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解説記事2021年04月26日 税務マエストロ 令和2年度消費税改正(居住用賃貸物件に係る課税区分の実質判定)(2021年4月26日号・№880)

税務マエストロ
令和2年度消費税改正(居住用賃貸物件に係る課税区分の実質判定)
#260
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 令和2年度改正により、建物の貸付けについては、たとえ契約においてその用途が明らかにされていない場合であっても、貸付け等の状況からみて人の居住用であることが明らかな場合には、その賃貸料を非課税とすることになった(改消法別表第1十三)。
 今月は、令和2年度消費税改正のうち、「居住用賃貸物件に係る課税区分の実質判定」について確認する。

1 サブリース契約の問題点

 非課税となる住宅の貸付けとは、契約において、人の居住の用に供することが明らかにされているものに限られる(消法別表第1十三)。
 したがって、賃貸借契約書に「居住用」と明記しない限り、原則として家賃収入には消費税が課税されるので、その賃貸物件の取得は課税業務用に区分され、旧法の下では取得費の全額を仕入税額控除の対象とすることができた。
 居住用の賃貸物件をサブリースする場合において、賃借人(B)が住宅として転借人(C)に転貸することが、賃貸人(A)と賃借人(B)との契約により明らかにされている場合には、賃借人(B)が行う住宅の転貸だけでなく、賃貸人(A)から賃借人(B)への賃貸も非課税となる(消基通6−13−7)。結果、Aが取得する賃貸物件は非課税業務用に区分され、原則として仕入税額控除はできないことになる。

○消費税法基本通達6−13−7(転貸する場合の取扱い)
 住宅用の建物を賃貸する場合において、賃借人が自ら使用しない場合であっても、当該賃貸借に係る契約において、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合には、当該住宅用の建物の貸付けは、住宅の貸付けに含まれるの
であるから留意する。
(注)この場合において、賃借人が行う住宅の転貸も住宅の貸付けに該当する。

 上記通達の下線の箇所を単純に文理解釈すると、賃貸人(A)と賃借人(B)との賃貸借契約において、「賃借人(B)が住宅として転借人(C)に転貸することを明記しておかなければ」、賃貸人(A)から賃借人(B)への賃貸は非課税とはならず、課税されることになる。結果、Aが取得する賃貸物件は課税業務用に区分され、仕入税額控除の対象とすることができることになるのである。

 なお、「居住用賃貸建物」とは、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物で、高額特定資産に該当するものをいう」と定義されているので、契約書により用途が明らかにされていない上図の賃貸物件は「居住用賃貸建物」に該当し、改正法により仕入税額控除が制限されることになる。ただし、AからBへの賃貸料収入が課税のままだと「課税賃貸割合」が100%となり、結果として第3年度の課税期間において建築費の全額を仕入税額控除の対象とすることができてしまうのである。

2 改正法の内容

(1)改正法令通達の内容
 改正法別表第1十三号では、非課税となる住宅の貸付けについて次のように定義している。また、改正により追加された箇所については、基本通達でその内容を解説し、具体的例示を示している。

【具体例1】通常の賃貸借契約
 賃貸人と賃借人との契約において物件の用途が明らかにされておらず、賃借人(個人)が物件を事業用に使用していることを賃貸人が把握していない場合には、その物件の貸付けは非課税となる(消基通6−13−11(1))。
 ただし、契約書で物件の用途が明らかにされていない場合であっても、賃借人が物件を事業用に使用することを賃貸人が把握(承諾)している場合には、単に事実を書面にしていないというだけのことであり、その事実に基づき、課税されることになる。

【具体例2】サブリース契約(その1)
 サブリース契約において、賃貸人と賃借人との契約においては物件の用途が明らかにされていないものの、賃借人と転借人(入居者)との間で住宅用としての契約がされている場合には、入居者が住宅として使用することが明らかなので、賃借人から転借人(入居者)への転貸だけでなく、賃貸人から賃借人への賃貸についても非課税となる(消基通6−13−11(2))。

【具体例3】サブリース契約(その2)
 サブリース契約において、賃貸人と賃借人との契約においては物件の用途が明らかにされておらず、賃借人と転借人(入居者)との間でも物件の用途が明らかにされていない場合において、転借人(個人)が物件を事務所などの用途に使用していることを賃貸人が把握していない場合には、その物件の貸付けは非課税となる(消基通6−13−11(3))。
 したがって、契約書で物件の用途が明らかにされていない場合であっても、転借人が物件を事業用に使用することを賃貸人が把握(承諾)している場合には、その事実に基づき、課税されることになる。

(2)「契約」と「把握」
 消費税法基本通達6−13−11(貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合の意義)では、「把握」という抽象的な日本語を多用している。
 私見ではあるが、同基本通達に書かれている「……当該住宅が人の居住の用に供されていないことを賃貸人が把握していない場合」とは、契約書などの書面に明記するという意味ではなく、あくまでも、賃貸人(賃借人)と賃借人(転借人)との間で合意しているかどうかにより、課否判定をすべきものではないかと思われる。
 契約書に「居住用」であることが明記されている場合には、物件の賃貸借は原則として非課税となる。
 ただし、「事業用」であることについて賃貸人と賃借人が合意しているにも関わらず、賃貸料収入を非課税とするために、契約書に「居住用」と記載した場合には、真実と異なる事項が契約書に記載されているだけということになろう。よって、その賃貸借は課税となり、賃貸人は賃貸料収入を課税売上高に計上しなければならない。
 契約書に「事業用」であることが明記されている場合には、物件の賃貸借には原則として消費税が課税される。
 ただし、「居住用」であることについて賃貸人と賃借人が合意しているにも関わらず、賃借料を仕入税額控除の対象とするために、契約書に「事業用」と記載したような場合には、真実と異なる事項が契約書に記載されているだけということになろう。よって、その賃貸借は非課税となり、賃借人は支払った賃借料を仕入税額控除の対象とすることはできない。
(3)改正消費税法基本通達の疑問点
 サブリース契約の場合には、入居者の増減に関わらず、賃貸人と賃借人との間で定額の家賃を取り決めるケースが多いように思われる。このような状況下において、賃貸人は、入居者の使用状況を把握することなど現実問題としてできるのであろうか?
 また、集合住宅をサブリースする場合において、事業用の貸室と居住用の貸室を区分して賃料を取り決めたとしても、その後に新たな入居者が決まったり退室があった場合には、その都度賃貸人と賃借人との間で一括賃貸料を変更する必要があるのだろうか?
 入居者が法人の場合には、法人が事務所として利用する場合の他に、社宅として利用する場合が想定されるが、賃貸人は、その利用状況をいちいち把握する必要があるのだろうか……改正消費税法基本通達の執行に無理があるように思えてならない。

3 改正の狙いと改正法の適用時期

 本改正は、契約書に「住宅用」であることを明記しないことにより、作為的に賃貸物件の建築費について消費税の還付を受けようとすることを防止するための措置ではないかと思われる。また、本改正は令和2年4月1日以後に行われる貸付けについて適用することとされているので、契約書に「住宅用」であることが明記されていない場合であっても、賃貸物件の状況等から人の居住用であることが明らかなものについては、令和2年4月1日以後の家賃は非課税として取り扱われることになる(令和2年改正法附則46①)。
 この場合において、課税業務用調整対象固定資産を非課税業務用に転用した場合の税額調整の規定は適用されない(令和2年改正法附則46②)。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

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