税務ニュース2021年04月09日 非上場株に総則6項、評価に10倍の乖離(2021年4月12日号・№878) 納税者は「相続税回避ではない事案」への適用を不服とし提訴
本件は、相続人らが相続により取得した取引相場のない株式を財産評価基本通達に定める原則的評価方式である類似業種比準価額により評価して相続税の申告をしたところ、課税庁が評価通達総則6項に基づき評価した価額により相続税の更正処分等を行った事案である。
被相続人Aは生前、薬局の経営等を業とするB社の代表取締役を務めており、Aと医薬品卸売業を主な事業内容とするC社との間で、B社のC社に対する売却・資本提携等を前提とする協議を進め、平成26年5月29日基本合意書を締結した。本件基本合意書では、Aは、AとA以外のB社の株主が保有するB社の全株式60,000株を取りまとめ又は買い集めた上でC社に譲渡すること、また、譲渡価格は63億0408万円(1株あたり105,068円)とすることとされた。
もっとも、本件基本合意書は、基本合意書締結日現在のA及びC社の共通の認識を確認する目的で作成されたものであり、A及びC社を法的に拘束するものではない。また、A及びC社は、本件基本合意書に基づく権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させることはできないものとされた。Aは平成26年6月11日、基本合意に基づく譲渡に至る前に死亡した。
A死亡後にB社代表取締役になったAの妻Dは、C社との間で、B社株式の譲渡についての交渉を改めて開始した。DはB社株式を取りまとめ、Dが保有するB社株式60,000株を、C社に対して63億0408万円(1株あたり105,068円)で譲渡することになった。
相続人らは本件に係る相続税を、原則的評価方式である類似業種比準価額により1株当たりの価額を8,186円と評価し、申告した。これに対し課税庁は、評価通達の定めにより評価することが著しく不適当であるとする特別の事情があると認められるとして、評価通達総則6項に基づき、民間の評価機関にB社株式の鑑定評価を依頼。本件算定報告書におけるB社株式60,000株の鑑定評価をもとに1株あたりの価額を80,373円と評価した上で、相続人らそれぞれに対し、本件相続に係る相続税の更正処分等を行った。相続人らは「相続税回避行為のみられない事案」への総則6項の適用を不服とし提訴しており、裁判の行方が注目される。
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