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解説記事2024年04月22日 SCOPE 特定目的会社が取得した建物は棚卸資産に該当と判断(2024年4月22日号・№1024)

高裁も仕入税額の還付を認めず
特定目的会社が取得した建物は棚卸資産に該当と判断


 特定目的会社が取得・売却した物流施設が棚卸資産に該当するかが争われた事案で、東京高裁第16民事部(土田昭彦裁判長)は令和6年4月11日、棚卸資産に該当するとした原判決を支持し、納税者の控訴を棄却した。
 原告は、課税事業者である期間中に物流施設を取得し、当該物流施設の仕入れに係る消費税額の還付を図るとともに、当該物流施設に係る信託受益権の譲渡をした翌課税期間については課税事業者選択不適用届出書の提出により、免税事業者を選択していた(H28改正前の事案)。したがって、当該物流施設が棚卸資産と判断されれば、「課税事業者が免税事業者となった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整」により、仕入れ税額の控除が認められないことになる。
 裁判所は、原告は、グループ内の投資法人に売却することを前提に本件物流施設の取得をしており、営業活動としての販売をすることを主たる目的として本件物流施設を取得・保有していたとして、棚卸資産に該当するとの判断を下した。

投資法人への売却を前提に、営業活動としての販売が主たる目的と認定

 本件の事案の概要はのとおり。原告は、米国REITを最終親会社とする特定目的会社で、平成22年3月30日に設立され、消費税課税事業者選択届出書の提出により消費税の課税事業者となっていた。

 原告は平成24年6月に土地を購入し、平成27年4月にS建設に施工を発注した物流施設の引渡しを平成28年9月に受けた。その後、平成28年11月1日から平成29年10月31日までの課税期間において免税事業者となるため、課税事業者選択不適用届出書を提出した。
 続いて平成29年7月に、M信託銀行との間で不動産管理処分信託契約を締結し、同日付けでグループ内の投資法人に対し本件信託契約に基づく信託受益権を譲渡することを約した受益権譲渡契約を締結し、8月には実際に当該信託受益権を譲渡した。そして、平成29年9月1日から同年12月31日までの課税期間について、課税事業者選択届出書を提出した。
 原告は、平成28年10月期の申告において、本件物流施設が固定資産であることから仕入税額控除が認められるという前提で、約3億4,000万円の還付を求める消費税申告を行ったが、処分行政庁は、本件物流施設は棚卸資産に該当するから、これを本件課税期間の末日に有し、翌課税期間において免税事業者となった原告については、消費税法36条5項の規定により仕入れ控除は認められないとして、更正処分等を行った。
投資法人への売却がグループのスキーム
 一審において原告は、不動産販売業を営む者ではなく、本件物流施設を賃貸する目的を有していたのであって、販売する目的を有していたとしても、「通常の営業過程において販売する目的」で本件物流施設を保有していたわけではないなどと主張。また、グループの他の不動産信託に係る事案でも、運用物件を固定資産として申告してきたとも主張した。
 東京地裁は、棚卸資産の定義について、企業会計の定義を借用すべきものであり、会計基準等によれば、棚卸資産とは、営業活動としての販売をすることを主たる目的として取得・保有するものとの解釈を示した。
 その上で、原告の属性及び事業目的について、原告は、本件物流施設を売却することによる収益を配当することを主たる目的としており、本件物流施設の信託受益権の譲渡の金額と本件物流施設の賃料の金額とを比較すれば、原告の主たる収益源が前者であることは明らかなどと指摘。本件物流施設の販売は、その営業活動としての販売に当たるとした。
 また、本件物流施設を保有した経緯、取得時の方針についても検討し、グループのスキームにおいて、原告のような特定目的会社は、資金を調達した上で取得した物流施設を原則として本件投資法人に売却することを前提とし、かつ、それ自体が各特定目的会社の主目的とされていると指摘した。そして、実際に、本件投資法人に優先的に物件を売却すべき義務を負う日本法人との間で本件土地の処分や出口戦略に関する業務委託契約を締結したこと、グループ内の資産運用会社に対して優先して情報を提供したり、本件投資法人に対して優先交渉権を付与したりしたことなどから、原告が、グループの他の案件と同様、当初から、本件投資法人に売却することを前提に本件物流施設の取得をしたことは明らかとした。
 そして、原告は、営業活動としての販売をすることを主たる目的として本件物流施設を取得し、保有していたものと認められるから、本件物流施設は棚卸資産に該当すると結論づけた。
 東京高裁も、一部補正を加えたものの地裁の判断を支持し、原告の控訴を棄却した。
仮に固定資産でも “3年縛り”で封じ込め
 なお、本件のようなスキームは、平成28年税制改正により創設された「高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例」により、仮に本件物流施設が棚卸資産ではなく固定資産であるとされたとしても、封じられている。
 すなわち、高額特定資産の取得から3年間は本則課税による申告が義務付けられるいわゆる“3年縛り”により、翌課税期間に免税事業者になることはできなくなっている。

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