐車のための場所を提供しているわけでもない。本件駐車場を営んでいるのはA社であって、原告は駐車場業を行っているものではない。  原告は、本件土地にアスファルト舗装を施した上で駐車場用地として訴外A社に貸し付け、その対価として、月額37万8000円の賃料を受けているから、「対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する行為」をしていたことは明らかであり、また、本件駐車場の駐車台数は10台以上であるから、都事務提要の認定基準に照らせば、原告が駐車場業を行っているのは明らかである。
課税上の不均衡について  被告は、自己経営方式と土地賃貸方式の不均衡についても主張するが、自ら資本を投下して駐車場を運営するのと土地を貸し付けて賃料を受領するのとでは、土地利用の権原や経営責任等の法的性格、経営のリスクを負うか否かという点で全く異なるのであって、土地の利用方法が駐車場というだけで一くくりにして課税するのは不当である。原告は、土地賃貸方式という経営手法を選択して駐車場の経営をしているという意識は全くなく、本件土地を駐車場用地として使いたいというA社に対し、相応の賃料をもって本件土地を貸し付けたにすぎない。  原告は、本件駐車場を営んでいるのは訴外A社であって、原告はA社に本件土地を貸し付けているにすぎない旨主張するが、原告は経営手法として土地賃貸方式を、企画運営会社としてA社をそれぞれ選択しており、このような判断は、正に駐車場経営者としての責任に基づいて行われたものである。また、個人による駐車場経営のうち、自己経営方式による場合は個人事業が課税される一方で、土地賃貸方式による場合は個人事業が課税されないことになり、課税上の不均衡が生じる。

駐車場事業の運営には関与していないことが判断のポイントに

 東京地裁は要旨次のとおり判示し、個人事業税の賦課決定処分を取り消した。
 「事実に照らすと、原告は、単に、A社に対して、A社の駐車場事業の用に供するための場所として、本件土地を定額の賃料で貸し付けているにすぎないのであるから、原告自身が、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において独立して反復継続的に行っているものと評価することはできない。したがって、原告は、『駐車場業』を行う者であるとは認められない。」「土地所有者が、(中略)企画運営会社に駐車場事業の用に供するための土地を貸し付けて、駐車場事業の運営には関与せず、定額の賃料を受け取るにすぎないような典型的な土地賃貸方式の場合には、土地所有者は、対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において独立して反復継続的に行っているものとは評価し難いといわざるを得ず、自己経営方式と土地賃貸方式の不均衡を根拠として、土地所有者が駐車場事業を営んでいると評価できないような場合にまで『駐車場業』を拡張することは相当ではない。」「最終的に自動車の駐車のために使われることを想定して場所を提供している場合であっても、企画運営会社に駐車場事業の用に供するための土地を貸し付けて、同事業の運営には関与せず、定額の賃料を受け取るにすぎないような典型的な土地賃貸方式の場合には、企画運営会社は『自動車の駐車のため』に『場所を提供』されているものではなく、『自動車の駐車』の『対価』を支払っているものでもないから、認定基準のいう『対価の取得を目的として、自動車の駐車のための場所を提供する行為』には当たらないと解すべきである。」

東京都は「大半の道府県が駐車場業と認定」と主張

 本件訴訟において、東京都は他の道府県に対する照会結果を提出し、大半の道府県が「駐車場業」の認定を土地の直接の借主が駐車している場合に限定していない旨主張した。
 コインパーキング事業は広く社会に普及し、本件コインパーキング用地の土地賃貸借契約はその典型ともいえるものであるため、本件判決の射程は広く、都道府県の個人事業税の課税実務への影響が懸念される判決となっている。

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